2012/08/31

クローズアップ現代 糖尿病の”常識”が変わる

水曜、木曜のクローズアップ現代が良かった。

http://www.nhk.or.jp/gendai/kiroku/detail_3239.html(糖尿病の回)

糖質制限食が取り上げられていた。
劇的に改善した人が紹介されていたが、きちんと問題点・リスクも指摘されていたことは良かったと思う。代謝の問題などもあるため、医師の指導のもとで取り組むべきというメッセージをもっと強く発しても良かったと思うが、テレビを見た人は、何かしら興味を持つことができたのではないだろうか。糖質制限食を病院でも取り組むところが増えてきているため、興味を持った人は、まずは医師に相談してみると良い。

また、以前、このブログでも取り上げた本を読むこともおすすめだ。

そして、さらに、初期からのインスリン注射の話も出てきていた。この取り組みは、ちょっと前にも、とある雑誌でセンセーショナルに紹介されていたが、メディアで何回も取り上げられており、この治療も急速に広まってくると思われる。
例 ためしてガッテン→http://www9.nhk.or.jp/gatten/archives/P20111005.html

最後に、胃のバイパス手術が紹介されていた。これはアメリカで肥満者向けに一般的な治療として認知されているが、糖尿病にも効果があるとのこと。アジアでも日本以外では、結構なスピードで広まってきているのだが、日本はまだまだ一般的でない手術なだけに、これはさすがになかなか日本には来ない気がする。

クローズアップ現代、糖尿病の前の日は、お迎え、看取りだったが、なかなか良いテーマだった。穏やかな最期、お迎えは宗教的なものでも何でもなく、本当に良い最期であり、それを知った残された家族・人も、死を前向きに受け入れられるきっかけになる気がした。
死は遠くにあるものではなく、身近にあることを、現代社会では、もっともっと前向きに捉えなければならない。そう思った。
http://www.nhk.or.jp/gendai/kiroku/detail_3238.html(お迎えの回)

2012/08/28

介護の現場に触れて

最近、2回ほど、デイサービスの現場を見てきた。
まず、ご高齢の方々から、色々な話を聴くことができたことは、何よりの収穫だった。なかなかこのような世代の大勢から話を聴く機会が無かっただけに、ひとつひとつの話が興味深く、そして大変参考になった。


■ 戦争のこと
昨今、中国、韓国との関係性がかなり難しい状況になってきているが、そういったことを考える上でも、年長者、戦争経験者からの言葉は非常にありがたい。大正生まれ、昭和初期の生まれの方々がお話してくださる戦時中のこと、戦後のことは、辛い、貧しい、苦しい、そんな苦労したことばかりだった。戦争が正しい・間違っている、そんな議論ではない。単に、ひとりの家族を持っていた人間、そこに生のある人間の言葉は、辛い経験、苦労した経験だった。ニュースや新聞を見て、感じることだけでなく、こういった話を踏まえて物事が考えられるようになることは、本当に有益だ。


■ 健康のこと
さすがにご高齢。身体のあちこちにガタが来ていらっしゃる。興味深いこともいくつか。
・ 高血圧の薬を40年も飲み続けている(血圧は正常範囲)なんて人もちらほら(ある人は、むか~し、主治医に飲むように言われて、なんで飲んでいるか、止められないかは知らないとのこと)
・ 身体が動く、動かないにかかわらず、外出はかなり億劫になってしまうらしい(だからデイサービスに来ているのかもしれないが)
・ 心筋梗塞を4回もされた方がいた(医者の腕がいいんだ、とおっしゃってました)
・ 膝が痛いという人は多く、手術した人も結構な割合でいる(生活の質を保つ上で、膝は大事!!)

でも、元気な方も、あちこち痛い・しびれる・動かないとおっしゃる方も、みなさんそれぞれ、色々あるものの、「今」を楽しむことに前向きで、何事にも感謝を忘れない。その姿勢が健康の秘訣なのかな・・・というのがこの2回(たった10数時間のことだが)の一番の感想。


■ 地域のこと
ご高齢の方の、ちょっと前の話しは、ちょっとではなく、だいぶ前の話だったりするのだが、30年、50年、タイムスリップできるので、非常に聞いていて飽きない。自分の祖父母の話と重なったりすることもあるから、また面白い。自分の生活する地域の歴史や人のことを理解するのは、やはり大事だ。今日はキャベツ畑の話を聞くことができた。なんてことない話だが、その畑には、昔からの長い歴史があり、そして今日がある。これまで子供と蝶々を見ていた畑を、また違った目で見ることができる。


様々な話を聞き、今日、家に帰ってきてから、福祉の領域で自分に何かできないか考えていた。まだまだ温めなければならないが、少しでも役に立てることがないか、考え続けたい。
このようなボランティアを受け入れてくれる環境にも感謝!

2012/08/20

日経「医療再建」を読んで

日経が先週、4日間連続の記事で、医療再建と題して、創薬や看護・介護の人材確保、混合診療などをテーマに、簡潔にまとめていた。

4回目の土曜は胃ろうなどの延命治療だったが、最後の締めくくりの一文、「問われているのは私たちの生き方そのものだ」に集約されている。

延命できる技術、経験は十分に整った。これから先、どのような負担を誰が背負い、どのような社会にしていくか。個々人が考えなければならないのと同時に、あまり考えることがない人にとっても、分かりやすい社会的な仕組み・制度を考える必要があるかもしれない。これは行政まかせにできるほど、単純な話ではないと思う。

やはり、もっと死を身近に感じ、どういった社会を作るか、もっともっと考え、せめて、考えた人は情報を発信していく必要があると強く感じている。

2012/08/14

書評: 「病気の値段」の怖い話

この本は医療者・患者、両サイドのバランスが良く取れていて、読みやすく、事の本質をついているように感じる。タイトルは仰々しいが、中身は真っ当な話。

医療者、患者の両視点で、とても良い本だと思う。

■患者視点
「医者がどういう論理で動いているか。その裏側を知ることにより、よりよい医療を受けることができる本」

■医療者視点
「医者がどういうことをしてはいけないのか。賢い患者は本質を見抜く力がある。良い医者になるには、どうしたらよいか教えてくれる本」


特に、医療者視点での指摘は、下手な開業支援の本や、マーケティングの本より、本質をついていると思う。本からの引用だが、
患者の話をよく聞くことが本当に大事だなと実感したよ。限られた時間の中で、そういうことができる医者が本当に良い医者なんだ
良い医者を見抜く方法を伝授してくれているのだが、この言葉は本当に重い。こういった医療者を、患者が選び、大事にしていかなければならない。

本の最後、こんなことも書いてあった。
医療費に関しても、患者はもっと賢くなるべきです
患者が賢くなること。それが、良医を育てる近道だと改めて感じた。
また、この本の中で、若干、学歴偏重のメッセージがある点は、医療者の感じる素直な観点として、興味深い。患者側は、情報の非対称性ゆえ、医療者の技量を測る術がない。そういった意味で参考になるが、個人的にはどこまで参考になるか良く分からない気がする。

この本、患者向けの本としては、ややありきたり感があるものの、医療者側が読む本としては良い本だと思う。

2012/08/07

書評: 私はがんで死にたい


外科医としてがん患者に向き合い、現在、ホスピスでがん患者に向き合っている医者の書いた本。
さらに、自身もがんにかかった経験があり、妻を白血病で亡くした経験を持っている。

認知症のがん患者が増えている点など、医療の現場にいるからこそ感じる、これから益々深刻化してくるであろう問題についても、触れている。

化学療法に対する冷めた見方は、過大な期待を持たせてしまう医療者に対する批判だろうか。血液がんでは劇的な効果が見込める割合がそれなりに高い反面、固形がんではほとんど期待できないことを、肌で感じていると述べている。

治す医療の限界を感じざるを得ない。一方で、「どんな人生でも最期は苦しまずに逝きたい」と書いているように、医療は、延命治療に対してオープンに議論され、そして緩和ケアが前向きに議論される時代に突入している。

医療者の育成、経験の蓄積も重要だが、その医療を受ける市民の理解度向上も重要だろう。

書評: 次世代医療への道

国は様々な医療情報を一元管理し、効率的な医療、質の高い医療の実現を目指している・・・
といった話は、とうの昔から、議論されているが、一般市民の目線では、一向に進んでいる気がしない。

例えば、医者に行けば、問診票を書かされ、「現在、服用中のお薬はございますか?」という問が、必ずある。また、「これまで、大きな病気にかかったことはありますか?」なんていう質問も、必ずといってよい。

自分であれば、毎回、毎回、『ぜんそく』にチェックをつける。

これは、自分の情報を、自分で管理することが求められているためである。
理想は、国が管理してくれて、いつどこの病院に行っても、救急車に乗っても、災害時でも、自分の情報を引き出すことが出来る状態にあれば、医療者は、患者の歴史(大病はもちろん、細かな風邪薬の処方まで)を把握することができる。

理想は理想で、非現実的なのか?

この本では、海外の事例を中心に、どのような取り組みがなされているか、紹介している。
国内では、長崎と千葉の地域の事例などが取り上げられている。

我々は、このような社会的インフラが整備されることを、じっと待っていればいいのだろうか?
正直、何年で環境が整うか、まったくわからない。(この本を読んでも、それはわからない)
そんな中で、自分たちができることを考えなければならないのではないだろうか。

我々ができることは、①自分たちがどうありたいか、医療情報のインフラ整備をどう推し進めるべきか、声を上げること、②自分(家族)の情報は、最低限、自分で管理する、の2つではないだろうか。
待つのではなく、ひとりひとりの積極的な姿勢が、社会を変える、そう信じたい。

次世代医療への道次世代医療への道
NTTデータライフサポート事業本部 戦略企画室 山下 徹

挑む力 世界一を獲った富士通の流儀 スタートアップ!   ― シリコンバレー流成功する自己実現の秘訣 日本の医療―制度と政策 ハーバード白熱日本史教室 (新潮新書) イノベーションのDNA 破壊的イノベータの5つのスキル (Harvard Business School Press)

書評: やすらかな死を迎えるためにしておくべきこと、日本人の死に時、在宅死のすすめ

在宅死関連の書籍3冊。まとめて紹介する。
やすらかな死を迎えるためにしておくべきこと (PHP新書)  日本人の死に時―そんなに長生きしたいですか (幻冬舎新書)  在宅死のすすめ 生と死について考える14章 (幻冬舎ルネッサンス新書)


やすらかな死を迎えるためにしておくべきこと
この本は、よくも悪くも教科書的な、健康願望の裏切らない内容。
ピンピンコロリを目指すには、『交差点は左右を見ながら早く渡る』なんてことまで書いてある。確かにそうなのだろうが、この本を手にとった人が、へぇー、とか、ほぉーとか、思うことは皆無ではないか。そんなこんなの前半は、あまり得るものがないが、後半、安楽死、リビング・ウィルにつながるところは、非常にわかりやすく書かれているため、参考にしてもよいのではないだろうか。
なお、巻末についているリビング・ウィルの例文は、後ほど紹介する在宅死のすすめに、「満足死宣言」として、似たものが紹介されている。理念は一緒だ。
やすらかな死を迎えるためにしておくべきこと (PHP新書)


日本人の死に時
簡単に死ねない時代になった、そうしみじみ書いてある文章に、いろいろ考えさせられる。

人々が若くして死んでいた時代には、医学の進歩が必要だったでしょう。しかし、今、医学は大いに発展して、寿命を超えるほどの人を生かすようになりました。(中略)
その発想からいけば、現代医療は進みすぎです。進めるばかりでなく、別の方向を探ったり、ときには一部を棄てることもまた、人間の知恵ではないでしょうか。

生かすことが、幸せではない現実を見ている著者の話は、非常に厳しい現実ではあるものの、患者・家族と向き合っている様子が伝わってくる。
そして、死をサポートする医療に話がつながる。早く楽になりたい本人と、長く生きることを望む家族とを、経験によって、サポートする様子は、「治す」だけの医療では語ることができない。
それは、著者の言葉を借りれば、「死の側に立つ医師」に集約されている。

快適な死を支えるためには、幅広い知識を確かな技術が必要です。信頼感や安心感を与える人間的な度量も求められるでしょう。

社会が求める医師像のひとつとして、もっともっと理解・認知されなければいけないことだと思う。
日本人の死に時―そんなに長生きしたいですか (幻冬舎新書)

在宅死のすすめ
この三冊の中では、最も過激な内容。前半、少し硬い文章だが、後半は少し柔らかくなる。
三冊共通で、安楽死が取り上げられているが、一番、生々しい内容になっている。ある医師の告白として、安楽死をさせた話が書かれている。著者が別人格を用いて、自身のことを書いたのではないかというくらい、生々しさが残っている。自分が同じ境遇になったとき(死ぬ側)に、ここまで考えられる自信はない。それは日々、生きることが当たり前だから、考えもしないのだが、もっともっと死が身近にならなければ、誰もこのようなことを考えられないように感じる。


三冊を通じて、死に時を考えることはもちろん、医療がそれにあわせて、形を変えなければならないことを痛感する。自分で何ができるか、考えなければならない。
在宅死のすすめ 生と死について考える14章 (幻冬舎ルネッサンス新書)

2012/08/04

書評: 週刊エコノミスト 8/7号 特集「漢方で勝つ!」

漢方特集。表紙が漢方薬になっている号。

がん治療にも有効な漢方薬。
市場規模や、大手メーカーの代表的な薬剤の説明があったり、最低限のビジネス的な理解を得るにはちょうどよい特集ではないだろうか。

がん研有明、漢方サポート科部長 星野惠津夫医師が、がん患者に有用な漢方治療の認知を高め、治療機会を提供したい、と意欲的なコメントをしていた。その中で触れられていて、専門医の育成が急務、との意見は、その通りだと思う。服薬は、医師・コメディカルの理解が十分でないと、効果が薄くなるどころか、害になる可能性もあるわけで、周りをリードできる専門医に期待するところは大きい。

また、市民、患者も、漢方薬も含めた薬に対する理解を深める必要があるだろう。

2012/08/02

書評: さらば厚労省 それでもあなたは役人に生命を預けますか

新型インフルエンザのときの国の対応を切り口に、官僚、特に医系技官の問題点を鋭く論じている。
「医師と官僚」、「日本とアメリカ」、それぞれの経験に基づく視点を持ち合わせている点は、バランス感がよく、指摘している点に説得力がある。
ただ、あえて指摘するならば、「医師と官僚」、さらに言えば、「医師と医系技官」でありながら、最終的な主観は、医師・医療者に軸が置かれているため、保険者である支払側や一般市民での観点が薄く、若干バランス感覚に欠けている。医療費抑制政策を批判するのは、現場の医師の過労を少しでも緩和させるために大事な主張と思うが、税収が落ち込み、社会保障費をどうやって捻出しようか頭を悩ませている日本という国にとって、すべてが解決する策ではないことは明らかだ。

また、ドクターフィーとホスピタルフィーの議論がなされている。これは医療者側だけでも、意見がまとまらない内容なだけに、議論を成熟させていく必要があるだろう。これから始まるであろう費用対効果の議論する際にも、ドクターフィーとホスピタルフィーに分けることを意識する必要があるのではないだろうか。

それと、ロハスメディカルやm3.comの橋本佳子編集長のことが、一般紙のようなマスメディアと異なり、本質を突いた情報発信ができている、といった話があったが、これは、本当にその通りだと思う。国民が情報を目にする際、それが偏った考え方なのか、そうでないのか、判断できる人はあまり多くないように思う。

(下記の「行列のできる審議会~中医協の真実」が、その分かりやすい例)



「さらば厚労省」は、こういったメディアの問題も含め、医療政策を考えていく上では、非常に良い本だと思う。

さらば厚労省 それでもあなたは役人に生命を預けますか?さらば厚労省 それでもあなたは役人に生命を預けますか?
村重 直子

誰も書かなかった厚生省 舛添メモ 厚労官僚との闘い752日 行列のできる審議会~中医協の真実 (ロハスメディカル叢書) 医療崩壊の真犯人 (PHP新書) 道路独裁 官僚支配はどこまで続くか

2012/08/01

医者の子は医者に

かえるの子はかえる、ではないが、あそこは代々医者家系だ、とか、開業していない先生でも、ご実家ではお父様が開業している、なんて話は、よく聞く。

SMS社とQlife社のリサーチが非常に面白いので、紹介したい。
自分があれこれいうより、まず下記リンクを見た方がよい。
SMS社プレスリリース「わが子を医療従事者にしたいか」調査結果

医者は子供に医者になってもらいたいと思っている割合が高く(やっぱり!)、
看護師は、あまり医者になってもらいたくないと思っている割合が高い(医者は激務で、心身ともに苦労が絶えないことを見てしまっているからか!?)。
そして、薬剤師は、医者になってもらいたいと思っている割合が高い(病院勤めの薬剤師か、そうでないか、によって、答えが大きく違うのでは)。

医者自身のプライドが、激務を超越し、子供を医者にさせたいと思い、一方、現実を見ている看護師は、医者にさせたくないと思っている。もしそうであるならば、やはり、日本の医者は立派な人、人格者が多いのでは、と思う。
世の人が思うほど、稼げる職業でないだけに、医者が子供を医者にさせたいという結果は、ちょっとだけうれしい。