2012/08/07

書評: やすらかな死を迎えるためにしておくべきこと、日本人の死に時、在宅死のすすめ

在宅死関連の書籍3冊。まとめて紹介する。
やすらかな死を迎えるためにしておくべきこと (PHP新書)  日本人の死に時―そんなに長生きしたいですか (幻冬舎新書)  在宅死のすすめ 生と死について考える14章 (幻冬舎ルネッサンス新書)


やすらかな死を迎えるためにしておくべきこと
この本は、よくも悪くも教科書的な、健康願望の裏切らない内容。
ピンピンコロリを目指すには、『交差点は左右を見ながら早く渡る』なんてことまで書いてある。確かにそうなのだろうが、この本を手にとった人が、へぇー、とか、ほぉーとか、思うことは皆無ではないか。そんなこんなの前半は、あまり得るものがないが、後半、安楽死、リビング・ウィルにつながるところは、非常にわかりやすく書かれているため、参考にしてもよいのではないだろうか。
なお、巻末についているリビング・ウィルの例文は、後ほど紹介する在宅死のすすめに、「満足死宣言」として、似たものが紹介されている。理念は一緒だ。
やすらかな死を迎えるためにしておくべきこと (PHP新書)


日本人の死に時
簡単に死ねない時代になった、そうしみじみ書いてある文章に、いろいろ考えさせられる。

人々が若くして死んでいた時代には、医学の進歩が必要だったでしょう。しかし、今、医学は大いに発展して、寿命を超えるほどの人を生かすようになりました。(中略)
その発想からいけば、現代医療は進みすぎです。進めるばかりでなく、別の方向を探ったり、ときには一部を棄てることもまた、人間の知恵ではないでしょうか。

生かすことが、幸せではない現実を見ている著者の話は、非常に厳しい現実ではあるものの、患者・家族と向き合っている様子が伝わってくる。
そして、死をサポートする医療に話がつながる。早く楽になりたい本人と、長く生きることを望む家族とを、経験によって、サポートする様子は、「治す」だけの医療では語ることができない。
それは、著者の言葉を借りれば、「死の側に立つ医師」に集約されている。

快適な死を支えるためには、幅広い知識を確かな技術が必要です。信頼感や安心感を与える人間的な度量も求められるでしょう。

社会が求める医師像のひとつとして、もっともっと理解・認知されなければいけないことだと思う。
日本人の死に時―そんなに長生きしたいですか (幻冬舎新書)

在宅死のすすめ
この三冊の中では、最も過激な内容。前半、少し硬い文章だが、後半は少し柔らかくなる。
三冊共通で、安楽死が取り上げられているが、一番、生々しい内容になっている。ある医師の告白として、安楽死をさせた話が書かれている。著者が別人格を用いて、自身のことを書いたのではないかというくらい、生々しさが残っている。自分が同じ境遇になったとき(死ぬ側)に、ここまで考えられる自信はない。それは日々、生きることが当たり前だから、考えもしないのだが、もっともっと死が身近にならなければ、誰もこのようなことを考えられないように感じる。


三冊を通じて、死に時を考えることはもちろん、医療がそれにあわせて、形を変えなければならないことを痛感する。自分で何ができるか、考えなければならない。
在宅死のすすめ 生と死について考える14章 (幻冬舎ルネッサンス新書)