2012/08/07

書評: 私はがんで死にたい


外科医としてがん患者に向き合い、現在、ホスピスでがん患者に向き合っている医者の書いた本。
さらに、自身もがんにかかった経験があり、妻を白血病で亡くした経験を持っている。

認知症のがん患者が増えている点など、医療の現場にいるからこそ感じる、これから益々深刻化してくるであろう問題についても、触れている。

化学療法に対する冷めた見方は、過大な期待を持たせてしまう医療者に対する批判だろうか。血液がんでは劇的な効果が見込める割合がそれなりに高い反面、固形がんではほとんど期待できないことを、肌で感じていると述べている。

治す医療の限界を感じざるを得ない。一方で、「どんな人生でも最期は苦しまずに逝きたい」と書いているように、医療は、延命治療に対してオープンに議論され、そして緩和ケアが前向きに議論される時代に突入している。

医療者の育成、経験の蓄積も重要だが、その医療を受ける市民の理解度向上も重要だろう。