不妊治療を対象とした保険を販売できないか、議論がなされているようだ。
昨日の金融庁のワーキンググループ資料(http://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/hoken_teikyou/siryou/20130517/01.pdf)を見ると、様々な課題に対し、民間の自由な発想でトライする余地があるといった雰囲気である。
以下、資料より引用
「不妊治療に係る保険については、不妊という事由の発生には偶然性が認められ、不妊治療に要する高額な費用を経済的に塡補するニーズもあることから、保険の対象となりうる要素を備えており、また、社会的意義も十分認められると考えられる。一方、不妊治療を受けるかどうかについて専ら被保険者の意思に委ねられていることなど、モラルリスクや逆選択の問題への対処の必要性をはじめとして、保険を引き受けた際のリスクの管理が難しい面が存在することから、具体的な商品開発に当たっては、こうした課題に対応できるものとする必要がある。また、その際、保険商品が複雑になり、利用者に分かりにくくならないように留意する必要もある。」以前の弊社ブログでも言及しているが、逆選択の問題を回避でき、かつ保険を契約したくなるような商品で、さらに収益性も担保できるような設計をすることはかなり困難なように思うが・・・。
(続きでは、保険制度の私案をまとめてみた)
わずかでも可能性が残されている限りは挑戦し続けたい女性の希望、医学的な手段でわずかな希望にでも応えたい医師、そして、商業的な側面が否めないクリニック。このバランスが適正である前提での保険設計は可能であるように思う。ただ、このバランスが崩れた瞬間、保険は大失敗に終わるだろう。年齢や回数などでの線引きや、保険加入の条件を細かくするなどで対応できる部分もあるかもしれないが、それは分かりにくさにつながる。
子は国の宝、というのであれば、やはり経済的な負担は公的な保険でカバーできる方向性を模索してもらいたいのだが・・・。
不妊治療に対する経済的カバー(案)
公的保険:- 39歳まで、6回までの人工授精をカバー(年齢や回数は仮で置いた)
民間保険:
- 39歳・6回までの手厚いカバーと、39歳で6回超および40歳以降の人工授精をカバー。ただし、「1回いくら」のカバーではなく、回数、年齢による逓減支払い制(徐々にもらえる金額が下がってくる設計)
- 公的保険でカバーしきれない交通費や休業補償のカバー
- 人工授精以外の生殖医療(卵子提供など)に対する何らかのカバー
- 流産や何らかの障害のある児に対するカバー
- 不妊治療を継続しない場合の解約返戻金
- (上記に加え)OHSSなどの医学的理由により不妊治療を断念する場合の特別なカバー
- 不妊治療が成功し、正産に至った場合、祝い金(少額の支払い。大半の積立金は他契約者のためにプール)
公的保険と民間保険を組み合わせることで、民間保険では逆選択が前提のハイリスクな人だけを集め、掛け捨てでなく積立金があるような保険設計はできないだろうか。特に、無事、子供を授かり、出産に至った場合に、その積立金を保険契約者にプールするような仕組みは、相互扶助の観点からも、悪くないように思う。いかがだろうか。
ちなみに年齢や回数で公的と民間に線引した理由は、下の本などを読んでもらいたい
ちなみに年齢や回数で公的と民間に線引した理由は、下の本などを読んでもらいたい