2013/08/28

書評: 週刊ダイヤモンド 2013/8/31号 特集「人気医療の罠」

週刊ダイヤモンド記事
昔、大手コンサルティング会社にいるころ、毛髪関連ビジネス(かつらや植毛など)の調査をしたことがあった。というのも、このビジネスは究極のマーケティングと言われていて、このサービスを利用する人だれもが、こっそり利用したいと願っていて、失敗した人はもちろん黙っていたいし、うまくいった人でさえ黙っていたいのだ。つまり、どんないいサービスを提供しても、口コミが期待できるわけでもない。広告は怪しげな実例写真と体験談で統一されていて、決して失敗した話や困った話は見えてこない。

そのような状況において、営業はどうしたらよいのか、カスタマーリレーションシップはどうしたらいいのか、なんてことを考えていた。一時は、社内で毛髪関連に一番詳しいのではないか??という妙な自信がわき、この道で世界に羽ばたこう・・・と夢見たことがあるのはちょっとだけ本当だ。

その後は急性期病院のコンサルティングを行う会社に移り、仕事をしていたので、毛髪とは縁遠くなっていたのだが、昨年立て続けに自由診療の市場調査の機会をいただいたため、久しぶりに様々な自由診療を調査しなおした。そのため、自由診療に関してはひと通り把握しているという自負があるので、今回、週刊ダイヤモンドの特集は非常に楽しみにしていた。

■「壮快」の創刊に携わった編集者が言及する『マッチポンプ商法』

壮快についてはいまさら触れる必要もないくらい、素晴らしくマッチポンプな、うちの祖母が好きそうな雑誌だ(実際のところ、うちの祖母は愛読者ではなさそうだが)。

マキノ出版|壮快

この雑誌について、元編集者がコメントしていて興味深い。

■華麗なセレブ生活

雑誌のコンテンツとして、興味を惹きたい気持ちは分かるが「時給120万円の美容外科医」の記事は、特集全体の流れとはあまり関係がない。特集タイトルでもある『人気医療の罠』にハマる人が後を絶たないから、セレブが生まれる、ということで良いだろうか。

医師確保に悩む医療機関の話などを日々聞いているだけに、こういう実態を見聞きするのは、複雑な心境である。

■エピローグ「医者と治療法の選び方」は一読の価値あり

病気を前にすると視野が狭くなりがちなため、物事の判断が適切でなくなることが多い。特に金銭的な判断は大きく狂うだけに、鵜呑みにしない、疑う姿勢を大切に、という心構えなどは、非常に重要だろう。
また、がんの自由診療を選ぶ上で、三大治療(手術・化学療法・放射線)の門外漢は避けるというのも分かりやすい。三大治療を敵視するのではなく、補完的に代替医療を捉えることが大事だというメッセージは納得感がある。

ただ、医師の経歴はしっかりチェックをしようといいつつ、でもメスもろくに握らずちゃっかり経歴に載せちゃってる医師もいるので、しっかり探りを入れよう、と言われたところで、探りを入れる手段はなかなか無いように思う。(たとえば、手術件数の公開を義務付けるとか、そういった根本的な仕組みが必要だと思う。)


自由診療をテーマにまとめてある物は、ネット上にも様々な情報が氾濫している。しかし、その信頼性や網羅性の観点から、中身が揃っているものはなかなか見当たらないだけに、今回の週刊ダイヤモンド、なかなか良い。買って読むべき価値があるように思う。