2013/12/31

meditur insigh vol.4 セルフメディケーションを進めるアイデア

先日の中医協でうがい薬のみの処方について、保険適用除外することに反対意見が続出したことは、そもそもセルフメディケーションに対する理解が十分でない現状で、現場に混乱を来しかねないという懸念が表出したものと捉えたいが、既得権益を守るための反対意見だという見方も出来なくはない。

下記ニュースサイトの記事にあるとおり、反対意見で書かれている各委員の主張の多くは筋が通っているだけに、しっかりとしたデータを示しながら、検討を進めていくべきだろう。

【中医協】うがい薬の扱いで反対意見続出- 単独処方の保険適用除外、再度検討へ | 医療介護CBニュース

そのうがい薬の件にも触れながら、セルフメディケーションを進めるためのレポートをまとめました。よろしかったら、下記からどうぞ。

http://www.meditur.jp/our-reports/

2013/12/30

調剤データの利用がドラッグストアの起爆剤 (書評:月刊激流2014年1月号)

月刊激流1月号の特集でドラッグストアを取り上げていたので、以前買っておいたものの、なかなか読めなかったのだが、年末、移動時間などでようやく読むことができた。

やはり、ドラッグストア、色々おもしろい。

小売業としての側面と、医療施設としての側面で、どっちの世界が美味しいか、消費者のマインド・ニーズを理解しようとしながら揺れ動いている。

これまでは、食品などの日用品を『まき餌』に、一般用医薬品や化粧品で、消費者を釣っていたモデル。マツモトキヨシなどは釣りのレベルではなく、化粧品なども大幅に下げ、底引き網で漁をしていた。でも、一般用医薬品などが、どこでも売れるように規制緩和がなされてしまうと、ドラッグストアは『まき餌』でいくら客を寄せ集めても意味が無くなってしまう。

ローソンなどのコンビニ各社が、調剤薬局併設型店舗を出していることは、以前、弊社のレポートやブログで紹介したが、コンビニは、常に新しい商品がある、24時間開いている、近所にあるといった利便性が『まき餌』であり、価格で勝負していないため、インフラ整備が終わると『まき餌』セット完了であり、追加コストのかからない、もはや疑似餌のようなものだ。こういったコンビニが、収益性の高い一般用医薬品や調剤に進出してくるのは、ドラッグストアにとって、脅威以外の何物でもない。

「コンビニ」+「調剤薬局」の模索 - 医療、福祉に貢献するために

さらに、ネットでの医薬品販売は壮大な『まき餌』装置を作り上げ、太平洋はおろか、世界中の海という海を漁場にしているAmazonのようなライバルが登場することを意味する。ただ、市民目線で言えば、利便性が増すことは悪くないことで、適切な競争は歓迎だ。むしろ、ドラッグストアが乱立し、調剤薬局が何店舗も横並びになっていることが異常と感じなければならないだろう。

月刊激流の特集では、ドラッグストア各社の取り組みなどが書かれている(ちなみに個人的には特集冒頭の論説記事が一番興味深く感じた)。そのひとつで、調剤データの利用がドラッグストアの起爆剤になり得るという、という記事があった。そのとおりだ。調剤データは「顧客プロファイリング」の宝の山であることは間違いない。弊社は今年多くの調剤データを分析する機会を頂戴したが、どのデータも宝になり得ることに確信を持っている。また、この確信はアメリカのドラッグストアを見ながら再確認したことの一つでもある。来年もデータ分析で新たな価値を見出していきたい。


調剤薬局に関するレポートはこちら↓

http://meditur.blogspot.jp/2013/04/meditur-insight-vol2.html

2013/12/27

医療界のアマループは登場するか?

amazonで買った充電式電池。冬になって、自転車置場が暗いので、LEDの自動点灯ライトをつけた時に、いつも使っているeneloopがすべて出払ってしまったので、何かと困らないよう電池を探していたら、amazonではこれが売れ筋商品らしい。

何でも、この電池、中身はeneloopらしく、「アマループ」と呼ばられているらしい。アマループの説明は置いておいて(下記の記事「アマゾンのエネループ、通称アマループを買ってみた」を参照)、この話、医療の世界で何か似ている話はないだろうか??


アマゾンのエネループ、通称アマループを買ってみた

ジェネリック医薬品って、この話と似ているような似ていないような・・・・。もちろん、特許切れの新薬に対するジェネリック医薬品とOEMを一緒にしてはダメ!という、非常に良く理解している人からの批判はあるだろうが、今まで1本300円だったものが、パッケージを変えるだけで1本200円になるという衝撃は、ジェネリック切り替えで感じる衝撃に少なからず似ている。

白内障の眼内レンズが1枚150円で作られている・・・という話を以前書いた(【海外へ進出する病院の脅威とは(後半)】http://meditur.blogspot.jp/2013/11/blog-post_4.html)。価値があまり変わらず、非常に安くできる手段があるならば、医薬品に限らず、医療材料にも革命が起きるに違いない。

身体に入れる医療材料には、安全性など長期にわたる品質の保証が必要ゆえ、なかなか簡単に安いものをバンバン使うべき、という方向には流れないと思うが、財源が苦しい日本の医療制度。医療材料に革命的な「アマループ」みたいなものが登場してもよいのではないだろうか。


2013/12/25

花粉症で苦しまないための7箇条

先日、花粉症関連のデータ分析を行っていた。まだ12月なので花粉症とは無縁な時期だが、あと1、2ヶ月もしないうちに花粉症の話が聞こえ始めてくることだろう。

以前、鼻アレルギーの診断ガイドラインを紹介した。日本ではスギ花粉が最大の敵なわけだが、海外ではどうなっているのだろう? 海外には画期的な対処法があるのか?という疑問が湧いた。そこでちょっと調べたところ、花粉症で苦しまないための7箇条というのが見つかった。
  1. 花粉の飛散状況を知る
  2. 花粉が多い日は出歩かない
  3. 外出するなら賢く、計画的に
  4. 外出時は花粉対策グッズを
  5. 家に花粉を持ち込まない
  6. 適切な治療を
  7. バケーションで花粉から逃げる
(出所:WebMD Pollen Survival Guide http://www.webmd.com/allergies/features/pollen-survival-guide)


あれ? 大したことを言っていない。画期的どころか非常にオーソドックス。あげく7番目でバケーションと来たもんだ。結局、日本も海外も同じ・・・。

残念ながら、花粉症対策、劇的に改善する秘策はないようだ。
ガイドラインの紹介はこちら

2013/12/24

書評: 夢の病院をつくろう

チャイルド・ケモ・ハウスのできるまで、という副題のとおり、建物が完成したところまでの話が書かれている。本の最後に書かれている『これからここで繰り広げられる取り組みこそが大切であり、さらにはチャイケモのチャレンジをきっかけに、同じような志を持つ人が現れ、「子どもを中心に置いた新しい医療の形」が日本中に願ってやみません。』との一文に、強く共感を覚えた。

きれいなデザインの表紙

この話、以前取り上げたマギーズセンターとの共通点を感じた。医療を中心に据えた形を考えるのではなく、患者とその家族を中心に支えあう生活の場を作るという考え方は、時代が求める効率的な医療などと完全に相反するというわけではなく、医療に関与する人が共通の理解として持っておくべき知識・情報であるように思う。

例えば、高齢者医療は、病院、介護施設、高齢者住宅、在宅といった形は、患者の希望ではなく、提供する側の都合が多少なりともある点は否めない。希望を叶えるには、財政的な問題も大きいだろうし、マンパワーの問題も大きいだろう。ただ、そこで思考を停止させてしまうと、これまでと何も変わらない。その先を考えなければならないのだろう。

このチャイルド・ケモ・ハウスは、思考停止させず、その先を考え、具現化したストーリーの1つだ。

2013/12/21

昨日立ち上げられた「DATA.GO.JP」

日々の業務で、厚生労働省の統計情報を使う。今は、どこにどのようなデータがあるか知っているだけで、ちょっと優位性があり、ビジネスとして成り立たせる上で、この『優位性』が大事だったりする。

以前は、製本された資料のコピーやスキャンなどの手間が必要で、入手するまでの苦労に応じ、その価値がついていた。しかし、インターネット上で統計などが公表されるようになり、入手すること事態に対する価値はなくなり、どこにどういう情報があるか、ということに価値の大半が移ってきた。しかし、その価値すら、今、無くなろうとしている。どこにあるか情報が整理されだすと、もはやその価値はない。

昨日、DATA.GO.JPというサイトが立ち上げられた。

DATA.GO.JP

情報のありかが開示され、容易な加工性が担保されると、これまでの価値はほとんど無くなる。これからは、情報を使って何をするか、という本質的なところの真価が問われることになる。以前、APIが公開されたときにもブログで記事にしたが、オープンデータという流れは、この先、当たり前のことになるだろう。『昔はPDFでしかデータを開示してなかったんだって。ないよね~』とか『もっと昔は紙しかなかったときもあるんだって。ないないない~』と笑い話のネタになるに違いない。

DATA GO JP

2013/12/20

患者も損税対策を気にする時代が来た!?

チャイルドケモハウスのあと、移動のためポートライナーに。最寄り駅の医療センター駅に行く途中、コンビニに寄りたかったのだけど、ポートアイランドというのは店が少ないようだ。

で、見つけたのは中央市民病院内のFamilyMart。朝食とコーヒーを買った。

そこで見かけたのが、市民向けの図書コーナーだ。(コンビニのわきにある)

神戸市立中央市民病院の市民健康ライブラリー

この図書コーナーの脇が飲食スペースになっていて、そこでパンでも食べようかと思ったのだが、非常に混んでいたため断念。図書コーナーをちょっと眺めて、帰ってきた。




図書コーナーには、チラシがあったり、雑誌があったり、本があったり。休憩しながら眺めるのにちょうどいい感じだ。雑誌は医療関係のものがずらーっと並んでいた。

雑誌コーナーの中央、なんと、日経ヘルスケア!!!!
日経ヘルスや、日経メディカルならまだしも、日経ヘルスケア!?


12月号の表紙、デカデカと「どうする損税対策」と書いてある。病院に来て、市民健康ライブラリーで損税対策の雑誌を読む人がどれだけいるのやら・・・。

ちなみに、逆説的に言うと日経ヘルスケアが並んでいるくらいである。ライブラリーの充実度合いは言わずもがな。こういったライブラリー、重要だと思う。(余談だが、クリニックのライブラリーは、健康とは関係のない週刊誌・雑誌と製薬会社のPRパンフレットが多く、健康雑誌・書籍は少ない傾向がある)

2013/12/18

がんになっても笑顔で育つ。

チャイルド・ケモ・ハウスのことは、以前から神戸に作っていると知っていたのだが、見たことはおろか、神戸のどこにできたかも知らなかった。関西方面に用事があったついでに、せっかくなので見てきた。



こういった施設、まだまだ全国どこにでもできるものではないだろう。こどもが難しい病気で入院したり、治療を受けたりする場合には、いつでも近所で・・・というわけにはいかない現実がある。以前、マクドナルド・ハウスのことを紹介したこともあるが、こういった取り組みは何かしら応援していきたいものだ。

チャイルド・ケモ・ハウス「がんになっても笑顔で育つ」

2013/12/16

情報の可視化で求められる「メッセージ”力”」と「美しいビジュアル」

Mapping the Gaps: Mental Health in California

http://www.chcf.org/publications/2013/07/data-viz-mental-health
位置的な情報が含まれているデータを表現とき、地図を塗り分けるのは非常に有効な手段だ。特にビジュアル的にアピールしたいとき、注目を集めたいとき、地図はぐぐっと人の目をひきつける。最近、地図を塗り分けたり、地図上に情報をプロットしたりすることが技術的に容易になってきているだけに、何でも塗りたい、地図で表現したい欲求にかられることが多々ある。

でも、地図で表現する以上に難しいのは、その「意味」だ。ただ地図を塗っても意味は無い。地理的情報を見せることで、メッセージが容易に伝わる、という意図がなければ、地図はほとんど意味が無い。

闇雲に地図を塗るのはやめよう。そう改めて思ったのは、冒頭の地図を見たからだ。この地図は、成人の精神疾患罹患率(赤)と貧困率(緑)、人口10万人に対する精神科医の数(青)でカルフォルニア州の郡を塗り分けている。これらの独立した変数の相関性を見るときに、地図を塗り分けた「可視化」は非常に役に立っている。

こんな風に表現できるよう努力しなければ。ただ塗るだけでは意味が無い(自戒をこめて)。


Mapping the Gaps: Mental Health in California - CHCF.org

2013/12/10

闘病記ライブラリー

自分が、家族が、病気になったら、たくさんの疑問がわき、たくさんの困難にぶつかる。そんなとき、同じ病気で過去に乗り越えた人たちの話は非常に役に立つ(結末がどうであれ)。そう思うようになったのは、自分が学生の時に家族が病気になり、身の回りで似た経験がある人に相談に乗ってもらったことが大きなきっかけだ。このときは、とても大きな助けになった。こんな風に、都合よく身近に似た経験をした人はなかなかいるわけではない。そこで参考になるのが闘病記だ。

闘病記には有名人の話やそうでない人の話、非常に多くあり、意外と選ぶのが難しかったりする。そんなとき、下のサイトは、病気ごとにまとめられていて、目次が見られたり、便利だ。何より、デザインがきれいだ。

闘病記ライブラリー(http://toubyoki.info/index.html

このようなネット上のライブラリーだけでなく、図書館で闘病記を1か所にまとめて並べていたり、病院内に患者向け図書室を用意していたりするケースもある。積極的に利用したいものだ。

2013/12/03

書評: 週刊 東洋経済 2013年 11/30号 特集「サプリ、トクホの嘘と本当」

昨年の今頃、サプリメント特集の雑誌2誌(週刊ダイヤモンドとTarzan)を取り上げ、内容比較をした。広告が混じってしまうTarzanと経済雑誌のダイヤモンドではだいぶ中身が異なっていた。
サプリメント特集の2雑誌、ここまで内容が違うのか!? - 医療、福祉に貢献するために
そして、直近の東洋経済、「サプリ、トクホの嘘と本当」というタイトルで、表紙にはハート型の薬が出ていた。
   

今回の内容で面白かったのは、サントリーウェルネス社など大手3社の費用構造比較。原価が低いことは何となくわかっていたが、相当に低い。そして、大半が販売広告費。確かにサントリーウェルネス社に限らず、どこも宣伝には相当力を入れている。物によっては、メーカー間で製品に大きな差はないのかもしれない。ゆえに、売れる売れないが宣伝広告に依存していることは容易に想像ができる。原価がかかっていないから悪い、という短絡的な考え方ではなく、お金がかけられている広告にだまされないよう、見る側も知識を付けなければいけない、というではないだろうか。

サプリメントは、通常、病気になってから摂り始めるものではない。健康なうちから、意識の高まりとともに摂取する。積極的姿勢の現れだ。(病気になったら、通常は医薬品に頼る) 先日ブログで書いた未病という考え方とサプリメントは相性がいいはずだ。今後、ますます拡大するであろうサプリメント・トクホ市場。売り手主導の拡大は、あまり好ましくないかもしれない。

2013/12/02

11月に読まれた記事TOP3

11月も多くの方がブログを御覧くださり、ありがとうございました。