昨日、『「学力」の経済学』の中で、全国学力・学習状況調査について、ばっさり切り捨てていることの1つ目の理由、教育生産関数にまつわる話を紹介した。今日はまず2つ目の理由を紹介したい。
一見網羅的な調査のように思えるものだが、実際は私立校があまり参加していないらしいのだ(以下の引用した文章を参照)。
実は、これには事情があります。全国学力・学習状況調査は、私立校も自由に参加してよいことにはなっていますが、まだまだ参加校が少ないため、実質的には「日本の小・中学生の学カテストの都道府県別順位」ではなく、ほぼ「日本の公立小・中学生の学カテストの都道府県別順位」となっているのが現状なのです。
この話、病院ランキングでもしばしば似た話がある。病院をランキングして、全国の1位から順に病院名を並べているのだが、そのベースとなっているデータは、アンケート結果やDPCデータであったりする。アンケート結果であれば、回答しなかった病院はランクインしないし、DPCデータであれば、DPC対象でないクリニックなどは漏れてしまう。
つまり、読み手の「背景を理解する力」が問われる内容であるのだが、そこまで分かっていてランキングを見ている人はほとんどいないのが実情だろう。『「学力」の経済学』でも同じような懸念が指摘されている。
学力の分析の本質は、アウトプットである学力とインプット -家庭の資源や学校の資源- の関係を明らかにし、何に重点的に投資をすれば子どもの学力を上げられるかを示すことにあるのです。しかし、私の知る限り、そのことを正しく理解している自治体や教育委員会は少なく、単純に都道府県別順位に一喜一憂してしまっているように見受けられます。
病院ランキングの問題点やどうすべきか考える上で、『教育』というまったく違う分野の内容が非常に参考になることがご理解いただけたら幸いだ。
明日は、この『「学力」の経済学』の話題の最後に、オープンデータの力について言及していた箇所を紹介しようと思う。
余談だが、全国学力・学習状況調査のデータを使って分析したことがある。
正直、そのような私立校があまり参加していないという背景まで理解せずにデータを使っていた。自分が「患者もヘルスリテラシーが・・・」といったことを言っている割に、専門外の教育に関しては、データの背景などまったく理解できていなかった。恥ずかしながら、これが現実だろう。改めて、専門家でない一般市民のリテラシーを高めることの難しさを感じた。