2017/04/12

単純比較は無意味 ~大学病院の死亡率比較~

ある原稿を作成している過程でボツにしたグラフ。

DPC公開データにより、入院医療における死亡率(最も医療資源を投入した病名で死亡したものと、それ以外の病名で死亡したものを足し上げた数値)と、救急車搬送症例の割合を見たもの。対象はDPC病院Ⅰ群(大学病院本院)である。

DPC病院Ⅰ群における死亡率と救急搬送症例割合の関係性(画像をクリックすると拡大します)
出所: DPC公開データ(2016年度公開、2015年度実績)を基に作成
各大学病院の死亡率の違いは、医療の質の違いと言えるか・・・と考える上で、疾患構成や年齢構成などの調整が必要なのは当然だ。ただ、そのような一般的な調整の必要性以前のレベルで、死亡率を単純に比較してはいけないことが、上のグラフから明確に見えてくる。死亡率は救急搬送症例の割合に強く依存していると言えよう。

救急搬送症例における死亡率とそうでない症例の死亡率が分かれば、比較に耐えうるデータといえるかもしれない。

このようなバイアスをうまく理解していなければ、誤った見方をしてしまう。ちなみにDPCⅡ群・Ⅲ群は、背景がばらばらすぎて、死亡率の評価は困難であった。それゆえ、Ⅰ群のグラフを出したというわけである。