医師事務作業補助者の加算点数の伸びは、人件費を十分まかなえるようになっていることから、給与に反映できるところはよりよい人材確保に、反映できないところは確保が難しくなるということを、先月のCBnewsの記事で述べた。
2020年度改定では、麻酔管理料(II)に次の文が加わった。
担当医師が実施する一部の行為を、麻酔中の患者の看護に係る適切な研修を修了した常勤看護師が実施しても差し支えないものとする。
医師事務作業補助者などをはじめとした他の職種への、医師からタスクシフティングはますます重要になる。そのとき、看護師や薬剤師といった専門性の高い、スキルの高いスタッフは、様々な領域でタスクを受けられるだろう。この麻酔管理料は、その象徴的な改定である。
麻酔専門の看護師はアメリカなどで活躍している。麻酔専門の看護師になるには2年以上かかるのが一般的なようだ(下記はその一例)。
The Master of Science in Nurse Anesthesia Program is for RNs who hold a bachelor's degree and wish to become certified registered nurse anesthetists (CRNAs). It is a 27-month, full-time, front-loaded program that includes a clinical anesthesia residency. Masters in Nurse Anesthesia | Columbia School of Nursingから引用
フルタイムで2年以上かけて学ぶには、金銭的な負担に加え、強い意思・高いモチベーションが必要だと思うが、その先には、高いスキルを医療現場で発揮できることに加え、それ相応の報酬があるのも事実のようだ。
下のグラフは、アメリカの看護師の年俸分布だ。麻酔看護師の中央値は1800万円程度(1ドル106円で計算)。正看護師(中央値750万円程度)の倍以上だ。同様にナースプラクティショナーもかなり高い。日本もすぐにでも同じにすべき・・・とは思わないが、なかなか大きな違いである。
同じく薬剤師の年俸分布。薬剤師は人数の比率も見て欲しい。薬剤師31万人に対し、テクニシャンが42万人いる。薬剤師とテクニシャンで業務分担しているから、薬剤師は年俸が高く、テクニシャンは低い。
病棟で対患者業務を中心にしている日本の薬剤師は、(そもそもの給与水準が違うから単純比較はできないとはいえ)1300万円くらいもらって然るべきなのでは?と思ってしまう。
なのに、病棟薬剤業務実施加算の届出は制度上難しい病院がある、その加算の点数が低いなど、薬剤師の報酬につながる原資となる診療報酬が少ない・・・といったことは、8月上旬のCBnewsに書いた。
財源がいくらでもあれば、「点数をあげれば、タスクシフティングが進められる」かもしれない。当然、財源には限りがある。では、どうしたらよいか。診療報酬制度の改定を待つのではなく、今できることを考えると、制約があるものの色々アイデアが浮かんでくる・・・。