2012/09/23

書評: よい慢性期病院を選ぼう

タイトルに「選ぼう」とあるので、一般市民向けの内容かと思って読んでみたものの、中身は完全に医療者・医療関係者向け。まるで、武久先生の講演を聞いているかのような内容。
説明の図表が多用されていて、かつ、明快なメッセージが詰まっている。今後の慢性期病院のあり方を通じて、日本の医療がどうなるべきか説いている。

在宅医療について、「在宅看取り死」が、診療所と病院の連携、お互いの信頼関係を醸成させることの阻害要因となっていて、同床異夢だ、と指摘している。その解決策として、診療所同士のネットワークではなく、在宅療養協力診療所(主治医)、および、在支診と在支病が、トライアングルで助け合い、そして、在宅療養後方病院が緊急時の受け入れをサポートし、短期間で在宅へ帰し、トライアングルの中で継続して診ていくことを提案している。

『慢性期開放型病床』というのは、分かりやすい具体的な形かもしれない。

今後、在宅を進めるという方針において、深く考えなければならないのは、在宅をする医師・コメディカルだけでなく、高度急性期を始めとした、それ以外の医療のあり方も然りであると改めて感じた。

この本、残念ながら、一般市民向けではない。
最後に出てくる臨床指標も、医療者が理解し、取り組まなければならない方向性が整理されている。よくありがちな「よい病院ガイド」ではない。

医療者で、かつ、武久先生の講演を聞いたことがない人にとっては、非常に良い本だと思う。

よい慢性期病院を選ぼうよい慢性期病院を選ぼう
武久 洋三

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