日経の今朝の記事では、厚労省の見解、という形で、医療費の増加要因は、高齢化だけでなく、技術の高度化が寄与しており、寄与度では、技術の高度化の方が大きな影響である、と紹介している。
技術の高度化は、医療を受ける市民目線で言えば、歓迎であるものの、費用を負担しなければならないもう一方の市民目線では、諸手を挙げて歓迎できるものではない。
日本の医療産業・製薬産業の発展、進展にも密接ゆえ、市民目線だけではいけない事情もあるだけに、事態は複雑だ。
また、記事には、下記のように、調剤薬局チェーンが医療費を押し上げた、と触れている点も興味深い。
「調剤薬局チェーンの台頭も医療費を押し上げた可能性が高い」(医療政策にくわしい民主党議員)。厚労省は「お薬手帳」による患者への情報提供や後発薬の普及などに関する調剤薬局の診療報酬を加算し、医薬分業を推し進めてきた。これが「門前薬局」の売り上げ増につながっている。同省は次の診療報酬改定に向け、因果関係を分析する。
調剤による保険財政の圧迫をやわらげる一案は、市販薬の普及拡大だ。「生活習慣病などの治療に薬局・薬店が果たす役割は大きい」と語る大正製薬の上原明会長は、自己採血など簡便な検査を店頭でできるようにし、患者に的確に助言する専門知識をもつ「認定薬剤師」を新設する規制改革を提唱している。
調剤薬局はビジネスであるため、利益をあげることは否定しないが、診療報酬によって成り立つビジネスをしている以上、適切な利益かどうか、特に、提供しているサービスに見合った報酬を得て、利益をあげているか、厳しく見なければならないのではないだろうか。
門前薬局、調剤薬局チェーンが大きな利益をあげている一方で、地道な取り組みをしている薬局もあるだけに、幅広い視野を持って見ることが求められるはずである。
医療費の増大は単純に良い悪いを決めることができない問題だ。ただ、ひとつ明確なのは、費用の増大に伴い、その医療の内容・質の向上が伴っているか公平に評価できなければ、日本にとって幸せな未来はない。
なので、その観点で「認定薬剤師」を考える分には良いが、薬剤師がいかに高い診療報酬を得るには、と考えてしまうと、相当厳しい未来が待ち受けているのではないだろうか。
2012/10/23 日経 朝刊 「医療費うなぎ登り、意外な主因――治療・薬にイノベーション(真相深層)」