2013/07/03

生殖医療の進歩と社会的な受け入れ機能の強化

■生殖医療は身近な話題だ

生殖医療は「近年、目覚ましい進歩を成し遂げている」という人と、「この10年大きくは変わっていない」という人がいる。どちらもそれぞれの立場での意見なので、間違っていないように思う。そして共通しているのは、生殖医療を良く理解している人たちである。

一方で市民はついてきているか?というと、どうも怪しい。生殖医療は一部の悩める人の話題であって、縁がないという人が大半なのではないだろうか。クラスの1人は体外受精で産まれてきているというのに、である(クラスの1人~については、以前のブログ参照)。

また一方で生殖医療を知ろうという動きは、「生殖医療をなぜ市民が知らなければならないか」「他の医療よりも重要なのか」という疑問からスタートして、次第に議論は収束しなくなり、「社会保障制度との関係は」、果ては「国民とは、国家とは」となり兼ねない。

産む権利・産まない権利・自由が保障され、産みたいけれど産めなかった人が冷遇されず、産みたい人が生活しやすく、そして、産まれてきた子どもが幸せに・・・と考えていると、医療の範疇を超えることは確実だ。このように俯瞰的に社会をとらえ、多様性を受け入れることを考えるときに、生殖医療は非常に良い切り口だと思う。

■知ることからスタート

女性手帳がマスコミに取り上げられ、世間を騒がせたのは記憶に新しい。なぜ批判されたのだろうか。手帳を配るという前時代的発想が批判を受けた。女性だけに配るのはおかしいという批判もあった。産むことを国が決めているようでおかしい、自由を奪い個々を尊重していないという批判や、「産めや増やせ」と戦時中を想起させるという批判もあった。また、みんな不妊のことなんて知っているという批判もあった。

ひとつひとつの批判はもっともだ。でも不妊の現状、生殖医療の現状を知っていたら、少し批判も変わった気がしてならない。生殖医療の現場から聞こえてくるのは、産むのに適したタイミングと、適さないタイミングでのリスクの理解が不十分であることだ。さらには医療の技術がどれだけ進歩しても、心に空いた穴まで埋めてくれないかもしれない。臨床心理士の話などを聞いても感じることだ。

これからどういう社会を作っていくか。どうすべきか考える上で、重要と思われることは、様々な知識を身に付けることだと思う。

■良書から学ぶ

何から読むべきか、迷った時の参考になるかどうか分からないが、少子化で2冊、不妊で2冊、取り上げた。この4冊は、どれもそれほど厚い本ではない。これらを読んだ後、足りないと思ったところを広げたり、深堀りすればよい。

少子化について



なぜ少子化が進んでいるのか、海外と日本は違うのか。少子化は悪いのか。これらを理解すること、情報を読み解く力を身につけられる。


不妊について


2冊とも不妊治療に携わっている医師が書いている(片方は医師と共著)ので、現場の危機感が伝わってくる。「間違いだらけの~」では、倫理的側面や不妊治療からの卒業などセンシティブなことにも触れている。先日出版されたばかりの本で、amazonにはコメントも載っていないが、非常に良い本だと思う。



■テレビから学ぶ

テレビ番組は30分、1時間でコンパクトにまとまっていて、映像が流れてくると情報量も多く、刺激が強い半面、正しいか正しくないか判断しにくくなる(自分だけか??)。

とはいえ、30分程度で最新の情報を得ることができるのは、非常にありがたい。特にNHKの番組では不妊社会をテーマにした番組を多く作っているので、参考になる。

まだまだこれらの情報だけではバランスが悪いかもしれない。
でも、何も考えていないのであれば、まずこの4冊、そしてテレビ番組を見てもらいたい(NHKオンデマンドとかで見られる?)


最後に、吉村先生の本のあとがきに、そのとおり!と思った一文がある。
高齢出産について考えると、妊娠や出産に伴う医学的・社会的問題点を網羅的に把握できることには、私自身が驚きました。吉村泰典著「間違いだらけの高齢出産」 あとがきから引用)
参考にしていただければ幸いである。


(2013/7/3 12:40 誤字脱字を修正しました)