来る4月の診療報酬改定、新しい取り組みが始まろうとしている。その一つが低妥結率に対するペナルティだ。
出所:平成26年度診療報酬改定の概要(平成26年2月12日版(未定稿)) |
■突然の3割引きに喜ぶ国民??
同じことをレストランで考えてみよう。食材の仕入れ価格は食材卸と交渉で決め、低妥結率の場合、消費者物価指数の調査の妨害をしたということで、メニューの価格を30%引きにしなければいけない、というルールが出来たとしよう。Aレストランは、食品卸が米の仕入れ値をゴネたせいで、妥結率が低くなってしまった。これにはAレストランが通常キロ300円のコシヒカリをキロ200円で納入しろ、という無茶を言い続けたことも理由のひとつだが、卸がブレンド米でキロ280円までしか妥協できなかったことも大きな理由だ。これが理由でAレストランは、800円のカレーライスが突然560円になった。もちろんカレーの量もライスの量も変わっていない。
一方、Bレストランは、妥結率が低くなることを恐れ、同じ食品卸からキロ300円でコシヒカリを買うことにした。おかげで800円のカレーライスは800円のままだ。
カレー560円のAレストランと、800円のBレストラン。客からしたら、Aレストラン大歓迎だ。
あれれ、これは誰に対するペナルティで、誰が得をするのだ?? あるべき姿は、800円という値段を変えるのではなく、800円の30%分である240円を国がAレストランと食品卸から徴収するべきなのでは??
■診療報酬は変えず、ペナルティを徴収する(+インセンティブを与える)仕組みを作るべき
医療機関へのペナルティは、この低妥結率に限らず、DPCのデータ提出遅延など様々なものがあるが、いずれも患者への請求額を減らす仕組みばかりだ。医療の質を損ねてしまうもののペナルティは患者負担を減らすべきだと思うが、そうでないペナルティは、患者負担を減らすべきではない。何もかも診療報酬でコントロールしようとするのはあまりにも乱暴でないか。そして、調査協力などへのインセンティブはこのペナルティでプールしている財源から支払うのも魅力的だ。直接の医療の質を高めるような取り組みであれば診療報酬にオンしてよいが、そうでないものは患者から診療報酬として徴収するのは適切とは言えない。
しかし、なぜこんな制度になってしまったのだろうか。もし、低妥結率でお得な病院ができたら、いっそ、ここで紹介しようか。何せ初診料で700円以上(自己負担3割で200円以上)違うのだから。
ちなみに、この低妥結率に対するペナルティはバイイングパワーが圧倒的に強い大手調剤薬局チェーンの暴利を狙った施策だという話も聞こえてくるが、だからといってペナルティで患者負担を軽減させる合理性はない。