2015/11/03

Back to the Futureと日本医師会のグランドデザインの共通点

Back to the Future、懐かしい。そもそもあまり映画を観ない自分なのに、何度も観た数少ない映画のひとつだ。Back to the Futureで飛んできた未来がいつだったか、なんてさっぱり忘れていたが、2015年であることを先月のニュースなどで思い出させてくれた。

そんな2015年であるが、日本医師会が2000年に発表したのが2015年 医療のグランドデザインだ。

2015年 医療のグランドデザイン
少子高齢化時代への突入に向け、どう備えれば良いのか、様々な視点で述べられている。ガイドラインでは、市町村単位での国保では保険者機能を十分に果たせない等の課題指摘もなされており、15年の月日を経て、ようやく制度が変わろうとしているのだなぁとしみじみ思った。

ガイドラインの書かれた2000年は、介護保険制度が誕生したタイミングだ。それゆえ、今後の動向なども十分読み切れない時代ではあったと思われるが、2015年に向け、医療・介護需要、必要な医療者数などを推計している点は非常に興味深く読むことができる。推計数値のあたりはずれといった正確性を検証することが目的ではなく、どのようなことを課題としていたかが興味深い。ただ、あまりにも大外れな数値は気になってしまう。保険薬局の数とか「あまり増えないだろう」と述べていたが、実際はその後も伸び続けた。

印象的な一節を紹介する。
今回、われわれが「2015年医療のグランドデザイン」を描くに当たって推計した国民医療・介護費は、厚生省の極めて無責任な医療費予測に対するアンチテーゼの意味も含んでいる。 (第5章 医療・介護サービス費用の将来推計 から引用)
この『極めて無責任な医療費予測』とは、平成6年公表の「21世紀福祉ビジョン」における2025年国民医療費141兆円のことを指している。この141兆円は平成5年の医療費24兆円をベースに1人あたり医療費が年率4.5%伸びることを仮定している。2000年までの経済成長率が4~5%であったことを根拠にしているようだが、平成12年には「社会保障の給付と負担 の見通し」で81兆円に、そして、平成18年には65兆円に見直している。

この金額についても、当たり外れの議論はあまり意味がない。肝心なのは、当時、人口動態から将来の問題を推測し、それに備えるためにすべきこととされた内容を知ることで、現状、どのような状況になっているかである。後期高齢者医療制度に対する提案は、財源を分けることに加え、独自の診療報酬支払制度を構築することにまで言及している。入院医療については、急性期は出来高、慢性期は包括制度にし、国民の合意を形成しながら、医療費の増加に歯止めをかけるべきと述べている。では、実際、医療費の歯止めはできているのだろうか?と考える時に、ニュースレベルでは総額しか分からない事が多い。医療単体で見るのではなく、介護も併せてみるべきということも一層問題を複雑にしている。

国民医療費、初の40兆円超 13年度確定値2.2%増  :日本経済新聞

しかし、いずれにしても、どのタイミングで、どのような課題が認識され、どのような検討がなされたのか理解することは価値がある。ちなみに医師会は2007年、2009年にもグランドデザインを発表している。

このような過去からの経緯、歴史を知っていることは将来の課題を考える時に大事である。これは自分に大きく足りない点であり、自分が尊敬する方々にかなわないことのひとつだ。過去の経緯を知るのに、タイムマシンはBack to the Futureの世界(もしくはドラえもんの世界)にしか存在せず、昔の時代を肌身で感じることはできない。しかし書物などで過去の経緯を読むことはできる。また、このグランドデザインのようにインターネット上で資料を読むことができる時代であり、恵まれている。それだけに努力せねばと痛感する。


Back to the Futureも医師会のグランドデザインも「2015年」が共通だった。

え、まさか、それだけ?? それだけです。