2024/11/07

安い米を食べたい・・・の反省

CBnewsで、先日、日病協の仲井議長の記者会見のことを報じていた。

診療報酬の評価「プロセス主体」に、日病協議長 - CBnewsマネジメント

今後、少子化で人員確保が厳しくなることが想定される。そのため、限られた人材で質の高い医療を提供するには、人材育成やICTへの投資などを積極的に行うことが重要になるだろう。

現行の診療報酬制度は、決まった職種・人数の配置を要件とする項目が多い。このような基準は、質を担保するための最低限の基準として存在する意味はある。しかし現実は、多くの基準は高いハードルで、何とかクリアするために医療機関が四苦八苦している。

加えて、財源の見通しも厳しいことを踏まえれば、今後、医療機関側に充実した人員配置を求めるのに適正なコストは負担できない、といった主張・要求は通用しなくなるだろう。つまり「プロセス主体」に評価を変えるのは、医療機関側の意識は当然大事だが、保険者が意識を変えなければならないと考えている。例えば、人員配置の要件はICT活用などを前提に緩和していく仕組みが介護保険の改定で導入されたが、これは早晩診療報酬にも導入されるだろう。


そして、ストラクチャーからプロセスの評価だけでなく、アウトカム評価もまた重要である。

そのことを意識したのが、今回のCBnewsに掲載いただいた記事。

採算の取れない救急患者連携搬送料、なぜ届け出る? - CBnewsマネジメント

病床の高回転化を促すのであれば、高回転=高収益、にすべき、というのが主張。高回転=低収益&疲弊、の現状は極めて重大な問題である。

なので、救急患者連携搬送料の点数を10倍にすべきと事あるごとに言っている。さすがにそれは無理かもしれないので、効率性係数を5倍に、と少し現実的な提案で締めくくった。効率性係数を大きく引き上げれば、高回転と高稼働の両立を目指せればベスト、高回転だけでもベター、となる制度が作れる。高稼働を目指せるかどうかは人口動態などの地域性も大きく関係する。そのため、高稼働は今後多くの病院が共通して目指せる目標にならない。

高回転を実現するための人材育成やICTへの投資をすべきなのに、今、その戦略をとっても収益性はあまり改善しない。むしろあの手この手で高稼働を目指した方がよいのが現実である。財務的に余裕のある医療機関では(そんなところはほとんどないが)、人材やICTなどへの投資を行っているのは、少し先の未来を見据えているに違いない。

ただ、週末、高回転化で何か失うことがあるのではとも考えていた。効率性ばかりを追い求めることで、温かみが薄れてしまうのではないかとも。というのも、散歩していて稲架かけを見かけた(下の写真)。

週末の散歩で見かけた稲架かけ

「安い米を食べたいくせに、この風景も残したい」は虫のいい話だなと思った。

2024/10/24

セミナーのご出席ありがとうございました & 建築単価高騰の影響分析

建て替え困難な診療報酬設定は意図的か - CBnewsマネジメント

建て替えすべき時期が到来しているのに、建築単価高騰などが影響し、建て替えを先延ばしていることを示したかった。想定通りのデータ分析結果が得られたので、ほっとした。

なお設立母体や病床機能、入院料、地域など、さまざまな切り口で分析したものの、データが限られていたせいか、あまり示唆が得られなかった。CBnewsの記事に載せたグラフは、何かしら意味があると思ったものたち。

オープンデータの分析が得意領域のひとつである弊社は、仮説・分析・検証みたいな流れが延々と続く。分析結果には、当たりもあれば、はずれもある。はずれには、仮説が間違っていることもあるし、分析や検証の仕方が間違っていることもある。はずれたものであっても、共有する意味があるものは、CBnewsの原稿などで書くこともあるし、クライアント向けに話すこともある(ディスカッション材料としてクライアントも好意的に受け止めてくれる)。

このようなデータ分析ばかりしている弊社だが、昨日は新社会システム総合研究所主催のセミナーで、データ分析の話をさせていただいた。個人的な感想としては、メデュアクトの流石氏の話が非常に勉強になったので大収穫・大満足。また、ご出席の方々からの鋭い質問などで、こちらも考えが整理されるなど大変勉強になった。

新社会システム総合研究所のみなさまには、セミナーの企画から実施、またこのあとのオンデマンド配信まで、大変お世話になりました。ありがとうございました。

また、お足元が悪い中、わざわざ現地まで足をお運びいただきご出席くださった方々や、ウェブのライブ受講の方々、また後日オンデマンド配信で受講くださる方々など、数多くの方々にご出席・お申し込みいただき、ありがとうございました。


2024/10/22

タバコの箱で大きさを比べるのは時代錯誤なのか・・・

先週末、CBnewsと医業情報ダイジェストの原稿を仕上げた。どちらも病床機能報告のデータを分析。CBnewsは明日掲載予定。医業情報ダイジェストは来月15日号。


前者は建て替え、後者は救急救命士がテーマ。救急救命士は興味深いデータが見られるので、みなさんも病床機能報告をチェックすることをおすすめしたい。

具体的にどうみたらいいの? なぜおすすめなの?という疑問には、医業情報ダイジェストの記事をお読みください!なのだが、分析結果の一例は下のグラフ。


病床機能報告(2023年度報告)を基に作成
※救急救命士の人数は常勤・非常勤(常勤換算)の合計。人数が0人の施設は集計に含まない

この施設は何人いるんだろう?、あの施設は何人だろう?と見てみるだけでも十分興味深いが、上のグラフのような情報が頭に入っていると、比較整理しやすいと思う。


話は変わるが、何の情報もなく下記の写真を見たとする。立派な建物がある。武蔵国府の国司館(こくしのたち)を復元したものだ。写真だけでは、大きさが分かりづらいはずだ。

今月訪れた武蔵国府跡

実際には10分の1サイズの模型なので、それほど大きくない。人が一緒に写っている新聞記事((まちの記憶)武蔵国府跡 東京都府中市:朝日新聞デジタル)を見れば、大きさがわかりやすい。

救急救命士も同じで、うちは2人いる、3人いるといったところで、それが多いのか、少ないのか分からない。平均値で見ても情報は十分でないかもしれない。しかし、ヒストグラムなどをあわせて見れば、相対的なポジションが分かりやすい。朝日新聞の記事は、人が一緒に写っているので大きさを把握しやすい。

そういえば、大きさ比較でタバコの箱を横に並べるのって、最近見かけないなぁ・・・。このご時世、タバコはNGなのか??