2021/10/28

データ提出、行政や各種団体の調査・アンケートなど、負担が増えるばかり・・・

昨日CBnewsに記事を掲載いただいた。

メリットがなければデータ提出は進まない - CBnewsマネジメント

通常、朝5時に掲載されるらしいのだが昨日は12時に。(原稿を出すのが遅かったり、こちらの不手際があったりしたわけではなく、あらかじめ今回は12時になると聞いていた)

今回のテーマはデータ提出。中小病院は特に負担が重い。なのでインセンティブとかメリットとか、もっと打ち出そうよ、というのが主旨。

データ提出に限らず、病床機能報告などの行政からの調査、病院団体や職能団体からの調査・アンケートなどなど、年中、院内で数値をまとめているのではないか・・と思うくらい、どの病院でも負担になっている。

中小病院では、データ提出などの業務を担当する人がそもそも少ないので、当然、負担が重い。一方、大病院が軽いか・・・というとそうでもない。そのような突発的な業務に対し、決まった担当者がいないところも多い。ゆえに「困ったときの○○さん」みたいに融通の利く人に作業依頼が集中する。すると、大病院でも、その融通の利く人の負担は増すばかりに。

働き方改革、DX、みたいなことを推進するなら、まずその辺りの負担軽減じゃないのか?と思う。負担軽減が難しいのならば、せめて報酬や、病院にメリットを感じてもらえる仕掛けが必要だろう。

2021/10/27

記事に「平均年齢が同じでも格差があった」と書かれるようになったのは気のせいか

以前ブログで引用した肺がん(格差2倍は本当か? - 株式会社メディチュア Blog)に続き、胃がんや大腸がんも記事になっていた。

胃がんと大腸がんでは、タイトルに書いたとおり「平均年齢が同じでも格差があった」と付け加えられるようになった。格差があることを主張したい気持ちは分かる(みな同じじゃ、誰も読んでくれないだろうから)。ただ、リスク調整しない5年生存率の「比較」はあまりに読み手に理解力が求められる。数値が並んでいれば、比較されていれば、そこに良し悪しを考えてしまうにも関わらず、その説明はあまりにも簡単に済ませている。

なおリスク調整は、平均年齢だけではわからず(平均70歳でも、40歳と100歳の組み合わせと、70歳ふたりの組み合わせは意味が違う)、基礎疾患などの背景も重要。

肺がん同様、胃がんと大腸がんも生存率係数と平均年齢の関係をプロットしてみた。生存率は年齢に大きくひっぱられているという当然の結果に。「平均年齢が同じでも格差があった」 と主張したいなら、基礎疾患などのリスク調整をした上で、平均年齢が同じ施設間で生存率に差があった、違いは治療内容だった、という論理構成にしないといけないのだが。



ただ、がん診療の先駆的な施設のコメントや、下記のような考察(大腸がんの記事)は興味深い。

治療成績が上位の病院では、進行がんも可能な限り外科手術で切除し、抗がん剤や放射線治療を組み合わせて再発を防ぐ治療に積極的に取り組んでいた 
やはり、積極的な手術や再発予防の治療ができているのは、年齢が若く体力があり、基礎疾患などのあまりない患者が多いのでは?、というリスク調整の重要性を再認識する考察である。また、肺がんの記事同様に、胃がんの記事においてがん専門病院の医師が、基礎疾患の有無が影響していることに言及している。

自分もランキング好きなので、こういった記事がキャッチーであることは否定しない。でも、これを何もかもわかっている専門家の議論に使うのと、あまりわかっていない一般市民に読ませるのとは、まったく意味が異なる。

余談だが、週刊現代(読まなきゃよかった、想像以上にひどい内容 がん5年生存率の週刊誌的取り上げ方)のように、悪意の塊のような記事でなければ、まぁいいか・・・。

2021/10/14

心電図モニターは「看護必要度」ではOKでも、「重症度、医療・看護必要度」では・・・

CBnewsに新しい記事を掲載いただいた。

心電図モニター装着は看護必要度の評価から外れるのか - CBnewsマネジメント

今回の記事でも引用したが、4年前の下記CBnewsの記事をお読みいただくと、看護必要度と単価から、ミスマッチになっている患者像と、その患者たちは改定次第では厳しくなることを述べてきた。

看護必要度の厳格化は慎重を期すべき - CBnewsマネジメント

結局のところ、看護師の業務負担を定量的に評価する「看護必要度」を、急性期の入院料の要件である「重症度、医療・看護必要度」として使おうとした時点で、まったく別の進化をしはじめていて、もともとの「看護必要度」だった部分は、急性期の入院妥当性の評価としてはおかしいね、みたいな議論になってしまっている。

結局、心電図モニターはその狭間でどうしましょうかというやり玉に挙がったと理解している。

あくまでも私見だが、現状の「重症度、医療・看護必要度」を細かく手を入れていくのなら(まだまだ矛盾などが見つかってくるわけで)、いっそ、シンプルなものに作り変えた方がよいのではと思う。以前提案した、B項目は廃止、A・C項目の現行評価をベースに、DPC包括点数に反映、看護必要度自体は廃止。入院料は、診療密度(出来高部分も含む)で2段階、看護配置で加算、あわせて3段階くらいにして良いと思う。当然、コロナ禍でそんな大胆な改定は絶対にないと思うが。

2021/10/11

無償化の分析と論理構成、非常に参考になります

一読の価値あり。

無駄な医療費を増やす 「無償化」の思わぬ悪影響 | 子ども医療費無償化で「健康な子ども」の不要な受診が増える | 経済学者が読み解く現代社会のリアル | 週刊東洋経済プラス

(上記ウェブサイトはログインが必要。今週の週刊東洋経済の紙面でも同じ内容が読めます)

記事に出てくる「効果が高い医療」「効果が低い医療」の定義が興味深い。10年以上前から、小児医療の分析をしてきた実感とも一致。

コロナ禍で小児科の受診が激減したことなどにも触れていただけたら、さらに興味深かったか。

医師会は? 無償化を積極的に進めている政党は? などなど、色々な反応が想定できる。当然、感情的な反応ではなく、Evidenced Based Policy Makingの基本として、これを否定するようなデータを持って、議論すべきだろう。

自分の分析が小児の軟膏や内服の抗生物質の処方件数・処方金額(先発品・後発品、品目別、月別)を見ながら、所詮は感情に訴えるようなことにとどまっていたことを反省。・・・というか、そもそもメジャーリーガーと、空き地でキャッチボールしているこどもくらいの違いがあるので、比べる事自体がおこがましい。