2018/03/30

再入院率と特定抗菌薬の使用状況に関係性はあるか?

特定抗菌薬の使用量が多いところは再入院が多い??
グラフではそんな関係があるように見える。

再入院率と特定抗菌薬の使用量の関係(クリックで拡大します)
出所:DPC公開データ(2017年度公開 2016年度実績)を基に作成

しかし、散布図で見て、そのような傾向があるからといって、因果関係があると判断するのは早計だろう。

以前、CBnewsの記事で述べたが、再入院率には疾患構成が大きく影響していることが想定される。

高回転化の促進に必要な再入院率の評価 - CBnewsマネジメント 高回転化の促進に必要な再入院率の評価 - CBnewsマネジメント
つまり、疾患構成が少なからず抗菌薬の使用量に影響しており、疾患構成が再入院率に影響しているため、あたかも、抗菌薬の使用量と再入院率に関係性があるように見えていると考えられる。このような疑似相関の可能性が考えられるケースでは、疾患構成が同じ病院だけを対象に、抗生剤と再入院率の関係を見なければならない(様々なオープンデータにおける疾患構成の影響を排除した評価は、今期の弊社分析課題のひとつ)。


2018/03/29

他院との差異を把握し、特徴を理解するトレーニング

院内ディスカッション用資料。

(当時)DPC病院Ⅰ群・Ⅱ群の病院において、他院や介護系施設への退院割合が高いところはどこか見てみた。

退院先の症例割合 (クリックすると拡大します)
出所: DPC公開データ(2017年度公開 2016年度実績)を基に作成

数値の意味を考えるトレーニング。
何が見えてくるか。良い悪い?特徴?

2018/03/28

療養病棟を看護必要度(一般病棟用)で評価してみた

直近4ヶ月間ほどセミナーで申し上げてきた急性期病棟における看護必要度評価の問題点について、議論を促すきっかけとなるデータが示せたと考えている(自画自賛ですが、お許しを)
以下、論点。うまく整理できなかった。ごちゃごちゃしているので、せめて箇条書きにした。
  1. 「急性期病棟で評価される患者」が療養病棟にいる⇒これ自体では問題にならない
  2. 「療養病棟に多くいる病態の患者」が急性期病棟にいる⇒ちょっと問題かもしれないが、転院・転棟直前等は致し方ない
  3. 急性期病棟で看護必要度の基準を満たしている患者の多くが「療養病棟に多くいる病態の患者」である⇒問題か?
3点目の議論を促すには、療養病棟の患者について、看護必要度で評価してみればいいのでは?というのが、今回の記事である。

看護必要度のB項目については年末年始にトライアルしていた内容等を踏まえ、推測している。(荒っぽい手法で正解はないので推測の域は出ないが、今回の記事内容であれば、大方、問題ないはず。この精度検証・向上は弊社の今後の課題。うまく課題をクリアできれば、B項目の変動が大きい回復期リハ病棟などでも同様の評価が可能になると考えている)

ちなみに、記事にはできなかったが、療養病棟の医療資源投入内容についても精査した。検査・画像診断の内容・頻度は急性期病棟とまったく異なるように感じた(定量的な評価はまだ難しい)。今後は、このような観点でも分析をしていきたい。

2018/03/27

九州だけ傾向が異なるのはなぜ? 文化? 病床数の多さ?

大学病院本院からの退院症例について、他院への転院割合を比較した。各都道府県に複数の大学病院本院がある場合は、症例数で加重平均している。

退院症例の転院割合(色が濃いほど、転院比率が高い) 単位:%
出所: DPC公開データ(2017年度公開 2016年度実績)を基に分析

西高東低。九州は文化が違うのか? 大学病院の経営を考えるときに、地域性があることを示唆している。

2018/03/23

医療機関別係数が増えたのはどこか ~当たり前のことを確認~

2017年度の重症度係数が低かったところは、機能評価係数Ⅱ(暫定調整係数と激変緩和係数の変動も含む。以下、同様)が大幅にアップし、


2017年度の後発医薬品係数が低かったところは、機能評価係数Ⅱがややアップし、


2017年度の暫定調整係数が低かったところは、機能評価係数Ⅱがアップした。
当たり前だ。当たり前のことをデータで確認できた。

2018/03/22

激変緩和係数の試算は適切だったか

以前、激変緩和係数を試算したことについてブログで述べた。

暫定調整係数のゾンビ化 激変緩和係数はそこそこ大きい値に - 医療、福祉に貢献するために 暫定調整係数のゾンビ化 激変緩和係数はそこそこ大きい値に

先日、その数値が公表されたため、検証を行ってみた。

激変緩和係数が掲載されている告示

厚生労働大臣が指定する病院の病棟並びに厚生労働大臣が定める病院、基礎係数、暫定調整係数、機能評価係数I及び機能評価係数IIの一部を改正する告示
平成30年厚生労働省告示第71号
http://www.mhlw.go.jp/file.jsp?id=531860&name=file/06-Seisakujouhou-12400000-Hokenkyoku/0000198300.pdf
http://www.mhlw.go.jp/file.jsp?id=531862&name=file/06-Seisakujouhou-12400000-Hokenkyoku/0000198301.xlsx


検証結果は下のグラフのとおり(画像をクリックすると拡大されます)。

激変緩和係数の試算値(縦軸。2017年度機能評価係数Ⅱ等をベースにした独自試算値)と
2018年度の実際の値(横軸)

まぁまぁの精度で試算できている。激変緩和係数がそこそこ大きな値になるのでは?と述べていたとおり、大きな値になっていた。もちろん、色々な前提を置いているので、ずれが生じたところは、前提をくつがえす「何か」があったと推測される。特に、疾患構成が大きく偏っている病院では、この「何か」が生じやすいはずで、なかなか興味深い結果になった。

激変緩和係数は1年限り。真の公平さのスタートは来年度からだ。

追記: 上記グラフには、特定病院群に移った音羽病院、福井県立病院を含めていない。もし群移動していなければ、前者は3~4%程度さらに大きなプラスの激変緩和係数に、後者は激変緩和係数がつかないと思われたがマイナスの激変緩和係数に、それぞれなっている

2018/03/20

2018年度、特定病院群になったところ(社内用メモ)

社内用ですが、ブログに。
(ミスがあったら、こっそり教えてください)

【2018年度、特定病院群になったところ】
北海道 市立札幌病院
北海道 医療法人徳洲会札幌東徳洲会病院
北海道 社会医療法人製鉄記念室蘭病院
茨城  株式会社日立製作所日立総合病院
茨城  総合病院土浦協同病院
茨城  公益財団法人筑波メディカルセンター筑波メディカルセンター病院
群馬  SUBARU健康保険組合太田記念病院
埼玉  社会医療法人財団石心会埼玉石心会病院
埼玉  埼玉医科大学国際医療センター
千葉  国保直営総合病院君津中央病院
千葉  公益社団法人地域医療振興協会東京ベイ・浦安市川医療センター
千葉  船橋市立医療センター
千葉  国立研究開発法人国立がん研究センター東病院
東京  独立行政法人国立病院機構東京医療センター
神奈川 社会福祉法人恩賜財団済生会支部神奈川県済生会横浜市南部病院
神奈川 社会医療法人財団石心会川崎幸病院
神奈川 横浜市立市民病院
福井  福井県立病院
岐阜  大垣市民病院
静岡  総合病院聖隷三方原病院
愛知  一宮西病院
愛知  愛知県厚生農業協同組合連合会江南厚生病院
京都  医療法人徳洲会宇治徳洲会病院
京都  医療法人社団洛和会洛和会音羽病院
大阪  医療法人徳洲会岸和田徳洲会病院
大阪  大阪赤十字病院
大阪  地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪急性期・総合医療センター
大阪  宗教法人在日本南プレスビテリアンミッション淀川キリスト教病院
大阪  りんくう総合医療センター
大阪  堺市立総合医療センター
山口  済生会山口総合病院
香川  高松赤十字病院
高知  社会医療法人近森会近森病院
福岡  福岡赤十字病院
福岡  社会医療法人天神会新古賀病院
鹿児島 鹿児島市立病院

東京モノレールの広告を眺めながら病院の戦略を考える

駅や空港で病院の広告を見かけるのは珍しくない。どういう意図があるのだろう?、ターゲットは誰だろう?、と考えながら眺めることが多い。

今朝、東京に戻ってきてモノレール車内で見かけた岡山大学病院の広告。

羽田空港からのモノレールで見た岡山大学病院の広告
岡山大学病院の上の広告はビジネスホテルだ。これなら目的がはっきりしている。

でも、モノレールに岡山大学病院。非常に興味深い。

追記: 東京モノレールのデータが株式会社モノレール・エージェンシーのウェブサイトに⇒ databook2017.pdf

2018/03/19

中身が問われる時代の病院の可視化 ~全麻件数から自院の立ち位置を考える~

急性期病院において、将来にわたり評価が続くであろう「高い看護必要度」を維持するためには、侵襲度の高い手術に代表されるような高診療密度の医療提供が求められると考えている。内科系の診療内容はデータからの評価が難しいので置いておくとして、外科系は全麻件数がひとつの目安になる。

DPC算定病床100床あたりの全麻件数が多いか少ないかプロットした。
DPC算定病床あたりの全麻件数比較(クリックすると拡大します)
※DPC算定病床数は公開データの施設概要表の数値であり、DPC算定しているか否かではない。またDPC算定病床数100床以上の病院のみプロット
100床あたりの件数が多いところや少ないところには病院名を指し示してみた。病床数の少ないところでは、人工関節置換術等の整形系の病院が目立つ。いずれの病院も病床高回転型の有名病院と言えるだろう。大病院では、がん研有明のような専門病院も目立つが、それ以外も興味深い。また、DPC算定病床数が多い病院の中で全麻件数が相対的に少ないところも興味深い。

診療報酬改定により、急性期病床はいかに稼働率を向上させるだけでなく、どのような疾患・病態の患者でベッドを埋めるか問われる時代になってきている印象だ。

なお、全麻件数だけで病院の良し悪しは判断できない点にはご留意いただきたい。

2018/03/14

後発医薬品係数のおかげ?

DPC公開データで、DPC算定病院とそれ以外の病院の後発医薬品使用割合を比較してみた。数値が不明な病院は含んでいない。

一目瞭然。DPC病院は80%のところに高い山がある。一方、DPC以外の病院では、80%のところに山はあるが、あまりにも低い。なだらかに低い比率の病院が多くあることが分かる。

機能評価係数Ⅱに組み入れたのは、効果的だったということだろう。

2018/03/13

特定抗菌薬の使用状況可視化で考えるデータが開示されることの意義 ~透明性の向上~

先日のDPC公開データで新たに含まれたものとして、特定抗菌薬の使用状況のデータがある。公開された内容や意義については、DPC評価分科会の資料に詳しい。

出所: 厚労省 中医協 DPC評価分科会資料 D-1参考機能評価係数Ⅱについて

公開データで、同様にグラフ(65歳以上のデータ)を作ると、下記のようになった。
出所: DPC公開データ(2017年度公開、2016年度実績)
疾患構成や患者背景が異なるので、多寡で単純に良し悪しを決めつけられるものではない。ただし、ひとつひとつの点が、すべて実名で分かることから、自院の立ち位置を把握するのに極めて有用だろう。

DPC制度を作ってくださった方々に感謝。そして、このような積極的なデータ公開を検討くださっている方々に感謝。

この先は、疾患ごとの比較や、耐性菌の出現率との紐付け、などができるとかなり興味深いか・・・。

2018/03/12

重症度係数は後発医薬品の使用割合の影響を受けていたか?

DPC公開データで個別病院の後発医薬品使用割合が開示されたので、重症度係数との関係性をチェック。

以前は、後発医薬品係数で評価していたため、上限・下限の使用割合が推測できなかった。しかし、今回のデータならば、すべての病院の実際の数値が分かる。

ということで、下のグラフがその結果。(ただし、まだ病院名のマッチング等を精査してないので、暫定版だが)
重症度係数(2017年度)のグループごとの平均後発医薬品使用割合
(DPC病院Ⅲ群のみ)

なるほど。平均値だけの評価だが、なんとなく傾向は良さそうだ。箱ひげ図を見たり、検定をすれば、もう少しマシな評価になると思うが、とりあえず、これで十分。あとは病院名のマッチング等をしたり、別の検討を行おう。

2018/03/09

公開データを使った病院の状況把握

DPC公開データに簡易分析用の計算式の埋め込みをしていた。様々な病院の概況を把握する目的で使っているグラフの例を下に示す。(先日の日経ヘルスケアのセミナーでも使ったグラフで、昨年のSSKのセミナーではこの分析ファイル自体を配布したはず)

DPC病院Ⅱ群(2016年度データなので、まだⅡ群と呼ぶべきだと思われる)の中で、病院全体の在院日数の指標が高い(≒疾患ごとの相対評価で在院日数が短い)病院をピックアップしてみた。赤点線より右側に大半の疾患が来ている。つまり、ほとんどの疾患で在院日数が短いことを意味している。圧巻だ。



大学病院でも同様のところをピックアップした。

この2病院はかなりすごいと思う。

逆に大学病院で低いところもグラフにしてみた。


ほとんどの疾患が赤点線の左側に来た。つまり在院日数が長いということになる。偶然だと思うが、ピックアップした大学病院の4病院のうち3病院は旧六、1病院は旧帝大だった。旧六だから在院日数が短いor長い等の偏りがあるわけではなさそうだ。(母校よ・・・)

また、専門病院で特徴的な2病院をピックアップした。船橋整形外科病院は、在院日数の指標が高すぎて他病院とスケールが異なる。お許し頂きたい。


なお、このグラフで大まかな課題を把握し、必要に応じて詳細な疾患別データや病院情報の公表データの分析を行い、想定されるアクションを整理する、というのが、個別病院を訪問する際の一連の流れだ。資料作成がなければ10分もかからず大体見られる。資料作成する場合でも30分を目標にまとめたいと思っている(実際は、地域特性の把握など色々欲が出て、数時間~半日くらいかかってしまうが)。

※いずれの病院のグラフも自動で作っている。そのため、この範囲外に出てしまっている疾患がある場合にも調整していないので、あしからず

2018/03/08

急性期病院の在院日数短縮は確実に進んでいる

昨日の回リハの話題の続き。

DPCデータが公表された(中央社会保険医療協議会診療報酬調査専門組織(DPC評価分科会)審議会資料 |厚生労働省)ので、そのデータで大腿骨頸部骨折の手術症例の在院日数分布の推移を見た。

DPC公開データ(2012~2016年度データ)を基に作成

中央値が24日となり、平均値は前年より1日以上短くなった。変化幅は、過去5年で最大だ。急性期病院における在院日数は年々短縮している。

今後どうなるか。

○○日まで短くなる!といった予想をすることはあまり意味がないだろう。しかし、短くなるであろう理由を把握しておくことは重要だ。そういった観点で、下記をお読みいただけるとありがたい。

回リハの実績指数アップで、急性期からの早期退院が進む - CBnewsマネジメント

2018/03/07

回リハの改定から急性期への影響を考える

回リハの実績指数アップで、急性期からの早期退院が進む - CBnewsマネジメント 回リハの実績指数アップで、急性期からの早期退院が進む - CBnewsマネジメント

今回の記事では、回リハの改定内容から、次の2点について述べた。

・回リハの病床運営変化
・急性期病院への影響

この2点は、それぞれ地域性が関係することを整理したので、参考にしていただけると幸いだ。


2018/03/06

介護医療院スペシャル!!

説明会を聞きながら、!!となった瞬間が
ここ↓


まぁその用語はともかく、介護医療院が地域包括ケアシステムにおいて大事な役割を担う可能性があることは理解しておくべきだろう。下記はぜひ読むべき。

介護医療院は「住まいと生活を医療が下支えする新たなモデル」 - CBnewsマネジメント 介護医療院は「住まいと生活を医療が下支えする新たなモデル」 - CBnewsマネジメント

先日のMMオフィス工藤氏との日経ヘルスケアのセミナーに江澤先生が出席してくださり、その際に、下記の要点を直接聞くことができた。その内容は工藤氏のブログで触れられている。



2018/03/01

暫定調整係数のゾンビ化 激変緩和係数はそこそこ大きい値に

暫定調整係数が大きいところは、実質的にこれまでの暫定調整係数である「激変緩和係数」が付与されるため、入院収入に対する影響は一定の範囲内に収まる想定である。

・・・という内容をシミュレーションしたものが、下の結果である。

2017年度機能評価係数Ⅱ・暫定調整係数ベースの2018年度係数変化の試算結果

様々な前提条件※を置いてしまっているので、係数変化の上限・下限はサチってしまっている(と書いたが、「サチる」は一般用語ではないですね。頭打ちになるような意味です)。

激変緩和係数は、大きな値がついていることが推測される。そのため、暫定調整係数の廃止により経営に大きなインパクトが生じるのは、来年ということになるだろう。重症度係数が暫定調整係数のゾンビだと下記のレポートでMMオフィス工藤氏が述べているが、今回の激変緩和係数もまたゾンビと言えるだろう。

DPC効率性係数をメジャー5疾患で深掘り - CBnewsマネジメント DPC効率性係数をメジャー5疾患で深掘り - CBnewsマネジメント
なお、上記のグラフから、今回の改定は、係数が増えた病院の方が多いように感じた。実際、個別病院の数値が公表されないと分からないが、興味深いところだ(ブラックボックスゆえ、この辺は、毎度、よく分からない)。

前回改定のときは、想定よりも、係数が増えなかった(下記レポート参照)。

よくある機能評価係数Ⅱへの疑問 - CBnewsマネジメント よくある機能評価係数Ⅱへの疑問 - CBnewsマネジメント

もしかして、帳尻をあわせた? まさかとそんなことはないと思うが、ブラックボックスなので、真実は分からない。

※ 様々な前提条件とは、DPC算定病床数を参考に包括対象の入院料を想定し、係数に関する「財源」を計算している。「財源」が一定であることを仮定し、2017年度の係数をベースに2018年度の係数を試算している