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2021/10/27

記事に「平均年齢が同じでも格差があった」と書かれるようになったのは気のせいか

以前ブログで引用した肺がん(格差2倍は本当か? - 株式会社メディチュア Blog)に続き、胃がんや大腸がんも記事になっていた。

胃がんと大腸がんでは、タイトルに書いたとおり「平均年齢が同じでも格差があった」と付け加えられるようになった。格差があることを主張したい気持ちは分かる(みな同じじゃ、誰も読んでくれないだろうから)。ただ、リスク調整しない5年生存率の「比較」はあまりに読み手に理解力が求められる。数値が並んでいれば、比較されていれば、そこに良し悪しを考えてしまうにも関わらず、その説明はあまりにも簡単に済ませている。

なおリスク調整は、平均年齢だけではわからず(平均70歳でも、40歳と100歳の組み合わせと、70歳ふたりの組み合わせは意味が違う)、基礎疾患などの背景も重要。

肺がん同様、胃がんと大腸がんも生存率係数と平均年齢の関係をプロットしてみた。生存率は年齢に大きくひっぱられているという当然の結果に。「平均年齢が同じでも格差があった」 と主張したいなら、基礎疾患などのリスク調整をした上で、平均年齢が同じ施設間で生存率に差があった、違いは治療内容だった、という論理構成にしないといけないのだが。



ただ、がん診療の先駆的な施設のコメントや、下記のような考察(大腸がんの記事)は興味深い。

治療成績が上位の病院では、進行がんも可能な限り外科手術で切除し、抗がん剤や放射線治療を組み合わせて再発を防ぐ治療に積極的に取り組んでいた 
やはり、積極的な手術や再発予防の治療ができているのは、年齢が若く体力があり、基礎疾患などのあまりない患者が多いのでは?、というリスク調整の重要性を再認識する考察である。また、肺がんの記事同様に、胃がんの記事においてがん専門病院の医師が、基礎疾患の有無が影響していることに言及している。

自分もランキング好きなので、こういった記事がキャッチーであることは否定しない。でも、これを何もかもわかっている専門家の議論に使うのと、あまりわかっていない一般市民に読ませるのとは、まったく意味が異なる。

余談だが、週刊現代(読まなきゃよかった、想像以上にひどい内容 がん5年生存率の週刊誌的取り上げ方)のように、悪意の塊のような記事でなければ、まぁいいか・・・。

2021/08/31

格差2倍は本当か?

 がん治療生存率、格差2倍 400の拠点病院: 日本経済新聞

今朝の日経朝刊記事。

生存率係数なるものを独自定義し、施設間の比較をしたとのこと。肺がんでは2倍の差がついた、というのが見出しになっている。

記事には続きがあり、詳細なデータが別の面にあるのだが、その数値を使って、生存率係数と平均年齢の関係をプロットしてみた(下図)。


2021/8/31 日経朝刊 「日経実力病院調査、肺がん手術、体の負担軽減――薬物・放射線治療と連携(医療健康)」の数値を基に作成

いい感じだ。生存率は明らかに平均年齢に引っ張られている。1面の記事で「格差が問題」としたい意図は分かるが、その記事で、国がん研究センターの方が「生存率は治療技術だけでなく、がんの進行度以外の患者の状態や年齢にも影響を受ける」とコメントされているとおりであり、少なくとも年齢調整をしなければ、ほぼ意味のない数値であることは明らか。

ただ、救いは、その後ろの記事に載せていた表には、生存率係数のとなりに平均年齢があったということ。おそらく分析担当者は「これ、ほぼ年齢で決まっているね」と認識があったのではないだろうか。

こういった情報が一般市民にとってキャッチーであることも事実である。だからといって、どうなの??と思わざるを得ない。

2021/08/11

認知症ケア加算、前向きな議論に期待

先日の入院医療等の調査・評価分科会、認知症ケア加算について要件緩和を求める意見が出たようだ。詳しくはこちら⇒認知症ケア加算、要件緩和を求める意見 - CBnewsマネジメント


6月にCBnewsに掲載いただいた認知症ケア加算の記事で、人員配置がボトルネックになっていることなどについてまとめているので、参考にいただけると幸いだ。ブログでは、その記事の補足を行っている。

認知症患者へのケアに加え、地域連携に評価を - CBnewsマネジメント

認知症ケア加算のデータ分析から - 株式会社メディチュア Blog


その6月の記事では言及しなかったが、IoTの活用を評価することも検討すべきかもしれない。病棟・介護・在宅での切れ目のないケアを実現するためにIoTデバイスを活用する・・・という流れは、ペースメーカーなどすでに実現している領域もある。認知症もすでに検討されている内容(下記リンク参照)もあるので、期待したいところだ。

第4回 保健医療分野AI開発加速コンソーシアム 資料 平成31年1月16日(水)https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000148680_00005.html


2019/09/30

忙しさにかまけて、すべきことをさぼっている10年弱

データから良い病院を見つけ出し、後押しする。データ分析における弊社の大きなテーマなのだが、忙しいことを言い訳に、日々違うデータ分析をしている。

バス停で見かけたLeapfrogのSAFETY SCOREでA評価を受けたことを示す広告。
バス停にあったAdventist Health White Memorial の広告
バス停の広告にこのA評価のことを掲げるくらいだから、この評価を相当誇りに思っているようだ。この病院のウェブサイトでもこのことを詳しく記載している(下記リンク参照)。

Leapfrog Award | California Hospitals Leapfrog Award | California Hospitals

10年近くLeapfrogのSAFETY SCOREのようなことをしたいと言ってはいるものの、何もできていないことを反省。

HOSPITAL SAFETY SCOREとJCI - 株式会社メディチュア Blog HOSPITAL SAFETY SCOREとJCI - 株式会社メディチュア Blog

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2018/06/24

急性期病院の収益を左右する後方機能

再入院のペナルティがきつくなれば、当然ながら、入院中に再入院を防ぐ取り組みをするのはもちろん、退院後のフォローアップにも力を入れる。

自院でサービス提供できる範囲のフォローは良いが、範囲を越えた部分は、フォローできない。

ゆえに在宅やホスピスなど、ポストアキュートの機能が重要であり、いいところとタッグを組むことが、急性期病院の収益を左右することになる。

下のような記事を読むと、今後の日本の医療の参考になる。

2018/03/13

特定抗菌薬の使用状況可視化で考えるデータが開示されることの意義 ~透明性の向上~

先日のDPC公開データで新たに含まれたものとして、特定抗菌薬の使用状況のデータがある。公開された内容や意義については、DPC評価分科会の資料に詳しい。

出所: 厚労省 中医協 DPC評価分科会資料 D-1参考機能評価係数Ⅱについて

公開データで、同様にグラフ(65歳以上のデータ)を作ると、下記のようになった。
出所: DPC公開データ(2017年度公開、2016年度実績)
疾患構成や患者背景が異なるので、多寡で単純に良し悪しを決めつけられるものではない。ただし、ひとつひとつの点が、すべて実名で分かることから、自院の立ち位置を把握するのに極めて有用だろう。

DPC制度を作ってくださった方々に感謝。そして、このような積極的なデータ公開を検討くださっている方々に感謝。

この先は、疾患ごとの比較や、耐性菌の出現率との紐付け、などができるとかなり興味深いか・・・。

2018/02/01

How data and analytics can improve CV quality and outcomes

広範囲なデータを集めてデータウェアハウスを構築して、効率化・質向上を図った事例。来月ラスベガスで開催されるHIMSS18で話すらしい。

Allina applies analytics to patient data to save $45 million over 5 years | Healthcare Finance News Allina applies analytics to patient data to save $45 million over 5 years | Healthcare Finance News

記事で触れている内容も興味深いが、さらに具体的な内容を知りたい・・・、とは言ってもラスベガスは無理か。

記事中の下記一文は、とある院長がおっしゃっていたことと一緒。
"We're fixing the problems sooner so they can go home."

2018/01/29

データ分析が後押しするロボット支援手術の技術向上

ロボット支援手術の話題。
次回改定で一気に適用が拡大される。胃がんや肺がんなども適用になる。
「ダヴィンチ」手術、一挙に12件を保険適用へ | m3.com

ただし、懸念していたとおり(以前のブログ参照 習熟を要するロボット支援手術に対する評価は厳しい)、点数は既存技術と同程度になるらしい。

下記は、冒頭のm3の記事の一部を引用した。
現時点では、既存技術と比較した優越性についての科学的根拠が確立されていないが(中略)報酬上の評価は既存技術と同程度とする方針

診療報酬とは別の切り口で、以前、ロボット支援手術はデータ的に興味深いという話を述べた。

ロボット手術(支援手術)は、知らず知らずのうちに人間の技を盗もうとしているのかもしれない - 医療、福祉に貢献するために ロボット手術(支援手術)は、知らず知らずのうちに人間の技を盗もうとしているのかもしれない

昨日のニュース記事によると、アドベンチストヘルスシステムでは、ロボット支援手術のスキル評価と改善が、データ分析により加速しているらしい。

Adventist Health System Leverages Analytics to Improve Surgeons’ Robotic Surgery Skills and Performance | Healthcare Informatics Magazine | Health IT | Information Technology Adventist Health System Leverages Analytics to Improve Surgeons’ Robotic Surgery Skills and Performance | Healthcare Informatics Magazine | Health IT | Information Technology
記事によれば、分析で下記のような成果が出ているらしい(日本語は弊社で追記)
> Conversions from robotic to open surgery dropped by more than half after a surgeon received 10 or more C-SATS assessments (5.3 percent to 1.6 percent) ロボット支援手術から開腹手術に移行する割合が下がった
>  Incidents of blood loss greater than 500ml during robotic surgeries dropped (2.4 percent to 0.7 percent) after a surgeon underwent 10 or more C-SATS assessments ロボット支援手術中500ml以上の出血患者割合が下がった
>  Median surgery time reduced by 22-23 minutes in laparoscopic hernia repairs (ASA Class I-II and III-IV) after C-SATS assessments ヘルニア手術の術時間が中央値で22~23分短縮した
ロボット支援手術に対し、次回改定で高い点数が付くことは期待できない。しかしながら、保険適用となる術式が拡大することで、質の向上等のデータ収集が加速していくことに期待したい。さらには、上記のアドベンチストヘルスシステムの取り組みに参加するといった、グローバルな視点で、質向上の流れに乗れることができたら、さらにその次の改定では、診療報酬の引き上げにつながるかもしれない。

2018/01/22

「数字が一人歩きすることを避ける」ことの難しさと、そこにあるチャレンジ

読み手の理解力が重要になってくる記事。

心臓血管手術 公表された死亡率から何が分かる?:朝日新聞デジタル 心臓血管手術 公表された死亡率から何が分かる?:朝日新聞デジタル

関連して読むべき記事(どちらも会員登録してないと読めないか?)。

「心臓手術死亡率3倍」、報道は「残念」「非常識」|医療維新 - m3.com

「数値のひとり歩き」はデータ分析で気をつけることである。12年ほど前、ある金融機関のクライアント向けの分析で、正しい数値を出したのに問題になったことを思い出す。補足説明をしなければ正確な意味を理解できない(理解して欲しい意図を汲み取ってもらえない)数値は、その数値の正しさ以前にリスクが伴う。

患者は比較できる情報を欲している。しかし、医療の質の比較は簡単なことではない。死亡率ひとつ取っても比較は難しい。ゆえに、そこには大きなチャレンジがあると言える。「背景等を十分に説明しなければならないものの数値としてはシンプルなデータ」を示すか、「説明をあまり必要としない各種リスクを調整したデータ」を示すかなど、受け手側の理解力等に配慮する必要がある。死亡率は、急性期と慢性期、予定入院と救急入院、など、それぞれで事情が異なる。難しさがあれば、そこにはチャレンジがあり、データ分析の楽しさでもある・・・。

2018/01/12

様式1でB項目を推測できるか

CBnewsに看護必要度のB項目の分析に基づく記事を掲載いただいた。

看護必要度B項目の置き換えは長期的な視点で - CBnewsマネジメント 看護必要度B項目の置き換えは長期的な視点で - CBnewsマネジメント

下記の冬休みの宿題で分析をしていたデータから、トピックを切り出したものだ。

CBnewsの記事は、看護必要度のB項目が入院時ADLも含めた様式1の情報からおおよそ推測できるというものだ(特に認知症関連は精度良く評価できそう)。事務負担の軽減、評価負担の軽減を図るためにも、そういった検討は積極的に推進すべきだろう。なお、さらに精度を高めようとするならば、その意味があるかどうかも含め、じっくり検討すべきだ。なぜなら、

評価精度向上≠医療の質の向上

であるから。あくまでも支払いのための評価であり、医療の質とは関係ない。入院時のアセスメントや入院中の見回りの時間を減らしてまで、看護必要度の記録に時間を割くべきではない。

とはいっても、適切な支払いも重要なので、代替評価項目の設定はじっくり検討すべきだろう。

2017/10/14

7対1は減らない(後半)

「7対1を減らす」ことを目的とするのではなく、現場の負担と努力に応じた報酬を設定し、「アウトカムを達成するために必要な看護配置を行う」ことを目指すべきである。

近未来的な夢物語を言えば、ある医療機関がモニター類の革新的な高度化を図り、現場の負担を大幅に軽減し、少ない人手で医療安全・医療の質の向上を実現したとする。しかしながら、現行の評価制度が続くならば、看護師の数を減らすと収入が減ってしまう。質の向上を実現していたとしても、である。

このような「アウトカム」よりも「配置」に重視を置いた評価制度は、革新的な技術導入に対する意欲を低下させるだけでなく、近年極めて煩雑さを増す各種記録の義務付けに対し、看護配置の多い病院がそれを受け入れている原因にもなっていると思う。(アウトカムの達成に必要なのは記録でないが、記録に必要なのは余裕のある配置だから)

より良い医療を受けるためには(より良い医療提供を促すためには)、配置よりもアウトカムに重きを置くべきである。

 昨日からの話の続きになるが、現実的には、看護必要度の評価についてA項目とC項目により重きを置き、徐々に7対1と10対1をシームレスにしていくのが良いと思っている。シームレスにする方法の例として、次の2つを挙げる。

 ①看護配置に重きを置かない「短期滞在手術等基本料3」の対象拡大

7対1でも10対1でも、診ている疾患・治療が同じであれば、診療報酬は同じにすべきである。参考になるのは短期滞在手術等基本料3だ。これは定められたいくつかの手術を行い5日以内の入院であれば、どの看護配置の病棟で入院しても、同じ診療報酬になる制度だ。つまり看護配置はまったく関係ない。つまり、このような疾患・治療を拡大していけば、実質的に看護配置の重みは薄れていくことになる。

 ②看護必要度の評価を反映したDPC点数の設定

DPC制度では、医療資源投入内容に応じて階段状の点数が設定されている。現在、Hファイルとして看護必要度の情報を収集していることを踏まえれば、各疾患・治療に応じた看護必要度の情報が得られているはずである。この看護必要度の情報に基づき、階段状の点数を上下させてみてはどうだろうか。「7対1だから係数で10%上乗せ」ではなく、「○○の疾患は看護必要度の評価が高いから点数にXX%上乗せ」というようなことになれば、看護配置は関係なくなる。

このような疾患を徐々に拡大してくことで、看護配置の重みは薄れていくことになる。この2つの案のように看護配置に重きを置かない評価制度に移行するのであれば、粗診粗療を避ける仕組みが重要になる。再入院などの評価や、医療安全に対する評価などを充実させることが不可欠だろう。患者が求めていることは、他病院よりも看護師が多いことではなく、他病院よりも良い医療が受けられることである。これは現状看護師の教育等が充実している病院を評価することにも通じると考えている。現状は「配置」に極めて重きを置いているが、医療安全等の対策はかなり実力差があると思っている。このようなことを評価しなければ、患者がより良い医療を受けることはできない。

『「7対1を減らすこと」が診療報酬の適正化につながり、国民がよい医療を受けられる』というロジックは一見正しいことのように思う。しかし、7対1が減らない以上、別のロジックを考える必要がある。それにはアウトカムを重視した報酬制度に徐々に移行していくことで、医療機関がさらなる質の向上を意識し看護の充実(≠看護配置の充実)を図ることになるだろう。結果的にIoT等の技術的な革新を活かすことにもつながるはずである。

2017/10/13

7対1は減らない(前半)

興味深いレポート。
7対1病床が10対1からの転換などで増加 - CBnewsマネジメント 7対1病床が10対1からの転換などで増加 - CBnewsマネジメント

以下、私見。
7対1が減らない3つの理由

①就労環境が良好
②医療安全等も含めた医療の質で有利
③7対1を死守するのは経営的に必然

これらの理由で、急性期病院はみな7対1を目指す。そして、目指すことは悪いことではなく、前向きな評価されるべき経営努力である。

にもかかわらず、7対1を減らしたがっている(少なくともそう感じる改定が繰り返されている)のは、行政側が現場を理解できていない(or 病院団体がうまくかわしている)と思ってしまう。7対1が減らない3つの理由について、少し細かく考えてみたい。

①就労環境が良好

7対1の要件は、平均在院日数(疾患構成に強く依存しているものの、クリアすることは比較的容易)や看護必要度(これも疾患構成に依存。現状は高齢者の比率が高いほどクリアが容易)などである。7対1も10対1もこれらの要件の状況は似ている(10対1でも在院日数が短い病院は珍しくない)。これらをクリアしているのであれば、10対1よりも7対1のように、看護配置を手厚くした方が、現場が円滑に回る。

円滑に回るということは、就労環境として相対的に良好であり、看護師確保に有利となる。看護師確保が難しい地域では、10対1よりも7対1を目指す(周辺病院が7対1ならなおのこと)。

②医療安全等も含めた医療の質で有利

看護師確保に有利であれば、相対的に優秀な人が集まりやすい。医療の質向上にも貢献する。また、そもそも看護配置が手厚い時点で、医療安全等において有利である。

③7対1を死守するのは経営的に必然

7対1と10対1で比較した場合、7対1にしたら病院経営が圧倒的に改善するわけではない。しかし、7対1の配置に近い看護師を確保している病院であれば、7対1を算定できるようになれば収入は激増する。否が応でも7対1を死守する(病院の経営改善の努力をするのは、働き手に相応の賃金を払い、医療機器等の維持・充実を図るために、当然のこと。稼ぐことは悪でなく、稼ぐことは医療の質向上にプラス)。


以上3つの理由を述べたが、看護必要度のような「看護配置」の必然性に対し評価をもたらすであろう指標が、現状は不適切であるがゆえに、これらの3つの理由から、みな7対1を目指し維持するのだ。

適切な診療報酬を設定するためには不適切な看護必要度の指標をどう変えればよいか。 ※ 看護協会を中心とした長年の研究に基づく看護必要度の評価自体は重要であり、否定しない。診療報酬や病床機能分化の誘導に使おうとすることには限界がある

「看護配置に関係なくアウトカムで評価していくこと」が究極的なところにあるとするならば、看護配置を定めるための看護必要度は不要であるといえる。ただ、あくまでも極論である。現実的には、A項目とC項目により重きを置いた評価をし、徐々に7対1と10対1をシームレスにしていくのが良いと思っている。

シームレスにしていく具体的な方法については、明日、述べたい。

2017/10/12

アウトカムとファクターの対比

コンテンツもビジュアル的にも興味深いウェブサイト。

County Health Rankings & Roadmaps County Health Rankings & Roadmaps

アメリカの各州について、郡ごとの健康に関するアウトカムとファクターのランキングをしている。アウトカムとファクター、それぞれのランキングについて、地図を2つ横並びで表示しているおかげで、各エリアの特徴が分かる見せ方は非常に興味深い。
ランキングについては是非があるかもしれないが、そのランキングシステムについても詳細な説明がされている。


2017/07/03

回リハの将来を考える上で必読の記事

CBnewsの井上先生の記事。やはり鋭い。

リハビリは量から質の評価に軸足移すべき - CBnewsマネジメント リハビリは量から質の評価に軸足移すべき - CBnewsマネジメント

「リハスタッフを多数抱えれば、単位数を稼ごうとするのは必然」という意見も納得である。

自分のブログで、リハが包括になる可能性について下記のように言及したが、今回の井上先生の記事ではタイトルがそうなっているように、量より質の議論で締めくくられている。

回リハのリハビリ出来高払いから包括払いの可能性
リハビリは、アウトカムをあまり評価していなかった「質より量」の時代から、回リハ1のアウトカム評価のように「量が大事だけど質も無視しない」の時代になっている。今後は「量より質」の時代へ転換していくことを見据え、地域との連携やスタッフの育成をしていく必要があるだろう。

入院初期の医療資源投入量については、多くの病院の評価では差が出なかったとのことだ。MMオフィス工藤氏が言葉を定義してくださっていた「ポストアキュートの回リハ」と「サブアキュートの回リハ」という違いについて、多数の病院で平均値を取ると、ポストアキュート的な回リハがほとんどになり、入院初期の医療資源投入が特段多いものではない、という結果になるのだろう。ゆえに、サブアキュート的な使い方をしている回リハ病棟だけで集計しないと分からないかもしれない。平均値の処理の難しさとも言え、井上先生と自分のN数の違い(井上先生はNが多い)が、分析結果の差異になったと理解している。

井上先生の記事、一読をおすすめする。回リハの今後を考える上で、大事な観点が示されている。

サブアキュートの回復期リハビリ評価という新しい視点|「なんちゃって医療経営学」 ㈱MMオフィス代表 工藤 高のブログ サブアキュートの回復期リハビリ評価という新しい視点|「なんちゃって医療経営学」 ㈱MMオフィス代表 工藤 高のブログ

2017/06/22

回リハのリハビリ出来高払いから包括払いの可能性

昨日に続き、回リハの話。

繰り返すが、回リハの点数は、ベースとなる診療報酬を基準に考えると高くない。昨日は、入院加療の必要性について問題点があることを述べた。今日は、そもそものリハ単位数について述べる。

回リハでは、多くの患者に6単位以上のリハビリが実施されている。リハはその後の日常生活自立度を左右する大きな要因であり、その充実は好ましいことだが、効果のあり・なしにかかわらず、20分1単位として、出来高で報酬を得ることができるのは微妙である。

MMオフィス工藤氏は、「海外等を見れば、長時間リハに耐えることができ、意欲のある人にリハを実施し、しかもリハは包括だ。日本も出来高の時代が永遠に続くことは考えにくい。いずれ包括になる可能性もあるだろう」というようなことを言っていた(自分が聞いたのは、おそらく5年以上前のことなので、多少のニュアンスの違いはご了承ください)。そのときの講演資料は、引用・転載許可をもらって、ことあるごとにいろいろな方に見せてきた。

回リハのリハビリが出来高から包括になる可能性は、


  1. 地域包括ケアのリハ包括
  2. 回リハ1のアウトカムが伴わない6単位以上のリハ包括


これら2つの制度が出てきたことからも、世の中の流れは出来高から包括にである。

包括化されれば、より腕のよいリハ医・セラピストは、少ない単位数で、より効果的なリハを提供し、その分だけ診療報酬を得ることができるようになるだろう。

ただ、なかなか効果は出ないものの、そのときの充実したリハのおかげで、のちのち良くなった、もしくは重症化を予防できた、というような患者に対するリハがないがしろにされてしまう懸念も否めなくない。それだけに慎重に制度設計をしなければならないだろう。

リハビリは、アウトカムをあまり評価していなかった「質より量」の時代から、回リハ1のアウトカム評価のように「量が大事だけど質も無視しない」の時代になっている。今後は「量より質」の時代へ転換していくことを見据え、地域との連携やスタッフの育成をしていく必要があるだろう。

2017/06/07

メイヨーの”The 2020 Initiative”

Wall Street Journalゆえ、読みやすく、分かりやすい。

Mayo Clinic’s Unusual Challenge: Overhaul a Business That’s Working - WSJ Mayo Clinic’s Unusual Challenge: Overhaul a Business That’s Working - WSJ

気になった箇所、抜粋しようと思ったものの、簡潔にまとめる能力がないことを思い出した。
The overhaul, called the Mayo Clinic 2020 Initiative, is well past the halfway point, and officials are seeing results of more than 400 projects aimed at squeezing costs and improving quality in services ranging from heart surgery to emergency-room waiting time.

Expanding the role of nurses in the care of epilepsy patients shaved an average of 17 minutes off the time doctors spent on a visit, increasing slots for new patients. Adding more clinicians to the emergency room during the afternoon reduced patient waiting times during high-demand evening hours.

The operating-room teams competed in contests to reduce the time from “wheels out”—when one patient’s surgery was over—to when the room was set up for the next patient. Results for each surgeon’s room were posted, and staff met to discuss what worked and what didn’t. No team was declared a winner, but the exercise trimmed average turnover times about 50% to between 20 and 30 minutes, Dr. Dearani says.

The overall effort revealed two main cost drivers: a patient’s length of stay and the surgeons’ use of mechanical heart valves. So many valve brands were on the shelf, Dr. Dearani says, “it was like going into a shoe store.”The clinic, one of America’s largest users of such valves, decided to use its purchasing power to negotiate lower prices and limit surgeons to models from two vendors. 

In 2000, after undergoing an open-heart operation to replace the valve, she spent six days in the hospital.In May, the mother of two was back to have the device replaced. The morning after her third night, her doctors decided she was progressing so well they would discharge her to a hotel that day.

2017/04/26

他を凌駕する連携強化に必要な視点と投資

先日、下記の都内で開催されたセミナーを拝聴してきた。どの方も、制度の解説ではなく、持論の展開なのでひとつひとつが参考になり、大変勉強になった。

巨樹の会の桑木先生の話は初めてだったが、アウトカムを重視したアグレッシブな経営方針と人材投入の仕方は非常に興味深かった。特に、急性期病院から回リハへ、いかに早期の患者を回してもらうか、受け入れられるようにするかといった部分は、診療報酬上のリスクを超越した、患者のアウトカム重視のリハ実施だと思った。一方で、回リハなのに、急性期での経験豊富な内科・外科の多様な医師を揃えていたり、必要に応じてCT等を撮れる体制を構築していたり、医療上のリスクは、しっかり回避している点も興味深かった。

ちなみに、余談だが、回リハで内科・外科の医師を揃えている話は、以前、バンコクの美容外科の世界トップレベルの病院で聞いた話と似ている。そのバンコクの病院では、美容外科だけに特化するのではなく、内科から外科、そこでは心臓外科も含めた様々な診療科が一緒に診療を行っている総合病院の体制を整えておくことが、美容外科のいかなる手術も安全に行うために重要であると言っていた。

連携の強化には、各機能間でより早期の患者を受け入れることも意味している。このとき、診療報酬上のリスクと医療上のリスクをいかに回避するか。これが経営判断であり、人材や設備に投資できれば、他との差別化となる。

【HMS政策研究集会】2018年同時改定と病院経営シンポジウム
 ~2018年同時改定に伴う機能別(急性期・地域包括ケア・回復期リハ・慢性期)改革のポイントと2025年の超高齢社会に対応し、医療・介護一体改革が目指す医療・介護の融合時代の病院経営を探る~

公益社団法人 全日本病院協会副会長
社会医療法人財団董仙会 恵寿総合病院
神野 正博 氏

一般社団法人日本慢性期医療協会 会長
武久 洋三 氏

保健・医療・福祉サービス研究会 診療報酬・病院経営指導講師
株式会社MMオフィス 代表
関東学院大学大学院 非常勤講師
工藤 高 氏

千葉大学医学部附属病院 副病院長
病院長企画室長・ 特任教授・経営学修士(MBA)
井上 貴裕 氏

一般社団法人巨樹の会 副理事長
桑木 晋 氏

保健・医療・福祉サービス研究会 在宅医療事業部講師
医療法人社団永生会 特別顧問
中村 哲生 氏

2017/04/25

一物二価を解消することで見えてくる質の向上

7対1と10対1との間に絶対的な医療の質の差があるのであれば、診療報酬は分けて然るべきだと考えている。もし、同じ医療提供内容で質に差がないのであれば、看護師を何人配置しようとも、診療報酬は同じであるべきではないだろうか。

短期手術3はその最たる例であり、どの病棟に入院しても入院料は同じである。将来的には、医療の質によって診療報酬が変わるだけで、人員配置は関係なくなることを目指すべきだ。

現状、7対1とその他(10対1等)のデータ提出病院における違いを見たグラフを下に示す。横軸はDPC算定病床数である。病院規模によって手術ありや化学療法、救急車搬送の割合が異なっていることが見てとれる。ただし、入院料はあまり関係なさそうである(手術ありの割合は若干異なるか・・・)

7対1入院基本料とそれ以外(10対1、13対1、15対1等)の治療内容の違い
最低限の医療の質を担保した上で、看護配置の基準を取っ払い、診療報酬を疾患と治療内容で定めたらどうなるだろうか。業務効率化等の努力をしている病院であれば、おそらく看護師を減らせるだろう。新人の比率が高い病院では、逆に質担保のために看護師を増やすかもしれない。

さらには、質向上にインセンティブをつけるべきである。質向上に対し看護師を増やすべきか、それ以外の人を増やすべきか、インセンティブがあれば、現状より議論が進むに違いない。

7対1といった配置基準は、質低下をわかっていながら人員削減をするような倫理観の欠如した行動を防ぐ意味はあっても、業務効率化の推進やインセンティブ付与の観点では害が大きいのではないだろうか。

2017/04/12

単純比較は無意味 ~大学病院の死亡率比較~

ある原稿を作成している過程でボツにしたグラフ。

DPC公開データにより、入院医療における死亡率(最も医療資源を投入した病名で死亡したものと、それ以外の病名で死亡したものを足し上げた数値)と、救急車搬送症例の割合を見たもの。対象はDPC病院Ⅰ群(大学病院本院)である。

DPC病院Ⅰ群における死亡率と救急搬送症例割合の関係性(画像をクリックすると拡大します)
出所: DPC公開データ(2016年度公開、2015年度実績)を基に作成
各大学病院の死亡率の違いは、医療の質の違いと言えるか・・・と考える上で、疾患構成や年齢構成などの調整が必要なのは当然だ。ただ、そのような一般的な調整の必要性以前のレベルで、死亡率を単純に比較してはいけないことが、上のグラフから明確に見えてくる。死亡率は救急搬送症例の割合に強く依存していると言えよう。

救急搬送症例における死亡率とそうでない症例の死亡率が分かれば、比較に耐えうるデータといえるかもしれない。

このようなバイアスをうまく理解していなければ、誤った見方をしてしまう。ちなみにDPCⅡ群・Ⅲ群は、背景がばらばらすぎて、死亡率の評価は困難であった。それゆえ、Ⅰ群のグラフを出したというわけである。

2017/03/31

高回転化の促進に必要な再入院率の評価

CBnewsマネジメントに記事を掲載いただきました。再入院を低く抑える取り組みをしている医療機関に対し、インセンティブを与える前提として、指標定義における留意点を述べさせていただきました。

高回転化の促進に必要な再入院率の評価 https://www.cbnews.jp/news/entry/20170328124123