2017/01/22

先の読めないイカより、医療の先は読める

函館といえばイカ。20歳くらいのとき、初めて見た「イカ踊り」から受けた衝撃は忘れられない。そのくらいイカの街である函館が、どうやら大変なようだ。

イカの記録的不漁 揺れる現場は|NHK NEWS WEB

このニュース。医療に置き換えて考えてみたらどうなるだろうか。

イカ ⇒ 急性期の入院患者
イカ漁業者 ⇒ 急性期病院
イカレストラン ⇒ 医療材料メーカー・卸
イカ加工業者 ⇒ 後方病床・病院

・・・などなど、考えられるかもしれない。

この記事で、加工業者が「脱イカ戦略」として、水産加工から野菜加工に機能転換を図っている。これは、「後方病床・病院の機能転換」になるかもしれない。

イカは突然不漁になったようだが、急性期の入院患者は、突然激減することはない。ただし、10年、20年のスパンでは減少する地域もある。これを見据えた計画の重要性をまとめたのが地域医療構想だ。

昨年、野村證券のヘルスケアノートにて、地域医療構想と漁業の類似性を述べた。ちなみに、そのときはイカではなく、サンマだったのだが。

地域医療構想に関する医療機関の取り組みについて、野村證券ヘルスケアノートに寄稿いたしました | 株式会社メディチュア
このヘルスケアノート、販売やウェブでの公開等はされていないが、どなたでもお近くの野村證券に連絡いただければ、読むことができるので、ご興味があれば、遠慮なく「地域医療構想に関するヘルスケアノートが欲しい」とお問い合わせいただきたい。

2017/01/19

OECD保健相会合の声明とレポート

OECD保健相会合がニュースになっていた。

「非効率な医療、改革を」 OECD保健相会合が声明  :日本経済新聞

OECD:高額薬、世界の課題 保健相会合声明 - 毎日新聞

と同時に、OECDからレポートが公表されている。(下のfacebookの引用参照)

facebook 1/17の投稿.. - 株式会社メディチュア(Meditur Co., Ltd.)



上記のポストにコメントで書いたのだが、EHRの利活用に関するサーベイ結果が気になった。日本はかなり端に位置してしまっている。
EHRデータ活用のデータガバナンスと技術・運用面での準備に関するサーベイ結果
出所: 上記のOECDレポート
まだレポートをしっかりと読んでいないのだが、正直、そのボリュームゆえ、いつ読めることやら・・・。

2017/01/18

周りを見ずに『何でもやる』公立・公的病院は絶対に間違っている

CBnewsに専門病院の話を掲載いただいた。

専門病院は病床利用率より治療件数の重視を - 医療介護CBnews -

正直、データ分析で、専門特化することの有利性の有無を厳密に評価することは難しい。ましてや公開データだけでは、分析できる内容に大きな制約がある。

と言っていても始まらないので、DPCの公開データを使って、専門特化している病院の状況について検討してみた。データ分析結果は記事をお読みいただきたい。

ちなみに、記事にも書いたが、医療の世界における「専門特化」、「選択と集中」戦略は、社会的インフラとしての色が濃い以上、難しいものであることは致し方ない。しかし、公立・公的病院が何も考えずに、『何でもやる』時代は終わったと思っている。そのことについては、とある病院の眼科の例を挙げ、記事で述べた。つまり、「選択と集中」戦略は、「やること」を決めることも大事だが、「やらないこと」を決めることも大事なのだ。

記事の結論とも言えるのだが、専門特化戦略を考える上で、今後は、地域医療構想の調整会議のような場で、「やること」「やらないこと」をお互いに話し合わなければ、相対的に地域の医療提供力が低下してしまうと考えている。


ちなみに、記事に書くと散漫になってしまうと思ったので、書かなかったことがある。従来、長期入院や高度医療機器の使用を前提とした高度急性期・急性期医療の領域において、低侵襲化などの医療の進歩により、内視鏡クリニックや整形の専門病院、乳がんの専門病院など、小規模な医療施設で、診療できる領域が増えているように感じている。これらのクリニックや有床診療所、小規模な病院では、200床以上の病院の重装備・高人件費・高診療単価経営と異なり、軽装備・低人件費・高診療単価を実現している例も珍しくない。この場合、患者確保ができるのであれば、経営的に良好であるように思う。(特定の領域で患者数を確保しなければならないので、必然的に、こういった形態は都心部で目立つ)

地域医療構想では、病院が中心となって議論が進められているが、医療機能の役割分担という意味では、このような医療施設も議論にしっかりと巻き込んでいかないと、地域の「最適化」には程遠くなるだろう。

2017/01/17

見せるリハビリ

KITTE博多の8F、ユニクロのとなりにクリニックが
KITTE博多がオープンした昨年の4月21日、ちょうど博多にいた記憶があるのだが、なかなか中を見ることはなかった。先週、KITTE博多のユニクロに寄ったついでに、隣のクリニックを眺めてきた。

博多駅前の一等地に大学病院がクリニックを出す例としては、あべのハルカスの大阪市立大学などがあり、これ自体は驚かない。そう思っていたので、昨年4月に、下記のような記事を書いていた。

まだできて1年経ってないこともあり、きれい

そして、驚いたのはこれ。噂は聞いていたのだが、運動療法室がガラス張りで外からまる見え。HALが展示されていた。

ロボットスーツHAL。興味があれば声をかけて、という立て看板も

リハ室が外から目立つところにあったり、ガラス張りになっていたりする病院は珍しくないが、ここはすぐとなりにユニクロだ。このHALのすぐ数メートル先には、ユニクロの洋服が並んでいる。ユニクロに買い物に来る年齢層には、おそらく病院やリハビリテーションにはあまり縁がない人も含まれていることだろう。そういった人がリハビリを目にする機会としては、絶好のロケーションだ。

実際、前を通りかかったとき、中ではリハビリテーションが行われていた。「見せる」リハビリがアウトカムにポジティブに寄与する・・・かどうかは分からないが、大学ゆえ、そんな研究もしているに違いない。


2017/01/11

データをオープンにする動きは止められない

オムロンがデータ活用戦略を大きく転換したらしい。

自社機器データは囲い込みかオープンか、オムロンヘルスケアが「OMRON connect」で下した決断 - 日経BigData

この日経BigDataの記事では、これまで自前主義であったことや、
「ウェルネスリンク開始当時は、データを使うアプリは少なかった。だからダイエット支援サービスも含めて自前でやってきた。今は、そうしたサービスが広がり、当社は機器メーカーとしては各サービスでたくさん使ってもらうことがカギになる」 
グローバル戦略においてオープン化が重要であることについて述べられている。
自社の健康管理サービスにしか対応しない機器ではなく、世界中の様々な健康管理アプリ・サービスで記録したデータを使えるようにする。それにより機器のシェアを一層拡大させるのが方針転換の狙いだ。
そのとおりだと思う。個人的にオムロンの製品が好きで、ウェルネスリンクの長年の愛用者なのだが、オムロンはデータをオープンにした方が、もっと製品の周りが盛り上がり、製品自体も売れるようになるのでは、といったことを3年ほど前に述べた。

アイデアを加速させるには - 医療、福祉に貢献するために

このときはWithingsの取り組みと比較し、オープン化の重要性を述べた。3年前に比べ、このような機運・理解度が高まったのだろう。今後、このような動きは様々なところで加速していくに違いない。

2017/01/08

『政府のデータは商業的資源になる』 未来政府(ギャビン ニューサム著)より

本来、まったく同じことを言っているならば、同じ価値になるはずだが、言う人によって価値が変わってしまう。

「データは資源だ」ということを繰り返し述べているつもりだが・・・

実績開示、情報の資源化の観点が抜けている - 医療、福祉に貢献するために
当然ながら、自分の話にはさほど影響力がない。

「未来政府」を読み、改めて、その理由を痛感した。

サンフランシスコ市長時代の経験と苦労により、発言の重みがまったく違う次元になっている。
そうしたデータは私たちの税金でまかなわれている。データは大衆のものであり、私たちはそれを手に入れ、利用することができるべきなのだ。政府のデータを金儲けに使わせるのは間違い、あるいは不適切だとする意見もあるかもしれない。しかし正確な気象情報やGPSを利用した商品が手軽に入手できるようになったことで、私たちの暮らしがどんな形であれ悪くなっただろうか。
データの資源化、特に商業的資源化について、様々な点で参考になった。

去年、週刊文春がたびたび世間を騒がせた。このようなパパラッチ的な記事について、芸能人や一部セレブが対象になるのではなく、誰でもなり得るという話題を、ウィキリークスなどとともに、現代の宿命であることも述べている。



正月に読んだ本の中で、未来政府はかなり印象に残った。

2017/01/06

高齢者の定義、使い分けが必要

日本老年学会・日本老年医学会が高齢者の定義を変えるべきと提言したことがニュースで流れていた。

高齢者は75歳以上、65歳は「准高齢者」 学会提言  :日本経済新聞

弊社では、学会が提言している理由と同じ考えで、作成する資料は75歳以上の人口を使うことが多い。


通常の高齢化率の数値と異なってしまうため、違和感があるのも否めないのだが、要所要所で使い分けすればよいと思う。例えば、国際的な比較は従来通りの指標を用い、介護需要の推計には、新しい指標を用いる等々。

例として、高知と全国の高齢化の進展状況を比較したグラフを上に示す。日経新聞の記事に次のように書いてある通り、日本全体の75歳以上人口比率は、現時点で13%前後である。それが、2030年頃には20%まで高まることが想定される。
2016年9月の総務省の推計によると、65歳以上は人口の約27%。高齢者を75歳以上とした場合、約13%と半減する。
この高知のグラフについて、下記の記事で詳細を述べている。よろしければあわせてどうぞ。

肌感覚とデータ、どちらも大事 - 医療、福祉に貢献するために

2017/01/05

休み明け”だから”全力疾走

CBnewsに新年最初の拙稿を掲載いただいた。

病床高回転化、若年層需要減も見据えて動く | 医療経営CBnewsマネジメント

正月休み明けということで、頭を仕事モードに切り替えていただくため、分かりやすさ向上を意識し、グラフ・図表を多用してみた。今回は、無料の前半部分だけでも、いくつか図表を見られると思うので、ぜひご覧いただければと思う。

まだまだ、自分の頭は正月休みなのだが、昨日から仕事、通常診療開始、というところが多かったように思う。そんな中、クリニックや病院の外来は大混雑だったようだ。これは数値的に以前検証したことがあり、祝日の翌日は、通常の1.5倍以上混雑する、というデータがある。正月休みは、長期間の休みのため、休み明けは1.5倍よりはるかに混雑していたに違いない。

病院・クリニックでファストパス!? - 医療、福祉に貢献するために

休み明けだから、ゆっくりと仕事・・・なんてわけには行かない仕事も少なくない。

以下、余談。写真をひとつ。
2017年 元日のみなとみらい
MMオフィス工藤氏のブログを見たら、みなとみらいの写真が載っていたので、こちらも便乗。

2017年度初の労働の対価を得る生産という経済活動を行う|「なんちゃって医療経営学」 ㈱MMオフィス代表 工藤 高のブログ

元日の横浜港クルーズ、みなとみらいの夜景・・・というのは半分冗談で、クルーズではなく伊豆大島からの帰りのフェリーで、横浜港に寄港する直前に写したものだ。

2017/01/04

赤だれを見つける

本年もどうぞよろしくお願いいたします。

年末に地方創生に関するデータ分析の本を読み、大晦日に伊豆大島に帰省し、1日に東京に戻ってきた。

そのタイミングで読んだ記事がこれ。

伊豆大島が「ゴジラ」に頼る、残念な思考 (1/7) - ITmedia ビジネスオンライン

シン・ゴジラ像のことはニュースになっていたのでご存知の方もいるかもしれない。そのシン・ゴジラ像の是非はともかく、伊豆大島は、東京から船で2時間弱、調布から飛行機なら30分もかからずに行くことができ、非日常の大自然を満喫できるところだ。三原山にただ登るだけでも、外輪山、内輪山、噴火口を見ることができる(遊歩道レベルに整備されている)。ミュージックビデオの撮影などでも使われる裏砂漠はどこか他の星のような景色が広がっている。

今回は表砂漠の赤だれ(下の写真)に行ってきた。道案内の看板がないどころか、道すらない表砂漠を歩かなければならないが、絶景を見ることができる。

伊豆大島 三原山の赤だれ
この赤だれは、観光地化されていないことからも分かるように、島民には良さがあまり認識されていない。また、赤だれのそばには、外輪山から滑れた当時世界一の滑り台の遺跡があるのだが、これもまた、何も看板もない。

島民にとっての日常は、非島民にとっての非日常であり、何に価値があるのか把握しようと思ったら、外部の目(もしくは視点の移動)が必要だ。

弊社が行っているデータ分析は、まさに、組織外の人間が『外部の目』としてデータを見ることで、違った観点から、問題点や価値のある点を探すことが重要な目的のひとつである。

今年はデータ分析を通じて、医療の「赤だれ(外部の人間ならではの視点で気づく問題・価値)」を探す努力をしていきたい。