2015/10/30

日経産業新聞 高齢者の栄養不足救う栄養士―介護保険適用に課題(サーチライト)

今日の日経産業新聞の記事が非常に良いことを言っていた。一部引用する。
栄養不足を解決する上で管理栄養士の役割は大きい。薬や点滴を使う前に食事を見直す。例えば、かぼちゃの煮物に牛乳を足した簡単な介護食のレシピを伝え、症状の改善につなげる。
高齢者のみならず、栄養状態を改善することは非常に重要だ。近年、病院でも管理栄養士の介入が増えている。

新聞記事では管理栄養士が患者の自宅へ訪問したケースの報酬制度について指摘している。
ただ、管理栄養士が患者の自宅に訪れるには制度上の課題がある。介護保険制度では、病院の管理栄養士は月2回の介護保険が適用され、患者の費用負担を軽くできる。だが、薬局の管理栄養士は保険適用外だ。このため、一部を患者負担の有料サービスで実施するなどして対応している。
そのような問題があったのか。恥ずかしながら、正しく理解していなかった。記事の結びもそのとおりで、非常に強く同意だ。
食事の改善で薬の量が減り、体調が良くなる高齢者も多い。長い目でみれば医療費削減の効果も見込めるのに、現場と制度がかみ合っていない。制度を見直す必要がある。

余談だが、日経産業新聞なので、ネットで読めないかも・・・

ヒストグラムを作り方を学ぶ・・・

先月あたりから業務量が溢れだし、ありがたいことに今月・来月も色々と忙しそうなので、少し社内勉強めいたことを始めてみた。

【初心者向け企画】分析の初歩を学ぼう 第1回 ヒストグラム - 医療、福祉に貢献するために

突如として、その内容をブログにも記事を載せ始めたものの、リアルタイムで記事にしているので、どのような内容になるか、方向性もあまり見えていない。

ヒストグラムを作ってもらったら、教科書的な作り方だった。最近、自分はまったく違う方法で作っているので、別の機会に紹介したい。

また、第1回の記事にコメントを書いた。最後、多峰性のヒストグラムの話題で、関節リウマチの化学療法をピックアップした。平均在院日数の施設数分布が面白い形になるので、興味がある方はぜひご自身の手で確認ください。

2015/10/29

【初心者向け企画】分析の初歩を学ぼう 第1回 ヒストグラム

2015/10/30 赤字でコメントを書きました(Masaru Watanabe)

まずは、ヒストグラムについて学ぼう。
ということなので、『DPCデータ 他院より紹介の有無』を利用して参考書(EXCELビジネス統計分析 [ビジテク] 第2版 2013/2010/2007/2003対応)に沿ってヒストグラムを作成してみました。

できたものがこちらです。


できました!!

以下、作業の流れです。

1.元のエクセルデータから、ヒストグラム作業用基礎データを作る

下の表のように、データの個数やヒストグラムの区間の数、幅を作成します


2.データ区間を作る

1で作った区間の幅をもとに、下記(途中までの抜粋)のようなデータ区間の表を作成します



3.グラフを作る

あとはエクセルのデータ分析ツールを使ってグラフを作るだけです。

「データ」のタブの「データ分析」をクリックして、


「ヒストグラム」を選び、


ポップアップで出てきた入力画面で、1,2で作ったデータのセル・範囲を指定すると、グラフが出来ました。


ただ、階級が細かすぎて正直なところ、みにくいのは気のせいでしょうか。
そこで、もう少し階級を減らしてみました。


率の区切りがなじみのあるものになったので、わかりやすくなったような気もします。

わかることは

  • 左側に山があるグラフだということ。
  • 比較的なだらかな山にみえるということ。
→左右対象の分布ではないことや、極端に低い値の施設は少ないこと、一方で高い値の施設は少なからずあること等々を理解することで、平均値からは見えてこない情報を得ることができます。平均値での比較を行うことが業務上よくありますが、分布の特性を把握しておかないと、そもそも分布の特性が異なる比較してはいけない物同士である、外れ値がある等の問題に気づかない場合があります。平均値とヒストグラムは常にセットで意識すべきと言ってもよいでしょう。

くらいでした。

だいたいにしてヒストグラムとはどんな分析に適しているのかもわからずにグラフにしてみたのが敗因だったのかもしれません。

ということで、
ヒストグラムの特徴を調べてみました。

参考にしたサイト、統計学園高等部(http://www.stat.go.jp/koukou/howto/process/graph/graph4.htm)によると、
ヒストグラムは、量的データの分布の様子を見るのに用いられます。データをいくつかの階級に分け、度数分布表を作成してから描写します。横軸にデータの値を、縦軸に度数を取ります。ヒストグラムは一見棒グラフに似ていますが、その面積が度数を表しているので、階級の幅が異なる場合には高さに注意しましょう(例えば、階級の幅が2倍になったときには、長方形の横の長さが2倍になり、縦の長さが2分の1になります)。
とあります。

うーん。やっぱりよくわかりません。

目的もなくグラフ化したことが敗因でしょうか・・・・

→勉強の一環とは言え、何かしら目的意識を持つべきでしたね。「自分の病院の課題をデータから探す」というテーマで、練習のための『自分の病院』を設定してみましょうか。
 また、単峰性だけでなく、多峰性のヒストグラムを探してみましょうか。関節リウマチの化学療法あたりが面白いかもしれません。

2015/10/28

「抗がん剤は効かない」は本当か | 毎日新聞「医療プレミア」

非常に分かりやすい。

「抗がん剤は効かない」は本当か | 医療プレミア特集 | 中村好見 | 毎日新聞「医療プレミア」


医療の質指標を特集した「病院」、非常に良い内容が盛り沢山

医学書院/雑誌/病院
巻頭の国立病院機構 桐野理事長と産業医大 松田教授の対談が素晴らしい。

例えば、P4Pについての議論。
桐野 パフォーマンスをもって支払いを増やすのは悪いとは言えません。公正で透明性の高い評価システムがコストをかけずに出るのであれば、それも1つの方法だとは思います。しかし、パフォーマンスが公正に測定できて、誰が見ても明瞭であるという状況は、医療にはないのです。逆に言えば、自分の健康管理をした人は保険料を安くしようという発想と同じで、これはよく考えないと危ない。わかりやすく言うと、リスク調整ができないのですよ。例えば、同じ手術の死亡率を考えても、比較的元気な方の手術と、非常に合併症の多い方の手術とではだいぶ違いますので、注意が必要です。(病院11月号から引用) 
強く同意する。リスク調整がされないままの評価指標は読み手の理解力が必要だ。このことは、たびたび弊社のブログでも述べている。

リスク調整について直接的に言及している記事がこれ

病院ランキングと高校ランキングの共通点 - 医療、福祉に貢献するために

次の内容も強く同意。
松田 日本は医療提供体制を支える医療制度が弱いです。例えば保険料は、日本はたかだか10%ですけれども、欧州は軒並み高い。フランスは18%の保険料ですが、国民皆保険を守るために仕方がないから彼らは払うわけです。(中略) 「負担を上げられるのは嫌。でもサービスはたくさん受けたい」というのは無理な話です。(中略) 国民の理解を求めるためにも、日本の医療はパフォーマンスやプロセスも含めて透明化する必要があると思います。(病院11月号から引用) 
医療の質と透明性については下記で言及しており、その中でQIプロジェクトを紹介している

よい患者を育てる『医療の透明性』 - 医療、福祉に貢献するために

対談では、今後、医療の質の指標をどのように展開していくか、日本全体のみならず世界レベルで捉えた考え方を議論されている。一般人・患者向けの内容ではないが、医療者は読んでおいて損はないと思う。

2015/10/27

Virtual Ward(仮想病棟)を用いた介入により、予期しない緊急の再入院が減った話

The effect of a virtual ward program on emergency services utilization and quality of life in frail elderly patients after discharge: a pilot study (CIA-68937-the-effect-of-a-virtual-ward-program-on-emergency-services-u_020315.pdf)

Virtual Wardによる介入群と、介入しない群を比較した結果、介入により予期しない緊急入院が減り、QOLが向上したとのこと。(下記は、Abstractに書いてあるConclusion)
Conclusion: The study results support the effectiveness of the virtual ward service in reducing unplanned emergency medical readmissions and in improving the QOL in frail older patients after discharge.

この論文は香港の事例だ。Virtual Wardの考え方は、地域包括ケアの概念とも親和性が高い。

下記は先日の弊社ブログ

2015/10/26

レジスタンス ~森勘太郎の物語!?~

先日観た抗生物質の多用と耐性菌に関するドキュメンタリー。Netflixで観ることができる。



RESISTANCE OFFICIAL SITE

Resistance: The Movie That Will Make You Care About Antibiotic Misuse | WIRED

抗生剤の話は人間だけでなく、家畜についても言及している。歴史など、知らないことも多かった。

でも、このドキュメンタリーを観ていて一番衝撃的だったのは、ペニシリンの歴史の話で、「森勘太郎」という人物が出てきたことだ。・・・というのは半分冗談で、moldy cantaloupe(カビのついたメロン)のことが森勘太郎に聞こえた『空耳』だった。

moldy cantaloupeが森勘太郎に聞こえるかどうかは、レジスタンスで確認してほしい
(Google翻訳ではこんな感じに聞こえる → Google 翻訳 (英語欄のスピーカーボタンを押すと音声が流れる)

2015/10/25

小児薬の分析、今後に期待!

この取り組み、非常に良いと思う。

小児薬をビッグデータ解析、副作用など調査 : 科学・IT : 読売新聞(YOMIURI ONLINE)

カルテの情報も一緒に集める点が良い。レセプトの分析では検査結果や症状が読み取れず、分析には限界がある(個人的には、その限界があることを理解したうえで、どんな切り口があるか考えるのが楽しい)。

小児薬の弊社分析例を紹介する(といっても処方薬の情報のみだ)。

小児は12月の金額が特に高くなるという話だ。まず表1は年代別の季節変動を見たもの。緑ほど金額が高く、赤ほど低い。全般的な傾向で言えば、夏は低く、冬が高い。

表1: 処方薬の季節変動(金額ベース)

しかし、この傾向は留意すべき点がある。3月が高い傾向を示すには、花粉症の影響が無視できない。そこでアレルギー関連の薬だけをピックアップした結果を表2に示す。

表2: 処方薬の季節変動(金額ベース)【アレルギー薬】
花粉症治療薬などのアレルギー薬は2月3月に集中している。至極当然の結果だろう。

では、そのアレルギー薬を除いた結果を見てみよう(表3)。

表3: 処方薬の季節変動(金額ベース)【アレルギー薬以外】
すると季節変動はあまりないことが見えてくる(表3は表1ほどではないという意味)。

ただし3月が依然として高いのは花粉症で目薬などをもらう影響が除去しきれていないためであり、また12月が高いのは年末にまとめて数週間分薬をもらうために高くなっているためと考えられる。

そんな中で、10代未満の12月は高さが目立つ。なぜだろうか? 自分の仮説では「寒い時期に保湿クリームか??」と思ったのだが、実際はインフルエンザ関連の薬の影響だった。結果から先に聞けば、当たり前過ぎるつまらないものだが、あれこれ考えながら分析するのは楽しいものだ。

余談だが、表2の情報、エクセルでは下のような3Dの棒グラフも作ることが可能だ。見栄えの良いグラフに「ステキ!」と思ってしまったとしたら危険だ。3Dにすると縦の数値の大小を比較することが困難になる。それだけでなく棒の後ろに隠れてしまった位置の情報は見えなくなってしまう。いずれにしても、こういったグラフは使わない方がよい。
使わない方がよい3Dグラフ(情報は表2と同じ)

2015/10/22

病床数とケーブルテレビの共通性、それは西高東低

昨日、ケーブルテレビを使った医療・介護・健康分野の新たな取組を紹介した。

ケーブルテレビで食事摂取状況を登録させるらしい - 医療、福祉に貢献するために

なぜケーブルテレビ??と思っていたら、いい資料を教えてもらった。


(2018/12/19)リンクが切れていたので、最新の資料に変更(最新資料では、下記と同じグラフが最新データにアップデートされています)
http://www.soumu.go.jp/main_content/000504511.pdf

自分が知らないだけで、ケーブルテレビの普及率はかなり高いらしい。


また、普及率は地域差があるらしい。



医師数や病床数と同じで、ケーブルテレビも西高東低だ!!(鹿児島、高知、北海道等の例外は置いておいて、あくまでも大きく日本をとらえた場合の話)

昨日紹介したプロジェクトは、ケーブルテレビの双方向性のみならず、普及率でも一理あると判断したと思われる。でも、このままだと東北・北海道はこのプロジェクトの恩恵を受けにくいかもしれない。

ステレオタイプ的思考が良い薬局をつぶし悪い薬局を残すことになるかもしれない

一般的に、調剤薬局の課題を下のように捉えていることが多い。実際、自分もそうだ。

門前薬局
・複数の医療機関から処方せんを持ってくる患者が少ない
・過剰・重複投薬のチェックができていない

かかりつけ薬局
・複数の医療機関から処方せんを持ってくる患者が多い
・過剰・重複投薬のチェックができている

今朝の日経の記事も、このような考え方に基づき、診療報酬改定が進むだろうと述べている。

診療報酬の16年度改定へ議論開始 社会保障費1700億円抑制へ  :日本経済新聞

果たして、このようなステレオタイプな考え方は適切だろうか。最近データ分析をしていて感じることだが、かかりつけ薬局でも、ひどいところはひどい。複数の医療機関から処方せんを持ち込んでいるのに、重複投与のチェックがまったくなされていない。逆に、門前でもしっかりチェックしようとしているところもある。新聞記事にあるような『門前薬局は「処方せんを口を開けて待っているだけ」(厚労省幹部)』と決めつけるのは問題だ。

塩崎大臣の「病院前の景色を変える」は、誤解を招きやすい発言だったと思う。しかし、「質の高い医療を提供するところには報酬を。そうでないところは撤退を」というのが真意であったと理解しており、基本的には賛成だ。

塩崎大臣閣議後記者会見概要 |大臣記者会見|厚生労働省

ただ、ステレオタイプ的な考え方で報酬を上げ下げすれば、患者が損をするに違いない。「過剰・重複投与がチェックできていないこと」に対しペナルティを、「適正にチェックできていること」に対しインセンティブを与えるべきだ。

弊社のような限られたデータを分析していても、ある程度の質を推測できるくらいだ。ナショナルデータベースを使い、各薬局をチェックし、診療報酬にフィードバックする仕組みが構築できないだろうか。

2015/10/21

ケーブルテレビで食事摂取状況を登録させるらしい

ケーブルテレビの事業、興味深い。食事内容を登録させるようだ。また、ローソンの在庫情報と繋がり、商品をおススメするといったことも考えているっぽい。

平成27年度 総務省 『医療・介護・健康分野における総合的データ連携-健康長寿社会実現に向けた先進的ICT予防モデル‐ に関する調査の請負』事業の受託について 2015年10月20日|ニュースリリース | NTTデータ経営研究所

インターネットではなく、ケーブルテレビが前提となっている点など、疑問に思うことも多いのだけど、病院も枠組みの中に参加していたり、いろいろ練っている感じが伝わってくる。未来のワクワク感みたいなものはまったくないが、現実的に有効かどうが興味深い。今後、どうなっていくのか、楽しみだ。

2015/10/20

【初心者向け企画】分析の初歩を学ぼう

はじめまして、これまで裏方としてデータベース整備等を行っているスタッフです。いつもはデータ整備がメインで分析はしていないのですが、簡単な分析を学びがてら、その内容をブログに書いてみようということになりました。

正直、分析と言われても???です。(ただ、エクセルは日頃からデータ整備で良く使っているので、簡単なマクロも組めます)

そもそも、どんなことをすれば勉強になるのか、さっぱり分からないので、内容は決めてもらいました。

次の3つです!

1.ヒストグラム

DPC算定病床数の施設分布



2.散布図

平均在院日数と「在院日数の指標」の関係


3.箱ひげ図

施設規模による手術症例割合の傾向



グラフのサンプルももらいました。厚労省が開示しているDPCデータを基にしたものだそうです(自分はこれだけではないですが、色々なデータをデータベース化したりしているので、中身は何となく知ってます)。

次回、ヒストグラムを作ってみます。(注: もちろん、不定期連載です!!)

2015/10/19

不妊治療の公的補助強化に必要な情報の透明化

ちょうど3年ほど前、不妊治療に対する医療保険の話題を書いた。

「不妊治療に民間医療保険、解禁へ」のニュースを読んで - 医療、福祉に貢献するために

当時は、保険業法を改正し、病気とみなされない不妊治療に対し保険が適用されることを議論していたのだが、昨年の保険業法改正にその内容は盛り込まれなかった。

不妊治療の負担は金銭面のみならず、精神面や肉体面でも非常に大きい(弊社レポート参照→Our Reports | 株式会社メディチュア)。ただ、せめて金銭面だけでも解消されれば・・・という思いが少なからずあり、保険の貢献余地は大きいと思っていただけに、法改正が行われなかったことは残念だ。

ただ、3年前の記事でも書いたが、保険が認められるのであれば、情報の透明化が不可欠だ。先週金曜の日経の下記記事でも不妊治療に触れていたが、公的補助を拡大する議論をするのであれば、情報の透明化も議論されるべきだろう。

育児支援で企業に追加負担 政府方針、最大1000億円規模  :日本経済新聞

情報の透明化がなければ、助成制度や補助制度が非効率な形で利用されてしまう可能性がある(妊娠しにくい人ほど手厚い保障が必要とは言え、極めて妊娠しにくい人に多くの保障をすれば、相対的に子どもはあまり増えない。また、制度を悪用する可能性も否めない)。

なお、この流れは、安倍内閣が打ち出している「ニッポン一億総活躍プラン」に沿っているようだ。(以下、安倍総理の記者会見メッセージから引用)
「子どもが欲しい」と願い、不妊治療を受ける。そうした皆さんも是非支援したい。「結婚したい」と願う若者の、背中を押すような政策も、打っていきたい。誰もが、結婚や出産の希望を叶えることができる社会を、創り上げていかなければなりません。
そうすれば、今1.4程度に落ち込んでいる出生率を、1.8まで回復できる。そして、家族を持つことの素晴らしさが、「実感」として広がっていけば、子どもを望む人たちがもっと増えることで、人口が安定する「出生率2.08」も十分視野に入ってくる。少子化の流れに「終止符」を打つことができる、と考えています。 
出所: 安倍晋三総裁記者会見(両院議員総会後) | 総裁記者会見 | 記者会見 | ニュース | 自由民主党 

2015/10/18

生活習慣の可視化による効果的な治療・処方の選択

血圧が高いから降圧薬を処方される。コレステロール値が高いから高脂血症治療薬を処方される。これらはごくごく当たり前のこと。高血圧については、家庭用の血圧計が普及していて、薬物治療に加え、減塩等の生活習慣の見直しなどの自己管理も大事とされている。

喘息では、喘息手帳といった定性的な記録を医師とのコミュニケーションに使っていたが、現在は、ピークフローメーターがある程度普及し、定量的な評価ができるようになっている。

ピークフローもSPO2もインターネット上に情報が保存される時代へ - 医療、福祉に貢献するために

では、睡眠障害はどうだろうか。

「眠れない」という訴えだけで即治療薬が処方されるわけではないが、定性的な情報を中心に判断することも多いという。おそらく、これからは定量的な情報が必要となるのではないだろうか。例えば、fitbitのアクティビティトラッカーを使って記録した自分の睡眠は、下のように可視化される。

fitbitのリストバンドで計測した結果

このような情報を基に判断することで、より的確な対応・治療に繋がるのではないだろうか。

先日聴いたSleepioの話は興味深かった。
Sleepio | Can't sleep? Get to sleep and stay asleep without pills or potions



SleepioはfitbitやUP、iPhoneなどと連携できるようだ。定量的な情報を得ることは欠かせないだろう。ちなみにHealth2.0のセッションのひとつには、トラッキング ~頭の先からつま先まで~、というテーマもあった。トラッキング・モニタリングにより、これまでの医療が変わる余地は非常に大きいだろう。特に生活習慣の可視化は、医療費をより有効に使うために不可欠だ。これは単純に医療費を抑えるという意味ではない。どうせ薬を使うのであれば、より効果が高いように使うべきと考えている。

2015/10/16

Virtual Ward(仮想病棟)の入退院マネジメントはリアルな病棟そのもの

先月、Virtual Wardについて紹介した。

Virtual Ward(仮想病棟)の可能性 - 医療、福祉に貢献するために

今回は、Devon Predictive Modelに関するレポート(South Devon and Torbay | The King's Fund)から、その入退院マネジメントについて紹介したい。(リスクレポートの中身や、病棟でどのようなケアが行われるかは別の機会に・・・)

入退院マネジメントは次のStep.1から6までになっている。

Step 1: 予測リスクレポートの作成

毎月リスクレポートを作成する。すでに仮想病棟に入院している患者も「ハイリスク」として分類する。病棟コーディネーターらはウェブサイト上でこのレポートを見ることができ、関係者との情報共有がなされる

Step 2: 仮想病棟ミーティングの対象患者抽出

仮想病棟ミーティングの前に、プライマリーケア医やプラクティスナースは仮想病棟コーディネーターと会い、リスクレポートや仮想病棟入院候補者リストについて討議する。仮想病棟コーディネーターは、プライマリーケアシステムの電子情報から、患者ごとのフィジカル・メンタル状態などのバックグラウンドの情報などを得ることもできる。

Step 3: 仮想病棟ミーティングの実施

仮想病棟チームは月1回、病棟患者のステータスをレビューする。患者は赤・黄・緑の信号機の色で管理されている。また、リスクレポートから、新規入院患者の状況を討議する

Step 4: 患者評価

仮想病棟への新規入院が決定した患者は、ケースマネージャが割り当てられる。
ケースマネージャは、仮想病棟の他の医療スタッフが分からないことがあれば、何でも応えられるようにしている。ケースマネージャは、患者の病態、精神的な状況、家族環境や、個人の要望・願望などまで把握する。

Step 5: 積極的な多職種介入、患者管理の継続

ある患者は電話でのコミュニケーションで良いが、ある患者は対面が望ましいかもしれない。
患者ごとの病態や家庭環境などに応じ、介入の内容はテーラーメイドで対応している

Step 6: レビューと仮想病棟からの退院検討

仮想病棟の患者は信号機の色でステータス管理され、仮想病棟のベッドコントロールがなされる。
仮想病棟からの退院が決まった患者は、”外来患者”(そもそもは病院に入院していない外来患者だが、仮想病棟から退院した外来患者という意味)に戻る


これらのステップはまさに通常の病棟運営と同じと言えるのではないだろうか。あくまでも仮想病棟であり、患者は物理的に病院に入院するわけではない。しかしながら、仮想病棟の中で病態のみならず、家庭環境や精神面まで情報把握し、積極的に多職種が介入している点は非常に興味深い。


日本でもすでに似た取り組みが

先月からVirtual Wardについて調べているのだが、似た取り組みは日本でも見られる。ある病院では、外来患者について、入院するリスクを評価し、積極的な介入を行っているとのこと。この病院では、外来看護師が率先して動いていた。また、この病院のリアルな入院病棟では、再入院を防ぐ取り組みも数多く行っていた(在宅復帰へ向けた取り組みは様々聞くし、学会等でも多く報告がなされている)。Virtualというと少し突飛なアイデアのように思うかもしれないが、すでに日本でも似たような取り組みが行われており、その根底にある考えは同じであった。そう考えるとまだまだ自分が勉強不足なだけだ。反省したい。

参考にしたレポートはこちら
South Devon and Torbay | The King's Fund

2015/10/15

DPC.go.jp みたいな医療情報一元管理サイトを作って、データの資源化をすべき

昨日のDPC評価分科会で、病院指標の作成と公開について議論がなされたようだ。その資料(www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12404000-Hokenkyoku-Iryouka/0000100963.pdf)には、次のように書かれていた。
平成 26 年 5 月 14 日 DPC 評価分科会において、「病院指標の作成と公開」についての特別調査結果が報告された。大多数の医療機関がデータの公表に関しては賛成しており、DPC データの質向上に一定の効果が期待できるものと考えられた。
参考:現在提唱されている項目(7項目)
1)年齢階級別退院患者数
2)診療科別症例数の多いものから3つ
3)初発の5大癌の UICC 病期分類別ならびに再発患者数
4)成人市中肺炎の重症度別患者数等
5)脳梗塞の ICD10 別患者数
6)診療科別主要手術の術前、術後日数 症例数の多いものから3つ
7)その他(DICの請求率等)
中身については、患者視点が不足しているのでは?という指摘を3年前にしている(下記リンク参照)。この考え方は現在も変わっていない。

DPC評価分科会 何のための指標か、誰のための指標か - 医療、福祉に貢献するために

病院指標の中身は別として、DPCデータの質の向上を目的とするのであれば、そもそも、病院個々で作成しなくてもいいではないだろうか。国がDPC.go.jp みたいなサイトを作り、情報を一元管理し、データはオープンデータ化しておく。そのデータの二次利用を促す(ハッカソンとか盛り上がると思う)。よっぽど、こういった取り組みの方が患者目線での変革が期待できそうに思うのだが・・・。

情報の資源化 ~Data.Medicare.gov、これ、いいなぁ~ - 医療、福祉に貢献するために

以前も書いた。アメリカはデータを積極的に開示している。その結果が、Yelpで病院の指標が見られるような環境を作り出している。

Medicare.govの情報をわざわざ見る人は少ないけど、Yelpなら見る人が多い - 医療、福祉に貢献するために

29年度から機能評価係数Ⅱに組み込む想定で検討が進むらしい。2年後、全国のDPC病院で、フォーマットが微妙に異なり非常に見づらいサイトが量産され、結果誰もその情報を見ないような事態だけは避けてもらいたい。

情報は資源化させなければダメだ。