2022/11/30

社内ディスカッションメモ(大学統合を聞く)

大学統合を聞く(上) 地域の産業構造、転換に貢献: 日本経済新聞 

29日の日経朝刊。

以下は記事から一部引用。

――統合から3年目に入りました。手応えは。
 「法人という枠の中で色々なことがしやすくなった。一つは事務組織を統合した。事務効率化で捻出できた人員は削減せず事業の拡張に充てる。産学連携や教育面の連携も思い切って進められる。(システム業務などを担う)事務専門職の採用も今年から始めた」
 「両大学の研究者が働く教育研究拠点も設けた。このうち糖鎖(細胞の機能を決める物質)の拠点は著しく進展している。航空宇宙技術の拠点では設計とシミュレーションに強い名大と生産技術が中心の岐阜大の得意技を合わせ、設計から生産まで一貫して教える」


――機構全体の目標は何なのでしょうか。

 「地域創生への貢献と国際競争力の強化の両方をめざす。東海地域は自動車・航空産業を中心に製造業の世界的な集積地だ。大学が地域産業界に貢献するにも世界を視野に入れなくてはならない。デジタルトランスフォーメーション(DX)や車の電動化、脱炭素への転換などへの危機感は強く、地域の産業構造転換に貢献していきたい」 


連携のあり方を考える上で、非常に参考になる。

「大学人はフォー・マイ・ユニバーシティーからフォー・ザ・パブリックに意識を変える必要がある」という言葉は、医療関係者にも当てはまるし、自分にも当てはまる。

訪問看護ステーション数の可視化

直近の二次医療圏別65歳以上人口当たり訪問看護ステーション数。都市部が多い。特に大阪や福岡、愛知などの大都市部。一方、東北は少ない。


よろしければ関連するCBnewsの記事、どうぞ。



2022/11/19

救急の受入強化、できることは何でもする・・・

広島の井野口病院の広報誌。


はつらつ55号が完成いたしました。 | 井野口病院 - 東広島の地域医療と介護を支える病院

表紙のインパクト然り、各記事の内容然り、どれも興味深いものばかり。

その中でも、特に消防署の紹介が素晴らしい。広報担当、連携部門、これは必見!

2022/11/17

「看護管理者のための診療報酬の読み方・活かし方」をいただきました


上村氏の執筆されたパートで、非常に参考なった点を挙げると、下記に一文を引用したようにP.130の診療報酬を指標や院内の共有言語とする考え方、そして、院内連携の推進は非常に強く同意。
今の時代、診療報酬で示される数字は、院内の他部署との情報共有における共通言語の一つともなります。「この数字になったの、なぜだと思いますか?」他部署の管理者とそんな会話を交わしながら、院内のチーム医療に基づく院内連携を進めます。 

また、第II部1の院内連携や在宅との連携に言及しているところもとても参考になる。

上村氏以外の方々が書かれたパートも色々興味深かった。「病棟収益アップ」の第I部4章は、見出しが「病棟収益アップのためのスタッフの意識改革術」。戦略・テクニック以前に、まず、意識改革! 意識を改革するにはどうしたらよいかという視点が徹底されて書かれているので、とても興味深かった。

上村氏といえば、Phase3での連載をはじめとした様々なところで精力的に執筆活動をされている。1、2年前にも看護必要度の本(深掘り!重症度、医療・看護必要度データ分析の活用・改善―2020年度診療報酬改定対応 | 上村久子 | Amazon)を書いたばかりのはず・・・と思ってamazonを見たら、やはり、わずか2年前だった。

ちなみに、表紙には下記のとおり「看護管理者のための」とあるが、もっと看護部を巻き込みたい病院幹部や事務職員なども、こっそり読んでおいて損はないだろう。



2022/11/12

クリニカルパス学会、シンポジウムのお手伝いを

昨日、今日、クリニカルパス学会に。

しかも、自分のような未熟者に、シンポジウムを割り当てていただき・・・。

シンポジウム | 第22回日本クリニカルパス学会学術集会【2022年11月11・12日】

プログラム委員のみなさまの企画力・行動力に圧倒され、ただただ、自分の至らなさを痛感する1年。

そして、その企画力などの答え合わせをするかの如く、シンポジウムやパネルディスカッションでの盛り上がりを見て、本当に勉強になりました!という気持ちがあふれた。

また病院経営をテーマにしたシンポジウムは、座長の自分の未熟さはさておき、それぞれの発表者が非常に素晴らしい発表をしてくださった。本当にどれも素晴らしかった(この演題を選んだ自分を褒めていいと思う)。

クリニカルパスの取り組みを推進していく上で、黒字・赤字だけをアウトカムにすることは絶対にない。ただ、経営的な視点を持つことは重要で、どういった切り口で、どういった取り組みをすればよいか。その観点で、最初の2演題は非常に示唆に富む、発表をいただいた。このような試行錯誤を、過去に通過してしまった達人たちにとっては、新規性に乏しいところもあっただろう。しかし、昨年のクリニカルパス学会で、ある施設の方の発表を聞いて、こういった演題の重要性を認識し、採択させていただいた。その目論見通り、大変勇気をもらえる内容だった。

そして、次の2演題は、クリニカルパスと経営を強く意識すると、行き着くゴールを見せてくれるようなものに。診療報酬の制度は2年に一度変わり、病院経営環境はコロナに代表されるように水物である。パスをどうしたらよいか考える上で「経営」は絶対に無視できないことを認識させてくれる(これが3題目)。ただ一方で、行き着く先が診療報酬制度の矛盾であったりもする(これが4題目)。標準化を図り、医療従事者・患者が望む方向性を突き詰めた結果、経営的なメリットがあまりないどころか、むしろデメリットがある、と分かった場合、どうしたらよいのか。これはあまりにも非情だが、診療報酬制度は完璧でない。ただ、このような矛盾を解消するには、パスの力が活かせるのではと信じている。

具体的には次の2つ。

・在院日数短縮を目指すことが困難なもの、もしくは在院日数短縮が患者のアウトカムを著しく悪化させるケース(周産期、小児医療で散見される。切迫早産などはその代表的な疾患)

・リスクに対し医療資源を投入した方がアウトカムが良くなると分かっているものの、リスクが低いケース(DPC環境下、予防的投与は最小限に抑えたい。検査・画像も抑えたい。もしイベントが発生すれば、別のDPCコードになって経営的には損をしないが、予防的投与や検査・画像は持ち出し)

1点目は、CBnewsの記事などでも書いてきているが、効率的な病床利用を目指すなら効率性係数の評価を高めることは重要なのは間違いない。ただ、短くすることでデメリットが生じるような疾患は、効率性係数の計算から除外する、DPCの階段状の点数制度を見直すなど、抜本的な見直しが必要だと考えている。今回のパス学会でも、いくつかそのような矛盾をつくような発表があった(病院経営のシンポジウムの4題目も、大局的な視点、患者に寄り添う視点のバランス感覚の素晴らしい内容だった)。

2点目は、DPC対応と称して、医療資源投入量を抑える取り組みを推進することは重要だが、リスクを減らすための資源投入はもっと評価されるべきだと思っている。今回のパス学会でも、ポスター等でも医師の判断で患者により実施・不実施だったエコーをパスに組み込みリスク低減・標準化を図るケースが報告されていた。

以下は個人的な考えである。

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新規薬剤を保険収載する際、費用対効果を参考にする取り組みなどが始まっている。このときは、ある薬剤が1万円の価値が妥当かどうか、アウトカムなどを考慮し、比較検討される。

しかし、保険収載されてしまうと、あるパスの中でその薬剤を使う価値があるかないか判断するのは、各病院の中での経済合理性になってしまう。黒字・赤字スレスレのパスなら、そのような追加の薬剤投与には慎重になる。1万円の薬剤は1万円の価値があるかどうかではなく、いかにコストを抑えられるか、抑えられないか、に変わっている。そして、皆が追加コスト投入を避け、1万円支出を抑えたDPCコードは、改定時に、1万円のコストを含まない点数で設計されてしまう。ますます各病院はこの薬剤の投与に慎重になるだろう。

つまり、医療従事者・患者が納得する「医療」よりも、医療従事者が妥協したコストを抑えた「医療」が選択される。個人的には、これは望んでいない医療である。

アウトカムのために無尽蔵に医療費をかけて良いとはもちろん思わない。ただ、どこまでコストをかけるべきかの議論が欠けたまま、コストを抑える方向ばかりに突き進みやすい現状に疑問を感じている。

これに対する答えは、クリニカルパスにある。エコーの例に代表されるように、病院で標準化したパスが、国内で標準化され(実質、ガイドラインのようなものか)、その医療資源投入量に応じた点数設定がされるべきである。成熟したDPC制度下において、無駄・ムラを減らすのはこれまで同様に重要である。しかし、それにもまして、価値ある医療資源投入を評価する仕組みを作らなければ、リスクを過小評価することにつながりかねない。

漫然とした(標準化されておらず、価値のあいまいな)医療資源投入は認めなくない。だからこそ、クリニカルパスなのだ。

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そして、5題目、6題目は、事務職員を巻き込んだ取り組み、多職種で構成した在宅療養支援チームの取り組みを。どうやって多職種を巻き込んでいくか。これは今回の学会のテーマであるダイバーシティを強く意識したもの。事務職員やチーム医療が経営に貢献している実感を得るには、クリニカルパスが大いに貢献するのではと思っていたところに、的確に応えてくださった。事務職員はもっと活躍できる。そのプロフェッショナリズムは、他職種から、もっと認められていい。ただ、そのプロフェッショナリズムが見える形になるともっとよい。「算定件数が増えました!」「 収入が増えました!」もいい。アウトカムの視点もあるともっといい。提案できるとさらにいい。「収入増やせますよ」「アウトカム良くなりませんか?」 そういった観点でパスは貢献し易い。また、チーム医療もそうだ。アウトカム重視で動くと、コストの視点が欠けたりする。どういったことに価値が波及するか。俯瞰することが重要である。

5題目、6題目は、勝手にそんなことを期待して発表を拝聴したが、期待をはるかに上回る、大変勉強になる内容だった。むしろ、こちらの理解不足で、頓珍漢な質問をしてしまって、反省している。

今回の学会では、クライアント病院やデータ分析をお手伝いしている病院の発表も聴くことができた。あらためて、すごい病院・すごい方々だなと実感した。お互いに切磋琢磨・・・などという甘えた考えは一切通用しない世界なので、ただただ精進するのみだ。

本当に素晴らしい学会を運営くださった松波総合病院のみなさまに感謝、そして、わざわざシンポジウムを聴きに来てくださったみなさまに感謝。

2022/11/10

在宅医療の充実は? 訪問看護ステーションのデータから考える

訪問看護ステーション、目指すのは機能強化型? 敷地内?(前編) - CBnewsマネジメント

訪問看護ステーションが不足しているか、余っているか。機能強化型を目指すべきか否か。同一敷地内の要件は意味があるか。

これらは自分が知りたいこと(どのくらい読者の方々のニーズがあるか不安・・・)

データからどこまでこれらの疑問に迫れるかチャレンジしてみたのが、今回のCBnewsの記事。思った以上にボリュームが増えてしまったので、前編・後編に分けた(後編のデータ分析までは終わっている。もし文章を書いてみて、ボリュームがさらにあふれてしまったら、前編・中編・後編に、なんてこともありえるかも)

訪問看護ステーションは急増しているけど、実は・・・、というのは後編で。


ちなみに、記事で引用した全国訪問看護事業協会のウェブサイトで公開されているステーション数の推移グラフは下記に。

訪問看護ステーション基本情報 – 一般社団法人全国訪問看護事業協会


2022/11/08

セミナー(オンデマンド配信)のご案内

先月、医用工学研究所様主催のセミナーで話をさせていただきました。その内容をオンデマンド配信してくださっております。

役に立つ原価計算、役に立たない原価計算 〜値上げラッシュの環境下にできることを考える〜 - 株式会社医用工学研究所

今回は原価計算をテーマにいたしました。

ちょうど、このセミナーの次の日曜に開催された日経ヘルスケアのセミナー(医療マネジメントセミナー2022)にて、MMオフィス工藤氏は講演の最後に人件費率で判断することの留意点を述べられ、また、愛仁会の内藤理事長も労働分配率を見ることの妥当性を述べられていました。

高額薬剤の使用増加や、自費診療の多さなど、病院の特性に応じ適切な判断をしなければならず、他院や全国平均などとの比較は意味をなさない可能性があると肝に銘じておくべきでしょう。

厳しい経営環境下で適切な判断をするためには、さまざまな経営指標の活用を考える必要があります。原価計算は、一見、黒字・赤字といった分かりやすい結果が得られる反面、その結果の取り扱いに極めて注意が必要です。特性を理解し活用することで、先人たち(私たち)の失敗を繰り返さずに済むことでしょう。

もしご興味、ご関心がございましたら、ぜひご覧いただけますと幸いです。