2015/08/27

今が一番高い値段??

昨日の日経MJ、「調剤薬局サバイバル」。専業大手 VS ドラッグストア、という対立構造を浮き立たせたいらしく、国保旭の前にできた日本調剤2店舗とマツモトキヨシの店舗のことを冒頭に書いていた。

国保旭の院外処方についてはこちらの記事もどうぞ
豊富な資金力を活かした質の高い医療の提供 - 医療、福祉に貢献するために

また、高知県の薬局を取り上げ、病院に行くよりも前に、薬局に寄って相談している事例を紹介していた。これが薬局の目指すところのかかりつけの姿のひとつだろう。

『病院の前に薬局に寄ってもらう』が実現したら、その先、さらに目指すところがあるはずだ。薬局に寄ったおかげで、医療の質が高まった、経済的に良くなった、という結果が必要となる。


高知の健康づくり支援薬局の話はこちらをどうぞ
新年度企画「健康づくり支援薬局をテーマにした座談会」 - 医療、福祉に貢献するために

ちなみに日経MJの記事、調剤薬局のMAにも触れていた。その中で、MA支援を手がける会社の人のコメントで、次のように言っていた。

『今が一番高い値段で売れる最後のチャンス』

さすがに煽り過ぎなコメントではないか?と思う反面、次期診療報酬改定によって薬局の経営が悪化したら、MAの値段も暴落しかねないだけに、あながち間違っていないかもしれない。

高い値段で売るかどうかは別として、やるべきことは高知の薬局の事例のように、まず薬局に寄ってもらうことを目指すべきだろう。

2015/08/23

高校生用の副教材、避妊より前に不妊が来ている

妊娠しやすいのは何歳まで? 文科省が高校生向け副教材

文科省が高校生向けに以下の様な内容で副教材を作ったらしい。

01.高校生の悩みや不安とその対処方法
02.考えよう、日々の事件・事故災害から身を守るために…
03.君たちの自転車の乗り方は安全?
04.自分の命、他者の命を守るためにできることは…
05.高校生が気を付ける食生活
06.体重コントロール
07.生活習慣病
08.歯と目の健康
09.喫煙は過去の習慣?
10.飲酒の問題は社会の課題
11.危険ドラッグは毒だ!
12.喫煙、飲酒、薬物乱用を始めないために
13.情報に惑わされないで!
14.知っておきたい感染症
15.知らないと怖い性感染症
16.HIV、エイズについて正しく知ろう
17.みんなを守る予防接種
18.医薬品の適正使用
19.安心して子供を産み育てられる社会に向けて
20.健やかな妊娠・出産のために
21.「がん」ってどんな病気?
22.私たちと「がん」

健康な生活を送るために(高校生用):文部科学省

実際、19、20のところを読んでみると、高齢になると産みづらいこと(妊娠しづらい&流産・死産になりやすい)が分かる内容になっている。これまで教科書では避妊にスペースを割く一方で、不妊は一部の先生が取り組んでいるだけであった。こういった副教材は非常に良い取り組みだ。

以前、医療データをオープンにすることで医療の質が上がるはず、という主張がもっともあてはまる分野として、不妊治療を取り上げ、レポートを書いた。そのときに、この内容と関連した調査や、ブログ記事を書いた。

高齢になると産みづらい・・・という認識はほぼ出来つつあるのかもしれない - 医療、福祉に貢献するために
避妊は教わったけど、不妊は教わってない - 医療、福祉に貢献するために

Meditur Insight Vol.3 生殖医療を身近なものに

今読み返すと大したことは書いていないのだが、このときは小中高の保健体育の教科書を書い、読み込んだ記憶がある。読みながら思ったのは、学生時代、保健体育の教科書なんて、せいぜいテスト勉強で一夜漬けをしたくらいで、真面目に勉強したことなど無かった。そう考えると、この副教材も当の高校生たちが真剣味を持って読むとは思いにくいが、まずは何かのきっかけになればよいのではないだろうか。

2015/08/22

岩井整形外科内科病院―医療データ7000人分開示へ、研究用、有識者で議論開始(8/21 日経産業新聞)

昨日の日経産業新聞に表題の記事が載っていた。

腰、首の痛みでお悩みの方|岩井整形外科内科病院

記事にあった岩井医療財団の稲波弘彦理事長の言葉を引用する。
「医療は本来公共財。病院の持つ最も大きな財産である患者さんの治療データを院内のスタッフのみが活用するのは問題だ」 
病院の財産は、資産や設備、医療スタッフと答えるのが普通だろう。『患者さんの治療データ』 を財産と認識している人は珍しいのではないだろうか。

この考え方には強く同意する。データは資源であり、競争力の源泉となると常々考えている。かつてブログで次のようなことも書いている。

データを”活かす”とは - 医療、福祉に貢献するために

有識者もそうそうたるメンバーが入っているようだ。記事には次のように書かれていた。
有識者には腰痛治療の権威である福島県立医科大学の菊地臣一学長や聖路加国際病院の福井次矢院長、東京医科歯科大学の川渕孝一教授、西村あさひ法律事務所の大貫裕仁パートナー、米国での臨床経験も持つアンドリュー・テンヘイブ医師を集めた。「このような情報開示はまさに米国で始まろうとしているところだ。日本でいち早く始めることに意味がある」と川渕教授は主張する。
そして、具体的なデータ活用と議論の内容も興味深い。
7月2日に開かれた初回の委員会では、データベースに生活情報が入っており「医師が感覚的に手術を回避していることを可視化できる」、失敗例が入っており患者の精神状況も含め「何が失敗の要因なのかも分析できる」などと議論された。 
このような取り組みは非常に価値がある。何より、患者に還元できる示唆を得ようとしている点は非常に素晴らしい。

2015/08/20

Medicare.govの情報をわざわざ見る人は少ないけど、Yelpなら見る人が多い

Yelpがドクターなどのレビューの情報を表示し始めたという記事を読んだ。

Yelp will start including health data into physician reviews - iMedicalApps.com

Yelpのオフィシャルブログには、その内容が詳しく書かれている。

Yelp Official Blog: Yelp’s Consumer Protection Initiative: ProPublica Partnership Brings Medical Info to Yelp

日本語でも記事になっているかも・・・と思って調べてみたら、ITmediaニュースが、翌日に記事を書いていた。早い!!


Yelp、病院の病床数や緊急治療の平均待ち時間を表示 - ITmedia ニュース


Yelpのオフィシャルブログで取り上げられていたSan Mateoの透析センターを見てみた。今年5月にこの透析センターの前を通った(正確にはバスを乗り間違えた結果、ここの前を通っただけなのだが・・・)

YelpにおけるSan Mateo Dialysis Centerの情報
http://www.yelp.com/biz/san-mateo-dialysis-center-san-mateo


赤枠で囲ったところにこのサービス提供者の情報・評価が表示されている。情報はmedicare.govからとなっている。

Medicare.govにおけるSan Mateo Dialysis Centerの情報
medicare.gov

この施設を調べてみると、入院率・再入院率は平均的、死亡率は平均よりも低いとなっている。(当然ながら、YelpとMedicareの表示内容は一緒)

個人個人が、わざわざmedicare.govで施設情報を調べるのは面倒である。一方で、Yelpは病院に限らず、様々な情報が見られるので、敷居が低い。こういったところにオフィシャルな情報を載せるのは、非常に有意義だろう。

2015/08/19

最近読んだ本(トヨタで学んだ「紙1枚! 」にまとめる技術、景気は自らつくるもの―「丸井」創業者、青井忠治の伝記)

 

昨日、一緒に出かけていた人との帰り道で話題に出てきた本。ベストセラーになっているらしい。そしてセミナーが良かった、とのことで、自分も読みたくなり、帰りの新幹線で読んでみた。

「紙一枚にまとめる」という経験は、かつてのクライアントのひとつがそうだった。経営会議は必ずA3一枚で、とのことで、あふれんばかりの内容を詰め込むのに苦労した記憶がある。この本は、何でもかんでも1枚に詰め込むことを推奨しているわけではなく、シンプルに整理する術を、実践を通じて身に付けるための本といったところだろうか。

自分も無駄に長く話してしまうことがあるのだが、これは間違いなく、自分の頭の中が整理できていないときだ。今日もそうだったかもと思いつつ、いつもの自分の整理不足を反省していたら、降りる予定の駅に着いた。

(実践なしで)読むだけなら、非常に短時間で済む。整理の仕方をそのままマネするかどうかは別として、参考になる。



最近読んだ本の一冊がこちら。『景気は自らつくるもの―「丸井」創業者、青井忠治の伝記』
最近のマルイしか知らない自分にとって、昔の丸井を知ることができ、興味深い話が多かった。

ただ、病院にあてはめて考えるときに、『患者は自らつくるもの』ではマズイ。悪い意味で捉えると冗談にもならないのだけど、予防医学や健診の強化といった良い意味で捉えれば、患者は自らつくるものなのかもしれない。

2015/08/18

楽しそうな市民講座

1件目はこちら。

第28回 市民健康教育公開講座を開催いたします。 がん診療連携拠点病院 JA神奈川県厚生連 相模原協同病院|神奈川県

日程:平成27年8月26日(水)
     18時00分~(開場17時30分)
場所:杜のホールはしもと(7階)
定員:500名
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特別講演座 長 相模原協同病院 病院長 高野 靖悟
『野球指導における新しい指導方法』 講 師 元横浜ベイスターズ・読売巨人軍 仁志 敏久 氏

講 演
座 長 相模原協同病院 リハビリテーション科 部長 柏﨑 裕一
『野球に必要な身体機能について』 講 師 相模原協同病院 リハビリテーション室 主任 河端 将司( 理学療法士・体育学博士)
学会の市民講座などでは著名人の講演も珍しくないが、普通の市民公開講座で、元プロ野球選手は珍しいかも。病院の先生・リハスタッフも、そのネタに合わせてくるあたり、非常に興味深い。

2件目はこちら。
地域医療市民公開講座「みんなで作り上げる地域医療~住民・行政・医療のコラボで理想の医療~」
医療は医療者だけでなく、住民・患者も一緒になって作るもの、というのは弊社の考えでもあり、このタイトルに非常にひかれる。ただ、石川まで、この市民講座のためにふらっと行くのはスケジュール的に厳しいか・・・。

患者確保の競争から、医療の質の競争へ

JAMA Network | JAMA | The Potential Hazards of Hospital Consolidation:  Implications for Quality, Access, and Price

『病院統合の潜在的な危険性: クオリティ、アクセス、価格 』という記事。

病院統合は、近年、非常に活発に行われており、医療の質向上などの面で、グループ病院運営や、症例集約は少なからず価値があると述べている。

一方で、統合した結果、競争的な環境で無くなってしまうことにより、医療の質の低下などの問題が生じている可能性があるとも述べている。2012年の論文を引用し、死亡率があがってしまった可能性があると言っている。
A 2012 study of California hospitals over a 17-year period found that hospital mergers were associated with increased utilization among patients with heart disease, specifically a 3.7% increase in bypass surgery and angioplasty and a 1.7% to 3.9% increase in inpatient mortality.
(2012年に報告された17年間にわたるカルフォルニアの病院における研究では、病院統合により、心疾患の患者の利用率が向上し、バイパス術と血管形成術では3.7%も患者が増え、あわせて入院患者の死亡率は1.7%から3.9%に増えていた)

また、日本では全国一律の診療報酬制度があるため、あまり参考にならないかもしれないが(地域加算等は微々たるものなので無視する)、統合により競争的環境でなくなってしまった地域では、医療費が高くなってしまっていることにも言及している。


病院統合は、非競争的環境への転換を促し、結果的に医療の質が低下する可能性がある点は、日本でも留意すべきことだろう。

統合による症例集約等のメリットは享受する一方で、競争的な環境の持続による医療の質低下や価格の高騰を防ぐことが大事だ。それには、急性期病院で言うところの、効率性係数などの医療の質を反映した診療報酬上のインセンティブ設定が肝になるだろう。

医療機関間の患者確保の過度な競争は不要だ。これからは、医療機関間の医療の質を競争することが必要である。

2015/08/17

「病院を中心とする円内人口の測定方法」に高価なツールは不要です

日頃から統計情報には大変お世話になっている。 厚労省のデータのみならず、様々なデータがe-Statにある。

政府統計の総合窓口 http://www.e-stat.go.jp/

ここにアクセスしない日はないかもというくらいの頻度で使っている。そのe-Statに1月から新しく加わったのが、jStat Mapだ。

総務省|統計GIS機能の強化


jSTAT MAP 分析サンプル(クリックすると拡大)

分析のサンプルはこんな感じ。250mメッシュで人口の多い・少ないをプロットでき、設定地点から車で5分・10分の円(道路や河川などで真円にはならない)などを描くことができる。
こういった分析は、これまで高価なツールを使うことが多かったのだが、ちょっとした分析であれば、これで十分だ。

そう思っていたら、総務省が新公立病院改革ガイドラインを出した時の資料に、これを使って分析してね、とアナウンスしていたとのこと。 ⇒ 準公営企業室関係資料 - 総務省

自分でGISツールを使うことが難しい人であっても、この程度のウェブサービスの利用ならば、簡単な分析なら全く問題ないだろう。一度、使ってみることをおススメする。


余談だが、バックの地図をGoogle Mapだけでなく、国土地理院の地図を選択することもできる(上記サンプルも国土地理院の地図を選んでいる)。

拡大・縮小も自在で便利!と思ったら、こういった地図活用は、すでに携帯アプリとかでも実現していたようだ。昔、うおっちず(地理院地図)というサービスで地図を閲覧していた頃が懐かしい。そう思って、うおっちずにアクセスしたら、うおっちずも自在に縮小・拡大ができるようになっていた。便利になったものだ。

8/18 タイトルの漢字ミス修正、および、分析サンプルへのリンク切れを修正

2015/08/13

日経『農業の国際競争力(4)コメの生産性向上―減反廃止が不可欠(時事解析)』から医療を考える

今日の日経朝刊。減反の話。最近、減反の話ばかりだが、気になりだしたら止まらない。

記事の一部を引用する。

農業人口が40年に現在の5分の1から10分の1に減少。残った生産者に農地を集約すれば生産規模が現行の5倍の平均5ヘクタールに拡大できる可能性が高い。
農業を医療に置き換えて、読んでみよう。例えば、次のような感じだ。

農業人口・生産者 ⇒ 医療者
農地 ⇒ ベッド、医療機能

医療の集約化は、医療者の減少時代に、何らか貢献するはずだ。

次の文も同じように考えてみよう。


そのうえで生産調整をやめれば、国産米の卸価格は25年ごろに60キロあたり6千円に近づき、中国産ジャポニカ(短粒)種などとの内外価格差がなくなると予想する。
 コメの輸入関税が撤廃されても耐えられる力と、輸出拡大への競争力を国内農家が身につけることを意味する。

生産調整 ⇒ 病床規制
米の卸価格 ⇒ ベッド1日単価
米の輸入関税 ⇒ TPP?

病床規制が撤廃されてしまったら、医療崩壊につながる。医療は、競争する必要などなく、共存できれば良い。しかし、医療の質の向上には、適度な競争環境が必要である。競争環境構築の障壁は、病床規制がすべてではないが、ひとつの要因であるだろう。

さらに、先の文も引用する。


大泉一貫・宮城大名誉教授は、日本の農業が抱える最大の問題は小規模の兼業農家を守る稲作偏重農政にあるとみる。高率の輸入関税と生産調整でコメ価格を維持する政策は、低生産性と価格高止まりという結果を招いた。生産性=競争力強化のカギは従来の政策、とりわけ生産調整の撤廃にある。
小規模の兼業農家 ⇒ 自治体・公的病院

政策的なことを考えると類似性は医師会の方があてはまるかもしれない。小規模農家は票田であり、政治家は必死になって守ってきた。その結果、低生産性と価格高止まりの結果を招いたという指摘は、医療にも相通じるものがある。

低生産性・価格の高止まりは、自治体病院の多くが赤字(黒字のところもあるが、交付金措置をしなければ、大半は実質赤字)であり、そのツケは広く国民が負担している。

最後に、次の一文を引用する。
荒幡克己・岐阜大教授は近著「減反廃止」で、土地利用型農業であっても面積拡大だけでなく、単収(面積あたりの収量)の向上や畑への転換も視野に入れた作物の複合化など、長期的な視野での経営が重要と指摘する。
単収 ⇒ ベッド単価
畑への転換 ⇒ 介護等への機能転換
作物の復号化 ⇒ ケアミックス化や介護機能の併設化


『長期的な視野での経営が必要』との指摘は、至極当然のことだ。小手先の診療報酬改定対応ではなく、しっかりとしたビジョンが必要であるというのは言うまでもない。

最近、減反政策の記事が面白くて仕方がない。

2015/08/12

質向上に対するインセンティブが足りない

アメリカの病院において医療の質向上に対する金銭的インセンティブが不十分という記事。

U.S. hospitals quality initiatives lack financial incentives - FierceHealthFinance - Health Finance, Healthcare Finance

再入院を減らす努力などをしたところで、大したインセンティブがないのであれば、これ以上努力などしない、と言っている。

日本も急性期病院では、DPC病院を対象に、機能評価係数などでインセンティブをつけているが、病院が努力する「適正なインセンティブ」となっていない。

アメリカの記事にも書かれているが、努力したところで看護師1人分の給与くらいのインセンティブでは、ボーナスだって大して配れない。

努力したくなるようなインセンティブを設定するのは非常に大事なことだ。日本も効率性を改善したら、十分な金銭的インセンティブがあっても良いと思うのだが・・・・。

2015/08/11

処方せん受け取り予約サービスを使っていたら、サプリメントのキャンペーン通知が来る?

今日の日経朝刊の記事(ウェブでは昨晩の記事)。
何か新しく始めるのかと思ったけど、「ヨヤクスリ」のサービスを楽天IDに移行することの話かと思われる。


このヨヤクスリ、すでに3万8千件近くの薬局で受け取れ、全薬局の7割にも達しているとのこと。理由のひとつは、従来のファックスサービスの延長で、サービスを構築したことにあると見ている。IT化で対応するのが理想なのかもしれないが、薬局によってはなかなか難しい。しかしファックスでの処方せん受け取りは、ほとんどの薬局が対応している。そのサービスをうまく使っていることが、ここまでの拡大につながったに違いない。

インターネットで市販薬を販売するケンコーコムが提供するサービスゆえ、ドラッグストアなどはライバルのサービスに乗っていないのかと思ったら、大手ドラッグストアも、処方せん受け取りでは、協力しているようだ。近所の薬局を調べてみたら、ハックドラッグやココカラファインなどの名前が出てきた。また、当然ながら調剤薬局チェーンの大手も参加している。

利便性が増すのは良いことだ。今後の方向性を考えれば、かかりつけ薬局・かかりつけ薬剤師を意識したサービスになれば・・・と思う。可能性としては、個人情報取扱規約(下記に一部抜粋)を見た限りでは、処方せんの内容を利用し、OTC薬やサプリメントを薦めてくることは十分に有り得そうだ。

以下、個人情報取扱規約抜粋。
■個人情報の利用目的
お客様のお名前・ご住所・電話番号・生年月日・性別・メールアドレス・処方箋内容などの個人情報及び当社との取引状況等の情報を、以下の目的で利用します。
  • サービスの遂行に必要なご連絡
  • 新サービスやキャンペーン等にかかわる情報のお届けのため
  • マーケティング及びサービス促進のための統計データ作成のため
ここまで抜粋。

ファックスサービスは病院では珍しくないが、クリニックではあまり見かけない(そもそも近くの薬局で受け取る人が多いから、あらかじめファックスする必要性が低いためか)。
スマホで予約できる利便性向上は悪くない。サービスを提供するケンコーコム・楽天にとっても良いデータが集められてそうだ。

減反政策から学ぶこと

昨日、地域医療構想は、医療版減反政策なのか?という話題を書いた。減反政策は、米の生産効率向上と消費量の減少により需給バランスが取れなくなってきたときに、バランスを取り、特に小規模農家を守るために、作付制限をし協力した場合には補助金を出していた。

地域医療構想も、『病床の機能分化・連携、在宅医療・介護の推進、医療・介護従事者の確保・勤務環境の改善等、「効率的かつ質の高い医療提供体制の構築」と「地域包括ケアシステムの構築」』のために、医療・介護提供地域医療介護総合確保基金を各地域で使ってもらうようにしている。

確かに似ているのだが、米と違って、医療は保存も流通もしない。米であれば、その地域の農家が米作をやめても、他の地域で作っていれば、食べるのには困らない。しかし、医療はそうでない。脳梗塞になって、救急車に乗っても、病院が100キロ先にしかないならば、今のような治療成績は諦めなければならないだろう。医療の消費者がいるところに、医療の提供者がいなければいけない。例外もある。がんのような一刻一秒を争わない病気であれば、移動もできる。東北地方の患者が東京の病院に来ている、なんて話は珍しくも何とも無い。

がんのような例外はあれど、基本的に流通も保存もきかない医療は、米以上に市場経済の原理に合わない。結果として、地域医療構想のような協調型の政策が極めて重要になる。


減反政策から学ぶべきことは、その後の経過だ。

減反政策は2018年に終わる。

減反5年後廃止を決定 政府、コメ政策転換  :日本経済新聞

この記事に出てくる次の一文。医療にも通じるものがある。
農地集約を通じた農業の競争力強化を促すのが狙い。
地域医療構想の一つの目標地点である2025年を超えたあたりで、人口減少・医療需要減少に応じて、効率性改善のために、病床の枠が取り払われる可能性も考えられる。そのタイミングで慌てふためいてはいけない。今から、競争力を高める(≒医療の質を高め、医療従事者を確保する)ことが大事だろう。

減反政策は学ぶべきところが多い。

2015/08/10

地域医療構想は医療版『減反政策』か 書評: 町おこしの『経営学』

移動途中に読んだ15年前に出版された本。


この本の本論である地域おこしの事例自体も面白いのだが、まとめのところで触れている農水省の担当官の話が印象に残った。
中央の政策が、地方の実態に即しているかどうかという問題については、農林水産省構造改善局農政部地域振興中山間地域活性化推進室の行政官が、中央の支援態勢の現況について、以下のように説明している。
「中央としても、できる限りそれぞれの地方の実情に迫りたいが、それには限界がある。いまは、いわばシャワーしかない。中央にはこういう支援措置がありますよ、具体的にはこういう補助金制度がありますよというシャワーを、地方に向かって満遍なくかけ、それを受けた地方からの発動を待つしかない」
「シャワー」を地域医療介護総合確保基金とすれば、昨今の地域医療構想の話と同じだ。さらに以下の話もあった。
前にも意見を聞いた農水省の行政官はこう指摘している。「中山間地の、特に米作を中心に生計を立てている地域には、国家に対して潜在的に甘えの意識をもっている所が多い。しかし、その甘えの構造を作ったのは、国家の責任でもある」
米作を「ベッド数」に、中山間地を「自治体」と読みかえれば、まさに今の医療の課題と一致するではないか。

誰かが、地域医療構想を、医療版『減反政策』と言っていたが、他業界・歴史を知ることが大事だと思い知った。

2015/08/09

ヤブ医者、語源の地へ

列車内から撮ったブレブレの「養父駅」
金曜の午後を鹿児島中央駅を出発して、鹿児島→熊本→福岡→佐賀→福岡→山口→島根→鳥取→兵庫→京都→福井と電車を乗り継いできた。どの地域も何かしらのデータ分析を通じ、何となく分かっているつもりの地域なのだが、実際、その地域に行ってみるのと、みないのとでは感じるものが違う。

これまで、日本海側はピンポイントで行くことはあっても、横断したことはなかったので、旅に出てみた。

その道中で停まった養父駅の様子(もう列車は動き出しているが)。

のどかな景色だけど、山陰(島根・鳥取)の景色とはまた違う風景が広がっていた。養父と言えば、ヤブ医者。市のウェブサイトにも真面目に書いている。

薮医者の語源は、養父の名医/養父市

そして何よりも話題になっているのは、昨年から始まった「やぶ医者大賞」だろう。
へき地で頑張っている若手医師・歯科医師を・・・というコンセプトは分かるが、一般人に「ヤブ医者大賞を受賞したんですよ」とは言いづらい。イグノーベル賞のように知名度が高くなることを期待するしかないか(微妙に意味が違うか)。

ちなみに、福井から先の日本海側には行ったことがあるので、そこから内陸に入り、岐阜→愛知→長野→山梨→東京→神奈川→東京と移動中。18切符、バンザイ!!

2015/08/07

技術の進歩による病院・薬局の役割変化

「持続血糖モニターが薬局に」というニュースが国外で流れていた。

Continuous Glucose Monitors Coming to Pharmacies | MDDI Medical Device and Diagnostic Industry News Products and Suppliers

体温や血圧を測れるのは、病院やクリニックだけではなく、自宅でも可能なように、医療機器の進歩により、様々な『計測』が自宅で可能になるだろう。

これは血液検査も然りで、そのうち、一瞬で検査できるデバイスが売り出されることだろう(測定チップの開発の話を、以前、アメリカに聞いてきたことがあるので、決して、夢物語ではない)。

今どき(いや昔からか)、体温を測るために医者に行く人はいないだろうし、薬局に行く人もいないだろう。血圧は? 血糖値は? SPO2は? と様々考えていくと、薬局で始まっている検体測定室の取り組みも、将来的には不要になることも想定される。

余談だが、SPO2は、2年ほど前にiPhoneにつなぐ機器を紹介した。

ピークフローもSPO2もインターネット上に情報が保存される時代へ - 医療、福祉に貢献するために

技術の進歩により、これまで病院・薬局に行く理由となっていることが、将来、自宅でできるようになってしまえば・・・、言うまでもないだろう。それでも病院・薬局に行く理由を作るには、『結果から判断する部分』ということになる。それすらも、インターネットを経由し、ウェブの世界で完結するかもしれないが。

2015/08/05

Watsonを利用して生活習慣病のマネジメントプログラムを強化するCVS Healthの取り組み

IBMのプレスリリースに、慢性疾患のマネジメントのため、CVS HealthがIBM Watsonと提携したとあった。

IBM News room - 2015-07-30 CVS Health and IBM Tap Watson to Develop Care Management Solutions for Chronic Disease - United States

最近、Watsonの話を聞く機会が増えてきた。活用方法は色々あるが、CVSも一般的な使い方をするようだ。

CVSのプレスリリースを読むと、次の3つがポイントとして挙げられていた。
  • Helping to predict individuals at risk for declining health who may benefit from proactive, customized engagement programs;
  • Encouraging patients to adopt safe and healthy behaviors, including adherence to prescribed medicines and healthy lifestyle regimens; and
  • Suggesting appropriate use of cost-effective primary care and out-patient providers.
 意訳すると以下のような感じだろうか。
  • 健康悪化リスクのある人で、積極的な健康改善プログラムを提供する価値がある人を予測することを支援する
  • 処方薬のアドヒアランスや健康的な生活様式を含む、安全で健康的な行動をする患者を応援する
  • 費用対効果の高いプライマリケアと外来医療提供者の適切な利用を提案する
多店舗展開しているところは、質の低下と常に戦っている印象がある。スタッフのスキルアップなど、人材育成に力を入れていても、会社の理念やサービスの質に対する「覚悟」みたいなものまでを均質的に高いレベルを維持することは難しいだろう。

人工知能などの力を借りて、質の高い医療サービスを目指す、という方向性は、これからのトレンドになるかもしれない。