2016/11/24

プレシジョン・メディシンという言葉が浸透し始める

今週の日曜に放送されたNHKスペシャル、プレシジョン・メディシンの衝撃。

NHKスペシャル | “がん治療革命”が始まった~プレシジョン・メディシンの衝撃~

まだ見ていないのだが、革命を感じさせる内容であったに違いない。

このプレシジョン・メディシンについて、去年の春にブログで書いているのだが、何よりもオバマ大統領の演説を聞くのが一番良いと思っている。
NHKスペシャルではアメリカの最新事情にも触れたようで、非常に楽しみである。NHKオンデマンドでいつでも見られるようなので、見逃した方もぜひどうぞ。

2016/11/22

不妊治療をサポート対象とした保険、専門家の意見と一致

以前、不妊治療をサポートする保険商品について、実質的には積立貯金なのではということを述べた。

不妊治療をサポートする保険商品の設計は相当難しいはず - 医療、福祉に貢献するために

以下、ブログ記事より引用
月1万円程度の保険料を払って、100万円の満期一時金があって、保障も付いてるから悪くない気もするが、出産や不妊治療に対する給付金は、満期一時金から差し引かれてしまうということだ。
つまり、満期まで解約しないことを前提とするならば、実質的には、自分で10年間積立貯金をして、がん保険の特約が付いていると理解した方が良いのかもしれない。
この感覚が正しいかどうか特に気にしていなかったのだが、週刊現代の記事にこの商品に対するコメントが載っていたので、思わず読んでしまった。
注意点: 実態は積み立て貯金に近い。特定不妊治療給付金が支払われると、満期一時金からその分が差し引かれる。(週刊現代2016年12月3日号 「保険会社の社員が買わない保険」) 
専門家と同じ指摘をしているようなので、ほっとした。

個人的にこの手の記事はあまり好きではないのだが、どうしても読みたくなるときがある。この号の週刊現代には薬の話も出ているのだが、「医者と病院と製薬会社だけがボロ儲けをしている」という見出し。煽りたい気持ちは分かるが、医者と病院は、正直保険診療の範囲内であれば言うほどボロ儲けはできないように思う。(自由診療であれば、違ってくるのだろうが)

2016/11/19

人口減少と市町村合併の先にある医療システム維持の模索

昨年夏、兵庫県北部の旧日高町内(現豊岡市)に泊まった。医療関係者ならば「豊岡」と聞けば、少なからずピンと来るであろう公立豊岡病院のあるところだ。

日高町は2005年に豊岡市などと合併し、新たな豊岡市になったらしい(日高町 (兵庫県) - Wikipedia)。

この旧日高町の中心部にある日高医療センターについて、現在の建物が耐震基準を満たさない等の問題をきっかけに、今後のあり方を検討する委員会が開催されていた。


日高医療センターのあり方検討委員会 - 公立豊岡病院組合立

日高医療センターは、眼科医療が充実しているという若干特殊な病院であるものの、議論されている課題感は多くの少子高齢化が進む地域の自治体病院と同じであり、非常に参考になる。


アクセスの問題等、おそらく地域住民から反対があるに違いない。しかし、財源が限られている以上、集約化の議論は避けられない。もしこの方向性に真っ向から反発するのならば、財政的な負担や、場合によっては医療従事者確保の難しさに起因する医療の質低下を受け入れなければならないかもしれない。

報告書の内容について、簡潔にまとめられたものが広報誌にも掲載されていた。


多くの地域がこのような現実を受け入れなければならないのかもしれない。この選択を先延ばしすることが最善策ではなく、むしろ、早く決断した方が今後よりよい医療を受けられる可能性が高まるように思う。

病院へのアクセス等で反発する気持ちは分からなくもないが、反発するには受け入れなければならないデメリットもあるということを理解し、ある意味、覚悟を持って反発しなければならない。

日高を出た後に向かった舞鶴(先日のセミナーで病院再編の事例として話題に)
写っている病院は舞鶴共済病院

2016/11/18

看護必要度の評価負担軽減は絶対に必要だ!

看護必要度は、患者の病期病態、医療資源投入内容、年齢などによって定まるのであって、そこにはショックも何もない。

CBnewsの記事にも書いたが、サイコロを振る前に、次に出る目を当てるのは難しい(ただの運でしかない)が、10,000回振れば、1の目が何回出るかは、大体近い数を言うことができるだろう。

看護必要度も同じで、ある患者1人を目の前にして、病期病態や医療資源投入量だけで、A項目、B項目の点数を当てるのは難しい(サイコロ同様、ただの運である)。しかし、患者が100人、1,000人、10,000人いたらどうだろうか。大体A項目2点の患者が何人、3点の患者が何人と近い数を言うことができるはずでは・・・ということを、下記の記事で述べてみた。

看護必要度の評価は要らない!? | 医療経営CBnewsマネジメント

このサイコロの話は大数の法則と呼ばれるもので、一般にも馴染みがあるのではと思うのだが、弊社内ではバックグラウンドの関係で常識になってしまっているので、一般人の感覚がなく、実際のところが分からない。

社内の本棚にあった「年金数理」のテキストの目次には、基本原理の1番目に「大数の法則」が載っていた。15年ぶりぐらいに開いたテキストは、当時も理解できなかったが、今となってはまったく理解できない代物になってしまった。本棚にそっと戻したものの、次に手に取ることは・・・・。

年金数理のテキストの目次

2016/11/17

オープンデータは新たな議論のきっかけとなる(続き)

ヘパリン類似物質ローションの年代別数量分布。

ヘパリン類似物質ローション0.3% 外来分(院内処方+院外処方)
年代別 先発品・後発品数量
出所: 厚生労働省 第1回NDBオープンデータ(診療年月:H26年04月~H27年03月)を基に作成
言うまでもなく、乳幼児、小児への処方がダントツに多い。


今回は内服薬も見た。先発品はフロモックスに代表されるセフカペンピボキシル塩酸塩の内服薬。

セフカペンピボキシル塩酸塩(フロモックス等) 外来分(院内処方+院外処方)
年代別 先発品・後発品数量比率
出所: 厚生労働省 第1回NDBオープンデータ(診療年月:H26年04月~H27年03月)を基に作成
オープンデータはあくまでも数量上位の薬剤しか記載・公表されていないことと、公表されていても一部データが年代別で記載されていない等の問題があるので、上のグラフが絶対的に正しいとは言えないが、おそらくほぼこのような状況になっていると考えて良いだろう。ヒルドイドローション以上に乳幼児、小児はほぼ先発品である。

処方している背景として風邪などが多くを占めているのであれば、先発品・後発品以前の問題なのかもしれないが、それは別の話としておく。先発品が選択される理由に、自己負担がないから、というのがあるのならば、いつまでもこの制度を続けるべきとは思えない。このような処方状況になる理由は、患者側にあるのか、医療者側にあるのか。多くの人が興味を持って、議論していくしかない。

2016/11/13

オープンデータは新たな議論のきっかけとなる

ヘパリン類似物質ローション0.3% 外来分(院内処方+院外処方)
年代別 先発品・後発品比率(数量比率)
出所: 厚生労働省 第1回NDBオープンデータ(診療年月:H26年04月~H27年03月)を基に作成
15歳から60歳まではほぼ一定比率でジェネリックが処方されるのに、若年層と高齢層はジェネリックの比率が低い。いや、そもそも年代別で見た時に、後発品比率の最も高いところでも40%しかないことにも驚くべきなのかもしれない(意図的にこの薬剤を選んでいるので、個人的には納得の結果)。

このような分析を6年くらい行っていて、クライアントなどへの報告では似た話をしてきたのだが、オープンデータのおかげで、国全体のデータが公表されているため、遠慮なく話をすることができるようになった。

これだけで医療費の自己負担比率の議論をするつもりはないが、よりよい医療を受けたい以上、このような問題は避けて通れないだろう。

2016/11/10

肌感覚とデータ、どちらも大事

11月5日、6日に、MMオフィス工藤氏、メデュアクト流石氏とともに、セミナーで話をさせていただいた。公開データを基に、地域医療や病院経営を考える手法について、事例をなるべく沢山紹介しながら、説明させていただいた。

いくつか例を紹介すると、例えば高知県の人口推移。少子高齢化が進んでいる様子を図示してみた。一般的に「高齢化率」で用いられるのは65歳以上人口の比率だが、最近は65歳前後で働いている人も少なくないことから、この図では75歳以上人口の比率を見ている。

全国と高知県の人口推移比較
出所:国立社会保障・人口問題研究所 日本の地域別将来推計人口(平成253推計)を基に作成
さらに二次医療圏、市町村単位で見ることも可能であり、地域によって、周辺環境の変化はかなり異なることが見えてくる。
高知県安芸医療圏の人口推移比較(大きい点: 2010年 5年毎に隣の点に移動)
出所:国立社会保障・人口問題研究所 日本の地域別将来推計人口(平成
253推計)を基に作成
医療機関の多くは、その周辺数キロの範囲から大抵の患者が来ている。そのため、二次医療圏全体の地域医療構想での課題感と、その病院の課題感に若干のずれが生じることも少なくない。

そのような将来の需要動向などに対し、きめ細やかな配慮を行政に求めるのは無理があり、ある程度は、医療機関個別に検討することが大事であると考えている。当然ながら、地域のことは地域の医療機関が一番良くわかっているはずであるが、その「肌感覚」に加え、数値で定量的に把握することも重要である。

2016/11/04

病院の方向性を考える材料は身近なところに落ちている

CBnewsに回リハの記事を掲載いただいた。

公開データで回リハ病棟の開設余地を考える | 医療経営CBnewsマネジメント

分析の一例を示すと次のようなもので、病床数の充実度合いにおける東日本と西日本の違いは、これまでも多くの人が認識していたことかと思う(グラフの左側に東日本が集まり、右側に西日本が集まる)。

しかし、上下の違い、すなわち稼働率は東日本・西日本関係なくバラついている。

都道府県別 回リハの65歳以上人口10万人あたり病床数と稼働率
このような状況を身近な公開データから分析し、各病院で戦略を考えるまでの流れについて、記事では述べさせてもらった。お時間が許せば、記事をお読みいただけるとありがたい。