2015/03/05

医薬同業への転換には「アウトカム重視」が不可欠

ようやく門内薬局について議論が始まるようだ。

病院内に薬局OK 政府、規制緩和 経営の独立条件 :日本経済新聞

昨年7月のブログ記事で、規制改革会議の資料を引用し、この話題に触れている。

病院と薬局は近い方が良い? - 医療、福祉に貢献するために

『門前』薬局として一等地を押さえ安定的な地位を確保している薬局からしたら、それよりも立地条件の良い場所に新たな薬局が登場することなどありえない話だ。しかし、この規制緩和がなされれば、『門内』に新たな薬局が登場することが十分ありえる。大混乱になるだろう。

入口がそっぽを向いていようが
これは門内薬局でしょう
(2014年7月の弊社ブログより)
上記の7月のブログで、突然門内薬局が登場したケースを取り上げているが、混乱している様子が伝わってくる。

仮に門内薬局を認める方向性に動いたとき、大手調剤チェーンはどう動くのだろうか。積極的に攻めてくるようであれば、そもそもの医薬分業の理念は吹き飛んでしまうかもしれない。すでに理念より利益を優先していたと言われかねない現状であるのに、「患者の利便性向上」の名の下、一層利益に重きを置くような事態となれば、医薬分業から、医薬同業に転換する可能性すらある。

医薬同業に動くならば、報酬制度も変える必要があるだろう。アウトカムを重視し、薬が少ないほど良い評価体系にすべきだろう。風邪をひいても、風邪薬を出さない方がよい(重症化しないよう、指示・指導は入念に)。市販薬で済ませられる状況であれば、その方がよい(悪化させてしまったら、ダメ)。そのような評価制度ができるのであれば、医薬同業に賛成だ。

薬を飲み忘れても、残薬をチェックしなくても、とりあえず処方した方が損をしない上に楽である、という現状の無駄は、医薬分業が悪影響を及ぼしているかもしれない。薬歴記載の放置に見られるような、調剤薬局の薬剤師がアウトカムに責任をあまり感じないのも医薬分業の弊害と言えるかもしれない。上述のように、アウトカム重視・処方量の少ない方がよい価値観への転換は、医薬同業がカギになるかもしれない。

医薬分業の現在でも、この理念を重視している薬局があることは、以前弊社レポートで述べた。しかし多くの薬局がそうでない以上、大きな転換点を迎えるかもしれない。


2015/03/03

データでモザイク画

先日、死亡者数のヒートマップを紹介した。今回は、疾患別の情報をデータベース化したらしいので、早速、心疾患(高血圧性を除く)を可視化してみた。
心疾患(高血圧性を除く)の1日あたり死亡者数
(都道府県内での月間相対数 赤:多い 緑:少ない)


今回は1日あたりに正規化した死亡者数での比較を行った。前回同様、縦軸は都道府県番号で、47番の沖縄県は他都道府県と異なる傾向を示す等の情報が見えてくる。また疾患別のデータを持っているので、肺炎や脳梗塞、外傷など、様々な情報を可視化できる。

前回・今回は月別の変動を可視化した。ただ、人口比での絶対的な死亡者数の多寡を評価しているわけではないので、赤=悪い、という意味ではない。1年を通じて、○○月に死亡者数が多い、という意味だけである。気候などが大きな変動の要因だろう。しかし、都道府県間で違いが見られるのはなぜだろう。救急などの体制の違いだろうか。それとも年齢構成の違いだろうか。

しかし、最近はBIツールが便利になった。この分析は700万レコード近くのデータがバックにあるらしいのだが、そんなことを意識せず、EXCEL上で作業できるようにしてくれている。すごいものだ。

2015/03/02

大学病院の中身の議論をしよう(耳鼻咽喉科系疾患)

今回は耳鼻咽喉科系の疾患について考えてみたい。ただし、今までの病院別の分析と異なり、疾患・手術有無別の議論だ。

MDC03 耳鼻咽喉科系の疾患別大学病院らしさ分析結果(クリックで拡大されます)

上のグラフは、縦軸に全病院の症例数、横軸に大学病院らしさ(高いほど大学病院らしい疾患)を置き、各疾患(手術有無別)をプロットした。

例えば、030400 97(前庭機能障害、その他の手術あり)は、極めて大学病院らしい疾患であることを意味している。というのも、この症例で10症例以上なのは、大阪大学病院だけだからだ。

逆に、030440 99(慢性化膿性中耳炎・中耳真珠腫、手術なし)は、大学病院らしくない疾患であることを意味している。大学病院本院では、この疾患で年10症例以上になっているところはひとつもない。

このような切り口で各疾患を見ていくと、症例数の多い疾患では、030440 01(慢性化膿性中耳炎・中耳真珠腫、鼓室形成術あり)は、大学病院本院の比率が高い。同様に、03001x 01(頭頸部悪性腫瘍 01手術あり)も大学病院らしい疾患と言えよう。

また、全診断群に言えることだが、030400 99(前庭機能障害、手術なし)が、ひとつの示唆を与えてくれている。前庭機能障害の手術なしは、大学病院本院に入院する症例数は全体の3%程度であり、非常に少ない。大半が市中病院に入院していることになる。しかし3%の患者が大学病院本院に入院している。もしかしたら、これらの患者は、市中病院で検査しても原因が不明であった等、非常に難しい症例だったかもしれない。現状の制度上、あくまでも疾患の分類と手術・処置の内容で点数が決まってしまうが、そもそも診ている疾患が異なる可能性も考えられる。

大学病院が大学病院らしい医療を提供しているかどうか、疾患別の情報開示が望まれるところだ。