この本からは、医者と地域の人が、お互い助け合い、生活している様子が伝わってくる。
現場では、おそらく、この本では表現できないような大変な苦労や問題があるのだろうけれども、この本を読んで良かったと思える本だった。
印象に残った言葉をいくつか抜粋した。
ウルトラマンは専門医で、”医局”という星から派遣されて活躍する、サッと現れては、サッと去っていくクールな職人的存在です。一方アンパンマンは、いろんな人たちと連携して患者さんの日々の暮らしを支える、縁の下の力持ち的存在です。「ウルトラマンとアンパンマンがうまく連携することで両者の特性が、より活きるぞ!」とつくづく思います。自身をアンパンマンと例え、ジャムおじさんやメロンパンナちゃんに支えられ活躍する姿に重ねられている。そして、ウルトラマンとアンパンマンが連携することで活きるぞ!というメッセージも興味深い。
「ウルトラマンもいいけど、アンパンマンだって、かっこいいところがあるんだ。無床の(入院設備のない)ちっちゃな診療所だけれど、人口3,000人の在宅生活を支えれば、3,000床の大病院の院長なのだ!」そして、自分を奮い立たせるメッセージも、面白い。矢沢永吉とバカボンのパパをうまく登場させているが、上記の3000床の大病院の院長のくだりは、色々考えさせられる。3000床(病気で寝ている人ばかりではないから、3,000床は言い過ぎ?)の院長は、3,000人の病院スタッフ(医療を支えているのは、その家族すべて)に支えられ、日々、診療を行なっていると思うと、3,000人との信頼関係を築き、コミュニケーションを取らなければならない。むむむ、相当デキる院長だ。そして、その院長を育てるのは3,000人の役割が間違いなく大きい。
「寄りそ医」というタイトルは非常に良いと思う。医者・患者(住民)がどちらも一方的に頼るのではなく、お互い寄り添い合うことは、今後の医療・福祉を考えていく上でのキーメッセージだと思う。
最後に引用した一文は、地域医療の医師をどうやって育てるか考えている文章である。
地域医療の仲間を増やすことも必要ですが、それと同じくらい、地域医療を理解する他の分野の医師を増やすことも大切だからです。地域医療の志す医師もいれば、そうでない医師もいることを肯定的に受け止め、地域医療を理解する医師を増やすことが大切とおっしゃられている。急性期なり、療養期なり、病院の勤務医の先生方が、地域、地域の医療を十分理解していくことが、その地域に住む人たちにとって、価値のあることなんだと思う。
これは医師だけでなく、他の医療者にも共通しているし、そして、住民も理解していくことが大切だ。
蛇足だが、表紙の写真、悪いことができなさそうな顔だ。
こんな医師を増やすために、自分たちに何ができるか? まず、この本をみんなに読んでもらおうか・・・
寄りそ医 支えあう住民と医師の物語 中村伸一 |