2015/03/27

ドラッグストアは医療業界の先を見据える大事な拠点

今週23日の日経産業新聞の記事。

再編ドミノ(4)ドラッグ店、業態超える――食品・調剤、新市場へ挑む。 | JAPAN SHOP

ネットの記事では分からないが、新聞紙面では、各ドラッグストアチェーンでの業界内再編・コンビニ提携・食品スーパー提携の整理がなされている。

なぜこういった提携が積極的に行われているのだろうか。この記事の中でも、以下のように説明している。
昨春の消費増税後、再編が最も進んだ業界の1つがドラッグストアだ。 
医薬品や化粧品などを低価格で売り、高齢化も追い風に他業態から顧客を奪い「勝ち組」とされたが、伸びしろは小さくなった。都市部の店舗はオーバーストア状態が続き、一般用医薬品のネット販売解禁で異業種が相次ぎ攻め込んでくる。業界の停滞は数字が示す。2014年度のドラッグストア市場規模は6兆679億円で前期からの伸び率は1%と過去最低。店舗数も1万8千店と飽和感は強まる。
厳しくなっているのだろう。

都内の大学で持っている講義でも、ドラッグストアの財務データ・IR資料を見ながら、医療の世界を考えてもらっている。ドラッグストアは学生たちにも身近な存在であり、いろいろな意見が出る。何事でも興味を持ってもらえると学習意欲は増すに違いない。

今朝の日経1面は、「処方薬、店頭販売を拡大」であった。1面に大きく扱われるということは、専門的な情報・知識ではなく、一般的なものということだろう。今年の授業も来月から始まる。なるべく身近なテーマや、社会常識的な内容を探し、授業構成を考えたい。

2015/03/20

がん登録の充実、データの分析で医療が良くなる

LANCETの記事。



先進国のみならず、途上国も含め、がん対策にはデータが重要と書かれている。

日本では、すでにがん登録の制度が進められているが、法整備がなされ、新しい制度が2016年からスタートする。
医療を良くするためにデータが重要であり、それには患者・市民の理解・協力が不可欠だ。

2015/03/19

コストを抑えアウトカムを最大化するための近道はどこにあるのか

医薬分業に関する議論、下記で資料が公開されている。

規制改革会議 議事次第(公開ディスカッション(テーマ2:医薬分業における規制の見直し)) - 内閣府

以前、病院薬剤師の業務拡大についてブログで書いたが、調剤薬局の薬剤師も、理想的な仕事を行い、患者からもそれを期待されているのであれば、医薬分業に疑問を呈することはなかったのだろう。
かつて、弊社レポートで薬局は立地勝負となっていることなどを書いたが、現実は厳しい。

先日も言ったとおり、コストを抑えアウトカムを最大化するために、今の医薬分業を続けるのが近道か、医薬同業や経営分離の院内薬局を認めるのが近道か、というのが本質的な論点であろう。

Kinectを使いながら考えた

XBOX Oneが出たら買おう Leap Motionの参考となるKinectを使ったコントロール 
1年半前にこんなことを書いていた。

先日、ようやく購入しKinectを使ってみたところ、すごい!と思うことがたくさんあった。何よりも、センサーの感度・認識能力が想像をはるかに超えたレベルだったこと。手のひらを閉じているか開いているかが完璧に認識される。当然ながら、体の各部位がどのように動いているかも完璧で、大人でも子どもでも同様に把握できていた。また、顔で識別していると思うが、個人も特定できる。こんなことができたらいいな、とおぼろげながらも考えていたことはすべて出来ている。

操作に、もはやコントローラーは不要だ。手を挙げるなどの動作で、識別させ、進めることができる。さらには、音声認識もなかなかの能力がある。

以前、デイケアの現場でレクレーションを手伝ったときに感じたことだが、レクレーション自体はよく考えられていて楽しい。ただ、個人個人の身体能力などを考えると、それ自体にどのくらい意味があるのか疑問を感じた。また、楽しめていない人がいたことも事実であった。

楽しみながら、能力を回復・維持させるには、こういった道具は重要だろう。また、ゲーミフィケーションの応用もし易いという観点で、今後活発になるのでは・・・と思っているのだが、意外と広まらないものだ。

今後、海外でリハビリ施設を見る機会があれば、こんなことも見てきたいものだ。

ちなみにリハビリでの応用などは、事例に事欠かない。詳しくは続きを。

2015/03/18

ロボットが院内で・・・

ロボットが院内をかけめぐり(食事や薬、ゴミを運ぶ)、タブレットで病気の勉強ができ、CTやMRIなどの医療機器は絵が書いてあったり、プロジェクターで様々な動画が写せたり・・・・。

そんな夢の様な病院は、現実の話だ。(全部まとめて実現しているところはないかもしれないが、日本でも、一部一部で実現している話は珍しくないか)

こども病院だから・・・という内容も多いが、学ぶべきところは少なくない。

2015/03/17

恵まれた医療環境に感謝

先日、膝関節の手術の話を紹介した。今日は心臓の話。

New England Journal of Medicineに載っていた、薬剤溶出型ステントとバイパス術の比較の論文。

Trial of Everolimus-Eluting Stents or Bypass Surgery for Coronary Disease — NEJM

パイパス術より、ステントの方が、心疾患の有害事象発生率が高かったという結論なのだが、ディスカッションの中では、ステントは再狭窄が理由で、再度治療を行った結果、トライアルから退出してしまう症例が多かったといったことにも言及している。死亡や心筋梗塞といったイベント発生率はほとんど差がなかったとも書かれている。

ざっと読んだだけなので、細かな内容は、直接論文を読んでもらいたいが、日本はステント治療が盛んな国だ(カテーテル検査・治療が盛ん)。以前、都道府県別の65歳以上人口と心カテ検査件数を比較したことがあり、心カテ検査実施率には都道府県格差が非常に大きかったように記憶している(別の機会に紹介したい・・・)。日本は循環器領域における診断・治療は恵まれている環境と言えるだろう。医療者に感謝である。

2015/03/16

チャイルド・ケモ・ハウスの自販機

昨日、たまたま通りかかったJR蒲田駅のそばで、チャイルド・ケモ・ハウスの自販機を見かけた。携帯で写真を撮ったものの、夕方だったのできれいに撮れなかった。
JR蒲田駅の近くで見かけた自販機
自販機、初めて見た。

チャイルド・ケモ・ハウス「がんになっても笑顔で育つ」

2015/03/12

2018年問題が直撃した久喜市の記事から考える2025年問題

今朝の日経。大学の2018年問題をクローズアップしていた。

大学の閉校や移転、地方悩ます 誘致・支援したのに都心回帰、ビジョンの共有不可欠 :日本経済新聞

2018年問題とは、18歳人口が減少し始め、大学進学率が増えなければ大学入学者が減るため、大学の経営が厳しくなることだ。影響は大学にとどまらず、予備校や大学周辺でのアパート経営なども死活問題となる。(日経の記事でも、左下に用語説明が書かれている)

20XX年問題と呼ばれるものには、コンピューターの世界の2000年問題(2000年問題 - Wikipedia)、製薬業界での医薬品特許切れの2010年問題、団塊の世代が医療・介護需要を急増させる2025年問題などがある。(先日の日経には団塊ジュニア世代の勤労意欲に関する2020年問題の記事もあった。正直、20XX年問題と言った者勝ちの感が否めない)

これらの問題に共通しているのは、問題は突如起きるのではなく、あらかじめ問題になるであろうことは予見されていることだ。

2018年問題であれば、出生数は18年前から分かっていたわけで、その間、何も対応してこなかったところは、その影響が直撃するという話だ。日経の記事にある久喜市の大学の話は、実家の近所であり、実家から最も近い大学キャンパスだ。大学ができた頃、なぜ理科大が経営学部を?、なぜ久喜市が?と疑問だらけだったのだが、当時は別の町(久喜市と合併した町)に住んでいたため他人事だった。

記事によれば、市は40億円近いお金を助成したとのこと。市は大学を誘致したことで「成功」と見なされたに違いない。そして1993年にはこの問題は予見できなかったかもしれない。それは仕方のないことだが、2000年前後ではある程度予見できたはずである。このタイミングで対応をしていれば、今日のような記事にはならずに済んだであろう。残念だが、市が積極的な対応をしていた話は聞こえてこない。

■2025年問題の自治体病院・公的病院も同じこと

医療・介護需要が膨らむ2025年問題も同じである。需要が増える反面、そのあと急激な低下が待ち受けている。また、地域によっては、すでに高齢化のピークが過ぎてしまったところもある。かつて、「おらが町にも病院を」と自治体病院を作ったところは、住民にとって、非常にありがたく思われていたに違いない。しかし、医療政策の転換点を迎えている現在、過剰な自治体病院は、間違いなく、地域住民の重い財政負担となっていくだろう。道路事情の改善や医療の進展により、状況は変わっている。

2025年の問題は間違いなくやってくる。自治体病院にとって、「何もしないこと」は一番悪い。将来、日経の記事にある久喜市になってしまうに違いない。

2015/03/10

股関節の再手術の話がたまたま今日・・・

先ほど、膝関節の話題を書いたのだが、ちょうど今日、股関節の再手術率の論文が。
10年再手術率、最新データでは5%以下に下がっているとのこと。

Setting benchmark revision rates for total hip replacement: analysis of registry evidence | The BMJ
医療技術の進歩って素晴らしい!

今後大幅に増えるであろう人工膝関節置換術。費用対効果検証は興味深い

人工関節の置換術は、この10年で大幅に増えている医療のひとつだろう。高齢化が急送に進むこれからの30年間くらいにわたり、どうやってロコモーティブシンドロームと付き合っていくかは大きな課題になると思われる。

専門的な話になるが、膝関節の手術において、年齢を考慮したTKA(全置換術)とUKA(単顆置換術)の費用対効果比較に関する論文が発表されていた。

65歳以上では、UKAは経済的に優れていると述べている。比較的若いタイミングで膝関節を人工関節に置き換えた場合、10~15年で再度手術をする必要が出てくると言われている。このような「人工関節の寿命」を伸ばすことも大事になるだろう。

また、国レベルで医療費を抑えようとするならば、病院各々が「やりたい医療」をやるのではなく、経済性などを考慮した統制も必要だろう。こういった費用対効果の検証は、厚労省でも行われているものの、あまり広がりを見せていない。しかし、今後、こういった検証は当たり前のことになるだろう。

2015/03/06

アメリカでの4つの病院評価ランキングの比較結果

なかなか興味深い記事だ。

Extreme disagreement seen across hospital ratings sites - Modern Healthcare

内容は、以下の4つの病院評価・ランキングを比較し、4つ全てで評価を受けていた83病院について調査。

  1. U.S. News & World Report's Best Hospitals(Best Hospitals – US News Best Hospitals - US News)
  2. HealthGrades' America's 100 Best Hospitals(2014 America's Best Hospitals Award Recipients | Healthgrades.com)
  3. Leapfrog's Hospital Safety Score(Home | Hospital Safety Score)
  4. Consumer Reports' Health Safety Score(Hospital Ratings By State -Consumer Reports Health)
記事の内容を要約すると、以下の様な内容だ。
  • 4つの評価・ランキングの全てで最高の評価を得ている病院はなし
  • 3つで最高評価の病院は3病院だけ
  • 2つで最高評価の病院は83病院のうち1割
  • 27病院は、ひとつで最高評価を得ている一方で、いずれかのひとつでは最低評価
各評価・ランキングは、比較している内容が異なるため、このような結果になるのは致し方なく、今後、より一層、プロセスとプロセス、アウトカムとアウトカム、患者満足度と患者満足度、安全性と安全性を病院間で比較すべきである。LeapFrogの代表は「現状の評価は価値あるものを提供できていると思うが、国は病院を比較するためのはるかに多くの情報を持っている」と話している。


限られた情報で評価している以上、過信するのは良くない。群馬大学の状況を、客観的に示していたランキングが国内にあっただろうか? 個別の事象を説明できるものなど、世のランキングには無いということがわかったはずだ。

しかし、批判だけでは始まらない。記事でLeapFrogの代表が述べているように、国は膨大なデータを持っていることは日本も同じだ。積極的な開示は、少なからず患者の利益につながるだろう。

2015/03/05

医薬同業への転換には「アウトカム重視」が不可欠

ようやく門内薬局について議論が始まるようだ。

病院内に薬局OK 政府、規制緩和 経営の独立条件 :日本経済新聞

昨年7月のブログ記事で、規制改革会議の資料を引用し、この話題に触れている。

病院と薬局は近い方が良い? - 医療、福祉に貢献するために

『門前』薬局として一等地を押さえ安定的な地位を確保している薬局からしたら、それよりも立地条件の良い場所に新たな薬局が登場することなどありえない話だ。しかし、この規制緩和がなされれば、『門内』に新たな薬局が登場することが十分ありえる。大混乱になるだろう。

入口がそっぽを向いていようが
これは門内薬局でしょう
(2014年7月の弊社ブログより)
上記の7月のブログで、突然門内薬局が登場したケースを取り上げているが、混乱している様子が伝わってくる。

仮に門内薬局を認める方向性に動いたとき、大手調剤チェーンはどう動くのだろうか。積極的に攻めてくるようであれば、そもそもの医薬分業の理念は吹き飛んでしまうかもしれない。すでに理念より利益を優先していたと言われかねない現状であるのに、「患者の利便性向上」の名の下、一層利益に重きを置くような事態となれば、医薬分業から、医薬同業に転換する可能性すらある。

医薬同業に動くならば、報酬制度も変える必要があるだろう。アウトカムを重視し、薬が少ないほど良い評価体系にすべきだろう。風邪をひいても、風邪薬を出さない方がよい(重症化しないよう、指示・指導は入念に)。市販薬で済ませられる状況であれば、その方がよい(悪化させてしまったら、ダメ)。そのような評価制度ができるのであれば、医薬同業に賛成だ。

薬を飲み忘れても、残薬をチェックしなくても、とりあえず処方した方が損をしない上に楽である、という現状の無駄は、医薬分業が悪影響を及ぼしているかもしれない。薬歴記載の放置に見られるような、調剤薬局の薬剤師がアウトカムに責任をあまり感じないのも医薬分業の弊害と言えるかもしれない。上述のように、アウトカム重視・処方量の少ない方がよい価値観への転換は、医薬同業がカギになるかもしれない。

医薬分業の現在でも、この理念を重視している薬局があることは、以前弊社レポートで述べた。しかし多くの薬局がそうでない以上、大きな転換点を迎えるかもしれない。


2015/03/03

データでモザイク画

先日、死亡者数のヒートマップを紹介した。今回は、疾患別の情報をデータベース化したらしいので、早速、心疾患(高血圧性を除く)を可視化してみた。
心疾患(高血圧性を除く)の1日あたり死亡者数
(都道府県内での月間相対数 赤:多い 緑:少ない)


今回は1日あたりに正規化した死亡者数での比較を行った。前回同様、縦軸は都道府県番号で、47番の沖縄県は他都道府県と異なる傾向を示す等の情報が見えてくる。また疾患別のデータを持っているので、肺炎や脳梗塞、外傷など、様々な情報を可視化できる。

前回・今回は月別の変動を可視化した。ただ、人口比での絶対的な死亡者数の多寡を評価しているわけではないので、赤=悪い、という意味ではない。1年を通じて、○○月に死亡者数が多い、という意味だけである。気候などが大きな変動の要因だろう。しかし、都道府県間で違いが見られるのはなぜだろう。救急などの体制の違いだろうか。それとも年齢構成の違いだろうか。

しかし、最近はBIツールが便利になった。この分析は700万レコード近くのデータがバックにあるらしいのだが、そんなことを意識せず、EXCEL上で作業できるようにしてくれている。すごいものだ。

2015/03/02

大学病院の中身の議論をしよう(耳鼻咽喉科系疾患)

今回は耳鼻咽喉科系の疾患について考えてみたい。ただし、今までの病院別の分析と異なり、疾患・手術有無別の議論だ。

MDC03 耳鼻咽喉科系の疾患別大学病院らしさ分析結果(クリックで拡大されます)

上のグラフは、縦軸に全病院の症例数、横軸に大学病院らしさ(高いほど大学病院らしい疾患)を置き、各疾患(手術有無別)をプロットした。

例えば、030400 97(前庭機能障害、その他の手術あり)は、極めて大学病院らしい疾患であることを意味している。というのも、この症例で10症例以上なのは、大阪大学病院だけだからだ。

逆に、030440 99(慢性化膿性中耳炎・中耳真珠腫、手術なし)は、大学病院らしくない疾患であることを意味している。大学病院本院では、この疾患で年10症例以上になっているところはひとつもない。

このような切り口で各疾患を見ていくと、症例数の多い疾患では、030440 01(慢性化膿性中耳炎・中耳真珠腫、鼓室形成術あり)は、大学病院本院の比率が高い。同様に、03001x 01(頭頸部悪性腫瘍 01手術あり)も大学病院らしい疾患と言えよう。

また、全診断群に言えることだが、030400 99(前庭機能障害、手術なし)が、ひとつの示唆を与えてくれている。前庭機能障害の手術なしは、大学病院本院に入院する症例数は全体の3%程度であり、非常に少ない。大半が市中病院に入院していることになる。しかし3%の患者が大学病院本院に入院している。もしかしたら、これらの患者は、市中病院で検査しても原因が不明であった等、非常に難しい症例だったかもしれない。現状の制度上、あくまでも疾患の分類と手術・処置の内容で点数が決まってしまうが、そもそも診ている疾患が異なる可能性も考えられる。

大学病院が大学病院らしい医療を提供しているかどうか、疾患別の情報開示が望まれるところだ。