2016/03/20

池上彰さんのような医師がどこにいるかは分からない 書評: 厚生労働省の罪と功

厚生労働省の文句ばかりを書いている本だったらどうしよう・・・と少し不安だったが、読んでみたら、意外と良かった。

良かった点は2つ。1つ目は、近年の医療政策・診療報酬制度の変わり方に対する現場の率直な印象がストレートに語られていること。2つ目は、「かかりつけ医」に出会うヒント・選ぶポイントが良かったことだ。

今までもかかりつけ医に関しては、何回かブログで書いてきた気がするのだが、かかりつけ医は勝手に決められるものでも、医師の方から「かかりつけ」宣言されるわけでもなく、自らが探し選ぶものだと考えている。この本に書いてある出会うヒントは具体的だ。入院中であれば、地域連携室・相談室に行き、医療ソーシャルワーカーに相談すべき等。相談してもよいの?と不安に思うかもしれないが、迷ったら相談してみて良いと思う。(なお、出会うヒントは全国在宅療養支援診療所連絡会の「在宅医を見つけるには」(下記リンク参照)から引用されている)

在宅医療ネットワーク|全国在宅療養支援診療所連絡会

賢くかかりつけ医を選ぶポイントには4点挙げられているのだが、そのうちのひとつ、「医者に病気のことを詳しく聞くことで、医者の医学的知識を判断できる」と言っている。これは、その医者の医学的知識の正確性を判断するのは、通常、患者にとって不可能なことだ(それができるのなら、医者を始められる)。個人的に大事なのは、難しいことは分からないと思う人には、池上彰さんのような説明ができる医師が良いだろうし、ポジティブな気持ちにさせて欲しいと思う人には、明石家さんまさんのような話し方の医師が良いだろうし、淡々と事実だけが知りたいと思う人には、NHKのアナウンサーのような医師が良いだろう。つまり医学的知識の伝え方の適切な医師を選ぶこと、要は相性が重要だと思っている。もちろん、最新の情報などに答えてくれることも大事だ。この本では次のように述べられている箇所がある。
医者はその使命から一生勉学に追われることは当然の宿命と思われます 本書P.92から引用
なのでどの医者でも大丈夫・・・と言いたいところだが、現実、そうでないから、かかりつけ医を選ぶのが難しいのだろう。そこで、この本では、最新の知識があるか否かは、説明を受けた治療法以外の治療や他の病院での治療について聞くことを勧めている。こうすることで、医者の見識が最新かどうか判断しやすくなり、また、ネットワークがあるかどうかも分かると述べている。

良い医療を受けたいと思うのならば、少しは医療・介護制度を理解し、自ら積極的に行動する必要があるだろう。ちなみに、池上彰さんのような医師がどこにいるのかは自分も知らない(ひとりいるのだが、片道4時間以上かかるところにいるので、かかりつけになれない)。