2017/10/15

急性期病院の稼働率が低下する訳

日本全体をマクロに捉えた場合、急性期病院の稼働率が低下している理由にはいくつかある。そのひとつが「低侵襲化」であると考えている。

例えば、胃がんの手術症例(外科的手術と内科的手術をあわせて見ている)の平均在院日数は、DPC算定病院においては、18日程度(2012年度)だったものが、16日(2015年度)と年々短縮している(グラフ1 参照)。

グラフ1 胃がん平均在院日数推移

在院日数の短縮には、次の2つの理由がある。

① 同じ術式での在院日数の短縮
② 在院日数の短い術式の選択増加

この2つについて、それぞれデータ分析結果を示しながら考えてみよう。

① 同じ術式での在院日数の短縮

DPCコードに従って、開腹、腹腔鏡、試験開腹の外科手術3つと内視鏡手術の計4つについて、それぞれの平均在院日数の推移を見ると、2012年度からどの術式も在院日数が短縮している(グラフ2)。
グラフ2 胃がん術式別在院日数増減比

このような術式別に見た場合の在院日数短縮は、DPCの階段状の逓減性の点数設定や、効率性係数への影響、看護必要度の厳格化等によるプレッシャーによるものと考えられる。また、医療機関個別では、術前検査の外来化や、術後の早期退院などの取り組みがなされたものと思われる。

② 在院日数の短い術式の選択増加

術式別に平均在院日数を見ると、開腹24日、腹腔鏡17日と1週間の開きがある。また、内視鏡手術は9日台と、腹腔鏡よりさらに1週間短い(グラフ3)。

グラフ3 術式ごとの平均在院日数(2015年度)
2012年度~15年度までの術式別の症例数推移を見ると、年々内視鏡手術の患者が増え、外科的手術の選択が減っている(グラフ4)。
グラフ4 胃がんの術式別症例数比率推移

このように、内科的手術のような在院日数の短い術式の選択割合が高くなれば、全体の平均在院日数は短くなる。また、外科的手術においては、開腹・腹腔鏡で1週間の在院日数の違いがある。開腹手術は減る一方で、腹腔鏡手術の比率は高まっている(グラフ5)

グラフ5 胃がん 開腹・腹腔鏡の選択比率推移
グラフ4、5は比率で見たが、症例数で見ても、内視鏡手術や腹腔鏡手術は増加し、開腹手術は減少していることが分かる(グラフ6)。

グラフ6 胃がん 術式別症例数推移

このような2つの理由から、在院日数が減少すれば、結果として稼働率の低下は避けられない。医療技術の進歩は、よりよい医療を受けることができ喜ばしい。ただし、マクロで見れば、病院経営を不安定にさせる要素もあると言えるかもしれない。難しい問題である。