例えば、胃がんの手術症例(外科的手術と内科的手術をあわせて見ている)の平均在院日数は、DPC算定病院においては、18日程度(2012年度)だったものが、16日(2015年度)と年々短縮している(グラフ1 参照)。
グラフ1 胃がん平均在院日数推移 |
在院日数の短縮には、次の2つの理由がある。
① 同じ術式での在院日数の短縮
② 在院日数の短い術式の選択増加
この2つについて、それぞれデータ分析結果を示しながら考えてみよう。
① 同じ術式での在院日数の短縮
DPCコードに従って、開腹、腹腔鏡、試験開腹の外科手術3つと内視鏡手術の計4つについて、それぞれの平均在院日数の推移を見ると、2012年度からどの術式も在院日数が短縮している(グラフ2)。
グラフ2 胃がん術式別在院日数増減比 |
このような術式別に見た場合の在院日数短縮は、DPCの階段状の逓減性の点数設定や、効率性係数への影響、看護必要度の厳格化等によるプレッシャーによるものと考えられる。また、医療機関個別では、術前検査の外来化や、術後の早期退院などの取り組みがなされたものと思われる。
② 在院日数の短い術式の選択増加
術式別に平均在院日数を見ると、開腹24日、腹腔鏡17日と1週間の開きがある。また、内視鏡手術は9日台と、腹腔鏡よりさらに1週間短い(グラフ3)。
グラフ3 術式ごとの平均在院日数(2015年度) |
グラフ4 胃がんの術式別症例数比率推移 |
このように、内科的手術のような在院日数の短い術式の選択割合が高くなれば、全体の平均在院日数は短くなる。また、外科的手術においては、開腹・腹腔鏡で1週間の在院日数の違いがある。開腹手術は減る一方で、腹腔鏡手術の比率は高まっている(グラフ5)
グラフ5 胃がん 開腹・腹腔鏡の選択比率推移 |
グラフ6 胃がん 術式別症例数推移 |
このような2つの理由から、在院日数が減少すれば、結果として稼働率の低下は避けられない。医療技術の進歩は、よりよい医療を受けることができ喜ばしい。ただし、マクロで見れば、病院経営を不安定にさせる要素もあると言えるかもしれない。難しい問題である。