2017/11/30

【看護必要度】と【実際の看護配置】と【算定入院料】はリンクしている?

先週金曜の中医協総会で示された急性期入院の新しい評価体系案(下記CBnewsの記事参照)。点数や要件が明確に見えてこないと、なかなか賛否が言いにくいかもしれない。

【中医協】急性期入院の報酬体系を抜本見直し - CBnewsマネジメント 【中医協】急性期入院の報酬体系を抜本見直し - CBnewsマネジメント

そんな中で、日病の相澤会長が会見で述べられていた懸念(下記引用した文の赤字部分)は、真剣に考えないと医療システム崩壊につながると考えている。

日病、急性期入院報酬見直しを条件付き容認 - 医療介護CBnews 日病、急性期入院報酬見直しを条件付き容認 - 医療介護CBnews 
「診療実績に応じて段階を付けるのは当然で、報酬に差があっていいだろうと賛成する意見が多数だったが、今の看護必要度が急性期病院の大変さを表しているのか、現場感覚ではちょっと違って、ずれがあるのではないかを議論すべきではないかということになった」

CBnewsに、この懸念に対して言及した原稿を掲載いただいた。(正確には、原稿を書いたら、上記の記事が出てきた。それゆえ、この記事を引用して、それに言及する形が取れなかった)

看護必要度と看護師配置のずれから見える懸念 - CBnewsマネジメント 看護必要度と看護師配置のずれから見える懸念 - CBnewsマネジメント

具体的な内容は原稿をお読みいただきたいが、【看護必要度】と【実際の看護配置】と【算定入院料】。この3つがリンクしていない可能性について、病床機能報告データから示した。

リンクしていないと何が行けないか?

①看護必要度が高くても、看護配置は手薄にしている病院
②看護必要度が低くても、看護配置は手厚くしている病院

①が、少ない看護師で現場を回せるよう他職種がサポートしたり、システムが充実しているおかげで、高い看護必要度の負担の重い病院であっても看護配置を手薄にできるのであれば問題はない。看護師のスキルの高さや他職種の支援、システム充実が、病院の収入・利益につながると言えよう。

しかし、①が、看護必要度の評価ほど負担はなく、少ない人材で現場を回せるのであれば問題だ。このような病院では、冒頭の評価体系の変更により、一層、利益が増える可能性がある。

②も然り。看護必要度が低くても、現場を回すには看護師が大勢必要で、手厚い配置にしている場合、冒頭の評価体系の変更により、一層、利益が減る可能性がある。

つまり、評価体系を変えるには、前提として「看護必要度の評価は現場の負担を適切に表している」ということが極めて重要なポイントになる。しかし、現状はそれがおかしいのではないか?ということを、CBnewsで述べさせてもらった(一番肝となるデータは、CBnewsの記事の最後に)。


また、12月以降のセミナーでは、この内容について、いくつかのグラフをご覧いただきながら話をさせていただこうと思い、準備している。もしご都合があえば、セミナーもどうぞ(野村ヘルスケア主催のものは、病院関係者でしたら、ご参加いただけると思います→ 野村ヘルスケア・サポート&アドバイザリー

2017/11/29

昨日の続き ~看護配置の機械学習~

看護配置に関する分析の話題(趣味の世界 ~看護配置の機械学習~)の続き。

看護配置を手厚くする要因について、事前予測を列挙した。あわせて、分析した結果から得られた要因についても列挙しておく。

事前予測:

  • 看護必要度(高いほど手厚い)
  • 平均在院日数(短いほど手厚い)
  • 手術件数(多いほど手厚い)
  • 救急医療管理加算(多いほど手厚い)

分析結果:

  • 平均在院日数(短いほど手厚い) ⇒想定どおり、関係あり
  • 病床利用率(低いほど手厚い)
  • 病棟あたり病床数(少ないほど手厚い)
  • 7対1か10対1か(7対1ほど手厚い)
  • 診療科(脳外や循環器内科は手厚い)
  • 看護必要度(高いほど手厚い) ⇒A3点以上は関係性ありか。C1点以上はよく分からない

■看護必要度はノイズか??

在院日数が短いほど看護配置が手厚いのはまだ良いとして、病床利用率が低いほど看護配置が手厚い!? 利用率が下がっても看護師の配置数は速やかに減らすわけではないので、結果的に手厚い配置になっているのかもしれない。

利用率が下がると「手厚い配置」になるという構図。看護配置重視の評価制度は、利用率右肩下がりの時代には問題の多い制度と言えるかもしれない。

机上の空論で好き勝手言っておくと、看護配置に対する看護必要度の影響はノイズと言ってもいいレベル(あくまでも機械学習の的な観点で)。正直、看護必要度の評価自体に疑念を抱く・・・はさすがに言いすぎか。精査が必要だ。

2017/11/27

趣味の世界 ~看護配置の機械学習~

急性期病床の評価体型案が中医協総会で示された。中央社会保険医療協議会総会審議会資料 |厚生労働省
2017年11月24日 中医協総会資料より引用

以前、下記に述べた考えだが、7対1と10対1で、看護配置以外に違いがないのであれば、報酬は同じにすべきでは、といったことが現実味を帯びてきた。

一物二価を解消することで見えてくる質の向上 - 医療、福祉に貢献するために 一物二価を解消することで見えてくる質の向上

質の向上の観点では、看護配置よりも医療の中身にウエイトを置いた方がよい。スタッフのレベル向上がコスト抑制につながり報酬増となるため、効率的な働き方を促すこととなるはずだ。

週末、7対1・10対1の11,000病棟の稼働率、平均在院日数、看護必要度等のデータと、看護師・准看護師数データを突き合わせ、看護師の配置状況について、分析していた。個人的にはかなり興味深い結果が出てきたのだが、絶対的に誤解を産まない説明が難しく、自己満足感が強いデータだ。

重回帰分析とランダムフォレストによる機械学習の結果、看護配置に影響をおよぼすのは、7対1か否か、病床利用率、病棟あたりの病床数、看護必要度(A2点以上かつB3点以上、A3点以上)、平均在院日数、等々。看護必要度のC1点以上や手術件数は微妙な結果だった。手術件数は眼科や皮膚科などの手術も含まれているためと思われる。単純な手術件数より全麻件数の方が影響していた。C1点以上は想定外。もしかしたら、データ精度の問題かも。(データクレンジングしても30万床くらいの規模で分析できているのは、データベースを整備してくれているスタッフのおかげ。感謝!)

今回の分析結果、どこかで発表したいが、マニアック過ぎるか・・・。

2017/11/17

療養2から療養1への移行は難しい

療養病床の入院基本料2は今後の見通しが不透明だ。療養2から療養1に移行しているところがある一方で、移行できていないところも少なくない。

・・・ということを公開データから検証してみた。

高知に見る「療養2から1」への移行のハードル - CBnewsマネジメント 高知に見る「療養2から1」への移行のハードル - CBnewsマネジメント

療養病床の病床数が多い高知県では、療養2の病床も結構あるのだが、療養1へ移行しているのはごく一部であった。

ちょうど、今日の中医協で療養病床の2段階制の廃止について議論されたようで、療養2は経過措置が設けられることに対しポジティブな反応だったようだ。

【中医協】療養病棟基本料、2段階制を廃止へ - 医療介護CBnews 【中医協】療養病棟基本料、2段階制を廃止へ - 医療介護CBnews

療養病床の可視化が進めば、今後、病床数や受療率のような「需要と供給」の議論から、「質・中身」の議論に移行することとなるだろう。


療養病床における患者の疾患、治療内容やリハビリの実施状況、アウトカムが見えてくると、医療機関に対する評価が劇的に変わる可能性がある。

個人的な感覚として、充実した医療提供内容の療養病床と、そうでない療養病床を比較した場合、後者の方が利益率が良いように思う。本来あってはならない報酬体系だ。これは中身・質を軽視していることが原因なのではないだろうか・・・。

2017/11/10

東洋経済の薬局特集、冒頭の写真は・・・

今週の東洋経済は薬局の特集。

記事冒頭の調剤薬局が並ぶ絵(下の写真参照)や、伸び具合などなど、弊社のレポート(http://www.meditur.jp/reports/mediturInsight_vol_2.pdf)と類似している点があって興味深かった。

以前弊社レポートに掲載した広尾の日赤医療センター前の光景
「一般人」には不思議な光景であるがゆえ、東洋経済にも似た写真が載せられたのだろう
4年半前に書いたレポートにもはや新鮮さはないが、当時抱いていた課題感などは変わっていないということだろう。

当時も書いたが、薬局の課題は、利便性等の観点で一般人の感覚とずれてしまっていること。そして、現場で一生懸命、医療の質の向上に努めている人がいるのに、それらの人たちが報われない制度にどんどん向かってしまっていること。この2点である。

よろしければ、以前のブログ記事や、弊社レポートもどうぞ。

関西医大の話題
院外処方から院内調剤へ 街の光景はどうなったか(前半)
院外処方から院内調剤へ 街の光景はどうなったか(後半)

それ以外の話題
医薬同業への転換には「アウトカム重視」が不可欠 
門前薬局は不便だから門内薬局!? それでいいのか?? 
「とりあえず買収だ」が戦略として成り立つ調剤薬局 

 

2017/11/09

適切な評価に必要な「患者像の把握」

先日、野村證券から、これまでのデータ分析内容等を中心に改定向けの議論をまとめたものをレポートとして発行いただいた。次期改定にどこまで反映されるか分からないが、大きな国の方向性を考えたり、中医協の議論の「ずれ」を考える上で参考にいただけたらと思う。

ここでいう「ずれ」とは、例えば、改定までの時間が限られている中で、看護必要度の議論が、DPCデータでの評価・置き換えの妥当性等に費やされていて、患者像に迫る内容の見直し議論があまりされていないことを指している。2025年に向け、適切な医療提供体制を整え、かつ、現場の負担・患者に提供する医療の質に応じ、適切な報酬を設定するという意味では、置き換えの議論は昨年から下準備できていたはずであり(置き換え余地についてはだいぶ前にCBnewsで記事を書いたくらいなので)、このタイミングで委員の貴重な時間を使っていいものか疑問である。ICUの議論のように、患者像に迫り、追加で必要な評価項目がないか議論していかないと、改定に間に合わないように思う。今日の入院医療等の分科会で議論されるのかもしれないが・・・。

レポートのご希望は野村證券のお近くの支店まで。




2017/11/07

用語が面白い

MMオフィス工藤氏の書籍、日経ヘルスケアの巻頭コラムを再編集されたと聞いているが、読み直していると、あらためて面白いところに気がつく。

2018年同時改定から2025年へ“攻める”診療報酬−戦略と選択 2018年同時改定から2025年へ“攻める”診療報酬−戦略と選択
例えば、これ。
工藤氏のP.146はディスカッションの題材に最適では
医療生態系、ガラパゴス等々、言葉の選択が興味深い(ギャグのセンスはそうそう追いつけないだけでなく、こういった文章力や用語選択のセンスは、どうひっくり返っても一生追いつけない)。言葉の選択から、生態系を維持することのメリット・デメリットは他分野の事例も参考になるかもしれないことを考えさせられる。

この146ページのケースは、ディスカッションには持って来いの事例かもしれない。5~6人でのグループディスカッションであれば、役割分担をしても面白い。公立病院の院長、自治体の首長、周辺病院の院長、患者、などなど。正解はない。立場が変われば意見が変わることを理解することも大事である。

2017/11/02

年93億円らしいヒルドイド

ヒルドイドの話題が盛り上がっている。



確か6年くらい前に、生活習慣病の分析のついでで、医療制度の問題を議論するためにヒルドイドと乳幼児医療費助成制度の分析をしたことがあった。そのような経緯で、気になっている薬剤として、1年前にもオープンデータでジェネリックの処方状況を分析していた。

オープンデータは新たな議論のきっかけとなる - 医療、福祉に貢献するために オープンデータは新たな議論のきっかけとなる 

オープンデータは新たな議論のきっかけとなる(続き) - 医療、福祉に貢献するために オープンデータは新たな議論のきっかけとなる(続き)

上記の記事では、ヒルドイド(ヘパリン類似物質)に加え、セフカペンピボキシル塩酸塩(フロモックス等)の分析もしている。その理由は上述の6年前の分析になるのだが、下記の本を読んで、非常に勉強になった。この本を当時、まだ6月だというのに、2016年の個人的大賞に決定してしまったが、その評価は変わらないくらい良い本だった。

Low Value Careを減らす方法、High Value Careを増やす方法を考えさせられる本(2016年 個人的読んだ本大賞に決定!) - 医療、福祉に貢献するために Low Value Careを減らす方法、High Value Careを増やす方法を考えさせられる本(2016年 個人的読んだ本大賞に決定!)

社会保障費の財源が厳しく、改定に向けた議論が本格化するタイミングを狙ってのマスコミの報道か、などと言われている。しかし、限られた財源で、価値あるところに適切な評価をするためには、価値のないところの評価を厳しくするのは当然である。ただ、制度を変えるときに不利益が生じる患者や医療者への配慮も必要である。

2017/11/01

スーパー10対1の病院像に迫ってみた

以前CBnewsに掲載いただいた記事(同じ看護必要度でも7対1と10対1では患者像は異なる - CBnewsマネジメント)の分析内容を大幅にアップデートし、評価すべき病院像について、より具体的に示してみた。

看護必要度高い「スーパー10対1」などを評価すべき - CBnewsマネジメント 看護必要度高い「スーパー10対1」などを評価すべき - CBnewsマネジメント

看護必要度の該当患者割合だけを見て「スーパー10対1」と呼ぶ場合、それらの病院には大きく2パターンあること、そして、そのパターンの分布には大都市圏とそれ以外の地域の違いがあることを示せたつもりだ。その結果として、看護必要度の加算に対する示唆が得られたことを述べた。

なお、今回の記事は、16都道府県のデータを収集・整理してくれたスタッフのおかげだ。

余談だが、病床機能報告のデータは、国がまとめて開示してくれればいいのに(個人的な希望として、データクレンジングをして欲しいという意味が強い)と思う。データは財産・資源であるが、活かさなければ、荷物でしかない。
いっそのこと、活かしやすい形に集計・加工したものを配ってしまおうかと考えてもみたが、クレンジングなど独断で手を入れてしまっているので、公のデータとしては微妙であり、データがひとり歩きしてしまうことは避けたい・・・。難しい。