2018/09/26

5年生存率のランキングは害が多い

5年生存率の公表データをランキングで使うことに強い違和感がある。嫌悪感とも言う。
全国251病院別「がん5年生存率ランキング100」│NEWSポストセブン

今日、追加の記事で、適切な理解の仕方を促す内容が掲載されているが、どこまで多くの人が真面目に読んでくれるものか・・・。
がん「病院別・5年生存率データ」の役立つ読み解き方│NEWSポストセブン

正直、ランキングは、興味をひきやすい。週刊誌のネタとして適していることも理解できる。だが、冒頭のランキングはさすがにどうなの?という話だ。

そこで、がん診療連携拠点病院等院内がん登録生存率集計:[国立がん研究センター がん登録・統計] のデータを用いて、胃がんの5年生存率と年齢などの関係を見てみた。

5年生存率の単純比較はまったく意味がないということを考えてみたい。まず、各施設の胃がん患者のうち何割がⅠ期かということと5年生存率の関係を見た。Ⅰ期の割合が高ければ5年生存率は圧倒的に良い。
胃がん 施設別の5年生存率とⅠ期患者割合の関係

そして、年齢が高ければ5年生存率は悪い。ただし、年齢が高いほどステージが進んでいるということも言えるので、上のグラフと下のグラフは完全に独立の事象を見ているわけではない。
胃がん 施設別の5年生存率と平均年齢

純粋に年齢の影響を見るため、Ⅰ期での5年生存率と平均年齢の関係を見た。やはり年齢が高ければ5年生存率は低い。
胃がん Ⅰ期の患者における施設別の5年生存率と平均年齢

ここまで見れば、単純比較はまったく意味がないということも分かっていただけるのでは・・・と思うが、こんな面倒な話を週刊誌の記事の冒頭に書いてしまったら、興味が薄れてしまうに違いない。(ゆえに、細かい説明は省略して、ランキングにばかりクローズアップしていると思われる)

なお、週刊誌でランキングを見た一般市民が、わざわざ上位の病院に行ったとする。わざわざ行くくらいなので、多少の移動は苦にならない比較的年齢が若く、ステージも早期の患者がたくさん集まる。すると、その病院は、若く早期の患者を診るから、また5年生存率が良くなる・・・という生存率上昇ループに入る。一方、他病院はそうでない患者を診るので、生存率が下がる。

週刊誌が格差を引き起こすとまでは言わないが、決して正しいことをしているとは考えられない。結局、読み手にもランキングを適切に理解できる力が求められているということだろうか。