2021/10/27

記事に「平均年齢が同じでも格差があった」と書かれるようになったのは気のせいか

以前ブログで引用した肺がん(格差2倍は本当か? - 株式会社メディチュア Blog)に続き、胃がんや大腸がんも記事になっていた。

胃がんと大腸がんでは、タイトルに書いたとおり「平均年齢が同じでも格差があった」と付け加えられるようになった。格差があることを主張したい気持ちは分かる(みな同じじゃ、誰も読んでくれないだろうから)。ただ、リスク調整しない5年生存率の「比較」はあまりに読み手に理解力が求められる。数値が並んでいれば、比較されていれば、そこに良し悪しを考えてしまうにも関わらず、その説明はあまりにも簡単に済ませている。

なおリスク調整は、平均年齢だけではわからず(平均70歳でも、40歳と100歳の組み合わせと、70歳ふたりの組み合わせは意味が違う)、基礎疾患などの背景も重要。

肺がん同様、胃がんと大腸がんも生存率係数と平均年齢の関係をプロットしてみた。生存率は年齢に大きくひっぱられているという当然の結果に。「平均年齢が同じでも格差があった」 と主張したいなら、基礎疾患などのリスク調整をした上で、平均年齢が同じ施設間で生存率に差があった、違いは治療内容だった、という論理構成にしないといけないのだが。



ただ、がん診療の先駆的な施設のコメントや、下記のような考察(大腸がんの記事)は興味深い。

治療成績が上位の病院では、進行がんも可能な限り外科手術で切除し、抗がん剤や放射線治療を組み合わせて再発を防ぐ治療に積極的に取り組んでいた 
やはり、積極的な手術や再発予防の治療ができているのは、年齢が若く体力があり、基礎疾患などのあまりない患者が多いのでは?、というリスク調整の重要性を再認識する考察である。また、肺がんの記事同様に、胃がんの記事においてがん専門病院の医師が、基礎疾患の有無が影響していることに言及している。

自分もランキング好きなので、こういった記事がキャッチーであることは否定しない。でも、これを何もかもわかっている専門家の議論に使うのと、あまりわかっていない一般市民に読ませるのとは、まったく意味が異なる。

余談だが、週刊現代(読まなきゃよかった、想像以上にひどい内容 がん5年生存率の週刊誌的取り上げ方)のように、悪意の塊のような記事でなければ、まぁいいか・・・。