2015/04/03

「在宅復帰率」は医療の質を反映しているか

2014年度の診療報酬改定では、「在宅復帰率」がキーワードのひとつとなった。

在宅復帰を促すことは、限られた入院医療資源を有効に使うために重要だ。しかし、家庭や金銭的な事情で、在宅へ復帰したくない人もいる。また、在宅医や訪問看護が充実していない地域もある。

「医療の質」という言葉を一般人に聞くと、「腕がいい医者がいる」「いい病院(漠然とした表現だ)」「よく分からない」といった答えが返ってきた。

在宅復帰率を高める取り組みは、医療機関としては重要なのだが、在宅復帰したくない患者・患者家族からすると、医療の質を下げる要素と言えなくもない。これは在院日数の短縮も然りだ。

効率的な医療の指標は、何か犠牲になっていないかチェックしていくことが重要だろう。在院日数の指標であれば、再入院率などだ(治癒率もなのだが、現状の定義が適切でない)。在宅復帰率の指標には、何がチェックとなるだろうか。例えば、患者満足度・患者家族満足度などが考えられる。

指標を単独で比較したり、診療報酬の制限を加えていくことは、シンプルで分かりやすい。ただし、それは少なからず問題があることも認識しておくべきだろう。

車で言えば、馬力やトルク(医療の質に当たる指標)を比べている時代から、燃費(医療の効率性に当たる指標)が加わった。さらに言えば、車が5人乗りなのか、7人乗りか、2人乗りか、といった前提条件も考慮されるべきだ。極端なところでは、超低燃費のコンテストなどで1人乗りの空力を考慮し、乗り心地を度外視した競技車が出てくる。効率性の指標のように、単純に高いほどいいという指標でないものについては、複合的な観点を意識することが重要だろう。