■医療費の増大抑制は、日本の医療制度、医療提供体制を護る
医療費の増大を抑制するには、次のような改善が必要である。
1. 病気にならない
2. 病気を重症化させない
3. 必要最小限の受診に留める
4. 必要最小限の検査・治療に留める
1,2の病気にならない、重症化させないは、これまで以上に予防医学にウエイトを置く取り組みが必要であり、費用対効果の面で、絶対的、確実的な取り組みはあまりないものの、今後、活発な議論が必要な点だ。そんな中で、ケアプロのような面白い取り組みも出てきている。これまでの慣習や、常識にとらわれない発想が必要かもしれない。
ワンコイン検診という新しい試みで日本の医療を変えようとしているケアプロ |
3は、受診を抑制することは、医療費増大に歯止めをかける一方で、医療者の収入減を意味し、死活問題ともなり兼ねないため、単純な話ではないが、まず、風邪などでのコンビニ受診を控える等の取り組みがまず挙げられる。例えば、兵庫県の県立柏原病院の小児科を守る会の取り組みだ。医療費を抑えることは医療を護ることにつながることを強く実感する事例であり、特に医師不足で悩んでいる地域にとっては、こういった住民の意識改革により推進できる取り組みは、益々重要になってくるだろう。
さらに、生活習慣病などの定期的な受診を医学的見地から必要最小限の受診に抑える取り組みが考えられる。そのための制度として長期処方がある。これについては、日本医師会が2010年に実施した長期処方に関するアンケート結果が興味深い。
上のグラフによると、長期の処方が原因と考えられる問題で、遭遇割合を比較すると、次回再診予約時に来なかったということが5割を超えトップになっている。変化に気づくのが遅れることは、相対的に遭遇率が低いのは意外であった。
また、このアンケート調査報告には、長期処方をする理由として、「外来患者を少なくして、じっくり診療するため」という、患者視点ではポジティブに捉えられる意見もあり、長期処方は短時間外来診療を改善するためのよい誘導になっているようだ。
そこで、医療費の抑制、医師の時間確保、医師不足の解消(≠医師偏在の解消)のため、長期処方をより積極的に推進していく上で、海外で実施されている「リフィル処方箋」は、ひとつの解決策とならないだろうか。
■医療費の増大と医師不足を解決する可能性があるリフィル処方箋
リフィル処方箋とは、医師が処方時に、繰り返し薬局で薬を受け取ることを許可するか、しないか、処方箋に記載し、許可するならば、回数と日数の期限を記載する。患者は、身体の状態が変わらない限りは、薬局で同じ薬を受け取ることができる。これは、処方日数をより長くすると上述の日本医師会のアンケートで指摘されているような変化に気づくのが遅れる等のリスクが大きくなることを防ぐ意味でも、定期的な薬剤師の介入は効果的であり、さらに渡す薬の量が極端に多くなり1回の支払い金額が高額になってしまうことも防ぐことができる。また、医者も定期的に処方するだけの慢性疾患の患者を診なくてもよく、本来時間をかけ診るべき患者をじっくり診ることができる。これは良い事ずくめのように思える。
ただ、リフィル処方箋が導入されると、医師の診療報酬は減る一方で、薬剤師の調剤料は増える可能性が高い。まず医師、特にクリニックの医師は外来患者からの収入が減ってしまうだろう。これはミクロに医師視点で考えると厳しいことだが、マクロに日本の医療で捉えると、医師不足が叫ばれている中で、クリニックの医師数の縮小化に貢献するのではないだろうか。
また、昨今、薬剤師の調剤料・技術料は高い高いと言われている。特に錠剤の数をかぞえるだけで高い収入を得ているという批判は、調剤グループのトップが日本企業の日本人役員として最高額を得ていることがニュースになったり、一般世間でも知られるようになってきているだけに、なかなかかわすことは難しいだろう。
そこで、リフィル処方箋が導入されれば、薬剤師の本来的な価値・スキルが求められることとなる。その対価として、薬剤師が報酬を得る分には、多少なりとも風当たりは弱まるのではないだろうか。
先日の薬事日報の「全国保険薬局調査」によると、リフィル処方箋の導入について、薬局側は5割弱は必要性を感じているようだ(薬局の回答で、必要性を感じているのが5割弱に過ぎないことが意外だが)。
今後、薬局は競争が激化するものと思われる。その中で、リフィル処方箋の導入有無に関わらず、リフィル処方箋のような薬剤師本来のスキルが活かせるサービスを提供できない薬剤師、薬局は、競争力が低下していくものと思われる。
日本の医療費増大を抑制するには、様々なアイデアにチャレンジしていくことが必要ではないだろうか。リフィル処方箋、これまで以上に積極的に導入是非を議論してもらいたいものだ。
ちなみに、医療費抑制の策、「4. 必要最小限の検査・治療に留める」。これは別の機会に考えてみたい。
リフィル処方せんにも言及している弊社レポートはこちら ⇒meditur insight vol.2 調剤薬局の課題と未来 発行いたしました
そこで、リフィル処方箋が導入されれば、薬剤師の本来的な価値・スキルが求められることとなる。その対価として、薬剤師が報酬を得る分には、多少なりとも風当たりは弱まるのではないだろうか。
先日の薬事日報の「全国保険薬局調査」によると、リフィル処方箋の導入について、薬局側は5割弱は必要性を感じているようだ(薬局の回答で、必要性を感じているのが5割弱に過ぎないことが意外だが)。
2013/1/16 薬事日報「全国保険薬局調査」結果概要より |
今後、薬局は競争が激化するものと思われる。その中で、リフィル処方箋の導入有無に関わらず、リフィル処方箋のような薬剤師本来のスキルが活かせるサービスを提供できない薬剤師、薬局は、競争力が低下していくものと思われる。
日本の医療費増大を抑制するには、様々なアイデアにチャレンジしていくことが必要ではないだろうか。リフィル処方箋、これまで以上に積極的に導入是非を議論してもらいたいものだ。
ちなみに、医療費抑制の策、「4. 必要最小限の検査・治療に留める」。これは別の機会に考えてみたい。
リフィル処方せんにも言及している弊社レポートはこちら ⇒meditur insight vol.2 調剤薬局の課題と未来 発行いたしました