2014/10/30

睡眠がゲームに

どうやら任天堂が睡眠の質を評価するようなデバイスを作っているらしい。

任天堂の「健康」事業第1弾は睡眠計測デバイス 枕元に置くだけの「非ウェアラブル」 - ITmedia ニュース

睡眠の質は、健康に直結すると言われている。それだけに、継続的に良質な睡眠を取れるようにアドバイスをしてくれるとしたら、それは非常に有益だ。

ただ、睡眠計測の領域は様々な製品がすでにある。

Fitbit Official Site for Activity Trackers & More

UP by Jawbone™ | Track Activity, Manage Weight, and Sleep Better

別に海外製品だけではない。日本ではオムロンの製品が有名だ。

自分はすでに2年以上fitbitの製品を使っている。このような背景を考えると、任天堂は似たような製品を出してくるはずはないだろう。おそらく計測する内容は似ているのかもしれないが、アプリケーションの部分は変えてkるかもしれない。ゲーミフィケーションで良質な睡眠を促す仕組み、例えば、良い睡眠を取ったら、経験値が増えるといったRPGなどを考えてくるのかもしれない。

規則的に寝て、起きることも大事と言われているから、そういった要素も評価するのだろう。

ただ、もしこのようなコンセプトであれば、すでにアプリが出ていることは自分が言うまでもないだろう。

FitRPG: Gamifying Fitbit - Google Play の Android アプリ

なので、大幅に期待を超える何かが出てくるのを楽しみに待ちたい。

2014/10/29

薬の名前、いろいろあって大変

今日の日経産業新聞。『エーザイ「顧客歓喜」めざし改善、薬の形状や表記見直し』という記事が出ていた。

アリセプトのゼリー剤の製品化や、錠剤表面に「アリセプト」とカタカナで印字したり、新たな取り組みをしていることを紹介していた。

例えば、パリエットでは、こんな感じだ。

「パリエット錠10mg・パリエット錠20mgの 識別コード(カタカナ文字)を変更致します。」www.eisai.jp/medical/news/products/pdf/KK1032AKI.pdf

カタカナ印字するだけでなく、文字を大きくしたり、改良を重ねている。このような取り組みは、確かに患者目線で、非常に良い。

ただ、最近、ジェネリック薬が増えてきて、名前が難しくなっている。一般名は一般人には一般的でない(ギャグでも何でもなく、ただでさえ馴染みがない薬を、より一層難しくしてしまっている)。

一般名を覚えてもらうことがよいのか、どうすべきなのか。(そもそも薬の名前を知らずに飲んでいる人が多い・・・) このあたりの課題感、薬剤師の腕の見せどころなのかもしれない。

2014/10/28

書評: Bringing the Social Media #Revolution to Health Care

病院がブログで情報発信したり、Facebook、Twitterを活用することは珍しいことではない。

しかし、その目的が不明確であったり、目標と実績の管理まではできていなかったり、ソーシャルメディアに対する『マネジメント』は十分とは言えないのが実情だろう。

先日読んだ表題の本には、そんなことに対する新しい発見を期待していた。



何よりもの収穫は、メディアを運用しながら得た経験や苦労を披露してくれている点だったかもしれない。

例えば、YoutubeのChannel運営では、お堅いコンテンツを流していたものの、視聴者は親しみやすい場所を求めていたことが分かったといったことが書かれている。以下の一文では、インターネットはもしかしたらバーチャルな往診のようなものになるのかも、といったことに言及している。
Meeting them there, as opposed to the howling uncertainty of the larger Internet, can be a great service to someone in pain, I think of it a virtual house call.
Appendixには、目的や手段、評価のフレームワークについても書かれている。2年前の本なので、今となっては目新しさも感じない点も多少あるかもしれないが、kindle版でぱらぱらめくるくらいであっても、値段相応かそれ以上の価値はあるように思う。

2014/10/27

情報公開が質の向上を生む


Hospitals Struggle To Beat Back Serious Infections : Shots - Health News : NPR

Hospitals Struggle To Beat Back Serious Infections | Kaiser Health News
 


アメリカでは、院内感染により、年間75,000人が亡くなっており、その人数は交通事故による死者よりも多い、なんていう指摘もなされている。

上記の記事はCDCの国の平均値と比べ悪い病院の割合が州によってマチマチであることを報じている。

ローカルニュースでも、地元の病院を取り上げて報じているようなものもあった。
Compare infection rates at local hospitals

本来患者が必要としている情報は、件数や有名医師にフォーカスした病院ランキングではない。こういった結果・成績を評価した内容であるべきだ。患者の状態が異なり、バイアスとなっている可能性は否定できないため、うまく評価する仕組みも必要だろうが、何よりも、こういった情報がもっと前面に出てくるような社会にしなければならない。つまり、もっと良い医療を受けたければ、もっと情報を!という圧力を患者がかけるべきだろう。

2014/10/26

ランキングは読み手の力を問うものが多い

以前から、書籍等の病院ランキングに対しては、厳しめの意見を発してきた。

当ブログにおけるランキング関連の主な記事
 『プロが選ぶ名店』が知りたい - 医療、福祉に貢献するために
 病院ランキングと高校ランキングの共通点 - 医療、福祉に貢献 ...
 病院ランキング本はこう読め! - 医療、福祉に貢献するために
 患者にとって「分かりやすい」病院の魅力 - 医療、福祉に貢献する ...

本来、病院の良し悪しは、患者の詳細な病態や、本人・家族の主義・主張など価値観にも影響をうける。それを勝手に点数化したものを並べて、1位はここです!という発表の仕方には、多少疑問を感じるところだ。

良い点は大きく2つある。1点目は患者は得られた情報を頼りに医療機関を選ぶことができること。そして、2点目は医療機関側もランキングのアップを目指し、何らかの改善努力を行うことだ。

先日、表紙に「老人ホームランキング2571施設」と書かれた雑誌が発売されていたので、買ったところ、「東京ベスト保育園594」という記事もあった。子どもが都内保育園に通っている自分としては、気にならないわけがない。



で、結果は・・・・・

うちの子どもの通っている保育園は載っていない??
何度見返しても、見つからない。同じ母体の他の園は見つかったのに、うちの子の園はない。このモヤモヤ、どうしたらいいものか。

じっくり調べたところ、この東京ベスト保育園594のリストに載るには条件があった。2013年度の東京都の福祉サービス第三者評価を受けている園に限定されているというのだ。東京都のホームページ(下記参照)によると、少なくとも3年に1回は受審すること、と書いてある。

福祉サービス第三者評価の概要 東京都福祉保健局

うちの子の園は、2012年度に受審していて、2013年度はなく、2014年度は受けているとのこと。

つまり、ランキングに載らないのにはしっかり理由があり、それは保育園側の怠慢ではなく、ただ単に雑誌側の基準であった。雑誌の本文には、そのあたりのことをしっかりフォローしている文面が記載されているものの、インターネット上では、ランキングの数値だけがひとり歩きしているような実態も見られた。ランキングはそれだけ興味をひきやすいということだろうが、医療のように背景までしっかり理解できない読み手が多いであろうジャンルは特に注意すべきだろう。

ちなみに、保育園のランキングと、その対象に関する説明は、Amazonのkindle無料サンプル版で読める。興味があれば、買わないまでも、読んでみてはいかがだろうか。



ランキングには否定的だけど、正直言うと、読みたくなる。「おかしい、おかしい」ということ自体が仕事だし、本・雑誌はついつい買ってしまう。そういう意味では、一番の上得意客かもしれない・・・。

2014/10/22

病院でロボットが活躍

以前、ホスピーの話題を書いたが、

ホスピーをご存知ですか? - 医療、福祉に貢献するために

こっちの方が一般人はときめくかも。

慶應大学と豊田自動織機、病院内を自動運転で移動する支援システムを開発 | レスポンス

空港内では、カートに客を乗せて移動していたりするが、運転は空港か航空会社の職員がしている。それが無人で自動運転になったと思えばいいだろう。院内を移動してくれるらしい。

目があまり見えない眼科の入院患者さんを、眼科の外来検査室まで連れて行く場合、看護師や看護補助者が付き添うケースが一般的だろう。でも、この車があれば、病棟で患者を乗せれば、あとは自動で連れて行ってくれるということなのだろう。何だか、最新技術を詰め込んだような、そうでないような・・・。

まぁ、自動運転の車を全国各地の病院で導入する日は、まだちょっと遠い未来かもしれない。だからといって、今の病院の環境が悪いわけではない。車いすを押すボランティアなどが活躍している病院だってある。こういった病院は雰囲気がすごくよい。ロボットに、この人の温かみや雰囲気の良さまではそうそう真似できまい。

2014/10/21

免疫力アップ、免活!? 聞いたことないのは自分だけ??(AERA 2014/10/27号 特集「クスリとどうつき合う」)

アエラの最新号の特集『クスリとどうつき合う』、なかなかおもしろかった。

朝日新聞出版 最新刊行物:雑誌:AERA:AERA 2014年10月27日増大号

『飲まなくてもいい薬』については、そういう見方もあるという情報としては有用だろう(言葉を鵜呑みにして、自己判断をするのは危険)。また、『生き残りをかけて変わる薬局』は、どういったことをしたいかで「差異化」を図る薬局の姿を見せている。その記事の中でリバイバルドラッグも紹介している(下記リンク参照)。


さらには、こどもへの抗生物質の処方の話や、乳酸菌関連商品開発の話など、このブログでも話題に出ることが多いテーマも見られた。なお、記事の中では、免疫力アップの「免活」だけ、異色な上に、内容も??だった(他の人が読んだ感想を知りたい・・・)。

買ってみてはいかがだろうか。

2014/10/20

医療費の支払いに困ったら、まず相談

最近テレビでがん保険のCMを頻繁に見る。おそらく、お金には困っていないであろう芸能人が保険の重要性を説く内容に若干違和感を覚えるのだが、相互扶助の理念は大事だろう(でもCMをしているくらいなので営利的な側面が強いことは否めない)。

それはさておき、医療費の支払いに困っても、日本には様々な制度があることをご存知だろうか。例えば、大塚製薬のホームページに分かりやすい解説がある。

各種医療費助成制度と医療サービス | ADPKD.JP ~多発性のう胞腎についてよくわかるサイト~ | 大塚製薬

よく知られている制度以外にも、様々な制度がある。しかも、医療機関側の期待としては、通院・入院前から、こういった制度に対する理解・活用をしておいて欲しいのだ。

入院し手術も終わり、いざ退院・支払いという段階で「実はお金が・・・」と切りだされるのならまだマシだ。支払いせず帰られてしまうのが困る。できれば、入院前、せめて入院中に相談してくれていれば、何とか対応ができるのだ。

どこに相談すれば良いか。病院の窓口か、もしくは健康保険組合(国保なら市区町村)の窓口に最初に聞くと良い。

例えば、大津市のホームページだが、乳幼児をはじめとした、様々な人を対象にした助成制度がある。

福祉医療費助成制度│大津市ホームページ

また、医療機関側でも、無料低額診療事業など、様々な制度がある。

無料低額診療事業 制度の説明

このような情報を得て、学んでおくことは、健康維持の次くらいに大事なことなのかもしれない。こういったこともヘルスリテラシーのひとつと言えるだろう。

2014/10/19

がんばれ、ドクターヘリ!

業務とは関係ありませんが、ドクターヘリを見てきました。

がんばれ、ドクターヘリ!!

2014/10/17

待ち時間の短縮に技術を活かす

先週の日経新聞(10/12の朝刊。電子版は10/11)。病院予約と決済をスマートフォンでできるようにした話。鍵は電子お薬手帳をつなげている点だ。

病院予約・決済、スマホで ビリングシステムなど  :日本経済新聞

ビリングシステム社から、プレスリリースも出ていた。

電子お薬手帳「hoppe(ホッペ)」
電子決済のビリングシステムとの業務提携により医療機関と情報連携へ www.billingjapan.co.jp/corpinfo/news/news-114553969630022713/TopLink/RedirectFile/141014.pdf


最近、こういった話は良く目にするようになった。お薬手帳の電子化だけでは利便性向上等の魅力に欠ける若年層向けには、決済や予約といった面倒な部分を効率化できることが大きな訴求力になるだろう。しかし、それほど利用頻度の高くない患者にとって、1回限りの決済や予約のために、導入するハードルはそれなりに高い気がする。

スマホなど様々な技術も大事だ。ただ、それ以前にできることはないか。今一度確認いただきたい。さらには、患者側も過度な期待はしない、無駄な受診を減らす等の余地があることを認識いただきたい。以下は以前書いたブログ。何かしら参考になれば。

外来は待たされるもの? - 医療、福祉に貢献するために

2014/10/16

医療施設の集約化で覚悟しなければならない負担増

先日公開された議事録。

がん対策推進協議会審議会議事録 |厚生労働省

今後のがん対策の方向性について議論している回なので、非常に重みのある内容が盛りだくさんだ。その中でも、気になった点を紹介したい。
例えば静岡県の場合、伊豆半島から浜名湖まで非常に距離が長い土地で、特に伊豆地方というのは医療過疎のエリアですね。実際にいるのですが、伊豆の下田とか松崎の子供が小児がんにかかると静岡のこども病院にかかるのですが、親は片道、車と新幹線で3時間の道のり、往復6時間かけてこども病院に通っているわけですね。これは日常生活で限界です。もしその子供がより高度医療が必要だといった場合、中部ブロックの場合は名古屋に行くということになります。これは家族が分断されることになりますし、現実的に難しいし、せっかくそういったいい病院があっても現実的にはかかれないという状況になります。
子供が病気になったら、まずは家族で支え合う問題です。ただ、小児がんの場合は、当たり前ですけれども、親は若いですし、仕事を長期休めないとか、収入はどうなるのかとか、交通費とか外食など経済的な負担も大きいものがあります。きょうだいの面倒は誰が見るのか、学校どうするのか、教育どうするのか、小児ならではの問題は多くあります。
そうしたことを考えるとき、拠点病院と各地区の基幹病院とネットワークを組んでいただいて、各県単位ぐらいで同様の治療が受けられるような仕組みを構築していただけないかと思います。
医療者と患者・家族がより近い距離感で、自宅に近い地域の中で治療とか社会的、心理的な支援を受けられる環境をつくっていけるといいなあと思います。
それから、基幹病院の均てん化以前に、開業医の皆さんに小児がんを疑う意識づけをお願いしたいと思います。小児がんというのは、先ほども言いましたように、症例も少ないことから、どうしても正確な診断がおくれるということもあります。
がん診療の集約化において、すでに小児がんは片道3時間、往復6時間といった話が出てくる。しかも、人口的に少ない東北や日本海側の地域ではなく、太平洋側、静岡での話だ。

医療の集約化は、限られた医療資源の活用や診療の質の向上において重要な施策だ。しかし、こういった問題は常に発生することを意識しなければならない。確かに理想は議事録にあるとおり、ネットワークを構築して・・・ということだろう。ここで目指すべき医療提供体制は、治療のフェーズも細かく考えていくべきだろう。手術など医療資源を集中的に投じる必要のあるタイミングでは拠点病院で(多少の移動や、一定期間の家族の分断は仕方ない)、一方、その後の継続的なフォローは、地域の基幹病院で受けられるようにする、といったネットワークだろう。

現在、小児がんや希少がんの議論が先行しているが、これは患者数が限られていて、かつ医療資源が限られているからだ。今後、地域の人口動態が変化する中で、それ以外のがんや疾患についても同じ議論が必要になるに違いない。つまり、現在なされている議論は他人事ではないということだ。

なお、小児がんの診療でも有名な国立成育医療センターに併設されているマクドナルドハウス、今週末、オープンハウスを開催するようだ。近くの方は足を運んでみてはいかがだろうか。

ドナルド・マクドナルド・ハウス BLOG: オープンハウスのお知らせ!(せたがやハウス)

※初回公開時、タイトルがありませんでしたので、追加しました(2014/10/16 13:00)

2014/10/15

メスフラスコはやっぱり使われていなかった

調剤薬局 計量器具一部ほとんど使われず NHKニュース

NHKのニュースで調剤薬局において計量器具の一部が使用されていないことが紹介されていた。

出所: 総務省 規制の簡素合理化に関する調査-事例1-(1)-③
www.soumu.go.jp/main_content/000315367.pdf より引用
ニュースの元となった総務省の調査結果が面白い。メスピペットもメスフラスコもメスシリンダーも使ってない。薬局6店舗への調査結果のようだが、おそらく何店舗に聞いても同じ傾向になるだろう。

以前、弊社レポートでもメスフラスコを例に出している。以下、弊社レポート引用。
薬剤師の業務内容にはどのようなものがあるか、ご存知だろうか。調剤薬局に行くと、処方箋を渡し、奥の部屋の棚から薬を取り出し、持ってきてくれる。場合によっては、軟膏を練ってくれたりもする。さすがに乳鉢でゴリゴリという光景はなかなか見かけなくなったが、どの調剤室にもそういった備品はひと通り揃っている(揃えなければならない。メスフラスコが目立つところに置いてある薬局は、それはそれで怖い)。そのような調剤の業務は、まだイメージがつきやすい。
調剤薬局の業務が変わってきている実態を説明するのに、メスフラスコを例に出した。 つまり、薬局は『調剤』業務ではなく、『薬を渡す』業務をしているところになってきているのだ。

薬剤師の専門性を活かすことが大事といったところで、ただ渡すだけであれば、誰でもできる仕事であり、そこに高い医療費をかける理由はない。価値があってこその医療費だ。

詳しくは弊社レポートをご覧いただきたい。 ⇒ Our Reports | 株式会社メディチュア

2014/10/14

何でも○○女子って言えば良いわけではないぞ。でも、数学女子の本は良かったぞ。

仕事柄、本業であるデータ分析のテーマで人に話す機会は少なくない。医療に限らず、データから何が見えるか。難しい統計処理ではなく、簡単な中学生・高校生レベルの計算内容で説明できることが大半だ。

とにかく、数字と縁がない人からすると、データ分析と聞くだけで、アレルギー反応を示すらしい。なので、毎回、なるべく簡単に話すように心がけている。大事なことは、数字の重要性を理解することであり、何も全員が計算できなくても良い。

ただし、計算できなくても良いというには、数値の持つ意味を理解していることが前提となる。例えば、平均値を感覚だけで考え、母集団のイメージが理解できないことは危険だ(母集団は毎回釣鐘型の一般的な分布を取るわけではない)。

そんな内容を簡単に分かりやすく説明するにはどうしたらいいかと考え、先日、初学者向けの講義準備で読んだ本がこちら。意外と良かったので紹介したい。


数学女子が、アパレル会社のやり手社員に数字の重要性を教え成長させるストーリーになっている。ん?何だか似たような話を読んだぞ!?

これだ!!

自分のビジネスの手の内が明かされている本 - 医療、福祉に貢献するために

先日読んだ本にそっくりだ。アパレル⇒靴にすれば、ほぼほぼ同じような話だ。「情報の錬金術」の方がちょっと堅く、難しく書いてあるくらいの差だ。ストーリーが瓜二つ(数学女子⇒イケてない社員+学生チーム、でほぼ完璧に一致な気がする)

どちらも内容は分かりやすくて良い本だと思う。堅めを期待するなら「情報の錬金術」。柔らかめを期待するなら、数学女子、だ。

2014/10/12

治癒率の減少はDPCの弊害か!?(後編)

前編・中編にて、治癒率の低下が問題かどうかの議論の前に、治癒率の高い疾患と低い疾患があることを説明した。

3回シリーズの最後、後編では、疾患別に見た時に治癒率が下がっているものにフォーカスしてみたい。

治癒率が前年に比べ下がった疾患TOP5 ※症例数10,000件以上を対象
(クリックすると拡大されます)
出所: 厚生労働省 2013年度DPC公開データ(2014/9公開)を基に分析・作成

白内障、喘息、体液量減少症の順となった。

!?

白内障であれば、術後フォローが必要なくなるまで入院させていた病院が減ったということか?? もしそうであれば、在院日数短縮と治癒率の低下は、無駄な入院を減らし、効率的な病床利用になっていると言えるのではないだろうか。つまり、治癒率の低下は、適切な方向に動いている可能性が見えてきた。

喘息はどうだろう。入院している喘息患者が、そもそも完治すること自体、おかしくないだろうか。喘息は発作が治まったところで、気道の炎症は続いているわけで、退院後も継続的に服薬等の治療を行う必要があるはずだ。つまり、「治癒」の不適切な選択が是正されている可能性が見えてきた。

体液量減少症はどうだろう。高齢者の脱水が主な病態イメージだろう。急性期の一時を脱した患者は、DPC病院に入院している必要性が低い。つまり、治癒の見込みが見えてきたら、しっかりケア・フォローできる施設や自宅に退院させた、なんていうことはないだろうか。つまり、治癒率の低下は、効率的な病床利用を徹底した可能性が見えてきた。

このように疾患別に見ることで、『治癒率の低下』というネガティブな印象を持つ言葉は、実はポジティブな意味合いを含んでいることが示唆された。

在院日数の短縮との評価は、疾患別・施設別のデータ(在院日数と治癒率)が必要ゆえ、これ以上の評価はできない。しかし、中医協の議論の場で、治癒率が下がったことを指摘され、持ち帰りの検討事項にしてしまったことは少しお粗末ではないだろうか。毎回、いかに密度の濃い議論をするかは、回数と時間が限られた場において重要なことだろう。 (3回シリーズ、終わり)

治癒率の減少はDPCの弊害か!?(前編)
治癒率の減少はDPCの弊害か!?(中編)

2014/10/11

治癒率の減少はDPCの弊害か!?(中編)

前編では、治癒率の低下が指摘されたことは、ごもっとも、という話と仮説まで説明した。今回は、その仮説の検証をしてみたい。

まず、治癒率の高い疾患を並べてみた。

治癒率の高い疾患TOP10 ※症例数が合計10,000件以上を対象
(クリックすると拡大されます)
出所: 厚生労働省 2013年度DPCデータ(2014/9公開)を基に計算・作成

ほら見たことか。妊娠・分娩か、小児疾患ばかりではないか。転帰上、治癒する疾患と治癒しない疾患があるのだ。

そこで、分かりやすいように全診断群分類番号(DPCコード)をがん・小児(妊娠・分娩を含む)・それ以外の3つに分類し、治癒率を比較してみた。

疾患で分類した治癒率の比較 ※小児には妊娠・分娩を含む
出所: 厚生労働省 2013年度DPCデータ(2014/9公開)を基に計算・作成

治癒率は、小児で14%前後、一方、がんは0.9%と低くなっている。病院に入院して退院したら、もう外来(自院にも他院にも)に来る必要もないまで完治するがんなんて、そうそうあるものではない。

ここまでは想定どおりだが、ここでひとつ疑問が生じる。症例の比率が変わったにせよ、がん・小児以外の治癒率がわずかだが下がっている。また、小児の治癒率も下がっている。(がんの治癒率は小数点第1位では同じ)

さて、ここからが検証の本番である。この先は、疾患別に詳細を見ていく必要がある。つまり、在院日数を短くしたことの影響があるかどうか判断できるのはその先の話だろう。

後編(10/12公開予定)につづく

治癒率の減少はDPCの弊害か!?(前編)

治癒率の減少はDPCの弊害か!?(後編)

2014/10/10

治癒率の減少はDPCの弊害か!?(前編)

先日の中医協で、DPCの退院患者調査の結果に異論が出たらしい。「治癒率が年々低下しているのはどう考えるのか?」と。

傍聴していないので、下記のようなニュースサイトの記事から判断するに、DPC対象病院は治癒率が下がり、出来高病院は上がっている、とのこと。

【中医協】退院患者調査の結果案に異論 | 医療経営CBnewsマネジメント

グラフにしたものをご覧いただければ、その指摘が納得感の高いものであることをご理解いただけよう。

治癒率の推移
出所:厚生労働省 2013年度DPC公開データ(2014/9開示)を基に作成

しかし、その場で「なぜ下がっているか」まで答えられるべきだったのではないだろうか。何も、この傾向は今年から始まったことではない。

医療現場で様式1を作っているスタッフなら、誰もが知っているであろうことだが、「治癒」を選べる疾患は少ない。そもそも『患者』が少ないのではなく、『疾患』が少ないと書く点も留意いただきたい。

簡単に言えば、入院したら、すっきり問題がなくなり、完全に治癒したと言える疾患なんて、ごくわずかなのだ。分娩や異物除去、小児の気道炎やインフルエンザなんてところが、治癒を選ぶ王道である。

つまり、現状の転帰の選択肢では、どんなに医療者が技術の進歩や革新を起こそうとも、適切に推し量ることは困難だろう。

分娩の患者割合が減って、がん患者が増えたのではないだろうか。治癒率の減少なんて、そのくらいの意味しかない・・・といっても、推測でものを言っても仕方ないので、少し検証してみたい。

前編終わり。中編(10/11公開予定)、後編(10/12公開予定)に続く

治癒率の減少はDPCの弊害か!?(中編)
治癒率の減少はDPCの弊害か!?(後編)

2014/10/09

生活習慣病用薬のスイッチOTC、売る気はあるのか?

2013年4月に大正製薬と日水製薬の2社から発売開始されたエパデールのスイッチOTC。2014年9月、その片方である日水製薬のエパアルテがひっそりと姿を消した。

【日水製薬】「エパアルテ」が販売中止‐登録難航で断念 : 薬事日報ウェブサイト
姿を消した理由は、適正使用調査の150例の確保が難航したとのこと。要は売れなかったということだろう。

スイッチOTCが増える(市場が活性化する) ≒ 医師の処方に頼らないセルフメディケーションの拡大・推進 ではないのか?

セルフメディケーションを拡大したい薬局側は、なぜスイッチOTCを売ろうとしないのだろうか。ロキソニンなどの鎮痛剤や、アレグラのようなアレルギー薬と違って、エパデールは難しかったのだろうか。正直なところ、これだけ『売れない』という結果が出てしまったことは、セルフメディケーションの推進に大きな問題を抱えているような気がしてならない。

薬剤師の意識、消費者の意識、薬剤の値段。どれが原因なのか。原因を追求することは難しいのだが、ひとつ有力な仮説がある。

仮説: 製薬メーカーは健康食品で売った方が楽だ

日水製薬の親会社のニッスイは、イマークSの販売を大プッシュしている。正直、負担の大きいOTCの領域で戦うより、健康食品で売った方が楽で儲かる、ということなのではないだろうか。

イマークS:ニッスイ

サントリーは高額の宣伝広告費を割いているらしいことは、このブログでも取り上げてきたし、朝日新聞の広告費について調査・言及したインターネットサイトでも検証されている(朝日新聞広告出稿ランキング 推定料金ベース(9月) | 朝日新聞広告出稿ランキング)。

はっきりとした毎日??? - 医療、福祉に貢献するために
書評: 週刊 東洋経済 2013年 11/30号 特集「サプリ、トクホの嘘と本当」 - 医療、福祉に貢献するために

仮説としては、以下のような流れになる。

メーカー側はさしてOTCを売る気もない
⇒ドラッグストアや薬局は目玉になるOTCが欲しく、メーカーに依頼
⇒しぶしぶメーカーは『ドラッグストアでたくさん売ってくれるなら作らないでもない』と承諾
⇒ドラッグストアではさっぱり売れない
⇒やっぱり健康食品で売ったほうがいいや

本来であれば、薬剤師が積極的に売り、『健康食品で売るよりも、ドラッグストア経由で売った方がおいしい』とメーカーに思わせるべきだった。

しかし、値段や消費者の意識の問題もあり、さっぱり売れない状況を作ってしまった。本来であれば、血液検査などの患者個人の状態の把握と、服薬も含めた治療の選択は、薬剤師が介入したい領域だったはずだ。介入できる余地が大きいだけに、エパデールは是が非でも成功させておくべき薬剤だったのではないだろうか。

正直、患者はエパアルテの話など知らない。今日も新聞やインターネット、テレビで放映される健康食品のコマーシャルや広告を見て、せっせと健康食品のEPA製品を買うに違いない。膨大な広告の前に薬剤師は無力なのか。できることを考えるべきだ。

弊社レポートはこちら ⇒ Our Reports | 株式会社メディチュア

2014/10/08

熟練したラパロと、未習熟なロボット支援手術を比較してしまったのだろうか



ロボット支援手術の推進には大きなブレーキとなるかも。先日も書いたとおり、冷静なエビデンスの評価が望まれる。

医療費格差の解明にビッグデータは要らない

厚生労働省は毎年医療費の地域格差(都道府県格差等)を分析しているのに、今年は例年以上に地域格差を報道するマスメディアが多い。

もしかしたら、消費税増税をし社会保障費用に回すと言っているのに、その使い方に無駄があったら問題だ、ということなのかもしれない。もちろん、ここでいう格差とは、高いところをもっと下げるべき、という論調で一色だ。お金をかけている都道府県の方が充実しているのでは?という議論はほとんど見られない。

そこで、シンプルに、なぜ医療費は地域格差があるか、入院医療にフォーカスをあて、調査した。




分析結果は単純明快なのだが、ベッド数の差異が医療費の格差を生んでいる、ということだ。

病気の人が多いからベッド数が多くなり医療費高騰したのか、ベッド数の多さが患者を生み医療費高騰を招いているのか、どちらかは分からない。しかし『ベッド数』が鍵になっていることは疑いようもない。

地域医療ビジョンでは、間違いなく病床数のコントロールを意識してくるはずだ。逆に病床数に全く触れないビジョンであれば、完全に骨抜きと言っていいだろう。


格差の原因を把握するのに、今あるビッグデータは要らない。シンプルに考えても十分答えは出ている。


もし、深く考えるのであれば、個人レベルで医療と介護のデータをつなぐべきだろう。介護については以前ブログで少し触れている。またビッグデータを使うのであれば、細かな医療の中身を見るべきだ。医療費が高いところの質が高いかどうか、評価することはまだ十分出来ていない。

よろしければ下記ブログを合わせてどうぞ。

都道府県間の医療費格差だけでなく、介護にも差がある
医療費の地域差、どう解消したいか。ただ下げれば良いのではない

2014/10/07

ダヴィンチ、8200万円引き!

先週、日経にダヴィンチが現行の3億3千万円から、25%引きの2億4800万円へ価格を見直すとの記事が載っていた。

今朝の日経産業新聞にも同内容の記事があったのだが、上條社長のコメントは非常に的確に市場を見ていると思う。

以下、記事引用。

――保険適用を巡っては、費用対効果の観点から懐疑論もあります。 
 「我々は全ての手術をダヴィンチでやる必要があるとは考えていない。経済的に効果のある症例で使うべきだ。どこの病院にも入れるのではなく、急性期医療を行う、数でいえば250病院ぐらいに集中した方がいいと考えている」

ここまで引用。

ダヴィンチを導入すべき病院は250程度だと。 ただ、記者のコメントだろうか、手術件数から換算すると400~500台は見込める・・・と書いていて、矛盾している。おそらく、インテュイティブサージカルの日本法人は冷静にマーケットを判断しているということだろう。

記事では保険適用の話や、医師の話も出ているのだが、「ダヴィンチは高い」とある。値引きした背景も、その理由が大きいという。しかし、保険者からしてみれば、今まで100万円で済んでいた手術を、単に新しい機械を使うから150万円でお願いします、という類の話は受け入れがたい。

受け入れてもらうには、病院側のコストにおいて、

通常: 100万円(手術代)+50万円(入院代) =150万円(合計)
ダヴィンチ: 150万円(手術代)+30万円(入院代) =180万円(合計)

ダヴィンチを使うと20万円入院代が安くなるのだから、その分、手術は100万円→120万円にアップしてくれないか?という提案だ。

もしくは、通常の手術に比べダヴィンチを使うと、圧倒的に治りが良い、再発が少ない、といった価値向上を認められる場合だ。

これらのエビデンスが十分でなかったために、これまで保険適用が進んでいないと理解すべきだろう。

今回の見直しで、価格はアメリカの1.35倍に、ヨーロッパよりは少し安く設定できたとのこと。価格の引き下げにより、導入病院が増え、エビデンスを蓄積できれば、保険適用に向けた道も開けるだろう。

(個人的には、手術料は通常と同じでまず機械だけ認めて、その後、エビデンスを積み上げていく方が良いと思う。)

なお、ダヴィンチ、日本は導入されても、年間の稼働件数が非常に少ないらしい(日本は年42件(週1件未満)。世界平均は年151件)。とある病院で、泌尿器科以外のドクターからの反応が非常に冷たかったことを思い出した。保険適用の手術が少ないタイミングで、公立の病院までもが導入している状況は、冷静な判断ができているのか、非常に疑問を感じる。値下げにより、冷静さを失う医療機関が続出しないことを祈りたい。