2018/05/29

マイナス成長時代に突入するか否か 長期データ検証

先日の分析(市場成長率と人口動態の関係 ~マイナス成長時代に向け必要な意識改革~)の続き。2009年から2016年までの年度間の対前年比伸び率を都道府県別に比較した。横軸は80歳以上の人口比率。なお下記グラフには全国計の点も含まれている。


赤点で示したのは2010年度。なぜここだけ上振れしたか? おそらく民主党政権自体の診療報酬改定の影響。急性期入院医療に4000億円配分することとなり(改定説明資料では4400億円)、結果、その年度の入院医療費が大幅に伸びたと思われる。

2010年は特別であるとして、青点でプロットした残りの7年度は、あまり年度間の違いはなく、80歳以上の人口比率とかなり相関があるように見られる。

人口動態がある程度想定できる。おそらく入院医療費の伸び率は徐々に緩やかになり、地域によってはマイナスになると想定される。

このような状況を踏まえ、日満協の武久先生のご意見(下記)を読むと興味深い。

日慢協BLOG —- 日本慢性期医療協会(JMC)の公式ブログサイト » 2040年の社会保障費、「予想を見直したほうがいい」 ── 医療保険部会で武久会長 日慢協BLOG —- 日本慢性期医療協会(JMC)の公式ブログサイト » 2040年の社会保障費、「予想を見直したほうがいい」 ── 医療保険部会で武久会長

2018/05/24

化学療法の将来の姿を考えよう

CBnewsに化学療法に関する記事を掲載いただいた。

化学療法は外来か入院か - CBnewsマネジメント 化学療法は外来か入院か - CBnewsマネジメント

ナショナルデータベースと社会医療診療行為別統計のデータを基に、化学療法の外来化の進展と地域差を示した。経営判断で外来か入院を選択している状況を見聞きしている現状は、診療報酬制度が変われば、まったく違う状況になる(かもしれない)。そのときに、驚き慌てるのではなく、余裕を持って対処するためには、先を見通すことが必要と考えている。今回の記事が参考になれば幸いだ(ちょっとマニアックすぎたかも・・・)

2018/05/20

市場成長率と人口動態の関係 ~マイナス成長時代に向け必要な意識改革~

市場・企業の成長率を見る。社会人一年目を思い出すようなテーマだ(あまりに懐かしく、その当時の教科書を久しぶりに開いてしまった)。

病院経営のマーケットを捉えるため、最近の医療費の動向-MEDIAS- 平成29年12月|厚生労働省 から、入院医療の医療費の伸びを見た。

ただ、伸び率だけを見たのでは示唆が少ないので、人口構成を横軸にとり、都道府県別に散布図をプロットしてみた。


このグラフの横軸は、80代人口の比率だ。高齢化が進んだ地域では、入院医療費の伸びが低く、そうでない地域は医療費が伸びている。

つまり、マーケット成長率は地域によって異なり、高齢化が進めば、必然的に伸びなくなると言えそうである。高齢化が進んだ地域ほど、売上最大化ではなく、利益最大化を目指すべきとも言える結果である。

マーケット自体が伸びない地域では、その地域のある病院が売上を増やせば、他の病院の売上が減る可能性も高くなる。パイを奪い合う色が濃くなるときに、地域として、医療の質の向上や働き手にとっての環境の魅力向上などを、どのように目指すべきか。

マイナス成長時代への突入を目前に控え、病院・地域は改革を求められている。さらに言えば、改革が一番求められているのは、売上拡大をうたうコンサルかもしれない。つまり自分も意識改革が必要と言えるだろう。

2018/05/16

医師不足? 偏在? スペシャリストorジェネラリスト?

アメリカの医師不足について論じている動画(若干声が大きいので、再生時にはご注意を!)。



下記の資料の個別事例以外の内容と構成が似ている。

平成29年11月10日 第55回社会保障審議会医療部会 資料2 医師偏在対策(PDF)

都市部と地方のアンバランスの解消は、自由経済では難しいように思う。ではどうしたらいいか? 先週・今週の頭の中を占めているテーマだ。まだ、結論はない。

2018/05/13

看護職員の離職率。今回は新卒の離職率の要因を・・・

先日、公益社団法人日本看護協会で公開された調査結果(下記)から、看護師の離職率の可視化を試みた。

2018年5月2日【「2017年 病院看護実態調査」結果報告】
看護人材の地域での活用に看護管理者の関心高く/離職率は横ばい続く PDFリンク

都道府県別のデータ(2016年度(2017年度調査))で地域性を見た。まず、正規雇用看護職員(緑色の日本地図)。色が濃いほど離職率が高い。


この分析結果は、以前、ブログに書いている。また、MMオフィス工藤氏のCBnews記事に分析データを提供した。

表に出る「データ分析」としては、これが今年最後か - 医療、福祉に貢献するために 表に出る「データ分析」としては、これが今年最後か

看護師離職率は地域の病院数と正の相関 - CBnewsマネジメント 看護師離職率は地域の病院数と正の相関 - CBnewsマネジメント
直近の数値にアップデートしても、大きな傾向は変わらず。やはり病院数が多いところは離職率が高い。



次に新卒看護職員(赤色の日本地図)。さきほど同様、色が濃いほど離職率が高い。



新卒看護職員の離職率には地域性が見られない。都道府県別のデータによる相関係数で評価したところ、病院数・病床数などはあまり関係がないと言えそうである。気になったのは、次の2点。
  • 正看護師と准看護師の比率で、准看護師の比率が高いところは、新卒離職率が高い
  • 正看+准看の人数に対し介護福祉士が多いところは、新卒離職率が低い
あくまでも、都道府県別のデータで大まかな傾向を探っているだけなので、統計的な有意差など厳密な評価ではない。ただ、新卒看護師の離職率を下げるには、准看護師を減らし、介護福祉士を増やせばよいか? 検討の余地がまったくないわけではないだろう。医療機関個別の離職率で評価すれば、信頼性の高い検討ができそうだ。

余談。ゴールデンウィーク明けにスタッフがデータ準備をしてくれていたのだが、整理するのが遅くなりごめんなさい・・・

2018/05/12

整理されていない思考

後期高齢者の入院医療の受療状況と要介護認定状況から、都道府県別で、相対的にどちらに強く依存しているか比較してみた。

後期高齢者 医療・介護依存度(仮称) 都道府県比較

超高齢者が多い地域か、そうでない地域かといった後期高齢者の中での年齢構成の違いや、要介護度の重さの違いなど、様々な要因で単純比較はできないことは重々承知した上で、その影響を少なくするように補正をいれて、比較してみた。(指標を算出して、偏差値に置き換えている)

高知県が左上に→「療養病棟が文化」という地域ゆえの結果か。鹿児島や山口、北海道も似た状況に

大阪・和歌山が右に→要介護認定者が多い。埼玉や栃木と比べると大きな違い

静岡・神奈川・千葉・埼玉などが左下に→療養病棟が不足? 介護も少ない。一体どこに高齢者が・・・


などなど、色々考えられるかもしれないが、あくまでも様々な補正をした独自比較分析。なぜこのような分析をしているか? それは、2025年に向け介護医療院等の影響を経時的に見たいから。過去から今後にかけて、この散布図で都道府県の遷移を見ていけば、得られる情報があると考えている。

医療と介護はお互いに補完し合うサービスではあるが、一部機能は重複しているため、上の散布図において、左上から右下の方向に都道府県が分布し、弱い相関が見られるべきだと考えている(まだ、はっきりと見えないのは、それ以外の要素があることと、補正が適切でないことが原因と考えている)。

地域医療構想は、医療需要の地域差を解消することが目的のひとつであるならば、縦方向のばらつきが小さくなり、同時に横方向もばらつきが小さくなるはずだ。
この横方向のばらつきがなくなるときに、各地域でどのようなサービス展開がなされるか・・・と考えれば、自ずと戦略が見えてくるのではないだろうか。

分析内容のブラッシュアップもできていないし、思考の整理もしていないが、何か書いておけば、他の方からの指摘や批判をいただけたり、自分で恥ずかしい内容に気がつけたりするのでは?ということで、ブログに書いてみた。

2018/05/10

データ分析結果から考える「機能転換を検討すべき療養病棟像」

CBnewsに記事を掲載いただいた。今回は、療養病棟について、改定をきっかけに病棟機能の再編の検討が必要となりそうな病院像を示してみた。

岐路に立つ療養病棟 - CBnewsマネジメント 岐路に立つ療養病棟 - CBnewsマネジメント

ちょうど届いた日経ヘルスケアでは、巻頭のMMオフィス工藤氏のコラムで、療養病棟の話題(日経ヘルスケア5月号拙稿は医療療養病棟の在宅復帰機能強化加算がテーマ | 「なんちゃって医療経営学」 ㈱MMオフィス代表 工藤 高のブログ)が。また、中盤に載っている座談会「診療報酬改定編」では、療養病棟の病床利用率や機能転換について言及されていた。

CBnewsのタイトルの「岐路に立つ」は言いすぎたかもしれない。しかし、ニーズを捉え機能転換すれば、今以上の地域貢献・経営改善につながるチャンスであると考えている。ゆえに、このチャンスをまっさきに検討すべき病院像を、独自のデータ分析結果から示したつもりだ。参考になれば幸いだ。

2018/05/09

Google I/O'18: Google Keynote

メモ。

Google I/Oのキーノート、Healthcareの話題が。
(追記: 1:24:35あたりからが、その話題。そこから始まるように設定したつもりだったのだが、うまく言ってなさそう)


以前、ブログで書いた眼底検査の分析を紹介している。

眼底検査から心疾患リスク - 医療、福祉に貢献するために 眼底検査から心疾患リスク 

2018/05/08

東と西で違いはあるのか?

ゴールデンウィーク前半に書いた人工知能の文章があまりにも恥ずかしいレベルなので(社内から批判が・・・)、それをトップに表示させないために新しい記事を。

療養病棟の病床規模について、東日本・西日本で比較した。療養1を持っているところ(療養1と2両方持っているところも含む)で比較すると、西日本は60床未満の小規模なところの比率が高い。また、療養2で比較すると西日本は40床未満(稼働病床数)の小規模なところの比率が高い。
療養病棟入院基本料を算定している病床規模(稼働病床数)別の施設割合
病床機能報告データ(2016年度)を基に作成

あくまでも施設の割合なので、施設が多い・少ないではない。また、統計的な有意差などを言及したものでもなく、ただ、比べただけなので、ツッコミなどはお許しを。
そもそも、病床機能報告も全県分のデータで分析できているわけではないので(32都道府県分)、厳密さは期待できない。

今日の日経、地方経済面(四国)には、こんな記事が。
ちょうど、記事で「西日本で入院期間が長い傾向にあり、病院のベッドの多さが・・・」と述べられている。

入院の平均日数 高知県が全国最長 厚労省調査、16年度18.2日 :日本経済新聞 入院の平均日数 高知県が全国最長 厚労省調査、16年度18.2日 :日本経済新聞

東日本、西日本、それぞれ特徴があり、病院経営にも少なからず影響が及んでいることは言うまでもないだろう。