一昨日流れたニュース。日経に限らず、新聞・テレビでたくさん報道された。
群大と女子医大、「特定機能」取り消し審議 両病院長ら聴取へ :日本経済新聞
医療安全管理の体制不備などが問題視されている。医療安全は医療の質につながる重要な要素だ。しかし、特定機能病院の指定を取り消すことで、問題は解決するのだろうか。
だからといって、病院を営業停止にするわけにはいかない。現状の法制度下では、厚生労働省が切れるカードは限られている。それゆえに「特定機能病院の指定の取り消し」を考えているのだろう。しかし、もし取り消されても、患者にとってみたら、他の病院より若干高い入院料が少し下がるといった違いくらいしかない。明日から、大学病院の看板を下ろせ、と言っているわけではない。
群馬大学も東京女子医大も、どちらも歴史ある有名な大学病院である。群馬大であれば、地域においては、高度な医療を提供している中核といっても過言ではない。また東京女子医大であれば、心臓移植実施施設として認定されていることなどからも分かるとおり、高度な医療提供施設である。
では、これらの2病院は客観的に大学病院らしい医療をしていたのだろうか。定性的な情報や断片的な情報はあっても、トータルで判断することが難しい。そこで、現在、独自指標を作り出せないか検討をしている。
その結果を示そう。
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大学病院らしさ 分析結果 ※クリックすると拡大します
赤:大学病院本院 緑:大学病院に準ずる病院(DPC病院Ⅱ群) 青:その他 |
上のグラフの縦軸が「大学病院らしさ」で、上ほど大学病院らしい病院、下ほど大学病院像からかけ離れる病院だ。横軸には年間症例数をプロットしてみた。
これらの分析にはDPC公開データ(25年度実績データ)を用いている。
弊社で編み出した独自指標、なかなか良い精度で大学病院本院が抽出できているようだ。クラスター分析での分離なども試みたいところだが、それは別の機会に。
ちなみに、約1800病院中、症例数を無視したときに最も大学病院らしかったのは伊藤病院(東京)だった。2位には野口病院(大分)が続いた。甲状腺専門病院の評価が高くなった形だ。次いで、北海道大学、昭和大学東病院、国立成育医療センターの順となった。
逆に大学病院本院で一番指数が低かったのは・・・、気になるところかもしれないが、検討段階の指標で無駄な誤解が生じても仕方ないので、これは伏せておく。
なお、これはあくまでも弊社独自指標であることは重々ご承知いただきたい。
なお、冒頭の群馬大と東京女子医大。群馬大は非常に高い指数であった。また、女子医大もまぁまぁな指数であった。指摘されている問題は、大学病院らしさを否定するものではない(むしろ大学病院らしい課題が露呈したと捉えるべきだろう)。このことからも、高度な医療を提供している証である特定機能病院の取り消しではなく、別のペナルティを設定した方がよい気がする・・・。