2019/07/27

姫路のツカザキ病院の先駆的な取り組み

兵庫県姫路市ツカザキ病院眼科の人工知能チームが、眼底写真の画像のデータセットを公開したらしい(⇒ TOPproject)。性別、年齢、左右どちらの目の写真であるかに加え、加齢黄斑変性症や網膜静脈閉塞症、緑内障、糖尿病性網膜症、網膜剥離、網膜色素変性症などの眼疾患の病名、さらにはHbA1cから判断した糖尿病の有無まで、セットになっているようだ。

データの蓄積に取り組んでいる、研究に活用している、というところはあっても、公開している事例は少ない。海外では公開している事例を聞くことがあっても、国内では相当珍しいのではないだろうか(詳しい人がいたら、教えていただきたい)。

人工知能チーム Deep Oculus|ツカザキ病院眼科 人工知能チーム Deep Oculus|ツカザキ病院眼科 

(ちなみに、さきほどダウンロードしようとしたら、あまりにも多くのダウンロードリクエストがあったようで、Dropboxの制限がかかりダウンロードできなかった。)


2019/07/21

総合入院体制加算の届出と病床規模の関係

総合入院体制加算の届出施設について、病床数と加算種類の分布を見た。
厚生局届出データ(2019年6月3日調査)を基に作成

実績要件が問われる総合入院体制加算は300床未満ではかなり厳しく、加算1は700床前後、加算2は500床前後、加算3は400床前後が、それぞれ多くなっている。

総合入院体制加算の背景には、大学病院並みの医療提供体制を評価する・・・といったものがあったはずなので、総合入院体制加算1の厳しさは仕方ないにしても、加算3、加算2、加算1と、診療内容の充実に対するステップアップを後押ししていると理解できる。

ちなみに、働き方改革で大病院の医師確保力が相対的に強くなり、中小病院では医師確保が難しくなることが想定される中で、総合入院体制加算の評価を高めることは、病院・診療機能の集約化を加速する可能性が高い。

2019/07/17

入退院支援加算の分析記事の後半

CBnewsに入退院支援加算に関する記事の後半を掲載いただいた。

入退院支援加算の取り組みを加速させるデータ分析・下 - CBnewsマネジメント 入退院支援加算の取り組みを加速させるデータ分析・下 - CBnewsマネジメント

病床機能報告データから可視化を試みたので、お読みいただけるとありがたい。


また、今日、明日とホスピタルショウの医用工学研究所のブースで、ミニセミナーを担当している。お時間があえば、ぜひ。

明日(7/18)のスケジュール
11:00~ 院内データ分析の切り口で診療報酬改定を考える
13:30~ マクロデータを経営に活かす思考とテクニック

2019/07/14

看護師の勤務形態をデータから見る

月刊保険診療、今月も表紙の裏に記事を掲載いただいた。6回の短期連載の予定だったものを延長中。

月刊保険診療7月号の記事

医療施設調査のデータを分析している。

2019/07/12

急性期一般入院料に絞り込んでも、ほぼ結果は同じだった

先日のこの記事の続きを。
「入退院支援加算の届出施設の方が在院日数が短い」のは擬似相関では - 株式会社メディチュア Blog 「入退院支援加算の届出施設の方が在院日数が短い」のは擬似相関では - 株式会社メディチュア Blog

上の記事では、一般病床を持っている病院を対象に絞り込んで縦軸(入退院支援加算の届出割合)を見ていたが、急性期一般入院料を持つ病院だけに限定した。その結果、入退院支援加算の届出割合が全体的にアップした。平均在院日数との関係はほぼ変わらず。


中医協の資料から「入退院支援加算の届出施設の方が在院日数が短い」のは事実だが、在院日数が短いのは入退院支援加算の届出が影響しているとは言えない。在院日数が短いのは、入退院支援加算の届出をできる病院は大病院ほど多く、大病院は在院日数が相対的に短いためだ、と考える方が自然だろう。

入退院支援加算の届出によって在院日数が短くなったかどうかを知るためには、同じ病床規模で、同じ在院日数病院の集団を作り、届出の有無によって、在院日数がどうなったかを見るべきだ。在院日数に影響しそうな要素(地域包括ケア病棟の設置など)を極力除外することも大事だろう。

2019/07/10

病床規模と急性期一般入院料1~7の比率の間に見られる関係性とは

ある分析のためのデータ整理。Pythonで処理したデータをグラフに。

急性期一般入院料の届出状況について、病床規模(総病床数)別に入院料の比率を見た。


病床規模が大きくなると、急性期一般入院料1が増える。大病院で急性期一般入院料2以降の病院は少ない。

ま、そうですよね。

2019/07/06

さすがにびっくり

先日の日慢協の定例会見。

日慢協BLOG —- 日本慢性期医療協会(JMC)の公式ブログサイト » 急性期病院で終末期、「ふさわしくない」 ── 6月27日の定例会見で武久会長 日慢協BLOG —- 日本慢性期医療協会(JMC)の公式ブログサイト » 急性期病院で終末期、「ふさわしくない」 ── 6月27日の定例会見で武久会長

記事の最後の方に下記のような記載があり、
新公立病院改革プランによると、公立・公的病院の病床利用率はどんどん上がっていく予測が立てられている。しかし現実には、その逆になっていることは皆さんもご承知のとおりである。

「おっ、自分の主張と似ている!!」と、思わずツイッターにこの定例会見の記事をつぶやいた。

今日、その定例会見の資料を見て、びっくり。最後、自分の資料を引用くださってた。ありがたい。そして、この分析をしてくれたうちのスタッフに感謝。

2019/07/05

「入退院支援加算の届出施設の方が在院日数が短い」のは擬似相関では

7月3日に入退院支援加算に関する記事をCBnewに掲載いただいた。

同日、中医協の入院医療等の調査・評価分科会で、入退院支援加算に関する下記のようなデータが出てきた。

2019年7月3日開催 入院医療等の調査・評価分科会資料より引用

入退院支援加算を届け出ている施設の方が在院日数が短いとのことだ。CBnewsでも、翌日に下記の記事で述べられている。

入退院支援加算、届出施設の方が在院日数短い傾向 - 医療介護CBnews 入退院支援加算、届出施設の方が在院日数短い傾向 - 医療介護CBnews

在院日数の違いが、さも入退院支援加算の影響のように受け取れる分析結果だ。しかし本当だろうか?

DPC公開データから、急性期一般入院料に該当する病院の「その他病棟の入院含む」の延べ在院日数を基に、総病床数の規模に応じて、平均在院日数を算出した。また、2019年5月時点での一般病床を有する病院における総病床数の規模に応じた入退院支援加算の届出施設割合を算出した(ここには急性期一般入院料以外の病院も含まれてしまう)。

それぞれの算出した数値について、関係性をみたのが下のグラフだ。(各点にラベルで表記しているのは病床規模(床)。ばらつきの大きい100床未満は含めていない)

DPC公開データ(2017年度実績)、厚生局2019年5月時点届出情報を基に作成

非常に強い相関関係が見られる。というか、ほぼ直線。入退院支援加算は中小病院ほど届出ができておらず、中小病院は在院日数が長い。入退院支援加算の影響で在院日数が短くなっているかどうかを評価するのであれば、病床規模に応じた入院医療の特性の違いを考慮すべきである。

入退院支援加算は効率的な病床利用を促進することは否定しない。ただし、中医協のグラフは、在院日数の違いの真因を隠した状態で見せている疑似相関である可能性が高いのではないだろうか。(地域包括ケア病棟や回リハ、療養病棟のデータも示されているので、もう少し詳細な調査が必要だが・・・)

2019/07/01

常勤医師数と病床数の関係

厚生局のコード内容別医療機関一覧表のデータを用いて、病院の総病床数と常勤医数の関係をプロットしてみた。総病床数のうち、最も多い病床が一般・療養・精神の各グループを、青・赤・灰の各色でプロットしている。1点1病院。ただし、同じ病床数・常勤医数の病院が複数ある場合は、点を大きくしてある。


基本的には、病床数が多いところほど常勤医が多い。600床を超えるような病院はそれほど多くないが、常勤医の幅も大きく広がっている。

ただ、療養病床や精神病床が多い病院については、医師数が少ないので、このグラフではよくわからない。そこで、縦軸をログスケールにしたものが下のグラフ。療養病床の多い病院群では、総病床数が200床で常勤医は10名前後、400床でも10数名程度。精神病床の多い病院群では、総病床数が400床で10名前後となっている。


これらのことがわかって何の意味があるか??

1つ目の意味はプログラムの確認。新しく組んだプログラムが正しく処理できているか。あまりにも想定と異なる数値だったら、処理を見直すことができる。

2つ目の意味は人口あたり医師数や医師偏在指標などの医師配置に関する基礎データ収集の一環。

とりあえず、プログラムは大丈夫そうでほっとした・・・。

(2019/7/1 19:45追記)
病床機能報告(2017年度)のデータから、同じグラフを作成。精神病床は報告対象でないため、分析できず。一般・療養はほぼ同じ結果になっているようだ。

出所:病床機能報告(2017年年度)データを基に作成