2014年10月の雑誌「病院」では、病院薬剤師の役割をテーマにした特集が組まれていた。
病院薬剤師会会長の文章で書かれていたとおり、薬剤師の業務は年々拡大し、1970年前後と比較すると、非常に異なっている。文中の説明で用いていた図を引用・再作成したものを下に示す。
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薬剤師業務の拡大(クリックすると拡大)
出所:病院薬剤師に求められる役割 (日本病院薬剤師会 会長 北田光一氏、病院73巻10号 2014年10月)を基に作成 |
薬剤師が、院内薬局から、外来・病棟へ、というのが最近の流れだ。このような役割の拡大は、病院薬剤師の不足を引き起こす。積極的に採用している病院が多いとは言え、うまく薬剤師を確保できない病院は、上記のいずれかの業務のクオリティを下げることとなる。下がったクオリティは、看護師・医師等の他職種がカバーし、それが無理な場合は患者が受ける医療の質が下がる。もちろん、医療の質を下げないために、薬剤師の多くは、日々多忙な業務に追われているのが現状だ。
9月末の日本医療薬学会年会では、病棟業務を効率化し、薬剤師が本来の業務に集中できる体制を作るため、テクニシャンの活用・役割分担の議論がなされたとのこと(出所: 2014/10/1 薬事日報)。上の薬剤師業務の拡大を見れば、その一部をテクニシャン・アシスタントが行っても問題がない内容もある。
ある病院では、生理食塩水や輸液のような重い薬剤を運ぶ業務を薬剤師が行っていたりする。もちろん、その業務だけであれば、薬剤師の資格など何の役にも立たないだろう。患者とて、そのような業務を行う薬剤師に高い給与を払っているつもりはない。
薬事日報では、日本医療薬学会の議論から、デンマークの薬局の事例を記事にしていた。その記事によると、デンマークの薬局の特徴として、以下の点が挙げられるという。
- オーナー薬剤師は4件まで薬局を開設できる
- 各薬局に平均1.8人の薬剤師が在籍(オーナー薬剤師以外で)
- 各薬局にテクニシャンが約8人在籍
テクニシャンの多さは、今後の日本の薬剤師の役割分担を考える上で、興味深い数値だ。
テクニシャンなどの議論は、何も今始まった議論ではない。適切なコストで、医療の質の高さを実現するために、このような議論が展開されている点は重要だ。しかし、この議論は薬剤師の業界団体だけが考えれば良いのではない。患者も積極的に議論に加わるべきだろう。そのためにも、患者がどのような恩恵を受けるか開示されることは不可欠なはずだ。