2013/12/31

meditur insigh vol.4 セルフメディケーションを進めるアイデア

先日の中医協でうがい薬のみの処方について、保険適用除外することに反対意見が続出したことは、そもそもセルフメディケーションに対する理解が十分でない現状で、現場に混乱を来しかねないという懸念が表出したものと捉えたいが、既得権益を守るための反対意見だという見方も出来なくはない。

下記ニュースサイトの記事にあるとおり、反対意見で書かれている各委員の主張の多くは筋が通っているだけに、しっかりとしたデータを示しながら、検討を進めていくべきだろう。

【中医協】うがい薬の扱いで反対意見続出- 単独処方の保険適用除外、再度検討へ | 医療介護CBニュース

そのうがい薬の件にも触れながら、セルフメディケーションを進めるためのレポートをまとめました。よろしかったら、下記からどうぞ。

http://www.meditur.jp/our-reports/

2013/12/30

調剤データの利用がドラッグストアの起爆剤 (書評:月刊激流2014年1月号)

月刊激流1月号の特集でドラッグストアを取り上げていたので、以前買っておいたものの、なかなか読めなかったのだが、年末、移動時間などでようやく読むことができた。

やはり、ドラッグストア、色々おもしろい。

小売業としての側面と、医療施設としての側面で、どっちの世界が美味しいか、消費者のマインド・ニーズを理解しようとしながら揺れ動いている。

これまでは、食品などの日用品を『まき餌』に、一般用医薬品や化粧品で、消費者を釣っていたモデル。マツモトキヨシなどは釣りのレベルではなく、化粧品なども大幅に下げ、底引き網で漁をしていた。でも、一般用医薬品などが、どこでも売れるように規制緩和がなされてしまうと、ドラッグストアは『まき餌』でいくら客を寄せ集めても意味が無くなってしまう。

ローソンなどのコンビニ各社が、調剤薬局併設型店舗を出していることは、以前、弊社のレポートやブログで紹介したが、コンビニは、常に新しい商品がある、24時間開いている、近所にあるといった利便性が『まき餌』であり、価格で勝負していないため、インフラ整備が終わると『まき餌』セット完了であり、追加コストのかからない、もはや疑似餌のようなものだ。こういったコンビニが、収益性の高い一般用医薬品や調剤に進出してくるのは、ドラッグストアにとって、脅威以外の何物でもない。

「コンビニ」+「調剤薬局」の模索 - 医療、福祉に貢献するために

さらに、ネットでの医薬品販売は壮大な『まき餌』装置を作り上げ、太平洋はおろか、世界中の海という海を漁場にしているAmazonのようなライバルが登場することを意味する。ただ、市民目線で言えば、利便性が増すことは悪くないことで、適切な競争は歓迎だ。むしろ、ドラッグストアが乱立し、調剤薬局が何店舗も横並びになっていることが異常と感じなければならないだろう。

月刊激流の特集では、ドラッグストア各社の取り組みなどが書かれている(ちなみに個人的には特集冒頭の論説記事が一番興味深く感じた)。そのひとつで、調剤データの利用がドラッグストアの起爆剤になり得るという、という記事があった。そのとおりだ。調剤データは「顧客プロファイリング」の宝の山であることは間違いない。弊社は今年多くの調剤データを分析する機会を頂戴したが、どのデータも宝になり得ることに確信を持っている。また、この確信はアメリカのドラッグストアを見ながら再確認したことの一つでもある。来年もデータ分析で新たな価値を見出していきたい。


調剤薬局に関するレポートはこちら↓

http://meditur.blogspot.jp/2013/04/meditur-insight-vol2.html

2013/12/27

医療界のアマループは登場するか?

amazonで買った充電式電池。冬になって、自転車置場が暗いので、LEDの自動点灯ライトをつけた時に、いつも使っているeneloopがすべて出払ってしまったので、何かと困らないよう電池を探していたら、amazonではこれが売れ筋商品らしい。

何でも、この電池、中身はeneloopらしく、「アマループ」と呼ばられているらしい。アマループの説明は置いておいて(下記の記事「アマゾンのエネループ、通称アマループを買ってみた」を参照)、この話、医療の世界で何か似ている話はないだろうか??


アマゾンのエネループ、通称アマループを買ってみた

ジェネリック医薬品って、この話と似ているような似ていないような・・・・。もちろん、特許切れの新薬に対するジェネリック医薬品とOEMを一緒にしてはダメ!という、非常に良く理解している人からの批判はあるだろうが、今まで1本300円だったものが、パッケージを変えるだけで1本200円になるという衝撃は、ジェネリック切り替えで感じる衝撃に少なからず似ている。

白内障の眼内レンズが1枚150円で作られている・・・という話を以前書いた(【海外へ進出する病院の脅威とは(後半)】http://meditur.blogspot.jp/2013/11/blog-post_4.html)。価値があまり変わらず、非常に安くできる手段があるならば、医薬品に限らず、医療材料にも革命が起きるに違いない。

身体に入れる医療材料には、安全性など長期にわたる品質の保証が必要ゆえ、なかなか簡単に安いものをバンバン使うべき、という方向には流れないと思うが、財源が苦しい日本の医療制度。医療材料に革命的な「アマループ」みたいなものが登場してもよいのではないだろうか。


2013/12/25

花粉症で苦しまないための7箇条

先日、花粉症関連のデータ分析を行っていた。まだ12月なので花粉症とは無縁な時期だが、あと1、2ヶ月もしないうちに花粉症の話が聞こえ始めてくることだろう。

以前、鼻アレルギーの診断ガイドラインを紹介した。日本ではスギ花粉が最大の敵なわけだが、海外ではどうなっているのだろう? 海外には画期的な対処法があるのか?という疑問が湧いた。そこでちょっと調べたところ、花粉症で苦しまないための7箇条というのが見つかった。
  1. 花粉の飛散状況を知る
  2. 花粉が多い日は出歩かない
  3. 外出するなら賢く、計画的に
  4. 外出時は花粉対策グッズを
  5. 家に花粉を持ち込まない
  6. 適切な治療を
  7. バケーションで花粉から逃げる
(出所:WebMD Pollen Survival Guide http://www.webmd.com/allergies/features/pollen-survival-guide)


あれ? 大したことを言っていない。画期的どころか非常にオーソドックス。あげく7番目でバケーションと来たもんだ。結局、日本も海外も同じ・・・。

残念ながら、花粉症対策、劇的に改善する秘策はないようだ。
ガイドラインの紹介はこちら

2013/12/24

書評: 夢の病院をつくろう

チャイルド・ケモ・ハウスのできるまで、という副題のとおり、建物が完成したところまでの話が書かれている。本の最後に書かれている『これからここで繰り広げられる取り組みこそが大切であり、さらにはチャイケモのチャレンジをきっかけに、同じような志を持つ人が現れ、「子どもを中心に置いた新しい医療の形」が日本中に願ってやみません。』との一文に、強く共感を覚えた。

きれいなデザインの表紙

この話、以前取り上げたマギーズセンターとの共通点を感じた。医療を中心に据えた形を考えるのではなく、患者とその家族を中心に支えあう生活の場を作るという考え方は、時代が求める効率的な医療などと完全に相反するというわけではなく、医療に関与する人が共通の理解として持っておくべき知識・情報であるように思う。

例えば、高齢者医療は、病院、介護施設、高齢者住宅、在宅といった形は、患者の希望ではなく、提供する側の都合が多少なりともある点は否めない。希望を叶えるには、財政的な問題も大きいだろうし、マンパワーの問題も大きいだろう。ただ、そこで思考を停止させてしまうと、これまでと何も変わらない。その先を考えなければならないのだろう。

このチャイルド・ケモ・ハウスは、思考停止させず、その先を考え、具現化したストーリーの1つだ。

2013/12/21

昨日立ち上げられた「DATA.GO.JP」

日々の業務で、厚生労働省の統計情報を使う。今は、どこにどのようなデータがあるか知っているだけで、ちょっと優位性があり、ビジネスとして成り立たせる上で、この『優位性』が大事だったりする。

以前は、製本された資料のコピーやスキャンなどの手間が必要で、入手するまでの苦労に応じ、その価値がついていた。しかし、インターネット上で統計などが公表されるようになり、入手すること事態に対する価値はなくなり、どこにどういう情報があるか、ということに価値の大半が移ってきた。しかし、その価値すら、今、無くなろうとしている。どこにあるか情報が整理されだすと、もはやその価値はない。

昨日、DATA.GO.JPというサイトが立ち上げられた。

DATA.GO.JP

情報のありかが開示され、容易な加工性が担保されると、これまでの価値はほとんど無くなる。これからは、情報を使って何をするか、という本質的なところの真価が問われることになる。以前、APIが公開されたときにもブログで記事にしたが、オープンデータという流れは、この先、当たり前のことになるだろう。『昔はPDFでしかデータを開示してなかったんだって。ないよね~』とか『もっと昔は紙しかなかったときもあるんだって。ないないない~』と笑い話のネタになるに違いない。

DATA GO JP

2013/12/20

患者も損税対策を気にする時代が来た!?

チャイルドケモハウスのあと、移動のためポートライナーに。最寄り駅の医療センター駅に行く途中、コンビニに寄りたかったのだけど、ポートアイランドというのは店が少ないようだ。

で、見つけたのは中央市民病院内のFamilyMart。朝食とコーヒーを買った。

そこで見かけたのが、市民向けの図書コーナーだ。(コンビニのわきにある)

神戸市立中央市民病院の市民健康ライブラリー

この図書コーナーの脇が飲食スペースになっていて、そこでパンでも食べようかと思ったのだが、非常に混んでいたため断念。図書コーナーをちょっと眺めて、帰ってきた。




図書コーナーには、チラシがあったり、雑誌があったり、本があったり。休憩しながら眺めるのにちょうどいい感じだ。雑誌は医療関係のものがずらーっと並んでいた。

雑誌コーナーの中央、なんと、日経ヘルスケア!!!!
日経ヘルスや、日経メディカルならまだしも、日経ヘルスケア!?


12月号の表紙、デカデカと「どうする損税対策」と書いてある。病院に来て、市民健康ライブラリーで損税対策の雑誌を読む人がどれだけいるのやら・・・。

ちなみに、逆説的に言うと日経ヘルスケアが並んでいるくらいである。ライブラリーの充実度合いは言わずもがな。こういったライブラリー、重要だと思う。(余談だが、クリニックのライブラリーは、健康とは関係のない週刊誌・雑誌と製薬会社のPRパンフレットが多く、健康雑誌・書籍は少ない傾向がある)

2013/12/18

がんになっても笑顔で育つ。

チャイルド・ケモ・ハウスのことは、以前から神戸に作っていると知っていたのだが、見たことはおろか、神戸のどこにできたかも知らなかった。関西方面に用事があったついでに、せっかくなので見てきた。



こういった施設、まだまだ全国どこにでもできるものではないだろう。こどもが難しい病気で入院したり、治療を受けたりする場合には、いつでも近所で・・・というわけにはいかない現実がある。以前、マクドナルド・ハウスのことを紹介したこともあるが、こういった取り組みは何かしら応援していきたいものだ。

チャイルド・ケモ・ハウス「がんになっても笑顔で育つ」

2013/12/16

情報の可視化で求められる「メッセージ”力”」と「美しいビジュアル」

Mapping the Gaps: Mental Health in California

http://www.chcf.org/publications/2013/07/data-viz-mental-health
位置的な情報が含まれているデータを表現とき、地図を塗り分けるのは非常に有効な手段だ。特にビジュアル的にアピールしたいとき、注目を集めたいとき、地図はぐぐっと人の目をひきつける。最近、地図を塗り分けたり、地図上に情報をプロットしたりすることが技術的に容易になってきているだけに、何でも塗りたい、地図で表現したい欲求にかられることが多々ある。

でも、地図で表現する以上に難しいのは、その「意味」だ。ただ地図を塗っても意味は無い。地理的情報を見せることで、メッセージが容易に伝わる、という意図がなければ、地図はほとんど意味が無い。

闇雲に地図を塗るのはやめよう。そう改めて思ったのは、冒頭の地図を見たからだ。この地図は、成人の精神疾患罹患率(赤)と貧困率(緑)、人口10万人に対する精神科医の数(青)でカルフォルニア州の郡を塗り分けている。これらの独立した変数の相関性を見るときに、地図を塗り分けた「可視化」は非常に役に立っている。

こんな風に表現できるよう努力しなければ。ただ塗るだけでは意味が無い(自戒をこめて)。


Mapping the Gaps: Mental Health in California - CHCF.org

2013/12/10

闘病記ライブラリー

自分が、家族が、病気になったら、たくさんの疑問がわき、たくさんの困難にぶつかる。そんなとき、同じ病気で過去に乗り越えた人たちの話は非常に役に立つ(結末がどうであれ)。そう思うようになったのは、自分が学生の時に家族が病気になり、身の回りで似た経験がある人に相談に乗ってもらったことが大きなきっかけだ。このときは、とても大きな助けになった。こんな風に、都合よく身近に似た経験をした人はなかなかいるわけではない。そこで参考になるのが闘病記だ。

闘病記には有名人の話やそうでない人の話、非常に多くあり、意外と選ぶのが難しかったりする。そんなとき、下のサイトは、病気ごとにまとめられていて、目次が見られたり、便利だ。何より、デザインがきれいだ。

闘病記ライブラリー(http://toubyoki.info/index.html

このようなネット上のライブラリーだけでなく、図書館で闘病記を1か所にまとめて並べていたり、病院内に患者向け図書室を用意していたりするケースもある。積極的に利用したいものだ。

2013/12/03

書評: 週刊 東洋経済 2013年 11/30号 特集「サプリ、トクホの嘘と本当」

昨年の今頃、サプリメント特集の雑誌2誌(週刊ダイヤモンドとTarzan)を取り上げ、内容比較をした。広告が混じってしまうTarzanと経済雑誌のダイヤモンドではだいぶ中身が異なっていた。
サプリメント特集の2雑誌、ここまで内容が違うのか!? - 医療、福祉に貢献するために
そして、直近の東洋経済、「サプリ、トクホの嘘と本当」というタイトルで、表紙にはハート型の薬が出ていた。
   

今回の内容で面白かったのは、サントリーウェルネス社など大手3社の費用構造比較。原価が低いことは何となくわかっていたが、相当に低い。そして、大半が販売広告費。確かにサントリーウェルネス社に限らず、どこも宣伝には相当力を入れている。物によっては、メーカー間で製品に大きな差はないのかもしれない。ゆえに、売れる売れないが宣伝広告に依存していることは容易に想像ができる。原価がかかっていないから悪い、という短絡的な考え方ではなく、お金がかけられている広告にだまされないよう、見る側も知識を付けなければいけない、というではないだろうか。

サプリメントは、通常、病気になってから摂り始めるものではない。健康なうちから、意識の高まりとともに摂取する。積極的姿勢の現れだ。(病気になったら、通常は医薬品に頼る) 先日ブログで書いた未病という考え方とサプリメントは相性がいいはずだ。今後、ますます拡大するであろうサプリメント・トクホ市場。売り手主導の拡大は、あまり好ましくないかもしれない。

2013/12/02

11月に読まれた記事TOP3

11月も多くの方がブログを御覧くださり、ありがとうございました。

2013/11/26

書評:Newsweek (ニューズウィーク日本版) 2013年 11/26号 [不妊治療の新たな道]

直近のニューズウィーク日本版、不妊治療の表紙になっている。翻訳記事ではないようで、聖マリアンナ医科大学の体外活性化(IVA)の技術が紹介されている。特集はほんのわずがだが、最新の技術のみならず、法律的な問題にも言及していて、非常に良い特集だと思う。

以前、弊社が発行した不妊治療に関するレポートはこちらからどうぞ

Our Reports | 株式会社メディチュア

2013/11/23

花粉症の新しい治療法「アレルゲン免疫療法(減感作療法)」の舌下療法が保険適用へ

今年の3月に弊社でまとめた「花粉症について」の資料(下部のSlideshareを参照)においても2013年度中には進展があるのでは・・・と書いていたアレルゲン免疫療法の舌下療法の薬が、先日の薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会で承認されたようだ(ニュース等はこちら)。


花粉症について(診療ガイドライン2013の動向) from Meditur

保険適用になることで、5~10万円程度と比較的高額だった費用も、おそらく1.5~3万円(3割負担)程度になるだろう。金銭的負担が軽減されることで、注射に比べ通院の必要性が少ない減感作療法を試したい人は多くいるのではないだろうか。また、医者は自費でなく保険診療となることで進めやすくなるに違いない。

11月18日に製造販売承認が下りたタイミングから考えると、薬価収載を経て、販売開始は来年の2月くらいだろうか。となるとスギ花粉が飛び始めてしまうので、新しい薬を保険診療で使えるのはスギ花粉が飛び終わってからで、効果を実感できるのは2015年シーズンになるかもしれない。なので、減感作療法が気になる人は、自費もしくは注射療法での治療相談をクリニックでしてみるのが良さそうだ。

2013/11/22

魅惑的なデニッシュルーレ

昨日コンビニで見かけたパン。
ヤマザキ デニッシュルーレ(http://www.yamazakipan.co.jp/recommend/
どうやら新製品らしい。ただ、とても魅力的なんだけど、スターバックスのシナモンロール的なヤバさを感じた。裏の栄養成分表示を見てみたら、622kcal!!! おー、なんて効率的な栄養補給! 小腹が空いたとき♪なんて気分で食べてしまったら、間違いなくカロリーが高すぎる。何人かで分けてもいいくらいだ。でも、コーヒーなどと一緒に食べたら美味しいんだろうなぁと思いつつ、結局は、となりにあったランチパックを買った。

いまだに、シナモンロールについて書いた記事【スタバのシナモンロール、カロリーがやばかった】へのアクセスが多い。カロリーばかり気にしてると幸せになれないよなぁと思うのだが、自分も裏側を見てしまう癖はなかなか抜けない。本来は、運動不足気味な生活を改善するべきなのだと分かってはいるのだけど・・・。

2013/11/21

病院機能の集約化に必要な「新たな機能」

■「地域完結型」医療は勝手に出来上がるものではない

急性期医療、その中でも特に手厚いケアを提供する7対1看護配置の病床が多すぎると言われている。背景には、かつて「おらが町にも病院を」と日本全国で自治体病院が作られたこともあるように思う。(余談だが、残念ながら自分の生まれ育った町に20床以上のいわゆる「病院」はない)

昨今、医療機能は病院完結型から地域完結型への転換を図るべきという議論がなされている。国民会議でも、その方向の提言がなされており、これは財政負担・金銭負担の軽減の意味合いでも、限られた医療資源を有効に活用する意味合いでも、重要な方向性だろう。効率的な医療提供体制は勝手に出来上がるものではない。効率化には医療機関に対する政策誘導や、一般市民に対する教育・啓蒙活動が必要であり、その大きな方向性を「地域完結型」という言葉が表していると理解している。

■機能集約化の議論は重要。今後、加速していくはず

地域完結型医療の方向性は、日本中の「市民病院」が金太郎飴のように急性期も亜急性期も回復期もやります、精神科病棟もあります、なんてことができなくなる可能性を示唆している。がんの手術は、その地域の真の中核病院でしか診なくなるだろう。脳梗塞になったら、救急車は10分先の最寄りの病院ではなく、t-PAのできる20分先の病院に行くようになるだろう。

日本は国土が狭いから、車で10分行くと隣の市・医療圏なんてことも珍しくないのに、それぞれの市に市民病院があったりする。これは真っ先に集約すべきかもしれない。いち早く集約化を図ることで、患者集約により施設活用度合いが改善したり医師の経験蓄積が進んだり、効率的な設備投資ができたりする。メリットは非常に大きいだろう。また多くの医師は、300床の病院と600床の病院を比較したら、600床の病院を選ぶだろう(実際は中身次第だが、仮に同じだと仮定したら)。

症例集積効果は、医療の質の観点でも重要だ。high volume centerは治療成績が良いという報告も海外ではなされている(例えばhttp://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22116595。ただしあまり関係ないという報告があることも事実)。以前、ブログでも書いたかもしれないが、月1件程度の手術(年10数件レベル)と、週1件(年50件レベル)や週2件(年100件レベル)では、手術チームの動きが違うという話をとあるドクターに聞いたことがある。年100件ではドクターはもちろん、オペ室の看護師やその他スタッフも慣れていて、スピーディーに進むとのこと(慣れゆえの落とし穴もあるらしいが)。

財政的な負担軽減や有限の医療資源の有効活用のためだけでなく、医療の質の維持・向上においても、集約化は、今後ますます重要な論点となることだろう。

■集約化を支える「新たな機能」 ①患者の長距離移動・搬送のための機能

急性期の機能を集約するという議論は、一部の人にとってみたら、身近な病院が急性期を止めることを意味している。今まで車で10分だった病院が30分になるかもしれないし、過疎地域では30分が2時間になるかもしれない。どこまでその制約を許容するかにもよるが、集約化には必ずつきまとう点である。

これを回避、もしくは負担を軽減するには、例えば、ドクターカーや、ドクターヘリがある。すでに北海道ではドクターヘリの運用がかなり増え、需要が供給を上回ってしまうようなことも起きているようだ(出所;北海道新聞【北海道内のドクターヘリ、フル回転 12年度、出動最多1096件 要請重なるケース急増】)。

急性期の集約化の議論と一緒に、ドクターヘリなどの運用についても、これまで以上に積極的に検討すべきだと思われる(一律整備すべきというのではなく、その地域の状況に応じ整備すべき)。


■集約化を支える「新たな機能」 ②患者家族の移動負担軽減のための機能

すでに機能の集約化が進んでいる小児の高度急性期機能について見てみると、下記の小児がん拠点病院の指定を見ても、全国で希少性のある疾患を診てもらえる施設は非常に限定的であり、国も集約を進めていることが分かる。

小児がん拠点病院の指定について |報道発表資料|厚生労働省

これは、患者はかなりの移動を強いられていることが想定される。実際に、自分で見聞きしたレベルでも、山形や新潟といった遠方から、東京の小児専門病院へキャリーバッグを引きながら外来を受診したり、入院のために来ている例を知っており、おそらく、それほど珍しい話ではないのだろう。

たった1週間の子供の入院であっても遠方から来ている場合は親は家を空けることになる(原則付き添う必要ないため、絶対に空けなければならないというわけではないが、子供に付き添う家庭が多い)。片道2時間を毎日往復していたり、入院した子供の兄弟を親類に預け家を空けてきた、なんて話も聞いた。

これは近所の病院で何もかも診てもらえるわけではない、という機能集約化の弊害だろう。この苦労を軽減する解決策のひとつが、こども病院に付設される「マクドナルドハウス」のような施設だ。

公益財団法人ドナルド・マクドナルド・ハウス・チャリティーズ・ジャパン

病院のそばにこういった機能・施設があることで、家族が1週間そこで生活しながら病院に通ったり、外来での宿泊先で利用したり、いろいろと融通が利くようになる。これは別にマクドナルドハウスでなければ困るというものではない。病院の隣にホテルがあればよいのかもしれない。実際、アメリカでは病院の隣にホテルがあったりするところも多い。下のGoogle Mapsのストリートビューはほんの一例だが、シアトルにあるVirginia Mason Hospitalでは、救急の入口の脇に「INN」の看板がある。
SeattleのVirginia Mason Hospital (クリックすると画面が開きます)
日本での入院治療はまだまだ長期にわたることも多い。ホテルは何かと患者家族の金銭的負担が大きい可能性もあるため、集約化の議論における論点の1つに、どのように負担を軽減するか、というのがあっても良いのではないだろうか。

2013/11/19

fitbit forceを使い始めた

Fitbit® Force™
先週、家に届き、週末から使い始めてみている。

今月頭にfitbitの従業員プログラムについて紹介したが、活動量計ひとつ取っても、多様な人が使用することを考えると、選択肢が増えることは大事だろう。

Fitbit: Employers 2.0: Wellness Programs and Incentive Tools - 医療、福祉に貢献するために
新しいforceはflexと異なり簡易な画面が付いているものの、邪魔ではなくシンプルさは維持されていて良い。画面のサンプルは下記動画でどうぞ。

2013/11/18

患者にとって「分かりやすい」病院の魅力

日本は医療法の広告規制が厳しい。これは病院側の誇大広告を防ぐ役割を果たしているわけで、いま巷で話題の「偽装」などという話が病院から出てこないもの、この規制のおかげだろう。(時折、医師免許を持ってないのに治療していたなんてニュースもあるが、広告ではないので、それはまた別問題)

一方で、規制が厳しいことは、それぞれの医療機関で、患者に対するアピールが十分にできてないように感じる。例えば、どんなにチーム医療に一生懸命取り組んでいても、施設基準をホームページに書くくらいのアピールや、「取り組んでいます」といった写真付きのページを書くくらいで、それが他の病院に比べ、どの程度違うのか、何が違うのか、具体的なところには一切踏み込めない。

患者からしたら、病院を選ぶ上で大事な内容であり、さらには、施設基準によっては、患者が支払う金額すら違うというのに、具体的な内容が分からないのだ。

下はアメリカのKAISER PERMANENTEのQuality Careのサイト(http://thrive.kaiserpermanente.org/quality-care)に書かれている内容だ。



QUALITY CARE

Here’s how we provide better care



日本でも病院の情報開示が検討されているが、ただ単に手術件数だけを並べるのであれば、それは書店に並んでいる「病院ランキング」とあまり変わらない。国は多くの情報を持っているわけで、さらに一歩踏み込んだ情報を還元し、病院ごとに開示できるようにしていってもよいのではないだろうか。開示できるようになれば、病院側はより努力をするようになり、患者はよりよい病院を選ぼうとするはずである。

早かれ遅かれ、患者にとって分かりやすい視点で、質を競争できるような仕組みが不可欠だろう。

2013/11/16

前職でお手伝いしていた調査内容が中医協総会に

以前、とある機関と仕事をさせていただく機会があり、期間的な制約が非常に大きかったものの、面白い調査をさせていただいた。

昨日の中医協総会(http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/0000029555.html)で、その調査結果が使われていた(データは最新のものに置き換わったと思われる)。いやぁ、感慨深い。

出所:平成25年11月15日(金)中央社会保険医療協議会 総会(第257回)資料

今後、急性期医療の機能分化や集約化が進んでいく中で、データに基づき議論を行うことは非常に重要なことだ。

中央社会保険医療協議会総会審議会資料 |厚生労働省

2013/11/09

Intermountain Healthcare の My Health Patient Portal

データを取り戻せ - 医療、福祉に貢献するために
先日、病院で検査したデータなどは自分のものだ!というブログを書いた。
下は、アメリカの病院の例なのだが、病院のサイトにアクセスし、ログインすると、これまでの検査結果などを参照できたり、メールのやりとりができたり、そんなサイトを構築しているのだ。

In Person Registration Tutorial
間違いなく医療機関はこういった取り組みを加速させていくだろう。情報を交換するネットワーク・協定は、日本でもあじさいネットワークをはじめとして、様々な取り組みがなされているが、なぜか患者自身がデータを見ることには大きな制限がある。なので、上記のような取り組みを参考に、データ開示に積極的になることで、地域医療に貢献する道を探るのはどうだろうか。

10年、20年後、この予想とまったく違う方向には進まないと思うのだが・・・