2017/04/28

「高齢者は乳酸菌飲料が好き」をデータで示す

今日の日経MJにあった「高齢社会の有望市場は?」の記事。コンビニが高齢者シフトしていることが書かれていた。ちょうどよい内容だったので、今日の大学の講義で、この記事に触れてみた。

下記は、記事を参考にデータ分析したもののおまけ。

若者の米離れ。データからも見えてくる。
総務省統計局「平成26年全国消費実態調査結果」を基に、
世帯人員数から1人あたりの支出に換算し比較

そして、高齢者の乳酸菌飲料好き。間違いない! これまで、Nは2しかなかったが、感じていたことが証明できた!? そして、高齢者は自分で買って飲むだけではない。これを孫・子供に飲ませようとする。なかなか興味深いデータではないだろうか。

以下は記事に関連するニュース動画。



2017/04/27

7対1の制度をなくすなら、自分はこうする!

CBnewsに重症度、医療・看護必要度に関する記事を掲載いただいた。

低入院単価3パターンに見る看護必要度対策 - CBnewsマネジメント 低入院単価3パターンに見る看護必要度対策 - CBnewsマネジメント
詳細は記事をお読みいただきたいが、先日の下記のブログは、この記事の分析に関連したデータだった。

一物二価を解消することで見えてくる質の向上 - 医療、福祉に貢献するために 一物二価を解消することで見えてくる質の向上 - 医療、福祉に貢献するために
7対1とそれ以外(10対1等)は違うというデータもCBnewsの記事では示したが、あくまでもマクロに日本の医療を捉えた場合であって、患者単位で見れば、客観的な違いを示すことは困難だと思っている。

先日のブログに書いたとおり、一物二価を解消することを真剣に考えるべきだと思っている。自分が制度設計に携わっていたら、看護配置の基準を撤廃し、DPCのベースの点数(階段状の点数)に、収集した看護必要度のデータに基づいた加点・減点を全国一律で行えば良いと思っている。同時に機能評価係数Ⅰの7対1の係数は廃止。例えば、2型糖尿病の看護必要度はかなり低いのだが、こういった疾患は、階段状の点数が下がる。大腿骨頸部骨折であれば、入院初期は看護必要度がそれなりに高いのでDPCの点数を上げ、一方、入院後期はほぼ看護必要度を満たさないのでDPCの点数を下げる。7対1入院基本料を算定していた分が財源となるのであれば、相当なメリハリをつけることができるのではないだろうか。

このような制度になれば、いかに早く看護必要度を下げることができるか、つまりアウトカムの向上の取り組み自体に、ポジティブになれる。現状は、離床しなければ看護必要度を満たすという制度のため、改定で厳格化すればするほど、離床を早める意欲を削ぐことになりかねない。

どうだろうか、7対1を廃止する案。以前下記のCBnewsの記事でも述べたとおり、7対1を廃止するのであれば、再入院の評価等の仕組みを入れなければならない。

高回転化の促進に必要な再入院率の評価 - CBnewsマネジメント 高回転化の促進に必要な再入院率の評価 - CBnewsマネジメント
あるべき議論はアウトカムを高めるための評価の厳格化であり、限られた財源を抑制するための評価の厳格化ではないはずだ。後者の色が濃くなればなるほど、いたちごっこのように厳格化を免れようとするように感じる。(前者の色が濃いのであれば、看護必要度の厳格化にしても、看護必要度の該当患者割合の高い病院が、いかに他の病院に比べ医療の質が高いかという点にフォーカスがあたるはずである)

・・・とここまで書いたが、一気に7対1の配置要件をなくすと、看護師の確保等について読めず、影響が甚大すぎるので、この案が無理なことは承知している。万が一可能性があるとしたら、25%の基準をやめ、看護必要度の集計結果に応じたDPC点数の調整を行うことだ。これなら混乱も生じにくい。また、看護必要度を満たせない理由で、急に経営悪化することも避けられる。CCPマトリックスの概念に看護必要度を足すのでも構わない。結構、いい案だと思うのだが・・・。

2017/04/26

他を凌駕する連携強化に必要な視点と投資

先日、下記の都内で開催されたセミナーを拝聴してきた。どの方も、制度の解説ではなく、持論の展開なのでひとつひとつが参考になり、大変勉強になった。

巨樹の会の桑木先生の話は初めてだったが、アウトカムを重視したアグレッシブな経営方針と人材投入の仕方は非常に興味深かった。特に、急性期病院から回リハへ、いかに早期の患者を回してもらうか、受け入れられるようにするかといった部分は、診療報酬上のリスクを超越した、患者のアウトカム重視のリハ実施だと思った。一方で、回リハなのに、急性期での経験豊富な内科・外科の多様な医師を揃えていたり、必要に応じてCT等を撮れる体制を構築していたり、医療上のリスクは、しっかり回避している点も興味深かった。

ちなみに、余談だが、回リハで内科・外科の医師を揃えている話は、以前、バンコクの美容外科の世界トップレベルの病院で聞いた話と似ている。そのバンコクの病院では、美容外科だけに特化するのではなく、内科から外科、そこでは心臓外科も含めた様々な診療科が一緒に診療を行っている総合病院の体制を整えておくことが、美容外科のいかなる手術も安全に行うために重要であると言っていた。

連携の強化には、各機能間でより早期の患者を受け入れることも意味している。このとき、診療報酬上のリスクと医療上のリスクをいかに回避するか。これが経営判断であり、人材や設備に投資できれば、他との差別化となる。

【HMS政策研究集会】2018年同時改定と病院経営シンポジウム
 ~2018年同時改定に伴う機能別(急性期・地域包括ケア・回復期リハ・慢性期)改革のポイントと2025年の超高齢社会に対応し、医療・介護一体改革が目指す医療・介護の融合時代の病院経営を探る~

公益社団法人 全日本病院協会副会長
社会医療法人財団董仙会 恵寿総合病院
神野 正博 氏

一般社団法人日本慢性期医療協会 会長
武久 洋三 氏

保健・医療・福祉サービス研究会 診療報酬・病院経営指導講師
株式会社MMオフィス 代表
関東学院大学大学院 非常勤講師
工藤 高 氏

千葉大学医学部附属病院 副病院長
病院長企画室長・ 特任教授・経営学修士(MBA)
井上 貴裕 氏

一般社団法人巨樹の会 副理事長
桑木 晋 氏

保健・医療・福祉サービス研究会 在宅医療事業部講師
医療法人社団永生会 特別顧問
中村 哲生 氏

2017/04/25

一物二価を解消することで見えてくる質の向上

7対1と10対1との間に絶対的な医療の質の差があるのであれば、診療報酬は分けて然るべきだと考えている。もし、同じ医療提供内容で質に差がないのであれば、看護師を何人配置しようとも、診療報酬は同じであるべきではないだろうか。

短期手術3はその最たる例であり、どの病棟に入院しても入院料は同じである。将来的には、医療の質によって診療報酬が変わるだけで、人員配置は関係なくなることを目指すべきだ。

現状、7対1とその他(10対1等)のデータ提出病院における違いを見たグラフを下に示す。横軸はDPC算定病床数である。病院規模によって手術ありや化学療法、救急車搬送の割合が異なっていることが見てとれる。ただし、入院料はあまり関係なさそうである(手術ありの割合は若干異なるか・・・)

7対1入院基本料とそれ以外(10対1、13対1、15対1等)の治療内容の違い
最低限の医療の質を担保した上で、看護配置の基準を取っ払い、診療報酬を疾患と治療内容で定めたらどうなるだろうか。業務効率化等の努力をしている病院であれば、おそらく看護師を減らせるだろう。新人の比率が高い病院では、逆に質担保のために看護師を増やすかもしれない。

さらには、質向上にインセンティブをつけるべきである。質向上に対し看護師を増やすべきか、それ以外の人を増やすべきか、インセンティブがあれば、現状より議論が進むに違いない。

7対1といった配置基準は、質低下をわかっていながら人員削減をするような倫理観の欠如した行動を防ぐ意味はあっても、業務効率化の推進やインセンティブ付与の観点では害が大きいのではないだろうか。

2017/04/24

健康増進で従業員向けにできること

企業は従業員に対し、健康診断やメタボ検診を受けさせたり、特定保健指導をしたり、様々な活動をしてる。厄介なことのひとつとして、一生懸命、企業がそういった取り組みを行っても、無関心な従業員が少なくないことだろう。

だから、数年前、ローソンは健診を受けない社員とその「上司」の賞与減額、という策を打ち出したのだろう。

ローソン、健診受けない社員とその上司の賞与減額  :日本経済新聞 ローソン、健診受けない社員とその上司の賞与減額  :日本経済新聞
行動を変える意味で、評価・給与に直結させるアイデアは悪くないと思う。しかしながら、この方法は、本質的な「健康増進」に対する価値の理解を促すものではない。

つまり、根本的な「健康増進」に対する理解を深める部分について、アクションを起こすべき・・・という意味では、なかなか効果的な取り組みをしている話を聞くことがない。(歩くことを推奨するような取り組みなどは多い)

このような現状を考えると、下記のようなアメリカの従業員向けのヘルスリテラシー向上のためのクイズサービスは、日本でも受け入れられる余地があるように思うのだが・・・。
Quizzify | Health Literacy for Empoyees Quizzify | Health Literacy for Empoyees
このQuizzifyの例では、従業員1人あたり月1ドル~1.3ドルくらいでサービスを利用できるので、お手軽のようにも思える。(ただ長期的に利用する価値があるかどうかはやや疑問) また、類似事例としては、Health IQというのもある。

Health IQ: Insurance for the Health Conscious Health IQ: Insurance for the Health Conscious 

こういったサービス、アイデアを輸入するハードルは非常に低いと思うのだが・・・。

2017/04/20

「手札を増やす」ことの重要性

1月に地域医療連携推進法人に関するセミナーにて、地域医療構想や病床機能報告のデータ等を独自に分析した結果などを交えながら、今後の診療報酬の制度の動向などを踏まえ、医療機関の課題を整理した話をさせてもらった。

課題解決には、一律に「こうすれば絶対大丈夫!」という策はなく、地域ごとの事情に対処する必要があることを述べた。解決策は様々あることは承知で、地域医療連携推進法人の活用余地について、色々アイデアを紹介させていただいた。

大事なことは、地域医療連携推進法人は地域医療存続のツールのひとつであり、使わなければならないものではない。しかし、解決策が限られているのであればなおのこと、知っておいて損はないだろう。

また、時間軸も少し長めに取ることが重要だと考えている。これはトランプでたとえると手札として1枚増やしておくようなイメージだ。この手札は使わないかもしれない。もっといいカードがくれば、当然、そっちを使う。でも他に来なかったら、これを使う。先が見えない病院経営環境であるからこそ、手札を増やしておくことは大事なことだ。(麻雀にたとえると・・・、もっと良い表現ができそうなのだが、ピンとくる人も少なくなりそうなのでやめておく)

先日、自分以外の演者の方々も含め、セミナーの内容をまとめたレポートが発行された。もし内容に興味をお持ちいただけたら、どうぞ遠慮なく、お近くの野村證券の支店に「ヘルスケアノート」が欲しいとお伝えください。

野村證券 ヘルスケアノート
「特別セミナー 地域医療連携推進法人設立の検討について」の表紙

2017/04/19

退役軍人病院に求められている競争・説明責任・透明性の向上

アメリカの退役軍人病院に対する問題点と、カナダ方式の国民皆保険制度への適用余地について述べている動画。


退役軍人病院は、財源不足が真の問題ではなく、競争、説明責任、透明性が足りていないことを指摘している。

日本の公立病院にも相通じるものがあるのかもしれない。実質的に地域を限定した日本の公立病院と、対象者を限定したアメリカの退役軍人病院。当然日本とアメリカでは違いもあるが、日本は保険者が医療機関を選択できない制度であり、実質的には個々の保険者の姿が見えない「シングルペイヤー」と考えてよいだろう。つまり、公立病院とて、収益性と医療の質の両立を目指した適度な競争が大事なのではないだろうか。(公立病院に限らず、公的・民間病院も同様であるが、特に公立病院は競争が乏しいと感じている)

2017/04/16

チーム医療に積極的な西日本!?

またまたレセプトの出現比のデータに関する話題。

今度は、病棟薬剤業務実施加算と栄養サポートチーム加算の算定状況について。2つの項目について、全国平均より算定が多いか少ないかで4象限に分けた。便宜上、それぞれをzone1~4と呼んでいる。

病棟薬剤業務実施加算と栄養サポートチーム加算のレセプト出現比による4象限の設定

それぞれの都道府県がこの4象限のどこに位置しているか、東日本と西日本でカウントした結果が下のグラフだ。

上で設定した4象限における東日本と西日本それぞれの都道府県の数

東日本は半数以上がzone4。西日本は半数以上がzone1とzone2。

病棟薬剤業務と栄養サポートチームに関して、算定上は西高東低であると言えそうだ。

ただし気をつけなければならないのは、そもそも算定のベースとなる病床数自体が、東日本<西日本、である。そのため、各病院の取り組みが積極的か否かの判断を、この情報だけで行うことは危険である。

性・年齢調整をした人口あたりの算定件数で判断すれば、チーム医療が充実していると言える西日本。であるならば、アウトカムも充実していることが期待されるのだが、それぞれの加算において、アウトカムは算定要件にない。ゆえにチーム介入によるアウトカムは不明である。

2017/04/15

レセプトの出現頻度は単純比較できない

昨日も書いた経済・財政一体改革推進委員会の資料に関連した話題を。

ワーキンググループで提示されていた資料には、都道府県別に性・年齢調整をしたレセプトの出現比を比較しているものがあり、非常に興味深いデータである。医療費の地域差を解消していく上で、重要なデータであることは間違いない。

ただ、気になった点もある。人工腎臓(慢性維持透析)については、レセプト件数の最も多い4時間以上5時間未満の件数だけを比較していたが、維持透析には4時間未満や5時間以上、複雑なもの、があり、それだけを比較する意味はないように思うのだが・・・。

参考までに、4時間未満と4時間以上5時間未満のレセプト出現比について、東日本と西日本に分け、箱ひげ図を書いた(外れ値は非表示)。
人工腎臓(慢性維持透析) 4時間未満、4時間以上5時間未満のSCR分布(東日本・西日本)
出所: 経済・財政一体改革推進委員会 評価・分析ワーキング・グループ 第2回会議資料  を基に作成
※4hrs:4時間未満 5hrs:4時間以上5時間未満  EAST:東日本 WEST:西日本
上のグラフの左ふたつ、東日本は、どちらの時間の中央値も100前後であるのに対し、西日本は4時間未満の中央値は極端に低く、4時間以上5時間未満の中央値がやや高く、そして箱が上に伸びていることが分かる。

平均値と中央値だけを比較したグラフも示す。東日本と西日本で出現比の傾向が異なる様子は明らかである。

人工腎臓(慢性維持透析) 4時間未満、4時間以上5時間未満のSCR平均値・中央地(東日本・西日本)
出所: 経済・財政一体改革推進委員会 評価・分析ワーキング・グループ 第2回会議資料  を基に作成


つまり、これらのレセプトは補完的な関係があり、それぞれ単独で比較する意味はあまりないと思う(レセプトの件数比が70万件弱と210万件弱で3倍近い開きがあるので、無意味ではないが)。本来は、5時間以上や複雑なものも含め比較をすべきであり、結果として見えてくるのは罹患率の違いだと思うのだが・・・。


2017/04/14

地域差の可視化から、地域事情を考える

以前、DPC公開データから、狭心症カテーテル検査入院の地域差の可視化を試みた。

地域差を可視化する(Part.1 狭心症カテーテル検査) - 医療、福祉に貢献するために 地域差を可視化する(Part.1 狭心症カテーテル検査) - 医療、福祉に貢献するために

近頃、内閣府の経済・財政一体改革推進委員会の資料として、入院・外来のレセプトの性・年齢調整レセプト出現比の情報が開示された。

第2回会議資料 - 経済・財政一体改革推進委員会 - 内閣府 第2回会議資料 - 経済・財政一体改革推進委員会 - 内閣府

心カテ検査入院は包括対象のため、まったく同じ比較検討はできないと思われるので、類似のPCIについて比較を行ってみた。

まず、PCIのステント留置術と冠動脈形成術の状況。100が全国平均で、100を超えていれば多く実施されていることを意味している。滋賀や石川と岩手では5倍以上の開きがあるようだ。
PTCA都道府県比較(クリックすると拡大)

同様に外来の心エコー検査の状況も比較してみた。鹿児島と岩手では2倍以上の開きが見られる。
PTCAと心エコー(外来)の都道府県比較(クリックすると拡大)

このデータ、興味深い。初診、再診から始まって、入院の様々な項目まで開示されているので、地域医療構想等の検討や病床機能選択の検討にも有益ではないだろうか。

2017/04/13

オーバーブッキングは予測的稼働率マネジメントの1テーマ

データとシステム化重視の病床マネジメント https://www.cbnews.jp/news/entry/20170411150747

CBnewsに病床マネジメントの進化に関する記事を掲載いただいた。先日、航空会社のオーバーブッキングの話題がニュースになっていたが、これも、同じ類のマネジメントだ。

オーバーブッキングは、業種により、クリティカル度合いが異なる。旅客機のように、コントロールが極めて重要なものもあれば、同じ飛行機でも貨物機はあとの便に振り替えで許容される範囲が大きい。また、ビジネスホテルは比較的クリティカルだが、リゾートホテルはアップグレード等により回避できるケースも多い等々。

病院も外来と入院で異なるのだが、外来で一定のキャンセルを見込んで受け付けていると、オーバーブッキングが生じる。その場合は、診察開始時間の遅延で対処ができるため、クリティカル度合いはさほど高くない。

このようなマネジメント(オーバーブッキングに限定しているわけではなく、一般的な病床マネジメント)について、レベルを高めていく上では、スキルのある人材の確保が重要であるのは当然ながら、その人材をデータで武装させることが一層重要であることを記事では述べさせてもらった。データで武装することで、よりスキルを発揮しやすくなる。結果として、診療報酬改定等の先が見えない経営環境において、柔軟な対応が可能となると考えている。

ちなみに、ユナイテッドエアラインのニュースを知る前に原稿を書いていたので、オーバーブッキングには一切触れていないが、この記事で述べた「第3世代」の病床マネジメントである予測的マネジメントは、まさにオーバーブッキングのコントロールで多用されている手法である。

2017/04/12

単純比較は無意味 ~大学病院の死亡率比較~

ある原稿を作成している過程でボツにしたグラフ。

DPC公開データにより、入院医療における死亡率(最も医療資源を投入した病名で死亡したものと、それ以外の病名で死亡したものを足し上げた数値)と、救急車搬送症例の割合を見たもの。対象はDPC病院Ⅰ群(大学病院本院)である。

DPC病院Ⅰ群における死亡率と救急搬送症例割合の関係性(画像をクリックすると拡大します)
出所: DPC公開データ(2016年度公開、2015年度実績)を基に作成
各大学病院の死亡率の違いは、医療の質の違いと言えるか・・・と考える上で、疾患構成や年齢構成などの調整が必要なのは当然だ。ただ、そのような一般的な調整の必要性以前のレベルで、死亡率を単純に比較してはいけないことが、上のグラフから明確に見えてくる。死亡率は救急搬送症例の割合に強く依存していると言えよう。

救急搬送症例における死亡率とそうでない症例の死亡率が分かれば、比較に耐えうるデータといえるかもしれない。

このようなバイアスをうまく理解していなければ、誤った見方をしてしまう。ちなみにDPCⅡ群・Ⅲ群は、背景がばらばらすぎて、死亡率の評価は困難であった。それゆえ、Ⅰ群のグラフを出したというわけである。

2017/04/10

利益率10%を”切っているところ”もある??

先日の「医療費とBMIの関係性(イングランドの大規模調査)」の話をしたそばから、週末に食べすぎてしまった事に対し、自戒の念を込め、今度はスペイン人の肥満の話。

OBESE SPANISH WORKERS TAKE MORE SICK LEAVE / THE EUROPEAN SOCIETY OF CARDIOLOGY

太っている人は仕事を休みがちらしい。

仕事関連の怪我と、仕事に関係ない疾病を分けて考えられており、後者の仕事と関係ない病欠について、肥満なしの人と比べた場合に、代謝異常なし・肥満の人は37%、代謝異常あり・肥満の人は71%、病欠しやすいとのこと。

前者の仕事関連の怪我については、太り過ぎてしまうと、仕事上、そもそものリスクを避ける傾向があるかもしれず、太りすぎの手前くらいが一番休みがちになってしまうようだ。

先週金曜の日経新聞、印南一路教授のやさしい経済学「医療費適正化計画を考える⑤」http://www.nikkei.com/article/DGKKZO14995120W7A400C1KE8000/の最後に、1点10円を9円にすれば、医療費が10%削減されるが、そんなことをしたら、医療提供体制の一部が崩壊してしまうと述べられていた。その理由として書いてあったのが、次の一文。
医療機関の中には利益率が10%を切っているところもあります。
利益率10%を超えている医療機関を探すのが難しいのでは??と思うのだが、診療所も含めると、上記のような表現で合っているのかもしれない。

医療費適正化、1点9円はさすがに病院に厳しすぎるだろう。であれば、せめて医療を受ける側が肥満抑制の努力をし、無駄な医療費がかからないように努力しなければならない、ということなのかもしれない。週末の食べ過ぎを反省。

2017/04/07

医療費とBMIの関係性(イングランドの大規模調査)

BMIが高い人は医療費が高い。

なんとなく、「そうなんだろうなぁ・・・」と思っていたことを、エビデンスとともに示されている。興味深い結果である。

疾患別に医療費に対する肥満の影響を見ると、筋骨格系の疾患で顕著とのこと。これもまた、「まぁ、そうだよね」、という結果であり、疑問はあまり感じない。

そして、股関節より、膝関節の方が肥満の影響が強い、ということも示されている。またまたこれも、納得の結果である。

余談だが、この調査、「BMIは自己申告だから、過小評価になってるかもね」とのこと。女性を対象にした調査だ。なかなか興味深い配慮である。

このLANCETの論文、オープンアクセスで誰でも読めると思うので、ぜひ下記にアクセスを。

Hospital costs in relation to body-mass index in 1·1 million women in England: a prospective cohort study - The Lancet Public Health: Excess body weight is associated with increased hospital costs for middle-aged and
older women in England across a broad range of conditions, especially knee replacement
surgery and diabetes. These results provide reliable up-to-date estimates of the health-care
costs of excess weight and emphasise the need for investment to tackle this public
health issue.


2017/04/05

病院は奉仕の精神で何とかを保っている砂上の楼閣

医学書院 病院2017年04月号 (通常号) ( Vol.76 No.4)特集 生き残る病院の事務職

先日も書いたが、今月の「病院」の特集が非常に興味深い内容だった。この半年ほど、同じようなことを考えていた、まさにどんぴしゃの内容。医療者の「奉仕の精神」に強く依存し何とか経営が成り立っているという病院は少なくない。そこに、モチベーションをあげろ、ワークライフバランスを守ろう、医療の質を上げろ、患者満足度を上げろ、経営改善をしろ・・・と無理難題を積み重ね続ければ、組織・システムとしての病院は崩壊してしまう。このような難局をうまくマネジメントしていくことが病院には求められている。そして、そのマネジメントができるのは「医療」と「マネジメント」が分かっている人材である。(当然ながら、医者であることは絶対条件ではないが、医者がマネジメント経験も豊富だと良いことは確かだと思う)

ちなみに、下の一文は、とある海外の病院のCOO募集要項にあった必須要件のひとつだ。
  • Demonstrates strong analytical skills to evaluate results through data monitoring. 
「データモニタリングを通じた業績評価のための高い分析スキルを有すること」といった意味だろうか。ここで言う分析スキルは、作業としての「分析」ではなく、深い洞察力を指していると思う。病院スタッフはこの洞察力を養うことこそが重要なのだが、現場が忙しく劣後しているように思う。

「洞察力を養う」「マネジメント」を意識する。そんなことをこの1年くらいセミナーや研修等でお伝えしてきたつもりなのだが、自分の話より、むしろ今月の「病院」を読んだ方が良かった、というのが今日の結論である。

余談だが、下は読み途中にツイッターでつぶやいた内容。

2017/04/03

今後、病院で重要性が高まるスタッフの「能力」

「データ競争力を上げる上司、下げる上司」の一節。(P.39から引用)
『実務経験が浅い、若いデータ分析者の報告などを見ていると、確かに分析そのものの品質や精度は悪くないものの、「それだと、そもそもの課題の捉え方が限定的なのではないか」と気付くことがよくある。自分で気付いていないことに「気付きなさい」といっても無理な話である。そのため、上位者であるマネジャーがそこをサポートしてあげる必要がある。』
『視野の広さや気付きは、データ分析スキルの有無とはあまり関係がない。』

激しく同意である。昨年の日経ヘルスケアのセミナーの最後で、まったく同じような話をさせてもらった。

データ分析スキルも大事だが、経験に裏打ちされた課題発見・仮説設定・問題解決力も大事であり、それぞれの足りないところを補完し合うべきだ。そして、データ分析を繰り返し、経験のあるマネジャーがサポートすることで、経営改善を達成するだけでなく、人材の育成にもつながる・・・という内容が、セミナーの最後の2枚のスライドだった。

余談だが、自分が医療データの分析を専門にしていながらも、いつも何人かの方々を頼りにしているのは、まさにこの「視野の広さ」が別次元であることだ。ここで言う別次元とは、知識を点として記憶している人間と、点と点が線で結ばれ、それが複雑に絡み合った状態で記憶している人間との違いとでも言えばよいだろうか。物事に対し、経緯や背景、人それぞれの考え方・感じ方などを理解している状態というものには、到底、追いつけない。



この「データ競争力を上げる上司、下げる上司」の本と関連して、ちょうど医学書院の月刊誌「病院」の最新号で、こういった人材の重要性についての特集が組まれていた。今回の「病院」は、個人的に非常に読み応えがある内容だ。