CBnewsマネジメントに記事を掲載いただきました。再入院を低く抑える取り組みをしている医療機関に対し、インセンティブを与える前提として、指標定義における留意点を述べさせていただきました。
高回転化の促進に必要な再入院率の評価 https://www.cbnews.jp/news/entry/20170328124123
2017/03/31
2017/03/28
医療集約化と民泊活用の関係
特区民泊、患者家族に低価格で 大田区、東邦大など連携 :日本経済新聞
10日以上前の日経新聞、地方経済面(東京)の記事。
記事で言及されているとおり、腎移植の患者はかなり広いエリアから集まってきていると思われるだけに(北関東から東邦大で移植を受けた知り合いが)、こういった患者家族の宿泊施設の存在は非常に重要である。
特に、高度急性期・急性期医療における一部疾患では集約化の傾向が見られる。どこでも医療を受けられるメリットよりも、集約化することでの効率化や医療の質向上のメリットの方が大きいと言われているだけに、今後も疾患によっては集約化が進むと思われる。患者家族の宿泊等、特定の目的であれば、民泊の要件は緩和されてよいのではないだろうか。
Hosts for Hospitals | Hosts For Hospitals | Solving the Problem of Patient-Family Lodging
公益財団法人ドナルド・マクドナルド・ハウス・チャリティーズ・ジャパン
10日以上前の日経新聞、地方経済面(東京)の記事。
記事で言及されているとおり、腎移植の患者はかなり広いエリアから集まってきていると思われるだけに(北関東から東邦大で移植を受けた知り合いが)、こういった患者家族の宿泊施設の存在は非常に重要である。
特に、高度急性期・急性期医療における一部疾患では集約化の傾向が見られる。どこでも医療を受けられるメリットよりも、集約化することでの効率化や医療の質向上のメリットの方が大きいと言われているだけに、今後も疾患によっては集約化が進むと思われる。患者家族の宿泊等、特定の目的であれば、民泊の要件は緩和されてよいのではないだろうか。
Hosts for Hospitals | Hosts For Hospitals | Solving the Problem of Patient-Family Lodging
公益財団法人ドナルド・マクドナルド・ハウス・チャリティーズ・ジャパン
2017/03/16
建設的意見をもらうために大事にしている現場感
先週の第10回 医療計画の見直し等に関する検討会で、急性期病院からの退院患者の大半が、その後、通院に移行しているというデータ(下記がその一例)が示され、様々な議論がなされたようだ。
CBnewsの記事によると、通院に切り替えているというデータが臨床医の感覚と合わないといった意見が出たようだ。
在宅医療などの追加整備、厚労省案に違和感 - CBnewsマネジメント
確かに、なかなか急性期病院から退院することが難しい患者も少なくないだけに、大半が通院しているというデータには違和感がある。
しかし、感覚とデータに差異が生じる理由も何となく分かる。その一端をデータで示してみたい。
下のグラフは、DPC算定病院の80歳以上の入院データを見たものである。疾患別の入院件数上位7疾患をピックアップし、その7疾患における入院件数の占有率と、在院日数の占有率を比較した。
このグラフから、上位疾患中、3割弱を占めている白内障と狭心症は、延べ在院日数(≒ベッド)は1割にも満たないことが見えてくる。
白内障と狭心症は、大半が急性期の治療・検査を終えたら、自宅に帰ることができる疾患である。つまり、件数としてはそれなりに多い疾患の中には、通院に切り替えることが容易な疾患が含まれており、それらの疾患がベッドを占める割合は低い可能性が示唆される。
ベッドを占めていないことは、医療者の実感を薄めてしまう可能性が高い。つまり、誤嚥性肺炎や脳梗塞、心不全といった疾患の印象が強いため、「そんなに通院に切り替えられるの?」という疑問を感じたのではないだろうか。
構成比を見るときは、件数を見るのか、ベッド占有率・延べ在院日数を見るのか。医療計画の見直しについて有意義な議論を促すためにも、臨床の先生方の感覚に寄り添う余地があるのではないだろうか・・・と偉そうなことを書いてみたが、要は、患者に直接触れない場所でデータ分析を本業としている自分に言い聞かせたかっただけだ。
2017/3/8 医療計画の見直し等に関する検討会 資料より引用 |
在宅医療などの追加整備、厚労省案に違和感 - CBnewsマネジメント
確かに、なかなか急性期病院から退院することが難しい患者も少なくないだけに、大半が通院しているというデータには違和感がある。
しかし、感覚とデータに差異が生じる理由も何となく分かる。その一端をデータで示してみたい。
下のグラフは、DPC算定病院の80歳以上の入院データを見たものである。疾患別の入院件数上位7疾患をピックアップし、その7疾患における入院件数の占有率と、在院日数の占有率を比較した。
DPC公開データ(2015年度実績)を基に分析 |
このグラフから、上位疾患中、3割弱を占めている白内障と狭心症は、延べ在院日数(≒ベッド)は1割にも満たないことが見えてくる。
白内障と狭心症は、大半が急性期の治療・検査を終えたら、自宅に帰ることができる疾患である。つまり、件数としてはそれなりに多い疾患の中には、通院に切り替えることが容易な疾患が含まれており、それらの疾患がベッドを占める割合は低い可能性が示唆される。
ベッドを占めていないことは、医療者の実感を薄めてしまう可能性が高い。つまり、誤嚥性肺炎や脳梗塞、心不全といった疾患の印象が強いため、「そんなに通院に切り替えられるの?」という疑問を感じたのではないだろうか。
構成比を見るときは、件数を見るのか、ベッド占有率・延べ在院日数を見るのか。医療計画の見直しについて有意義な議論を促すためにも、臨床の先生方の感覚に寄り添う余地があるのではないだろうか・・・と偉そうなことを書いてみたが、要は、患者に直接触れない場所でデータ分析を本業としている自分に言い聞かせたかっただけだ。
2017/03/15
DPC制度、D方式の問題点とその解決策
DPC制度の問題と考えている高額薬剤の包括制度について述べた記事を掲載いただいた。
「高額な抗がん剤治療はIII群が不利」に疑問 - CBnewsマネジメント
問題の根は深く、これでかなりの利益が出ている病院があることも事実で、化学療法は外来より入院で診た方が良いと考えているところも少なくないと思われる。
過去にさかのぼれば、暫定調整係数の多寡が収入面での有利不利を左右している色が濃かったわけで、まだマシになってきていると言えなくもない。しかし、やはり無茶な制度である・・・と言うことを、いくつかのケースでの簡易な数値検証した内容を踏まえて、述べてみた。下のグラフは無料部分でも読めるところにあるものだ。
結論は、制度の問題点が解消されない限りは係数を上げろ、ということに尽きるのだが、記事では、具体的な問題解消策にも触れている。本来、医療者は医療の質向上の追究をすることに時間を割き、その質向上に報酬がついてくるべきである。
「高額な抗がん剤治療はIII群が不利」に疑問 - CBnewsマネジメント
問題の根は深く、これでかなりの利益が出ている病院があることも事実で、化学療法は外来より入院で診た方が良いと考えているところも少なくないと思われる。
過去にさかのぼれば、暫定調整係数の多寡が収入面での有利不利を左右している色が濃かったわけで、まだマシになってきていると言えなくもない。しかし、やはり無茶な制度である・・・と言うことを、いくつかのケースでの簡易な数値検証した内容を踏まえて、述べてみた。下のグラフは無料部分でも読めるところにあるものだ。
2016年度 基礎係数、暫定調整係数、機能評価係数Ⅱの合計分布 |
2017/03/14
都道府県内の地域間格差を考える
先日、埼玉で講演したときの分析資料を紹介した。埼玉は南北、東西で人口動態が異なっている。時代時代で首都圏に伸びる鉄道沿線において、宅地開発が進められた影響が人口動態に大きな影響を及ぼしていることから、医療需要の変化は・・・といったことを話させていただいた。
地域の差が分かりやすい県として、兵庫県は特徴的な地域だと考えている。埼玉同様、沿線の宅地開発が、時代時代で行われているため、1970年代までに開発が進んだ地域では、2040年に向け、急性期医療の需要が減りだすことが想定される。一方、現在も開発が進む地域は若干異なる傾向を見せている。
そして、東西・南北でまったく違う傾向を示している点は、埼玉よりも鮮明である。日本海側では、急性期はすでに減少傾向であるが、2025年以降は回復期・慢性期も急速に需要減少することが想定される。急性期、回復期・慢性期どちらの需要も減るということは、簡単に言えば、機能転換しても病院の規模は維持できないことを予見しているということである。
※上記グラフは国立社会保障・人口問題研究所の将来推計人口を参考に作成
データから地域が抱える経営課題を考え、実際の声を聞く - 医療、福祉に貢献するために |
地域の差が分かりやすい県として、兵庫県は特徴的な地域だと考えている。埼玉同様、沿線の宅地開発が、時代時代で行われているため、1970年代までに開発が進んだ地域では、2040年に向け、急性期医療の需要が減りだすことが想定される。一方、現在も開発が進む地域は若干異なる傾向を見せている。
そして、東西・南北でまったく違う傾向を示している点は、埼玉よりも鮮明である。日本海側では、急性期はすでに減少傾向であるが、2025年以降は回復期・慢性期も急速に需要減少することが想定される。急性期、回復期・慢性期どちらの需要も減るということは、簡単に言えば、機能転換しても病院の規模は維持できないことを予見しているということである。
2025年急性期(2015年基準増減) |
2025年回復期・慢性期(2015年基準増減) |
2040年急性期(2015年基準増減) |
2040年回復期・慢性期(2015年基準増減) |
2017/03/12
化学療法は入院か外来か
昨日のウイルス性腸炎の話題に続き、今日はがんの化学療法について。
入院ベッド、手術と化学療法のどちらの患者を主に使うか考えてみたい。当然ながら、がんの詳細な種類や状況、患者個々の状態に応じ、治療の選択肢は異なり、また、入院・外来の選択肢も異なる。このような前提であっても、1年間の診療実績での比較であれば、ある程度の傾向が見えてくる。そこで、肺がんと卵巣がんについて、外科手術とそれ以外(主に化学療法が多い)の比率を比較してみた。
まず肺がん。横軸に年間の入院件数、縦軸に入院件数に占める手術件数の比率を取っている。グラフの赤い点は、病院名に「大学」が含まれる施設である。
肺がんの入院件数・手術比率の施設分布(一定件数以下の施設は非表示) |
なお、手術件数は0件のところが少なくないのでグラフ下端に点が多くあるのは分かりにくいことと、「99手術なし」「97手術あり」「97手術あり輸血以外」のそれぞれの件数が年10件未満の施設は数値が公表されていないため比率自体が正しくない可能性があることはお許しいただきたい。
グラフから、入院件数が多いところでも、手術が4割近いところから、1割に満たないところまで、様々である。件数が少ないところでは、手術症例の比率が非常に高いところもある。そして「大学」と名のつく施設では、グラフのやや上の方に位置している。
肺がんで年間500件、600件の入院患者を受け入れている施設でも、その診療内容には大きな違いがあり、手術をほとんどしていないところもある。これは肺がんの外科手術の相対的なハードルの高さを反映しているとも言える。
この肺がんの施設分布を頭に入れ、卵巣がんを見てみよう。
卵巣がんの入院件数・手術比率の施設分布(一定件数以下の施設は非表示) |
似たようなグラフになっているが、「大学」の名のつく施設の分布がグラフの上の方から下の方まで、均一にばらけた。これだけ外科手術と化学療法の比率がばらける背景には、術前術後の化学療法選択が全施設同一という強引な仮定を置けば、入院と外来の選択が異なっていることが大きな要因と考えられる。
外来か入院か。患者の状態やケアの質・医療安全面などをトータルに見て、この判断しているのであれば、まったく問題ない。しかし、経営面に重きを置いて判断しているのであれば、疑問を感じざるを得ない。
今回は、施設のばらつきは諸処の事情で仕方ないという前提を、全施設の散布図で見た。その上で、「大学」の名のつく施設のばらつきについて疾患別の違いを見ることで、経営方針の違いが見えてこないか考えてみた。上記のグラフはいずれもDPC公開データ(2015年度実績)から作成しているので、誰でも施設名入りのグラフを作成できる。余談だが、グラフに施設名が入ると「あー、あそこは最近頑張ってるからね・・・」といった事情が見えてくる。データから色々と推測することは楽しいものだ。
2017/03/11
小児疾患の中にいる高齢者
最新のDPC公開データ(2015年度実績)から、ウイルス性腸炎について考えてみたい。
ウイルス性腸炎 患者 年齢比率(2015年度, DPC対象病院) |
150010 ウイルス性腸炎 データ提出病院分布(2015年度) |
ウイルス性腸炎 施設・診療科別 年齢・平均在院日数分布(2015年度) ※DPC病院Ⅰ群・Ⅱ群を中心に病院情報の公表でウェブサイトに掲載していた病院・診療科 |
平均年齢が高い施設・診療科では、平均在院日数が6日を超えている一方で、低いところは短くなっている。しかも、平均年齢は二極化している。このような診断群分類番号では、残念ながら、効率化係数などの評価で不平等になってしまう。たまたま小児だけを見ている病院では、効率性係数は高くなり、成人だけを見ている病院では評価が下がる。
もし効率性係数の重み付けを増すのであれば、こういった不平等を解消していくことも大事なのではないだろうか。
2017/03/04
データから地域が抱える経営課題を考え、実際の声を聞く
昨日は埼玉で開催されたセミナーにて講演。
埼玉県の医療需要推移予測の分析結果を基に、今後の病院経営の課題と取り組みの必要性について述べさせてもらった。下は、その医療需要推移の分析結果。
最近、このような内容の分析をよく行っている。埼玉以外にも、栃木、茨城、神奈川、青森、兵庫・・・。色は比率で着けているが、あくまでも参考情報。比率だけではなく、現状と将来のボリュームの差の絶対値も見なければいけない。
また、参加者などから、貴重な話も伺うことができた。これが自分にとっては一番の収穫だった。ありがたい機会をいただけたことに感謝。
埼玉県の医療需要推移予測の分析結果を基に、今後の病院経営の課題と取り組みの必要性について述べさせてもらった。下は、その医療需要推移の分析結果。
最近、このような内容の分析をよく行っている。埼玉以外にも、栃木、茨城、神奈川、青森、兵庫・・・。色は比率で着けているが、あくまでも参考情報。比率だけではなく、現状と将来のボリュームの差の絶対値も見なければいけない。
高度急性期・急性期 2025年(2015年基準) |
高度急性期・急性期 2040年(2015年基準) |
回復期・慢性期 2025年(2015年基準) |
回復期・慢性期 2040年(2015年基準) |
※上記地図は、国立社会保障・人口問題研究所の人口推計等を基にメディチュアで分析
また、参加者などから、貴重な話も伺うことができた。これが自分にとっては一番の収穫だった。ありがたい機会をいただけたことに感謝。
2017/03/02
複雑性係数を色々複雑に考えた結果を、極力シンプルにまとめたレポート
DPC機能評価係数Ⅱの複雑性係数に関する記事をCBnewsマネジメントに掲載いただいた。記事では、入院化学療法が複雑性係数に与える影響などについても言及したので、色々と参考にしていただけるのではないかと思う。
改善余地の少ない複雑性係数から見えること - CBnewsマネジメント
先日のケースミックスの話は、言うまでもなく、この記事のための分析であった。
改善余地の少ない複雑性係数から見えること - CBnewsマネジメント
先日のケースミックスの話は、言うまでもなく、この記事のための分析であった。
ケースミックスに悩まされた1週間 - 医療、福祉に貢献するために |
というわけで、記事と合わせて先日のグラフをご覧いただくと、MDC02の眼科系疾患や、MDC06消化器系疾患、MDC12の婦人科系疾患の動きが興味深い結果となっている。
眼科や婦人科の入院件数を減らせば複雑性係数は上がる・・・ということが分かって、外来移行できるものであれば良いが、そうでないのであれば、努力余地はないように思う。
しかも、入院件数を減らし外来に移行させれば、機能評価係数上の患者シェアや疾患カバーが減る(シェアもカバーも、本来は外来も含め考えるべきもの!)。複雑性係数を上げたら、地域医療係数やカバー率が下がってしまった、なんてことになったら、とても笑えない・・・。
2017/03/01
RESASに医療・介護需給が追加された
RESAS、昨日の「平成28年度 第2次リリース」で医療需給、介護需給が追加になった。
トップページ - RESAS 地域経済分析システム
人口あたりの病床数や、疾患別の患者数などを見ることができる。ウェブブラウザ上で完結できることや、医療・介護以外の産業とのつながりを考えることなど、様々な利用方法が考えられる。
実際、昨日、触ってみた印象としては、地図上で、多い少ないだけで表現しようとすると、どうしても背景にある人口の差異が大きいため、あまり参考にできない情報も多いように感じた。ただし、比率で見ることができたり、いろいろ興味深いデータを、短時間で調査できるので、使い方次第で色々活用できるように思った。
また、人口メッシュ、将来人口メッシュの機能も追加になっている。現状の人口をマッピングできる機能は色々あるが、将来人口メッシュは興味深い(現時点では2050年しか選択できないのだが・・・)。
余談だが、以前RESASのことを話題にした記事はこちら
↓
トップページ - RESAS 地域経済分析システム
人口あたりの病床数や、疾患別の患者数などを見ることができる。ウェブブラウザ上で完結できることや、医療・介護以外の産業とのつながりを考えることなど、様々な利用方法が考えられる。
実際、昨日、触ってみた印象としては、地図上で、多い少ないだけで表現しようとすると、どうしても背景にある人口の差異が大きいため、あまり参考にできない情報も多いように感じた。ただし、比率で見ることができたり、いろいろ興味深いデータを、短時間で調査できるので、使い方次第で色々活用できるように思った。
また、人口メッシュ、将来人口メッシュの機能も追加になっている。現状の人口をマッピングできる機能は色々あるが、将来人口メッシュは興味深い(現時点では2050年しか選択できないのだが・・・)。
余談だが、以前RESASのことを話題にした記事はこちら
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