2015/07/23

「症例数の少ない外科医は手術をするな」はさすがに言い過ぎか

昨日、社内メモ(病院・医療者の集約化は質の向上に貢献するに更新した内容。

■なぜ病院は”カウボーイ外科医(荒っぽい外科医、やっつけ仕事をする外科医、くらいの意味か)”を取り締まろうとしないのか
‘Cowboy Surgeons’: Why Hospitals Are Cracking Down on Them


"Low-volume hobbyists are bad for patients and we have to stop them," Dr. John Birkmeyer, a surgeon and chief academic officer at Dartmouth-Hitchcock Medical Center, told U.S. News.
弊社意訳(”症例数の少ない趣味人は患者にとって悪であり、我々は彼らを止めねばならない”と外科医でありダートマス・ヒッチコック医療センターのチーフアカデミックオフィサーはU.S. Newsに言った)
Birkmeyer estimates that if these procedures were carried out by more experienced surgeons instead of so-called “cowboy surgeons,” more than 1,300 deaths could be prevented each year.
弊社意訳(Birkmeyerは、これら(10のメジャーな手術)が、いわゆるカウボーイ外科医ではなく、経験豊富な外科医によって行われていれば、毎年1300人の無駄死を防げるだろうと試算している)

神の手である必要はないが、自分の手術は経験豊富な医者にやってもらいたい。誰もがそう願うだろう。しかし、どんな外科医だって、最初のとき・初めての手術があるのは事実だ。

他の事例で考えてみよう。パイロットは、いきなり機長になるわけでなく、一定時間、副操縦士として経験を積む。一方、車の運転は自動車学校を出たら、初心者マークですぐ運転できてしまう。

現状、外科医はパイロットに近い制度だ。助手として手術を経験し、一定の経験を積むとやさしい手術を執刀するようになり、徐々に難しい手術へ移行する。しかし、この情報はほとんど開示されない。もしかしたら、自動車学校を出たての状態のような外科医が手術をするかもしれないし、車の運転歴は長いけど、大型自動車はまったく運転したことがないような、その手術は初めてという外科医が手術をするかもしれない。

医療の質の向上を促進するには、情報の開示が大事ではないだろうか。そして、医師がより訓練できるよう、患者はその費用を負担すべきだ(医療の質が上がるのに、費用をまったく負担しない、という患者だけ都合がいい話はそうそうない)。

ちなみに、冒頭紹介した記事では、次のようなことも書いている。
Procedure volume is only one factor that determines surgical outcome. In fact, some small hospitals may provide excellent care even at smaller volumes.
弊社意訳(症例数は、手術の質を決定するファクターのたったひとつにすぎない。実際、小さな病院で、症例数が少なくても、素晴らしい治療をするところもある。)
エビデンスがあるから、小さな病院で手術を止めるべきと言ってしまったら、 絶妙なバランスで成り立っている日本の医療が崩壊してしまうかもしれない。しかし、だからといって、症例数をブラックボックスのまま医療を続けることもありえない。

先日の下記内容も含め、今後、医療の質に対する議論は活発になるに違いない。

外科医の成績表で情報の透明性向上に - 医療、福祉に貢献するために