非常に良かった。医療事故に対する考え方など、近頃自分の中でもやっとしていた部分などがすっきりした。病院ランキングに対する考え方も非常に共感できた。National Clinical Databaseの取り組みについては、どういった形で公表するのが良いか、公表までのハードル・現時点における問題点にも言及されている。かつその指摘は、一般人にも分かりやすい言葉が選ばれていて、勉強になった。
印象に残った箇所を引用する。
患者さんを「パートナー」として一緒に歩めるように、医師は成長しなくてはなりません。また、そういう意味では、患者さんも成長しなくてはならないでしょう。双方が良きパートナーになり、医療政策に新しい展開が生じることを期待します。患者も成長する。この言葉は非常に重い。お互いの信頼なくして、良い医療を受けることなどできない。信頼なくして良い医療だけを受けようとすれば、医療者は疲弊し、患者は失望し、コストがかさむに違いない。
「患者とともに生きる」という医療の考え方をこのような形で発展できれば、ともすれば混乱しがちな患者・医師関係が円滑に運ばれ、お互いに信頼できる良い関係を構築できるのではないでしょうか。(P.160より引用)
次の一文も、印象深い。
診療所や病院を訪問しました。(中略) 以前はある意味ライバルだったわけですが、診療報酬の改定により病院経営が一段と厳しい状況となったことで、互いに協力してともに生き残っていきましょうという話題で盛り上がったりもしました。競争ではない。共存だ。この共存の中に適度な緊張感を作ることが、医療の質の向上に大事であり、そういった視点で、政策は十分配慮されるべきだろう。地域医療構想についても、同様の理念が根底にあると理解しているものの、週刊誌などの記事は、競争を強調している感が否めない。地域に根ざした医療を日々現場で接しているからこそ、上のような重みのある文章になっているのだろう。
現在の厚労省の政策のもとでは、一人勝ちなどありえません。地域の医療機関がそれぞれの役割を認識し、役割を分担することでしか生き残りを図れないのです。(P.78より引用)
新書ということもあり、ターゲットは一般人で、医療者向けの本ではないだろう。しかし、医療関係者こそ読むべき本のように感じた。