2017/03/16

建設的意見をもらうために大事にしている現場感

先週の第10回 医療計画の見直し等に関する検討会で、急性期病院からの退院患者の大半が、その後、通院に移行しているというデータ(下記がその一例)が示され、様々な議論がなされたようだ。

2017/3/8 医療計画の見直し等に関する検討会 資料より引用
CBnewsの記事によると、通院に切り替えているというデータが臨床医の感覚と合わないといった意見が出たようだ。

在宅医療などの追加整備、厚労省案に違和感 - CBnewsマネジメント

確かに、なかなか急性期病院から退院することが難しい患者も少なくないだけに、大半が通院しているというデータには違和感がある。

しかし、感覚とデータに差異が生じる理由も何となく分かる。その一端をデータで示してみたい。

下のグラフは、DPC算定病院の80歳以上の入院データを見たものである。疾患別の入院件数上位7疾患をピックアップし、その7疾患における入院件数の占有率と、在院日数の占有率を比較した。

DPC公開データ(2015年度実績)を基に分析

このグラフから、上位疾患中、3割弱を占めている白内障と狭心症は、延べ在院日数(≒ベッド)は1割にも満たないことが見えてくる。

白内障と狭心症は、大半が急性期の治療・検査を終えたら、自宅に帰ることができる疾患である。つまり、件数としてはそれなりに多い疾患の中には、通院に切り替えることが容易な疾患が含まれており、それらの疾患がベッドを占める割合は低い可能性が示唆される。

ベッドを占めていないことは、医療者の実感を薄めてしまう可能性が高い。つまり、誤嚥性肺炎や脳梗塞、心不全といった疾患の印象が強いため、「そんなに通院に切り替えられるの?」という疑問を感じたのではないだろうか。

構成比を見るときは、件数を見るのか、ベッド占有率・延べ在院日数を見るのか。医療計画の見直しについて有意義な議論を促すためにも、臨床の先生方の感覚に寄り添う余地があるのではないだろうか・・・と偉そうなことを書いてみたが、要は、患者に直接触れない場所でデータ分析を本業としている自分に言い聞かせたかっただけだ。