2015/02/09

地域における大学病院と周辺病院の役割分担

大学病院らしさという切り口で、前々回の記事(特定機能病院の取り消しで問題は解決するのか?)で独自の指標化について、前回の記事(大学病院らしさを本院・分院で比較してみた)で本院と分院の比較について述べた。今回は地域における役割分担について考えてみたい。

先月、日本海側のある県にて、地域医療を担っている院長先生との会話の中で、大学病院が大学病院らしくない医療を幅広く手がけているということが話題になった(こちらから話を振ったというのが正しいところなのだが)。

というのも、この分析手法を作ったのは、とある県のため、と言っても過言ではない。日本では大学病院が地域医療における重要な役割を担っているケースが良く見受けられるのだが、あまりにも手を広げてしまっていて、地域の公的・公立病院の運営が苦境に立たされていることがある。さらに言えば、それが引き金となって、民間病院はさらに苦しい環境で運営・経営していることがある。

本来であれば、大学病院には、大学で診るべき患者、というものがあり、それらの患者を中心で診るべきであろう。もちろん、教育的な観点から、それらの患者だけでは困るのだが、地域医療機関との役割分担や研修制度の状況を考えれば、いわゆる市中病院で診るべき患者を、躍起になって大学病院で診る大義名分はない。

しかし、大学病院とて、経営的な課題もあろう。ベッドを空けておくなんて言語道断。必死で患者を集めている。

それが客観的に見たいがためにこの分析手法を考えた。今回は3つの県の事例を見ながら、考えてみよう。(レーダーチャートの見方は前回の記事(大学病院らしさを本院・分院で比較してみた)参照)

まず、分かりやすい例から見てみよう。きびだんご県だ。
きびだんご県

大学がいずれの領域でも「大学病院らしさ」を発揮している。一方で、公立・公的病院は、いずれもそれほど大学病院らしさは感じられない。つまり、役割分担がうまくできていると捉えられる。ただ、逆に言うと、公立・公的病院が乱立している感は否めない。

次に、あわおどり県。

あわおどり県
きびだんご県同様、あわおどり県も大学が一番外側、つまり大学病院らしさがある。細かいことを言えば、血液疾患はあまり差異がないように見られるし、大学の循環器は大学病院らしさがあまり強くない。

最後はめがね県。
めがね県

婦人科系疾患や血液疾患では、大学がリードしているものの、呼吸器も循環器も消化器も泌尿器も外傷も、大学は基準値より低い。この分析結果だけで言えば、めがね県の大学は、大学病院らしさが欠けている。一方で、公的病院、公立病院は、きびだんご県と比べ、そこそこ大学病院らしさがある。この結果から、この地域において医療機能分化は適切なのか、疑問を感じる。

前回同様の繰り返しとなるが、この独自指標は、あくまでも疾患構成を中心に判断している。その地域における大学の貢献を否定するものではない。しかし、機能分化が適切かどうか、客観的に見ることができる、という意味で、あながち間違ってはいないようだ。