下記は、DPC算定病院における全身麻酔症例が、大病院に集中しているか否かを見た分析。愛知、山形は7割以上が500床以上、8割近くが400床以上の大病院に入院している。一方、徳島県は7割以上が400床未満、沖縄県も7割近くが400床未満となっている。佐賀県や鹿児島県は200床未満が2割以上となっている。
DPC算定病院(2016年度実績。2018年度DPC対象外病院は除く)の 全身麻酔症例 病床規模ごとの症例比率 |
このような違いが「医師の働きやすさ」に違いをもたらしている可能性がある。例えば、和歌山県は5割以上が700床以上の大病院に入院している。この和歌山の700床以上の病院は、和歌山県立医科大学病院と日本赤十字社和歌山医療センターの2病院で、それぞれ4300件、4500件程度の年間入院件数(全身麻酔実施あり)となっている。
年4000件を超える全麻入院患者がいる病院は、全国でも少ない(下記ヒストグラムのオレンジ枠が4000件以上のところ)。
DPC算定病院(2016年度)の全身麻酔件数分布 |
つまり、このような病院に全身麻酔患者が集中していれば、麻酔科医の配置は、他地域に比べ有利になるだろう。当然、麻酔科医にとっても、働きやすく、経験を積みやすく、学びやすい環境を実現しやすいはずだ。
全身麻酔で集約状況を見ているので、麻酔科医の話をしたが、これは執刀医も看護師もMEも同様だし、手術室の建物・設備といった面も同様である。
魅力的な環境を作ることで医療従事者を確保しやすくし(結果的にコストを下げる)、効率的に設備を稼働させることで相対的に設備関係のコストが抑えられる。さらには、患者も質の高い医療を受けやすくなるだろう。
病院の集約化、症例の集約化は、急性期医療において、重要な戦略である。一方で、患者アクセスや、災害時の柔軟性などが犠牲となる可能性もある。さらには、セミナーなどでもよく話すことだが、複数の病院をくっつければ集約化が図れるような単純なケースはまずない。建物・設備などのハード面、医師・看護師・事務職員などの人員面、アクセスなどの運営面、これらのすべてを整理しなければならないため、ハードルは高い。
でも、ハードルが高いから無理とあきらめ、何もしないという選択肢を選ぶことは、将来の道を狭めてはいないだろうか。