2013/02/21

病院ランキング本はこう読め!

本を買うときは、大抵、家族から「図書館で借りれば良い本じゃない?」「置く場所は限られている」「今月は買いすぎ」と口を酸っぱくして言われる。確かに、しょっちゅうくだらない本を買うし、一度読むどころか部屋に積まれている本さえある。

ただ、今週は違う! 家族が実家に帰ってしまったので、本を買っても何も言われないのをいいことに、本屋で買い、ネットでポチッと押し、気がつけば、実家から戻ってきたら、即バレてしまうくらい買ってしまった。ちなみに時代は変わったもので、電子書籍で買ったものもあり、おそらくこれはバレないはずだ・・・。

そんなことはさておき、買った本の中には、こんな本もある。

病院の実力 2013 総合編 (YOMIURI SPECIAL 73)
渡辺徹が表紙にあったから、つい手にとってしまった、というのは半分冗談で半分本当。(渡辺徹とは名前と体型で何となく縁を感じる)

読売新聞の「病院の実力」。世間一般がどういう情報を欲しているのか、マスメディアがどういう情報を流したいのか、その時々の世相を反映していると思い、定期的に買っている本の一つだ。

表紙には、5大がんに次いで、「心臓の病気・血管の病気」と来て、「目の病気」かと思ったら、『眼科』と来た。統一性のない言葉選びに、若干、週刊誌的な要素を感じる。

なお、表紙の左上には、「ランキングではわからない! 病院選びの決定版」とある。これもランキング本ではないのか??と思うところだが、読売のこの本はランキングでないことを昔から主張している(手術件数が多い順に並んでいるので、ランキング本と捉えている人が大半だと思うのだが)。この主張は、週刊朝日の「病院ランキング」や日経の「病院ランキング(最近は「日経実力病院調査」と呼ばれているか)との意識的な差別化と、病院のランキング化に対する批判だと思われる。



■ランキング本はこう読め ①リストに網羅性がない

(読売新聞は自分たちはランキング本でないと主張しているので、その点は、私の勝手な解釈だが)この本を含めた世の中のランキング本を読むときに、まず注意しなければならないのは、そのリストに出てくる対象が何か、ということである。読売の本であれば、これはアンケートを元にリストを作っているので、回答しなかった病院は漏れているのだ。たとえるならば、マラソンランキングでアフリカ大陸が全部漏れている・・・とまでは言わないものの、エース級の病院がぽろぽろ漏れていることは間違いない。

本に書かれている大腸がんを例に挙げれば、「学会認定施設、がん診療連携拠点病院など1,718施設にアンケート実施し、640施設から回答があった」とのこと。回答率は5割にも満たないのだ。

そのことを踏まえると、病院リストは参考になるものの、これから自分が病気でかかろうとしている病院の名前がリストに無くても不安になる必要はない

また、DPCデータ(入院料包括払い制度の病院が提出するデータ)を元にランキングを作っているケースも見受けられるが、これはこれで、DPC病院の網羅性は担保されていても、制度に参加していない病院や、クリニックは載っていないため、注意が必要である。

■ランキング本はこう読め ②手術方法の選択は何がベストか一概に言えない

「腹腔鏡手術は患者の負担を軽減できる」、「PPG(幽門保存胃切除術)は機能を温存できる」などのコメントが付され、件数が並んでいる。一見、腹腔鏡手術やPPGの件数が多い病院が良いように思えてしまう。ただ、これらの術式の選択は、医者の腕・経験の有無だけではなく、患者の病気の状態に大きく左右される。がんであれば、進行したがんが多く集まる病院と、早期のがんが多く集まる病院では、当然のことながら、術式の選択に大きな違いが生じる。しかし、この数値だけを見て、どっちがよいか判断することは極めて難しい。

ただ、まったく参考にならないものか、というと、そんなこともない。極端に腹腔鏡手術が少ない病院、もしくは逆の病院は、その病院・医者のポリシーで腹腔鏡を使う、使わないといったことがある。患者が腹腔鏡手術と開腹手術、どっちがよいか迷っていても、そのような極端な病院に行ってしまったら、医師に聞くまでもなく、開腹になってしまう(もしくはその逆)可能性が高い。

医師は常に患者ひとりひとりにベストな方法を考え治療してくれる、とは言っても、様々な事情があり、術式選択ひとつとっても、バラバラであるということが分かる。患者側では、その病院ごとの背景を正確に把握することはできなくても、他と違う病院である(極端に腹腔鏡が多い病院、少ない病院、などなど)ということが分かるのは大きな情報ではないだろうか。

■ランキング本はこう読め ③広告か否か

新聞でも雑誌でも、そうなのだが、ぱっと見、取材を受け、記事で取り上げられているかのようなページが多く見られる。そういったものの大半は、ページの下に■ADと書かれている。これは広告であるということ。病院がさも実力があり、良い病院のような記事になっているが、単に広告料を払った病院であるということでしかない。

広告を広告として読めない人が多いのか、はたまた純粋に取材形式の広告は宣伝効果が高いのか、どちらなのか分からないが、毎年結構な広告が出ていることを考えると、それなりに効果はあるのかもしれない。


■ランキング本はこう読め ④賢く使え

この3点を注意し、病気の治療方法や、地域での実績のある病院を把握する分には、よい本であるように思う(680円の価値があるかどうかは、インターネット上に情報があふれているので、微妙かもしれないが、整理された情報であることに、多少なりとも価値はあるように思う)。

この手のランキング本から得られる情報は、盲目的に過信せず(多少疑った目で見ながら)、自分がより賢くなるツールとして、利用するのが最もよい活用方法だと思う。

ちなみに、読売の本で気になった点がひとつ。心臓弁膜症のデータ。昭和大学藤が丘病院は26人手術して、21人亡くなられているようだ。本当だろうか?? 弁膜症の手術は難易度が高く、死のリスクは多少なりともある。しかし、他の病院ではおおよそ1割程度の死亡率になっている。8割以上が亡くなるというのは、異常としか思えないのだが・・・(問い合わせてみようかな)

※2013/02/26補足
昭和大学藤が丘病院の件、読売担当者より連絡があり、病院の回答が誤りだったらしく、21名死亡→1名死亡、だそうな。良かった。