2013/02/05

生殖医療に関する情報公開

少子化が進んでいると言われているが、それは晩婚化や女性の働く環境、非正規雇用や保育所の待機児童など多くの要因が複雑に絡まっている。その要因のひとつとして「不妊」も挙げられ、生殖医療が学術的・技術的に進歩している中で、正しい情報を得ていくことは重要である。

NHKでは、卵子の老化や、不妊の原因は女性だけでなく男性にもあるケースが多いことなどを積極的に取り上げている。

NHK 「不妊社会」 ホームページ



「卵子の老化」を取り上げた際の反響はかなり大きかったようだ。
不妊・生殖医療に関する知識が不足していることも、ひとつの問題だが、それは次に挙げるような本などを読んでもらうこととして、今回は、日本とアメリカの生殖医療に関する情報公開を比較してみようと思う。


オススメの本

妊活バイブル 晩婚・少子化時代に生きる女のライフプランニング (講談社プラスアルファ新書) [新書]齊藤 英和 (著), 白河 桃子 (著)

不妊治療の情報だけでなく、妊娠の一般的な知識が得られる。女性はもちろん、男性も読む価値あり。

その他不妊に関する本


生殖医療の情報公開の比較は、下に続く・・・

生殖医療は、学会などの努力により、日本では治療実績が非常によく開示されている分野のひとつである。⇒日本産科婦人科学会の情報開示(ARTデータ集)
これは他の領域にも期待する点であるが、アメリカの比較すると、違いが見られる。

違い: アメリカはクリニック別の治療成績を開示している


生殖医療は、妊娠や出産といった分かりやすい成否の判断基準があるため、治療成績を開示しやすいといったことはあるだろうが、クリニック毎に、患者の年齢構成も違うし、不妊の原因も異なるため、単純比較は難しいはずである。

アメリカで開示されている資料を見てみると、次のようになっている。

2010 Assisted Reproductive Technology Fertility Clinic Success Rates Report
(左)全米実績 (右)アラバマ州のあるクリニックの実績

全米の実績だけでなく、各クリニックの実績が、年齢別に細かく開示されている点は、クリニックを選ぶ基準として用いるかどうか別として(クリニックの診療の質は実績だけでは測れない)、クリニックにおいては適度な緊張感が生まれ、また一般市民が情報を手にすることで、よりその中身を知りたい欲求も生まれることにより、全体の医療の質の向上が期待できる。

こういった取り組みは、生殖医療に限らず、様々な領域で広がっていく必要がある点ではないだろうか。

日本の生殖。NHKでも卵子提供のことが取り上げられたり、今後も注目を受けるだろう。その一方で、体外受精などの生殖補助医療は自由診療であり、それらに対し公的補助を出す以上、診療内容・実績はこれまで以上にシビアに見ていく必要がある。情報開示は、ハード面やソフト面での充実度合いや、治療実績、費用など様々な観点で、医療者のみに意味ある内容ではなく、患者にも意味ある内容で、透明性を高めていくべきだろう。