2014/04/28

一般市民の混合診療に対する現状理解が十分でない中、議論は進んでいく

先月くらいから、混合診療の拡大について議論が活発化してきているが、ニュースでは「受けたい医療が受けられる」との患者の声を大きく伝えているように感じる。その医療の安全性などもあわせて報じられているものの、財源の負担なども含め、市民・患者・医療者・行政の立場を明確に論じているものはほとんど見られない。

〜昨日、今日のニュースから〜
「混合診療」実施病院巡り調整続く NHKニュース

【主張】混合診療の拡大 患者の利益こそ最重要だ - MSN産経ニュース


そんな中で、下記のBLOGOSの記事。
混合診療に関する日本医師会の説明が理解できない

この記事を読むと、「自由診療を受けると、なぜ保険診療部分まで自費になってしまうか」ということを理解することの難しさが受け取れる。

「医師会の主張が理解できない」というのは、具体的にどのような問題をはらんでいるかが見えてこないせいだろう。例えば、2、3日寝ていれば治ることがほとんどのインフルエンザの投薬は保険診療から自由診療に、検査は保険診療のままになったと仮定する(今は全部保険診療)。すると、お金がある人はクスリをもらって帰り、そうでない人はクスリをもらわずに帰ることとなる。クスリ代は全額自費なので数千円の差が生じる。これが「現在、保険診療で診ているものまで、混合診療に・・・」という問題だ。

でも、これは医療費の財源問題を考えるとき、クスリを飲んでも飲まなくても大して差がない(と主張する人もいる)インフルエンザのクスリの医療費について、保険財源を使うことがなくなるため、プラスと判断することもできる(自分はこの自己負担のコントロールと、社会保障制度の拡充を組み合わせ、最適化を図るべきと考えている。「混合診療の拡大」の単独の議論には賛成でも反対でもない。)。

現行の保険診療を保険外にすることの問題を気にするだけでは不十分だ。例えば、新型インフルエンザのクスリが出たときに「混合診療があるから、保険外にしておいてもいいよね」ということになりかねない、ということを医師会は指摘している。

具体的な問題をもとに論じていかないと、最悪、「一部患者の利益拡大」が「大多数の損失」になるかもしれないのだ。

昨年、大学生に保険診療について教えていたとき、理解してもらうことの難しさを感じた。誰が悪い訳でもない。混合診療の拡大の議論とともに、分かりやすい制度にしていくことも重要だろう。