「医師と官僚」、「日本とアメリカ」、それぞれの経験に基づく視点を持ち合わせている点は、バランス感がよく、指摘している点に説得力がある。
ただ、あえて指摘するならば、「医師と官僚」、さらに言えば、「医師と医系技官」でありながら、最終的な主観は、医師・医療者に軸が置かれているため、保険者である支払側や一般市民での観点が薄く、若干バランス感覚に欠けている。医療費抑制政策を批判するのは、現場の医師の過労を少しでも緩和させるために大事な主張と思うが、税収が落ち込み、社会保障費をどうやって捻出しようか頭を悩ませている日本という国にとって、すべてが解決する策ではないことは明らかだ。
また、ドクターフィーとホスピタルフィーの議論がなされている。これは医療者側だけでも、意見がまとまらない内容なだけに、議論を成熟させていく必要があるだろう。これから始まるであろう費用対効果の議論する際にも、ドクターフィーとホスピタルフィーに分けることを意識する必要があるのではないだろうか。
それと、ロハスメディカルやm3.comの橋本佳子編集長のことが、一般紙のようなマスメディアと異なり、本質を突いた情報発信ができている、といった話があったが、これは、本当にその通りだと思う。国民が情報を目にする際、それが偏った考え方なのか、そうでないのか、判断できる人はあまり多くないように思う。
(下記の「行列のできる審議会~中医協の真実」が、その分かりやすい例)
「さらば厚労省」は、こういったメディアの問題も含め、医療政策を考えていく上では、非常に良い本だと思う。
さらば厚労省 それでもあなたは役人に生命を預けますか? 村重 直子 |